第二十話 地獄の轟くん家
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三人に指示をしながら、いつものように迅速に事件を解決していくエンデヴァーだが、
冬美からの電話に内心動揺を隠せないでいた。何せ息子である焦凍には、親子面は見せるなと言われているのに。
ここまで彼らをヒーローとして見てきていたのにだ。家に来いだと。
(しかし・・・冬美よ・・・俺がおまえにどれ程救われているか)
時間は容赦なく過ぎ、約束の時間になっていく。
「いくぞ!!」
「おお!!」
「ああ」
「はい!!」
連れて来られたのは、轟家。
「何でだ!!」
「でかー」
怒鳴り散らす爆豪の隣で、轟家の豪邸を目の前にした緑谷は目を丸くしている。
轟がスマホを確認しながら、驚く二人に告げる。
「姉さんが、飯食べに来いって」
「何でだ!!」
「友だちを紹介してほしいって」
「今からでも言ってこい、やっぱ友だちじゃなかったってよ!!」
「かっちゃん・・・!」
そんな一触即発な二人・・・いや、爆豪をよそに、緑谷が轟にそっと耳打ちした。
「登坂さんも、来れればよかったのにね」
「アイツは、ホークス事務所だからな。それに、姉さんと母さんには一度会ってもらってるから」
「そうなんだ」
「家じゃねぇけど」
『好きな、大事な子がいます』
轟にそう話は聞かされた。肩越しにエンデヴァーは振り返り轟を盗み見ようとするが、目が合う。
(・・・俺に会わせる気はないようだな・・・)
それは致し方ない。息子のヒーローとして、《最高傑作》として邪魔をしようとする者なら排除しかねないだろう。
玄関が開き、慌てた様子で、エプロン姿の冬美が出迎えた。
「忙しい中お越し下さってありがとうございます!初めまして、焦凍がお世話になっております、姉の冬美です!」
満面な笑顔を見せられ、緑谷は背筋が伸びる。
「こ、この度はワザワザお招き頂きありがとうございます!僕は轟くんのクラスメイトで、緑谷出久といいます!」
「知ってる!雄英体育祭の焦凍との試合テレビで観たわ!」
「ああ、その件につきましては、弟さんに危害を加えてしまい大変申し訳なく」
玄関を一番に上がりながら、必死に謝罪する緑谷に、轟が静かに言った。
「試合だからいいだろ、緑谷」
「何でだ!!」
「突然ごめんねぇ。今日は私のわがまま聞いてもらっちゃって」
「嬉しいです!友だちの家に呼ばれるなんて、レアですから!」
「夏兄も来てるんだ。玄関に靴あった」
「家族で焦凍たちの話聞きたくて。あぁ、でも、歌恋ちゃんに会えないのは残念だったなー」
「また、今度は家に連れてくるよ。アイツも喜ぶと思うし」
自分の家族が、少しずつでも前を向いていけてるのなら。
「うん!」
「・・・・・・・・・・」
歌恋の名前に、笑顔で喜ぶ冬美。エンデヴァーは無表情だが、彼女はここの家族と上手くいけそうだろう。
長い廊下を歩きながら、らしくなく爆豪は物思いにふける。
あの強引に押し付けたキスは、もう忘れよう。自分の気持ちのまま彼女はもう、壊せない。
「チッ・・・」
軽く舌打ちする爆豪に、緑谷は首をかしげる。
「かっちゃん・・・?」
轟家で時たま名の上がる女の子。お互い同じ子を好きになって、お互い勝敗を思い知る。
同じくヴィランに捕まって、オールマイトを終わらせた者同士だと勝手に仲間だのと決めつけて。
自分の気持ちをぶつけては、もう歌恋を悲しませるだけだ。引き寄せることは、もう・・・出来ない。
それを、家族と、歌恋の話をしながら笑う轟を見て・・・。
それに何より、轟と歌恋、お揃いのキーホルダーが目にちらついた。
「焦凍」
名前が呼ばれた方に顔を向ければ、兄である夏雄が姿を見せる。
「夏兄」
「この間は会えなくてごめんな。俺も用事いれてたから」
「いや、いいいよ。夏兄には今度でも」
やっぱり兄弟。皆、仲が良いんだ。ただ、父親であるエンデヴァーを除いては・・・。
「改めて紹介するわね。私は焦凍の姉の冬美です。小学校で先生をしています。焦凍の兄の夏雄。大学生」
「どうも」
冬美の隣に座っている彼は、軽く頭を下げる。
「焦凍、お友達紹介してくれる?」
「ああ。ヒーロー科のクラスメイトで、緑谷と爆豪」
「初めまして!」
