第二十二話 密偵
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それはホークスがスパイとして、一人ヴィラン連合に乗り込んでいた時の話。
エンデヴァー、プロヒーローらに【異能解放戦線】の本を配り終え、連合らの拠点に戻った頃。
(この中に何人ヒーローがいるのか。死柄木が、死柄木の奥にいる奴が具体的に何をしようとしているのか。
最小羽じゃ、聞き分けられる距離も短い。肝心なところが曖昧なまま掴めない。でも、わかってからじゃ遅いんだ。
今すぐここを包囲してしまえば・・・いいや、最速を考えろ)
解放軍の細かい数や全国にあるという潜伏地点。そして協力しているヒーロー全員を明らかにして、奴らを一網打尽にする。
さもないと、見えない敵を取り逃がしてしまうし、市民への被害も大きくなってしまう。
ふと、脳裏によぎった二人のインターン生。
『俺たち、飛べるようになりました』
(・・・知ってるよ)
二人の成長も実力も。
『へー、桜で探知能力もあるのか。常闇くんは、暴走の方は歯止め出来そう?』
ダークシャドウを暗闇でも操れるようになった。歌恋の桜の能力は、俺に似てる。
まぁ、人やモノを運んだり、一枚の桜でどうこうは出来ないけど。
二人の楽しそうな学校の話、"個性"の授業。何でか分からないけれど、自然と笑みが溢れてしまうんだ。
(・・・二人がいれば、効率もっと上がりそうなんだけど)
如何せん、彼らは学生だ。だから今回のインターンだって、地元に置いてきた。巻き込みたくはなかった。
だけど、数の備えで彼らの力を借りなくてはいけないのは目に見えていて。
(・・・弱気になるな)
いつからこんな他人を気遣うようになったんだろう。あの二人が来て、考えが変わって・・・。
「ホークスくん」
名前を呼ばれ、考えを振り払う。振り向けば、デストロがいた。
「君がヒーローに送り回った本だが」
感ずかれたかそれとも・・・数秒の時、デストロは笑顔のまま手を握ってくる。
「よく読み込んだ上でデストロの"らしさ"までおさえてある、わかっている側の人間だ」
「実は俺、まだ全然わかってねェの!今度教えてくれ」
コソッと、トゥワイスに耳打ちされ。
「ええ!難しくはないっスよ」
デストロが続ける。
「君のような広告塔がいれば、解放思想の浸透も手っ取り早い!
君の支持層である10代~20代を取り込めるのは、こちらも喜ばしい!」
こんなに喜んでくれるとは思ってないし、まだまだスパイとして動ける。
そんなトゥワイスの要望で【今さら聞けない!!解放軍のこと】の講座を一対一でしている時。
「若雲病院にて、暴漢が暴れています。救援求む!」
「今忙しいんで、俺パスで」
ポイッと、近くのソファーにスマホを放り投げるホークスを見て、トゥワイスが首をかしげた。
「何だ?」
「頼られちゃうんですわ」
「ヒーローの仕事か」
「で、えっとどこまで話しましたっけ」
「忘れたな!解放とは何ぞやとかカントカ・・・」
(病院――・・・)
ピースが、揃った。あとは――。
その日から、一週間が経った頃。再びトゥワイスがホークスに助けを求めてきていた。
トゥワイスにヒソヒソ、相談される。
「「行動理念」って、何言や良い?スピナー、コンプレスは連日奴らと会議会議。
義欄も荼毘も、どこ吹く風だし、トガちゃんは可愛い。教えてくれ、先生!
