第二十二話 密偵
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『"個性"の使い方、教えて下さい!』
真っ直ぐで、綺麗な目をした女の子。
『俺を選んでくれた理由はなんですか』
真っ直ぐで、真剣な眼差しで問い詰める男の子。
彼に対して自分は『鳥仲間』と伝えた。ある意味それも本音だったけれど、彼を強くした言葉でもあったとおもう。
後進育成とかホント、興味なかった。ヒーローとしての価値観も、取り分けたいしたことないとおもってた。
とある事件をきっかけに公安に拾われた自分からみれば、二人のインターン生なんてたかが高校生だろうって。
地元で一緒に働いてくれるサイドキックの人らは、いつも後手にまわってくれていたし、その役割がまた増えるだけだろうって。
だから背中を追っていた職場体験の経験しか出来なかった常闇が、また自分の背中を見にきた時には少し驚いたし、
女の子のクラスメイトも連れて来るとは思わなかった。まためんどくさいカリキュラムなんかを教えんとならんのかって。
でも、一番驚いたのは、その背中しか見せれなかった常闇が自ら考えたのか空を飛びついてきたことだ。
離れないようにと必死に後についてくる常闇。少ししか離れた時間しかなかったのに、ここまで成長出来るのかと。
「へぇ・・・」
たまらず、内心関心した。
そんな常闇とは裏腹に、初めて自分のとこにインターンに来た彼女は撃沈している。なんて可愛らしいザマだ。
「大丈夫か、登坂?」
息を荒く、肩で息をする常闇が心配そうに顔をのぞき込む。
「だ、大丈夫・・・(デステゴロさんの時も辛かったけど、全然、ワケが違う・・・)」
「俺はまた、先行くよ」
背中の羽根がビリビリと、警戒している。疲れている彼女に、構っている暇なんてない。
そんな事している間に、被害が広がってはNo.2の名折れだ。
「常闇くん、行って」
「だが・・・」
「ホークスの背中に桜張り付けたから大丈夫、少し遅れて追い付くから」
「わかった。無理はするなよ」
「・・・無理しなくちゃ、ヒーローになれないよ」
いまは常闇に安心してほしいから、ニヤッと無理に笑いかける。察してくれたであろう常闇と、グータッチした。
空を飛んだ拍子に、ホークスの周りに桜が舞う。
(桜・・・)
まぁ、ヴィランのものじゃないから安心するけど。手に持つ桜をどうしようか思い悩む。
「まぁ・・・もってても邪魔にならない、か」
彼女の考えに乗ってあげようじゃないか。さて、彼女はどこで姿を現してくれるだろう。
背後から、風を切る音がし顔を少し後ろに向ければ常闇が追い付こうとしている。
常闇の"個性"であるダークシャドウを使いこなして飛ぼうとしているのだろう。まだまだ危なっかしいが。
今日も多発する"個性"による事件や事故。それらを解決する為にあちこち飛び回っていれば、いつの間にか二人の姿がないことに気づく。
「ありゃ」
サイドキック二人と普段仕事していてもそうだ。だれも自分のスピードには追い付けない。
だから通り名が「速すぎる男」なんてつくんだろう。まぁ、パワー押しに弱くても速さで勝る部分ができる程だ。
ふと、羽根につけていた桜を思いだし、自分の方へ意思を向けてみる。
「ん・・・?」
だが、そこにつけておいた桜は、桜ではなくなっていた。"個性"が解けたのか。彼女のは、常時発動ではないのだろう。
けれど、飛ばしていた剛翼が、フワリと彼女の気配を関知した。
「ホークス!!」
勢いあまって突っ込んでくる彼女を、剛翼で勢いを押し殺してやる。なんて危なっかしい子なのだろう。
「わっ」
"個性"を解いてしまったのか、落ちてしまいそうな彼女を、羽根で支えた。
「す、すみません・・・」
宙ぶらりんの状態で謝罪する歌恋に、少し呆れてしまう。
「なにやってんのかな?怪我して怒られんの誰かわこうとる?」
内心、焦った。だから口調が地元の口調になってしまった。
