第二十一話 空,高く群青
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冬休みが開けた。
「「・・・・・・」」
久しぶりの再開に、出逢った瞬間声をかけるまもなく、轟に抱きしめられた。
「・・・・・・しょう、と・・・?」
インターン中、冬休み中彼に何かあったんじゃないかと不安になる。
インターン中は、中々電話もLINEも出来なかった。インターンといえど仕事だ。プロヒーローへの第一歩だ。
新学期が始まる今日、学校に行く前に二人で会いたいと轟からLINEが入っていた。
嬉しくて、予定していた時間よりも早く来てしまったけれど、それより彼は先にいた。
だんだん、心地よさからほんのり息苦しさを覚えた歌恋は、轟の腕の中で身をよじる。
「どうしたの?」
ちょこっと顔を上げれば、肩に顔を寄せていた轟の顔も上がり、ようやく顔を合わせられた。
「色々ありすぎた。歌恋が隣にいなくても、冬休みもインターンもあっという間に終わっちまった」
「・・・うん・・・」
それは歌恋も実感していた。会えない時間、時々、忘れそうになってしまう温もり。
ヴィランと戦いになれば、自分が死なないように必死になる。それはヴィランだってそうだ。
自分が生きる為に、皆それぞれ最善な場所を選ぶ為に。
「・・・緑谷と爆豪が、家に来た」
「え!?」
「姉さんが友だちに会いたいって、紹介した」
「へー・・・」
あの二人が。緑谷はなんとなく分かるけど、まさか爆豪まで大人しくついていったとは驚きだ。
「それで・・・夏兄が襲われて」
「?」
ポツリポツリ語られるインターン中にあった出来事を話を聞いていると、大変だったんだなと。
「色々あった」
「ははっ」
歌恋は思わず、笑っていた。連れて微笑む轟に。
やっと笑った顔を見れた。
「焦凍も、色々って・・・インターン充実だったんだ」
いい加減、学校に遅れても面倒な委員長がいるので歩き出す。もちろん、手を繋いで。指を絡めて。
「どこから話せばいいのかわかんねぇ」
「よかった、焦凍に何かあったんじゃないかって、心配しちゃったよ」
「悪ぃ。あぁ、これは言った方がいいよな」
「なに?」
「・・・引っ越しするかもしれない。親父抜きで」
「・・・・・・え・・・・?」
余所様が口を挟むのは失礼かもしれない。ちゃんと、彼らの中で決めた事だろう。
歌恋は、繋いでいる手をギュッと握りしめる。余計な言葉は、いまはいらない。
「そっか・・・」
例え引っ越しても、ヒーロー科に轟がいなくなるわけじゃない。少し離れた体を、再びくっつけた。
「・・・焦凍はいてくれるよね、ここに」
「ああ」
出会って早々抱いたのに、照れくさくて。見つめる時間があると、逆に無性にドキドキしてしまう。
時間は?まだ、大丈夫?おねだりしてもいい?私はここにいる、君もここにいる。
ギュッと、きつく目をつむって待ってみた。
「っ・・・!」
彼女の頭に手を優しく触れて、自分に引き寄せた。優しい、甘い香りに包まれて。
「私、強くなったよ」
皆に心配かけさせたくなくて、誰より好きな人に頼ってもらえるように。
==========
怒涛の一年次も、気付けばもう残り3ヶ月。
「明けましておめでとう諸君!」
相澤先生が来る前に、委員長である飯田が教壇に立ち挨拶した。
「今日の授業は、実践報告会だ。冬休みの間に得た成果・課題等を共有する。
さぁ皆、スーツを纏いグラウンドaへ!」
そこへ、ドアが勢いよく開いて相澤先生登場。
「いつまで喋って―・・・」
教室を一番に飛び出すのは芦戸。
「先生ー、あけおめー!!」
「本日の概要、伝達済みです」
「飯田が空回りしてねー」
彼の成長に軽く突っ込むのは上鳴。