「部隊には未だ不信を抱く者も少なくない。擁立された置物とは言え、そなたの口から行動理念を明示すべきだ」
俺「あわわわわ、ぅウンコしてくる!!」てなワケ!!助けて!」
「アハハハハハ!!その口調は「サンクタム」ですね。解放軍でも最古参に位置する方だ。
「個の自由を至上とし、既存の仕組みを討ち滅ぼす」とかでいいんじゃないですか?」
「ほう」
「あと!リ・デストロへの忠心は必ず添えるように!」
「ああ!?」
「この数を統一しているのは、彼と彼の血ですから」
「心にもない事言いたくないなぁ。めちゃくちゃほめりゃいいんだな、わかった、助かったぜぇ!」
「いえいえ~」
超常解放戦線は現在、部隊編成され、連合メンバーと幹部が各自傾向別に分けられた部隊を持つ。
この構成員全てを、ホークスは1ヶ月掛けて把握した。
(先に動かれたら敗ける)
徹底監視と行動制限の中、気取られずに全構成員を把握できたのは、幼少の頃から公安に叩き込まれてきた交渉術の賜物だ。
そこで見えたもの。現行制度への敵意、恨み。もう一つ、彼らが具体的に何をしようとしてるのか。
現行制度、即ちヒーローの殲滅。
全国主要都市を一斉に襲撃。機能停止させ、無法地帯となったところで、リ・デストロと心求党党首が政界へ。
武器をばらまき、自衛という名の自由を謳う。超常原始、法が意味を失ったように、
混沌の世を創り出し、瓦礫の王座に彼は就く。オール・フォー・ワンの再演。
「あ!良くしてくれてありがとな!やっぱいい奴だ、おまえは!!」
「こちらこそ」
「ピースが揃った」のは、あなたのおかげだ、分倍河原仁。
(トラウマを克服したと聞き、戦慄した。その瞬間からあなたは、一介の小悪党から、最も警戒すべき存在へと変わった)
二倍の"個性"を持つ彼ならば、脳無もハイエンドも、いとも簡単に増やせてしまうだろう。
あなたが気の良い奴なのは、わかっていた。
何度も二人で行った解放軍の説明会。
『ヒーローなのに、解放軍のことよくわかってるよなぁ、何で?』
『共感できるからです』
嘘か本音か。
『かつて憧れ夢見た世界は、雁字搦めの鳥カゴでした。自由に飛びたい。俺の居場所は、あそこじゃない』
本心を悟られないように、ホークスはヘラリと笑ってみせる。
『・・・ああ、もう!早く死柄木に会わせて監視解いてやりてーよ!!』
『(あなたが、気の良い奴だって事は――)何で未だに会わせもしてくれないんですかね~~』
『京都の山で強化中だからだよ、4ヶ月かけて』
ホークスの事を疑いもなく信用してくれるトゥワイスは、ペラペラと連合の仲間の話を気前よくしてくれる。
『オフレコネタな黒髪ロングが盗聴してるだろーけど、まー大丈夫だ。おまえ、俺たちの為に身を粉にして動いてるもんな。
俺もわかるんだよ、仲間の役に立とうって人間に、悪ィ奴はいねえ。一緒に好きに飛ぼうな!』
ここまで良くしてくれると、気持ちが勘違いしてしまいそうになる。
俺は、どちらの味方であるべきなんだろうと。
エンデヴァー、プロヒーローらに【異能解放戦線】の本を配り終え、連合らの拠点に戻った頃。
(この中に何人ヒーローがいるのか。死柄木が、死柄木の奥にいる奴が具体的に何をしようとしているのか。
最小羽じゃ、聞き分けられる距離も短い。肝心なところが曖昧なまま掴めない。でも、わかってからじゃ遅いんだ。
今すぐここを包囲してしまえば・・・いいや、最速を考えろ)
解放軍の細かい数や全国にあるという潜伏地点。そして協力しているヒーロー全員を明らかにして、奴らを一網打尽にする。
さもないと、見えない敵を取り逃がしてしまうし、市民への被害も大きくなってしまう。
ふと、脳裏によぎった二人のインターン生。
『俺たち、飛べるようになりました』
(・・・知ってるよ)
二人の成長も実力も。
『へー、桜で探知能力もあるのか。常闇くんは、暴走の方は歯止め出来そう?』
ダークシャドウを暗闇でも操れるようになった。歌恋の桜の能力は、俺に似てる。
まぁ、人やモノを運んだり、一枚の桜でどうこうは出来ないけど。
二人の楽しそうな学校の話、"個性"の授業。何でか分からないけれど、自然と笑みが溢れてしまうんだ。
(・・・二人がいれば、効率もっと上がりそうなんだけど)
如何せん、彼らは学生だ。だから今回のインターンだって、地元に置いてきた。巻き込みたくはなかった。
だけど、数の備えで彼らの力を借りなくてはいけないのは目に見えていて。
(・・・弱気になるな)
いつからこんな他人を気遣うようになったんだろう。あの二人が来て、考えが変わって・・・。
「ホークスくん」
名前を呼ばれ、考えを振り払う。振り向けば、デストロがいた。
「君がヒーローに送り回った本だが」
感ずかれたかそれとも・・・数秒の時、デストロは笑顔のまま手を握ってくる。
「よく読み込んだ上でデストロの"らしさ"までおさえてある、わかっている側の人間だ」
「実は俺、まだ全然わかってねェの!今度教えてくれ」
コソッと、トゥワイスに耳打ちされ。
「ええ!難しくはないっスよ」
デストロが続ける。
「君のような広告塔がいれば、解放思想の浸透も手っ取り早い!