それぞれ自己紹介を済ませる中、エンデヴァーと夏雄の間には雰囲気最悪な空気が流れ込む。
「??」
その様子に、あわてふためいてしまいそうになる緑谷だが、冬美から話を反らされた。
「あ・・・と、とりあえず、冷めないうちに食べましょう!苦手な料理あったら無理しないで、食べなくていいからね!」
「は、い!いただきます!」
「いただきます」
一口、二口と食べ進めていく。
「美味しい!」
パッと目を輝かせる緑谷に、冬美はにっこり笑った。
「どれもめちゃくちゃ美味しいです!」
「よかった!」
「この竜田揚げ、味がしっかり染み込んでるのに衣はザクザクで、仕込みの丁寧さに」
「飯まで分析すんな!」
緑谷のブツブツを、一瞬で止める爆豪。その二人に、夏雄が説明する。
「そらそうだよ。お手伝いさんが腰やっちゃって引退してから、ずっと姉ちゃんがつくってたんだから」
「なる程」
「夏もつくってたじゃん、かわりばんこで」
想いもよらなかったのか、轟の驚いた顔が上がる。
「え!?じゃあ、俺も食べてた!?」
「あー、どうだろ。俺のは味濃かったから・・・エンデヴァーが、止めてたかもな」
睨む夏雄の目が、エンデヴァーを捉えている。再び針積める空気に、気まずい。
夏雄の隣に座る冬美が、暴れ出さないように彼の拳をグッと押さえ込む。
「焦凍は学校でどんなの食べてるの」
「学食で」
「気付きもしなかった・・・ムッ」
轟とエンデヴァーの言葉が重なる。
「ごちそうさま」
そう小さく呟く夏雄は、席を立ってしまう。
「席には着いたよ。もういいだろ」
「夏」
「「!!」」
「ごめん姉ちゃん、やっぱムリだ・・・」
緑谷の視線の先には、冬美の悲しそうな、寂しそうな表情が入ってしまう。
複雑な空気のまま、終わった食事に片付けを始める。
緑谷と爆豪、二人で洗い物をするエンデヴァーのもとに食器を置きにいったあと、ここの家の事情の話になる。
「ていうか、かっちゃんも知ってたんだ」
「は?俺のいるところでてめーらが話してたんだよ」
「聞いてたの!?」
「・・・アイツは、登坂も知ってんだよな」
「うん」
だから、体育祭の時必死だったんだ。あのままじゃ本当に轟が一人になってしまうから。
「だからか」
「かっちゃん」
「わーってるよ」
幼なじみだから。歌恋と爆豪の後を追って、爆豪を止めようとしたあの日。
爆豪の気持ちを知ってしまった緑谷。爆豪が彼女にしてしまった行為も。
「言うな、何も」
「・・・・・・・・・」
入る余地など、もうない。
「手伝わせちゃってわるいなァ」
「手伝わせないほうが二人にわるい」
「私だって、夏みたいな気持ちがないわけじゃないんだ・・・」
語り始める、初めて知る冬美の気持ち。
「でも・・・チャンスが訪れてるんだよ・・・。焦凍はお父さんの事、どう思ってるの?」
聞かれ、少し悩み考える。
「この火傷は、親父から受けたものだと思ってる。お母さんは堪えて堪えて・・・あふれてしまったんだ。
お母さんを蝕んだあいつを、そう簡単に許せない・・・。でもさ、お母さん自身が今、乗り越えようとしてるんだ」
送られた手紙には、前向きな姿を見せてくれる母の姿。
《焦凍へ
元気にしていますか?寒い日が続いているので、風邪をひいていないかと心配です。
お母さんは最近、外出の日を増やせるようになってきました。順調にいけば、退院できる日も近いとお医者さんに言われました。
また、焦凍、夏くん、冬美と一緒に暮らしたいです。もう絶対あんな事にならないように、お母さん頑張るね》
「正直・・・自分でもわからない。親父をどう思えばいいのか」
家族の本当のあり方。
「わからないから、歌恋に酷い事言った」
幸せそうな歌恋の家族が羨ましくて。
「アンタみたいな幸せな両親の元で産まれた奴に、俺の何が分かるって・・・」
「焦凍・・・」
「けど、俺に気付かせてくれたのも歌恋なんだ」
幸せの在りかたを探してくれた。
「でも、親父の事は・・・まだ、何も見えちゃいない」
母に会うきっかけはできても、長年恨み嫌ってきた父だけは。
冬美からの電話に内心動揺を隠せないでいた。何せ息子である焦凍には、親子面は見せるなと言われているのに。
ここまで彼らをヒーローとして見てきていたのにだ。家に来いだと。
(しかし・・・冬美よ・・・俺がおまえにどれ程救われているか)