「インターン先のヒーロー、マニュアルさんが保須でチームを組んでリーダーをしていてね、
一週ではあるが学んだのさ・・・物腰の柔らかさをね!」
「あー空回った」
「すぐチェーン外れる、自転車みてェ」
ほんの少しではあるだろう。でも、相澤先生は成長し続けるこのクラスをどう思っているのか。
男女それぞれ更衣室で着替えを始める。すると、麗日のコスチュームの変化に皆視線を集めていた。
「お茶子ちゃんコスチューム変えたねぇ!似合ってるねぇ!」
葉隠に褒められ、照れる彼女も可愛い。
「ホント?よかったぁあ」
「コレ重!!」
ケースの中から気になったのか、耳郎が麗日が腕にはめるコスチュームを取り出していた。
「ワイヤー入っとる。私の"個性"なら重さハンデにならんから。ケースは重いけど」
「こっちは何が・・・」
「あー!!」
芦戸が持ち上げた方から、何かがポロリと落ちる。そこに転がっているのは、オールマイトの人形。
「これって・・・」
確か皆でクリスマス会やった時、緑谷のプレゼントが麗日に渡った中身がそれだったような。
「やはり!」
歌恋の時同様、芦戸の目がやけにキラキラしている。
「違うの芦戸ちゃん!!」
だがそんな想いを、麗日は否定する。
「本当に・・・違うんだ。これは、しまっとくの」
「・・・・・・・・」
麗日の気持ちを考えると、恋愛に浮かれる自分が恥ずかしくなる。そんな風に考えていると、芦戸が声をかけてきた。
「歌恋もさ!そのスマホについてるキーホルダー、轟とオソロだよね」
「え、あ・・・うん。一緒に買った」
今さら隠してもしょうがないので、素直に答える。
「あーあ、いいなぁ!」
「三奈ちゃんは、切島くん」
「えー、アイツは中学が一緒なだけだよ~」
ふと感じた、麗日の視線。だが、目を向けてみれば彼女はすぐそらしてしまった。
「お茶子ちゃん・・・」
それぞれが着替え終え、麗日に声をかける。
「歌恋ちゃん?」
言っていいのかわからない。でも、聞かずにはいられなかった。あの時に聞けなかったこと。
「・・・緑谷くんに、伝えないの?」
自分の気持ち。歌恋も、ヒーローを目指す彼の邪魔したくなくて、彼女のように気持ちをしまうと伝えた。
でも彼は、轟は自分を必要としてくれた。傍にいて、安心出来る帰る場所があるよと。お互いに。
麗日は少し首を傾げ考える素振りを見せる。そして笑って答えた。
「うん。いまはデクくんの邪魔したくない。轟くんみたいに、器用じゃないとおもうし、
私にばかり気にかけてもらうようになったら、それこそヒーロー目指せなくなる。
いま、目の前の事に必死で、目を輝かせてるデクくんが、私は好きだ」
「・・・私たち、やっぱり迷惑かな」
麗日が、やけに大人びてて。いつも傍にいてほしいって甘える自分たち。爆豪に指摘されてもしょうがない。
「そんなこと、あらへんよ。歌恋ちゃんが"個性"について悩んでた事。
轟くんも言わんけど、火傷の事も何かあるんだろうし。その事情は、歌恋ちゃんが知ってればいいんだとおもう。
二人はお互いに必要やから、歌恋ちゃんの居場所を見付けたいって気持ちと、
轟くんとの何かと上手く重なったんよ、きっと。私とデクくんと比べるのは違うよね。
あの時聞いた事、忘れて?気にしないで。だからってデクくんにこっそり言うのはダメだよ」
「お茶子ちゃん・・・」
麗日の暖かい言葉に、涙が出そうになる。
「ありがとう」
一方、男子更衣室。
「暴走をものにした!?マジかはえー!」
感心する切島に、緑谷が付け加える。
「て言っても、まだ一瞬しか出せなくて。用途は限られるんだけど、強い」
ザクッと、緑谷の頭に爆豪の頭に付けるコスチュームのトンガリが刺さる。
「不快」