君の支持層である10代~20代を取り込めるのは、こちらも喜ばしい!」
こんなに喜んでくれるとは思ってないし、まだまだスパイとして動ける。
そんなトゥワイスの要望で【今さら聞けない!!解放軍のこと】の講座を一対一でしている時。
「若雲病院にて、暴漢が暴れています。救援求む!」
「今忙しいんで、俺パスで」
ポイッと、近くのソファーにスマホを放り投げるホークスを見て、トゥワイスが首をかしげた。
「何だ?」
「頼られちゃうんですわ」
「ヒーローの仕事か」
「で、えっとどこまで話しましたっけ」
「忘れたな!解放とは何ぞやとかカントカ・・・」
(病院――・・・)
ピースが、揃った。あとは――。
その日から、一週間が経った頃。再びトゥワイスがホークスに助けを求めてきていた。
トゥワイスにヒソヒソ、相談される。
「「行動理念」って、何言や良い?スピナー、コンプレスは連日奴らと会議会議。
義欄も荼毘も、どこ吹く風だし、トガちゃんは可愛い。教えてくれ、先生!
「部隊には未だ不信を抱く者も少なくない。擁立された置物とは言え、そなたの口から行動理念を明示すべきだ」
俺「あわわわわ、ぅウンコしてくる!!」てなワケ!!助けて!」
「アハハハハハ!!その口調は「サンクタム」ですね。解放軍でも最古参に位置する方だ。
「個の自由を至上とし、既存の仕組みを討ち滅ぼす」とかでいいんじゃないですか?」
「ほう」
「あと!リ・デストロへの忠心は必ず添えるように!」
「ああ!?」
「この数を統一しているのは、彼と彼の血ですから」
「心にもない事言いたくないなぁ。めちゃくちゃほめりゃいいんだな、わかった、助かったぜぇ!」
「いえいえ~」
超常解放戦線は現在、部隊編成され、連合メンバーと幹部が各自傾向別に分けられた部隊を持つ。
この構成員全てを、ホークスは1ヶ月掛けて把握した。
(先に動かれたら敗ける)
徹底監視と行動制限の中、気取られずに全構成員を把握できたのは、幼少の頃から公安に叩き込まれてきた交渉術の賜物だ。
そこで見えたもの。現行制度への敵意、恨み。もう一つ、彼らが具体的に何をしようとしてるのか。
現行制度、即ちヒーローの殲滅。
全国主要都市を一斉に襲撃。機能停止させ、無法地帯となったところで、リ・デストロと心求党党首が政界へ。
武器をばらまき、自衛という名の自由を謳う。超常原始、法が意味を失ったように、
混沌の世を創り出し、瓦礫の王座に彼は就く。オール・フォー・ワンの再演。
「あ!良くしてくれてありがとな!やっぱいい奴だ、おまえは!!」
「こちらこそ」
「ピースが揃った」のは、あなたのおかげだ、分倍河原仁。
(トラウマを克服したと聞き、戦慄した。その瞬間からあなたは、一介の小悪党から、最も警戒すべき存在へと変わった)
二倍の"個性"を持つ彼ならば、脳無もハイエンドも、いとも簡単に増やせてしまうだろう。
あなたが気の良い奴なのは、わかっていた。
何度も二人で行った解放軍の説明会。
『ヒーローなのに、解放軍のことよくわかってるよなぁ、何で?』
『共感できるからです』
嘘か本音か。
『かつて憧れ夢見た世界は、雁字搦めの鳥カゴでした。自由に飛びたい。俺の居場所は、あそこじゃない』
本心を悟られないように、ホークスはヘラリと笑ってみせる。
『・・・ああ、もう!早く死柄木に会わせて監視解いてやりてーよ!!』
『(あなたが、気の良い奴だって事は――)何で未だに会わせもしてくれないんですかね~~』
『京都の山で強化中だからだよ、4ヶ月かけて』
ホークスの事を疑いもなく信用してくれるトゥワイスは、ペラペラと連合の仲間の話を気前よくしてくれる。
『オフレコネタな黒髪ロングが盗聴してるだろーけど、まー大丈夫だ。おまえ、俺たちの為に身を粉にして動いてるもんな。
俺もわかるんだよ、仲間の役に立とうって人間に、悪ィ奴はいねえ。一緒に好きに飛ぼうな!』
ここまで良くしてくれると、気持ちが勘違いしてしまいそうになる。
俺は、どちらの味方であるべきなんだろうと。