「ホークスに桜で分かるようにくっ付けたんですけど、あちこち速くて。その間に桜戻っちゃったので、
また新しく飛ばしながらやってみたんですけど・・・常闇くんから聞いてて、飛んでみたけど感覚わかんなくなっちゃって・・・。
し、死ぬかとおもった・・・」
「・・・・・・・・」
「キルシュ!?」
そこに、常闇も到着だ。なんてしつこい二人なんだろう。雄英を襲ったヴィラン連合の話は聞けた。
俺の仕事はそれで十分だとおもっていたんだが・・・そうもいかないようだ。
「このまま運ぶと」
「え、わ!?」
「!」
いちいち下ろしてる暇もおしい。それにこの状況、彼女にとって訓練さながらになるだろう。
人の騒ぐ気配、悲鳴。急げ、被害が広がないように。先に剛翼で救助を。
車同士、人々の行き交う大通りの、何十台も巻き込んだ大規模事故になりかけた。
常に飛ばしていた剛翼で、探知出来た被害を最小限に、最初にぶつかった車同士はともかく、
後ろの車の衝突を防ぐ為に、羽根がガードしていた。それは歩道を歩いていた人々も同じく、
羽根で人を浮かし、その場から離れさせている。激突した運転手が、大声をあらげていた。
「嫌だ!!俺が悪いわけじゃねェ!悪いのはそっちばい!?」
「だから!ドライブレコーダー見よれば!」
「わーん、お母さぁああん!!」
「はやく、行こ、逃げよ」
「ホークスの羽で助かったとよ!」
「どこいる、ホークス!?」
もう街中は騒ぎの渦だ。
「・・・事件発生直後ですか」
男の言い合いの間にホークスが入り、言葉を投げ掛けている。その間に、歌恋は地面に足をおろした。
お母さんとはぐれてしまったのであろう女の子のそばに、常闇とともにかけよってあげる。
「お母さん、どことぉ?」
「お姉ちゃんと一緒に、お母さん捜そう?」
「お姉ちゃん、ヒック、お母さんがぁ」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんヒーローだから」
「・・・ホークスもおる?」
「うん、いまね、ホークスと一緒にお仕事してるの」
「ヒーロー・・・ヒーロー・・・。ヒーローがいても、社会は愚図なままだ!」
「!!」
ゾワリと背後からの敵意を感じ、咄嗟に女の子を抱き締める。
「落ちて落ちて、俺はぁなぁ!!!」
「キルシュ!ダークシャドウ」
「ワカッテル!」
切りかかってくる、何人もの人が囲むように襲っていた。助けようと思えば、暴れ狂ってる男を抑えながら羽でどうにか出来ただろう。
でも、彼らもヒーローだ。無駄にインターンに来たわけじゃないだろう。
だって、俺についてこようとしてくれた子たちだから。やりたくない仕事でもね、大人はみんな我慢して毎日生きてる。
だから娯楽を求めて、楽しい事を求めて。それで楽しいって思えるんじゃないか。
楽しいことばかりじゃ、あきるだけ。毎日同じでつまらん。そう思えば楽観的にいれるハズなのに。
「黒き腕の闇々裏!」
常闇の技が、周りを囲んで飛び上がっていた男たちを抑え込む。ここが今、夜ではなくてよかった。
コスチュームの外套をダークシャドウに被せてやる必要なく、生身の人間なので被害を最小限に。
「気絶程度に抑えたつもりだ」
「ありがとう、とこ・・・ツクヨミ」
驚いた女の子は、再び泣き出してしまう。自分の桜は人探し出来る。でもそれは、知った人物しか気配でわからない。
「・・・ホークスに頼るしかないかなぁ」
常闇は捉えた男たちの後処理中だし、このまま女の子を放っておけないけれど。自分の力のなさに歯がゆい。
「チヨ!?チヨあんた、何処にいたとよ!?心配したばい!」
「おかーさん!!」
「え?」
迷子になってしまった自分の子を、必死に探しまわっていたのだろう。
「ありがとう、大変な事故の後なのに」
「いえ、いえ、私はなにも」
お礼を言ってくれるお母さんに、頭があがらない。
「お姉ちゃん一緒におったから、チヨこわーなかった!」
「まったくもう・・・!」
