第二十一話 空,高く群青
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「鍋パって、なんだ?」
ワイワイ鍋の話で盛り上る中、こっそり轟が歌恋に聞いてきた。
鍋パの単語を知らない彼に少し驚いたけど、そうか・・・祭りなど楽しい行事はいままでエンデヴァーに止められていたのだろう。
歌恋は笑顔で、轟に教えてあげた。
「鍋パは、鍋パーティーの略称だよ」
「パーティー、誕生日か?」
「うーん、なんて言えばいいかな・・・今回は誕生日じゃないけど、記念日とか特別な日を各々が勝手に決めちゃう日。
だから今日は、切島くんたちが勝手に作った記念日」
「じゃあ、俺たちで例えるならキーホルダー買った日とか特別な日だな」
普段強くて、一人で行ってしまいそうな彼だけど、たまにこうしたほっこりする性格に笑みが出てしまう。
「そうだね。他の人は一番最初に出会った日とか、そういう特別な日が好きな人はいっぱい作ってるかもね」
「・・・俺たちも、いっぱいあった方がよかった・・・?」
歌恋は首をかしげて、それから横に振る。
「いっぱいなくても、毎日が特別な日だし、何よりお祝い事は誕生日だけでいいよ。その日をたくさんお祝いしたい。
あとは、クリスマスを一緒にいれれば嬉しいな」
自分たちが生まれた大切な日。それを一番大事にしたいから。
「そうか」
「うん!」
「・・・歌恋の誕生日、過ぎたよな・・・悪い」
「今年は忙しかったからしょうがないよ。焦凍の時にたくさんお祝いしよ!」
「ああ」
クラスの皆で、鍋の材料の買い出しに出る。あれがいい、これがいいと、クラスの皆とお肉や野菜をたくさん選んで。
その時間帯に、緑谷と爆豪はオールマイトに呼ばれたということで二人はいなかったけれど。
「私、野菜切るよ」
「俺も手伝う」
「じゃあ焦凍はこれとこれ、洗ってくれる?洗剤は使わないでね!?」
「お?」
と、歌恋と轟で作業して。
「鍋の味、豆乳こっちで味なしバージョンこの辺りでいいかな」
「テーブルとソファーもっともってくるよ」
「あ、私浮かすよ!」
「こういう時って、"個性"便利だよなー」
「学校だから心置きなく使えるし」
ほどなくして、緑谷と爆豪が戻ってきた。そんな二人に、瀬呂と上鳴が声をかける。
「何してたんだ、遅エ~よ謹慎ボーイズ」
「早く手伝わねーと、肉食うの禁止だからな!」
「すぐやるね!」
「肉を禁じたらダメに決まってんだろが、イカれてんのか!!」
「ええ・・・やべェ人じゃん」
「嫌なら手伝えよー」
さすが切島、すんなり受け流している。
「・・・ちっ」
軽く舌打ちし髪の毛をかきむしりながら、轟と話している歌恋が目に入った。
「もう運んでいいんだろ」
何食わぬ顔で二人の邪魔をし、大皿に綺麗に並べられている野菜を持ち上げる。
「お」
「あ、爆豪くん。ありがとう」
「・・・・・・・・・」
両手に大皿を抱えながら、チラリと後ろを振り返る。
「ね、鍋の最後に何いれる?うどん?ラーメン?ご飯?」
「どれもよさそうだな。味の種類もあるから、それぞれにいれるのもいいよな」
「面白そう!でもご飯は、肉食べながら食べたいかも」
「ほんと、よく食べるよな歌恋は」
「へへ~。みんなー!途中なんかいれるー?」
「おう!もう火つけていいよな!」
「オレンジジュースの人ー、ウーロン茶の人ー」
「歌恋、こっち!」
お互いに手を振り、耳郎の隣に座らせてもらう。歌恋のもう片方は、もちろん轟だ。
耳郎の反対の席は八百万がいて、轟と同じソファーには峰田と口田がいた。
「では!「インターン意見交換会」兼「始業一発気合入魂鍋パだぜ!!会」を始めよう――!!!」
委員長、飯田の挨拶で幕を開ける。
「「カンパーイ!」」
「きゃー!」
「ウェーイ!」
「良い香りですね」
「腹へったな」
「食べよ、食べよ~」
「轟、ゴマの肉とって」
「くー!寒い日は鍋に限るよなァー!!」
「暖かくなったら、もうウチら二年生だね」
耳郎のその言葉に、歌恋は愕然する。
「あー、やだな・・・」
「あっという間よ、歌恋ちゃん」
「怒涛だった」
蛙吹にしみじみ言われ、麗日は肉を頬張りながら言う。
「後輩できちゃうねぇ」
「ヒーロー科部活ムリだから、あんまり絡み無いんじゃね」