「バクゴー!何してんだ!」
「緑谷ァアー!!」
「大変だ、脳漿がチョロチョロ出てるぞ」
「「・・・・・・」」
久しぶりの再開に、出逢った瞬間声をかけるまもなく、轟に抱きしめられた。
「・・・・・・しょう、と・・・?」
インターン中、冬休み中彼に何かあったんじゃないかと不安になる。
インターン中は、中々電話もLINEも出来なかった。インターンといえど仕事だ。プロヒーローへの第一歩だ。
新学期が始まる今日、学校に行く前に二人で会いたいと轟からLINEが入っていた。
嬉しくて、予定していた時間よりも早く来てしまったけれど、それより彼は先にいた。
だんだん、心地よさからほんのり息苦しさを覚えた歌恋は、轟の腕の中で身をよじる。
「どうしたの?」
ちょこっと顔を上げれば、肩に顔を寄せていた轟の顔も上がり、ようやく顔を合わせられた。
「色々ありすぎた。歌恋が隣にいなくても、冬休みもインターンもあっという間に終わっちまった」
「・・・うん・・・」
それは歌恋も実感していた。会えない時間、時々、忘れそうになってしまう温もり。
ヴィランと戦いになれば、自分が死なないように必死になる。それはヴィランだってそうだ。
自分が生きる為に、皆それぞれ最善な場所を選ぶ為に。
「・・・緑谷と爆豪が、家に来た」
「え!?」
「姉さんが友だちに会いたいって、紹介した」
「へー・・・」
あの二人が。緑谷はなんとなく分かるけど、まさか爆豪まで大人しくついていったとは驚きだ。
「それで・・・夏兄が襲われて」
「?」
ポツリポツリ語られるインターン中にあった出来事を話を聞いていると、大変だったんだなと。
「色々あった」
「ははっ」
歌恋は思わず、笑っていた。連れて微笑む轟に。
やっと笑った顔を見れた。
「焦凍も、色々って・・・インターン充実だったんだ」
いい加減、学校に遅れても面倒な委員長がいるので歩き出す。もちろん、手を繋いで。指を絡めて。
「どこから話せばいいのかわかんねぇ」
「よかった、焦凍に何かあったんじゃないかって、心配しちゃったよ」
「悪ぃ。あぁ、これは言った方がいいよな」
「なに?」
「・・・引っ越しするかもしれない。親父抜きで」
「・・・・・・え・・・・?」
余所様が口を挟むのは失礼かもしれない。ちゃんと、彼らの中で決めた事だろう。
歌恋は、繋いでいる手をギュッと握りしめる。余計な言葉は、いまはいらない。
「そっか・・・」
例え引っ越しても、ヒーロー科に轟がいなくなるわけじゃない。少し離れた体を、再びくっつけた。
「・・・焦凍はいてくれるよね、ここに」
「ああ」
出会って早々抱いたのに、照れくさくて。見つめる時間があると、逆に無性にドキドキしてしまう。
時間は?まだ、大丈夫?おねだりしてもいい?私はここにいる、君もここにいる。
ギュッと、きつく目をつむって待ってみた。
「っ・・・!」
彼女の頭に手を優しく触れて、自分に引き寄せた。優しい、甘い香りに包まれて。
「私、強くなったよ」
皆に心配かけさせたくなくて、誰より好きな人に頼ってもらえるように。
==========
怒涛の一年次も、気付けばもう残り3ヶ月。
「明けましておめでとう諸君!」
相澤先生が来る前に、委員長である飯田が教壇に立ち挨拶した。
「今日の授業は、実践報告会だ。冬休みの間に得た成果・課題等を共有する。
さぁ皆、スーツを纏いグラウンドaへ!」
そこへ、ドアが勢いよく開いて相澤先生登場。
「いつまで喋って―・・・」
教室を一番に飛び出すのは芦戸。
「先生ー、あけおめー!!」
「本日の概要、伝達済みです」
「飯田が空回りしてねー」
彼の成長に軽く突っ込むのは上鳴。
「インターン先のヒーロー、マニュアルさんが保須でチームを組んでリーダーをしていてね、