「・・・何でこんな事件を考えたんですか」
ホークスが抑えていた男が、インターン二人を襲った連中を見てニヤリと笑っていた。
奴等はつながっていた。社会に対する不満をヒーローにぶつけたいが為に起こした悲惨な事故。
「アンタの羽根のせいと。大胆やんなば、アンタやる前に捕まえっちまう」
「当たり前です。その為に俺は羽根がありますから」
「アンタがインターン生といるのをみて、あの子ら標的にすれば幾らか勝ち目あるとおもうとった」
「!!じゃあ、あの二人は」
「・・・家族をも、巻き込んどよ。どんな手つこうともなァ!!」
『・・・ヒーローを?ホークスを標的に・・・?この子も巻き込むと?』
『ヒーローは、子供にあまい。それにいま、インターン生が来とる。狙うなら、社会を変えるならいましかないんだ!』
「キルシュ!!」
助けを求めるのも人、犯罪を犯すのも人。同じ人間でも、考えが違うから皆、何かしら強い"個性"をもってるからこうなるのか。
「俺も"個性"持ちだ、ホークス!!っ・・・」
「「すんません」ごめんなさい!!」
唖然として、動けなかった。ホークスの声が、羽根より速く聞こえた。この子のお母さんは、何をしようとしてるんだろう。
でも、勝手に手が、桜が蠢く。お母さんの放つ両手から、光の弾丸が飛び出す。
それを歌恋は、桜で全身を覆い光を弾いた。
「ごめんなさい」
脳裏に浮かんだのは、滅多に微笑みを見せない彼の、大好きな笑顔。自分にだけ向けてくれる、特別な笑顔。
「私も、死ねません・・・」
その桜で、お母さんと、女の子の逃げ場をなくす。
「キルシュ、もう十分だ」
「ツクヨミ」
彼に肩を叩かれ、辺りをみればダークシャドウが親指っぽいのを突き上げている姿も目に入る。
「加減を間違えるな。こちらも終わった」
「うん・・・」
泣く姿は、誰もみたくない。
「・・・あなたの敗因は、あの子たちを侮ったことだ」
攻撃用の羽根を男に突きつければ、倒れ込む。
「あなたには、守るべく人たちがいる筈です。目の前の人を、大事にして下さい」
真っ直ぐで、綺麗な目をした女の子。
『俺を選んでくれた理由はなんですか』
真っ直ぐで、真剣な眼差しで問い詰める男の子。
彼に対して自分は『鳥仲間』と伝えた。ある意味それも本音だったけれど、彼を強くした言葉でもあったとおもう。
後進育成とかホント、興味なかった。ヒーローとしての価値観も、取り分けたいしたことないとおもってた。
とある事件をきっかけに公安に拾われた自分からみれば、二人のインターン生なんてたかが高校生だろうって。
地元で一緒に働いてくれるサイドキックの人らは、いつも後手にまわってくれていたし、その役割がまた増えるだけだろうって。
だから背中を追っていた職場体験の経験しか出来なかった常闇が、また自分の背中を見にきた時には少し驚いたし、
女の子のクラスメイトも連れて来るとは思わなかった。まためんどくさいカリキュラムなんかを教えんとならんのかって。
でも、一番驚いたのは、その背中しか見せれなかった常闇が自ら考えたのか空を飛びついてきたことだ。
離れないようにと必死に後についてくる常闇。少ししか離れた時間しかなかったのに、ここまで成長出来るのかと。
「へぇ・・・」
たまらず、内心関心した。
そんな常闇とは裏腹に、初めて自分のとこにインターンに来た彼女は撃沈している。なんて可愛らしいザマだ。
「大丈夫か、登坂?」
息を荒く、肩で息をする常闇が心配そうに顔をのぞき込む。
「だ、大丈夫・・・(デステゴロさんの時も辛かったけど、全然、ワケが違う・・・)」
「俺はまた、先行くよ」
背中の羽根がビリビリと、警戒している。疲れている彼女に、構っている暇なんてない。
そんな事している間に、被害が広がってはNo.2の名折れだ。
「常闇くん、行って」
「だが・・・」
「ホークスの背中に桜張り付けたから大丈夫、少し遅れて追い付くから」
「わかった。無理はするなよ」