「有望な奴来ちゃうなァ、や~だ~」
「君たち!まだ約三ヶ月残ってるぞ!!期末が控えてる事も忘れずに!」
「やめろ飯田、鍋が不味くなる!」
形相を変える峰田に、轟が静かに言った。
「味は変わんねェぞ」
「おっ・・・おまえ、それもう天然とかじゃなくね・・・!?」
「皮肉でしょ「期末慌ててんの?」って」
「高度!!」
(響香ちゃん・・・たぶん、焦凍はそこまで考えてないよ)
ハハハと、クラスの皆が笑いの渦を生む。
「緑谷、ポン酢を取ってもらえるか」
「僕は・・・恵まれ過ぎてる」
緑谷の隣に視線は、どこか遠くを見つめていて。声が聞こえなかったのだろう、もう一度常闇が聞く。
「緑谷・・・ポン酢を・・・」
「ああ、ごめん!はい!!」
「かたじけない」
A組が、皆で鍋をつついてる頃、オールマイトは一人外のベンチに腰をかけていた。
「いたいた」
そこに、オールマイトを探していた相澤先生が姿を現す。
「寒いでしょ、何してるんですか」
「いやァ、ちょっとね。エリ少女は?」
「ぐっすり眠ってます。今週中にでも訓練を始めさせます」
「手伝うよ」
「助かります」
冷える手を温めるように、息をふきかける。黙り考えこんでしまったオールマイトに、疑問を抱く。
「どうしました?」
「生きると決めたんだ」
「は?」
「でもね・・・何て言うんだろ・・・こう、無力感がね、沸々と沸いてくるんだ。
生徒が成長する度に、何もしてあげられない歯痒さに苛まれる」
「・・・ワーカーホリックが治ってないんです」
「ワ」
「何十年もこの国を支えてきた。その落差からくる中毒症状です」
「手厳しいな・・・」
「してあげられてますよ。生きてここにいる。それだけで背中を押される人間が、たくさんいます。
あなたは堂々とふんぞり返ってて下さい、変わらずに」
「すまない・・・!!」
3月下旬。この日、街からヒーローが消えた。
「そろそろ春休みが終わっちゃうな」
「今度のインターン遠征だって」
「あら本当ね」
「梅雨ちゃんたちも?マジで?俺らも俺らも!」
「僕たちもその日遠征だよ!?」
「え~!?何だろうね!?」
「待って、ウチも」
「俺もだ」
==========
「あの麓にヒーローたちがいる!我々は後方で、住民の避難誘導だ!」
ワイワイ鍋の話で盛り上る中、こっそり轟が歌恋に聞いてきた。
鍋パの単語を知らない彼に少し驚いたけど、そうか・・・祭りなど楽しい行事はいままでエンデヴァーに止められていたのだろう。
歌恋は笑顔で、轟に教えてあげた。
「鍋パは、鍋パーティーの略称だよ」
「パーティー、誕生日か?」
「うーん、なんて言えばいいかな・・・今回は誕生日じゃないけど、記念日とか特別な日を各々が勝手に決めちゃう日。
だから今日は、切島くんたちが勝手に作った記念日」
「じゃあ、俺たちで例えるならキーホルダー買った日とか特別な日だな」
普段強くて、一人で行ってしまいそうな彼だけど、たまにこうしたほっこりする性格に笑みが出てしまう。
「そうだね。他の人は一番最初に出会った日とか、そういう特別な日が好きな人はいっぱい作ってるかもね」
「・・・俺たちも、いっぱいあった方がよかった・・・?」
歌恋は首をかしげて、それから横に振る。
「いっぱいなくても、毎日が特別な日だし、何よりお祝い事は誕生日だけでいいよ。その日をたくさんお祝いしたい。
あとは、クリスマスを一緒にいれれば嬉しいな」
自分たちが生まれた大切な日。それを一番大事にしたいから。
「そうか」
「うん!」
「・・・歌恋の誕生日、過ぎたよな・・・悪い」
「今年は忙しかったからしょうがないよ。焦凍の時にたくさんお祝いしよ!」
「ああ」
クラスの皆で、鍋の材料の買い出しに出る。あれがいい、これがいいと、クラスの皆とお肉や野菜をたくさん選んで。
その時間帯に、緑谷と爆豪はオールマイトに呼ばれたということで二人はいなかったけれど。
「私、野菜切るよ」
「俺も手伝う」
「じゃあ焦凍はこれとこれ、洗ってくれる?洗剤は使わないでね!?」
「お?」
と、歌恋と轟で作業して。
「鍋の味、豆乳こっちで味なしバージョンこの辺りでいいかな」
「テーブルとソファーもっともってくるよ」
「あ、私浮かすよ!」
「こういう時って、"個性"便利だよなー」
「学校だから心置きなく使えるし」