一週ではあるが学んだのさ・・・物腰の柔らかさをね!」
「あー空回った」
「すぐチェーン外れる、自転車みてェ」
ほんの少しではあるだろう。でも、相澤先生は成長し続けるこのクラスをどう思っているのか。
男女それぞれ更衣室で着替えを始める。すると、麗日のコスチュームの変化に皆視線を集めていた。
「お茶子ちゃんコスチューム変えたねぇ!似合ってるねぇ!」
葉隠に褒められ、照れる彼女も可愛い。
「ホント?よかったぁあ」
「コレ重!!」
ケースの中から気になったのか、耳郎が麗日が腕にはめるコスチュームを取り出していた。
「ワイヤー入っとる。私の"個性"なら重さハンデにならんから。ケースは重いけど」
「こっちは何が・・・」
「あー!!」
芦戸が持ち上げた方から、何かがポロリと落ちる。そこに転がっているのは、オールマイトの人形。
「これって・・・」
確か皆でクリスマス会やった時、緑谷のプレゼントが麗日に渡った中身がそれだったような。
「やはり!」
歌恋の時同様、芦戸の目がやけにキラキラしている。
「違うの芦戸ちゃん!!」
だがそんな想いを、麗日は否定する。
「本当に・・・違うんだ。これは、しまっとくの」
「・・・・・・・・」
麗日の気持ちを考えると、恋愛に浮かれる自分が恥ずかしくなる。そんな風に考えていると、芦戸が声をかけてきた。
「歌恋もさ!そのスマホについてるキーホルダー、轟とオソロだよね」
「え、あ・・・うん。一緒に買った」
今さら隠してもしょうがないので、素直に答える。
「あーあ、いいなぁ!」
「三奈ちゃんは、切島くん」
「えー、アイツは中学が一緒なだけだよ~」
ふと感じた、麗日の視線。だが、目を向けてみれば彼女はすぐそらしてしまった。
「お茶子ちゃん・・・」
それぞれが着替え終え、麗日に声をかける。
「歌恋ちゃん?」
言っていいのかわからない。でも、聞かずにはいられなかった。あの時に聞けなかったこと。
「・・・緑谷くんに、伝えないの?」
自分の気持ち。歌恋も、ヒーローを目指す彼の邪魔したくなくて、彼女のように気持ちをしまうと伝えた。
でも彼は、轟は自分を必要としてくれた。傍にいて、安心出来る帰る場所があるよと。お互いに。
麗日は少し首を傾げ考える素振りを見せる。そして笑って答えた。
「うん。いまはデクくんの邪魔したくない。轟くんみたいに、器用じゃないとおもうし、
私にばかり気にかけてもらうようになったら、それこそヒーロー目指せなくなる。
いま、目の前の事に必死で、目を輝かせてるデクくんが、私は好きだ」
「・・・私たち、やっぱり迷惑かな」
麗日が、やけに大人びてて。いつも傍にいてほしいって甘える自分たち。爆豪に指摘されてもしょうがない。
「そんなこと、あらへんよ。歌恋ちゃんが"個性"について悩んでた事。
轟くんも言わんけど、火傷の事も何かあるんだろうし。その事情は、歌恋ちゃんが知ってればいいんだとおもう。
二人はお互いに必要やから、歌恋ちゃんの居場所を見付けたいって気持ちと、
轟くんとの何かと上手く重なったんよ、きっと。私とデクくんと比べるのは違うよね。
あの時聞いた事、忘れて?気にしないで。だからってデクくんにこっそり言うのはダメだよ」
「お茶子ちゃん・・・」
麗日の暖かい言葉に、涙が出そうになる。
「ありがとう」
一方、男子更衣室。
「暴走をものにした!?マジかはえー!」
感心する切島に、緑谷が付け加える。
「て言っても、まだ一瞬しか出せなくて。用途は限られるんだけど、強い」
ザクッと、緑谷の頭に爆豪の頭に付けるコスチュームのトンガリが刺さる。
「不快」
「バクゴー!何してんだ!」
「緑谷ァアー!!」
「大変だ、脳漿がチョロチョロ出てるぞ」