「・・・無理しなくちゃ、ヒーローになれないよ」
いまは常闇に安心してほしいから、ニヤッと無理に笑いかける。察してくれたであろう常闇と、グータッチした。
空を飛んだ拍子に、ホークスの周りに桜が舞う。
(桜・・・)
まぁ、ヴィランのものじゃないから安心するけど。手に持つ桜をどうしようか思い悩む。
「まぁ・・・もってても邪魔にならない、か」
彼女の考えに乗ってあげようじゃないか。さて、彼女はどこで姿を現してくれるだろう。
背後から、風を切る音がし顔を少し後ろに向ければ常闇が追い付こうとしている。
常闇の"個性"であるダークシャドウを使いこなして飛ぼうとしているのだろう。まだまだ危なっかしいが。
今日も多発する"個性"による事件や事故。それらを解決する為にあちこち飛び回っていれば、いつの間にか二人の姿がないことに気づく。
「ありゃ」
サイドキック二人と普段仕事していてもそうだ。だれも自分のスピードには追い付けない。
だから通り名が「速すぎる男」なんてつくんだろう。まぁ、パワー押しに弱くても速さで勝る部分ができる程だ。
ふと、羽根につけていた桜を思いだし、自分の方へ意思を向けてみる。
「ん・・・?」
だが、そこにつけておいた桜は、桜ではなくなっていた。"個性"が解けたのか。彼女のは、常時発動ではないのだろう。
けれど、飛ばしていた剛翼が、フワリと彼女の気配を関知した。
「ホークス!!」
勢いあまって突っ込んでくる彼女を、剛翼で勢いを押し殺してやる。なんて危なっかしい子なのだろう。
「わっ」
"個性"を解いてしまったのか、落ちてしまいそうな彼女を、羽根で支えた。
「す、すみません・・・」
宙ぶらりんの状態で謝罪する歌恋に、少し呆れてしまう。
「なにやってんのかな?怪我して怒られんの誰かわこうとる?」
内心、焦った。だから口調が地元の口調になってしまった。
「ホークスに桜で分かるようにくっ付けたんですけど、あちこち速くて。その間に桜戻っちゃったので、
また新しく飛ばしながらやってみたんですけど・・・常闇くんから聞いてて、飛んでみたけど感覚わかんなくなっちゃって・・・。
し、死ぬかとおもった・・・」
「・・・・・・・・」
「キルシュ!?」
そこに、常闇も到着だ。なんてしつこい二人なんだろう。雄英を襲ったヴィラン連合の話は聞けた。
俺の仕事はそれで十分だとおもっていたんだが・・・そうもいかないようだ。
「このまま運ぶと」
「え、わ!?」
「!」
いちいち下ろしてる暇もおしい。それにこの状況、彼女にとって訓練さながらになるだろう。
人の騒ぐ気配、悲鳴。急げ、被害が広がないように。先に剛翼で救助を。
車同士、人々の行き交う大通りの、何十台も巻き込んだ大規模事故になりかけた。
常に飛ばしていた剛翼で、探知出来た被害を最小限に、最初にぶつかった車同士はともかく、
後ろの車の衝突を防ぐ為に、羽根がガードしていた。それは歩道を歩いていた人々も同じく、
羽根で人を浮かし、その場から離れさせている。激突した運転手が、大声をあらげていた。
「嫌だ!!俺が悪いわけじゃねェ!悪いのはそっちばい!?」
「だから!ドライブレコーダー見よれば!」
「わーん、お母さぁああん!!」
「はやく、行こ、逃げよ」
「ホークスの羽で助かったとよ!」
「どこいる、ホークス!?」
もう街中は騒ぎの渦だ。
「・・・事件発生直後ですか」
男の言い合いの間にホークスが入り、言葉を投げ掛けている。その間に、歌恋は地面に足をおろした。
お母さんとはぐれてしまったのであろう女の子のそばに、常闇とともにかけよってあげる。
「お母さん、どことぉ?」
「お姉ちゃんと一緒に、お母さん捜そう?」
「お姉ちゃん、ヒック、お母さんがぁ」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんヒーローだから」
「・・・ホークスもおる?」
「うん、いまね、ホークスと一緒にお仕事してるの」