ほどなくして、緑谷と爆豪が戻ってきた。そんな二人に、瀬呂と上鳴が声をかける。
「何してたんだ、遅エ~よ謹慎ボーイズ」
「早く手伝わねーと、肉食うの禁止だからな!」
「すぐやるね!」
「肉を禁じたらダメに決まってんだろが、イカれてんのか!!」
「ええ・・・やべェ人じゃん」
「嫌なら手伝えよー」
さすが切島、すんなり受け流している。
「・・・ちっ」
軽く舌打ちし髪の毛をかきむしりながら、轟と話している歌恋が目に入った。
「もう運んでいいんだろ」
何食わぬ顔で二人の邪魔をし、大皿に綺麗に並べられている野菜を持ち上げる。
「お」
「あ、爆豪くん。ありがとう」
「・・・・・・・・・」
両手に大皿を抱えながら、チラリと後ろを振り返る。
「ね、鍋の最後に何いれる?うどん?ラーメン?ご飯?」
「どれもよさそうだな。味の種類もあるから、それぞれにいれるのもいいよな」
「面白そう!でもご飯は、肉食べながら食べたいかも」
「ほんと、よく食べるよな歌恋は」
「へへ~。みんなー!途中なんかいれるー?」
「おう!もう火つけていいよな!」
「オレンジジュースの人ー、ウーロン茶の人ー」
「歌恋、こっち!」
お互いに手を振り、耳郎の隣に座らせてもらう。歌恋のもう片方は、もちろん轟だ。
耳郎の反対の席は八百万がいて、轟と同じソファーには峰田と口田がいた。
「では!「インターン意見交換会」兼「始業一発気合入魂鍋パだぜ!!会」を始めよう――!!!」
委員長、飯田の挨拶で幕を開ける。
「「カンパーイ!」」
「きゃー!」
「ウェーイ!」
「良い香りですね」
「腹へったな」
「食べよ、食べよ~」
「轟、ゴマの肉とって」
「くー!寒い日は鍋に限るよなァー!!」
「暖かくなったら、もうウチら二年生だね」
耳郎のその言葉に、歌恋は愕然する。
「あー、やだな・・・」
「あっという間よ、歌恋ちゃん」
「怒涛だった」
蛙吹にしみじみ言われ、麗日は肉を頬張りながら言う。
「後輩できちゃうねぇ」
「ヒーロー科部活ムリだから、あんまり絡み無いんじゃね」
「有望な奴来ちゃうなァ、や~だ~」
「君たち!まだ約三ヶ月残ってるぞ!!期末が控えてる事も忘れずに!」
「やめろ飯田、鍋が不味くなる!」
形相を変える峰田に、轟が静かに言った。
「味は変わんねェぞ」
「おっ・・・おまえ、それもう天然とかじゃなくね・・・!?」
「皮肉でしょ「期末慌ててんの?」って」
「高度!!」
(響香ちゃん・・・たぶん、焦凍はそこまで考えてないよ)
ハハハと、クラスの皆が笑いの渦を生む。
「緑谷、ポン酢を取ってもらえるか」
「僕は・・・恵まれ過ぎてる」
緑谷の隣に視線は、どこか遠くを見つめていて。声が聞こえなかったのだろう、もう一度常闇が聞く。
「緑谷・・・ポン酢を・・・」
「ああ、ごめん!はい!!」
「かたじけない」
A組が、皆で鍋をつついてる頃、オールマイトは一人外のベンチに腰をかけていた。
「いたいた」
そこに、オールマイトを探していた相澤先生が姿を現す。
「寒いでしょ、何してるんですか」
「いやァ、ちょっとね。エリ少女は?」
「ぐっすり眠ってます。今週中にでも訓練を始めさせます」
「手伝うよ」
「助かります」
冷える手を温めるように、息をふきかける。黙り考えこんでしまったオールマイトに、疑問を抱く。
「どうしました?」
「生きると決めたんだ」
「は?」
「でもね・・・何て言うんだろ・・・こう、無力感がね、沸々と沸いてくるんだ。
生徒が成長する度に、何もしてあげられない歯痒さに苛まれる」
「・・・ワーカーホリックが治ってないんです」
「ワ」
「何十年もこの国を支えてきた。その落差からくる中毒症状です」
「手厳しいな・・・」
「してあげられてますよ。生きてここにいる。それだけで背中を押される人間が、たくさんいます。
あなたは堂々とふんぞり返ってて下さい、変わらずに」
「すまない・・・!!」
3月下旬。この日、街からヒーローが消えた。
「そろそろ春休みが終わっちゃうな」
「今度のインターン遠征だって」
「あら本当ね」
「梅雨ちゃんたちも?マジで?俺らも俺らも!」
「僕たちもその日遠征だよ!?」
「え~!?何だろうね!?」
「待って、ウチも」
「俺もだ」
==========
「あの麓にヒーローたちがいる!我々は後方で、住民の避難誘導だ!」