「ヒーロー・・・ヒーロー・・・。ヒーローがいても、社会は愚図なままだ!」
「!!」
ゾワリと背後からの敵意を感じ、咄嗟に女の子を抱き締める。
「落ちて落ちて、俺はぁなぁ!!!」
「キルシュ!ダークシャドウ」
「ワカッテル!」
切りかかってくる、何人もの人が囲むように襲っていた。助けようと思えば、暴れ狂ってる男を抑えながら羽でどうにか出来ただろう。
でも、彼らもヒーローだ。無駄にインターンに来たわけじゃないだろう。
だって、俺についてこようとしてくれた子たちだから。やりたくない仕事でもね、大人はみんな我慢して毎日生きてる。
だから娯楽を求めて、楽しい事を求めて。それで楽しいって思えるんじゃないか。
楽しいことばかりじゃ、あきるだけ。毎日同じでつまらん。そう思えば楽観的にいれるハズなのに。
「黒き腕の闇々裏!」
常闇の技が、周りを囲んで飛び上がっていた男たちを抑え込む。ここが今、夜ではなくてよかった。
コスチュームの外套をダークシャドウに被せてやる必要なく、生身の人間なので被害を最小限に。
「気絶程度に抑えたつもりだ」
「ありがとう、とこ・・・ツクヨミ」
驚いた女の子は、再び泣き出してしまう。自分の桜は人探し出来る。でもそれは、知った人物しか気配でわからない。
「・・・ホークスに頼るしかないかなぁ」
常闇は捉えた男たちの後処理中だし、このまま女の子を放っておけないけれど。自分の力のなさに歯がゆい。
「チヨ!?チヨあんた、何処にいたとよ!?心配したばい!」
「おかーさん!!」
「え?」
迷子になってしまった自分の子を、必死に探しまわっていたのだろう。
「ありがとう、大変な事故の後なのに」
「いえ、いえ、私はなにも」
お礼を言ってくれるお母さんに、頭があがらない。
「お姉ちゃん一緒におったから、チヨこわーなかった!」
「まったくもう・・・!」
「・・・何でこんな事件を考えたんですか」
ホークスが抑えていた男が、インターン二人を襲った連中を見てニヤリと笑っていた。
奴等はつながっていた。社会に対する不満をヒーローにぶつけたいが為に起こした悲惨な事故。
「アンタの羽根のせいと。大胆やんなば、アンタやる前に捕まえっちまう」
「当たり前です。その為に俺は羽根がありますから」
「アンタがインターン生といるのをみて、あの子ら標的にすれば幾らか勝ち目あるとおもうとった」
「!!じゃあ、あの二人は」
「・・・家族をも、巻き込んどよ。どんな手つこうともなァ!!」
『・・・ヒーローを?ホークスを標的に・・・?この子も巻き込むと?』
『ヒーローは、子供にあまい。それにいま、インターン生が来とる。狙うなら、社会を変えるならいましかないんだ!』
「キルシュ!!」
助けを求めるのも人、犯罪を犯すのも人。同じ人間でも、考えが違うから皆、何かしら強い"個性"をもってるからこうなるのか。
「俺も"個性"持ちだ、ホークス!!っ・・・」
「「すんません」ごめんなさい!!」
唖然として、動けなかった。ホークスの声が、羽根より速く聞こえた。この子のお母さんは、何をしようとしてるんだろう。
でも、勝手に手が、桜が蠢く。お母さんの放つ両手から、光の弾丸が飛び出す。
それを歌恋は、桜で全身を覆い光を弾いた。
「ごめんなさい」
脳裏に浮かんだのは、滅多に微笑みを見せない彼の、大好きな笑顔。自分にだけ向けてくれる、特別な笑顔。
「私も、死ねません・・・」
その桜で、お母さんと、女の子の逃げ場をなくす。
「キルシュ、もう十分だ」
「ツクヨミ」
彼に肩を叩かれ、辺りをみればダークシャドウが親指っぽいのを突き上げている姿も目に入る。
「加減を間違えるな。こちらも終わった」
「うん・・・」
泣く姿は、誰もみたくない。
「・・・あなたの敗因は、あの子たちを侮ったことだ」
攻撃用の羽根を男に突きつければ、倒れ込む。
「あなたには、守るべく人たちがいる筈です。目の前の人を、大事にして下さい」