時間は容赦なく過ぎ、約束の時間になっていく。
「いくぞ!!」
「おお!!」
「ああ」
「はい!!」
連れて来られたのは、轟家。
「何でだ!!」
「でかー」
怒鳴り散らす爆豪の隣で、轟家の豪邸を目の前にした緑谷は目を丸くしている。
轟がスマホを確認しながら、驚く二人に告げる。
「姉さんが、飯食べに来いって」
「何でだ!!」
「友だちを紹介してほしいって」
「今からでも言ってこい、やっぱ友だちじゃなかったってよ!!」
「かっちゃん・・・!」
そんな一触即発な二人・・・いや、爆豪をよそに、緑谷が轟にそっと耳打ちした。
「登坂さんも、来れればよかったのにね」
「アイツは、ホークス事務所だからな。それに、姉さんと母さんには一度会ってもらってるから」
「そうなんだ」
「家じゃねぇけど」
『好きな、大事な子がいます』
轟にそう話は聞かされた。肩越しにエンデヴァーは振り返り轟を盗み見ようとするが、目が合う。
(・・・俺に会わせる気はないようだな・・・)
それは致し方ない。息子のヒーローとして、《最高傑作》として邪魔をしようとする者なら排除しかねないだろう。
玄関が開き、慌てた様子で、エプロン姿の冬美が出迎えた。
「忙しい中お越し下さってありがとうございます!初めまして、焦凍がお世話になっております、姉の冬美です!」
満面な笑顔を見せられ、緑谷は背筋が伸びる。
「こ、この度はワザワザお招き頂きありがとうございます!僕は轟くんのクラスメイトで、緑谷出久といいます!」
「知ってる!雄英体育祭の焦凍との試合テレビで観たわ!」
「ああ、その件につきましては、弟さんに危害を加えてしまい大変申し訳なく」
玄関を一番に上がりながら、必死に謝罪する緑谷に、轟が静かに言った。
「試合だからいいだろ、緑谷」
「何でだ!!」
「突然ごめんねぇ。今日は私のわがまま聞いてもらっちゃって」
「嬉しいです!友だちの家に呼ばれるなんて、レアですから!」
「夏兄も来てるんだ。玄関に靴あった」
「家族で焦凍たちの話聞きたくて。あぁ、でも、歌恋ちゃんに会えないのは残念だったなー」
「また、今度は家に連れてくるよ。アイツも喜ぶと思うし」
自分の家族が、少しずつでも前を向いていけてるのなら。
「うん!」
「・・・・・・・・・・」
歌恋の名前に、笑顔で喜ぶ冬美。エンデヴァーは無表情だが、彼女はここの家族と上手くいけそうだろう。
長い廊下を歩きながら、らしくなく爆豪は物思いにふける。
あの強引に押し付けたキスは、もう忘れよう。自分の気持ちのまま彼女はもう、壊せない。
「チッ・・・」
軽く舌打ちする爆豪に、緑谷は首をかしげる。
「かっちゃん・・・?」
轟家で時たま名の上がる女の子。お互い同じ子を好きになって、お互い勝敗を思い知る。
同じくヴィランに捕まって、オールマイトを終わらせた者同士だと勝手に仲間だのと決めつけて。
自分の気持ちをぶつけては、もう歌恋を悲しませるだけだ。引き寄せることは、もう・・・出来ない。
それを、家族と、歌恋の話をしながら笑う轟を見て・・・。
それに何より、轟と歌恋、お揃いのキーホルダーが目にちらついた。
「焦凍」
名前が呼ばれた方に顔を向ければ、兄である夏雄が姿を見せる。
「夏兄」
「この間は会えなくてごめんな。俺も用事いれてたから」
「いや、いいいよ。夏兄には今度でも」
やっぱり兄弟。皆、仲が良いんだ。ただ、父親であるエンデヴァーを除いては・・・。
「改めて紹介するわね。私は焦凍の姉の冬美です。小学校で先生をしています。焦凍の兄の夏雄。大学生」
「どうも」
冬美の隣に座っている彼は、軽く頭を下げる。
「焦凍、お友達紹介してくれる?」
「ああ。ヒーロー科のクラスメイトで、緑谷と爆豪」
「初めまして!」
それぞれ自己紹介を済ませる中、エンデヴァーと夏雄の間には雰囲気最悪な空気が流れ込む。
「??」
その様子に、あわてふためいてしまいそうになる緑谷だが、冬美から話を反らされた。
「あ・・・と、とりあえず、冷めないうちに食べましょう!苦手な料理あったら無理しないで、食べなくていいからね!」
「は、い!いただきます!」
「いただきます」
一口、二口と食べ進めていく。
「美味しい!」
パッと目を輝かせる緑谷に、冬美はにっこり笑った。
「どれもめちゃくちゃ美味しいです!」
「よかった!」
「この竜田揚げ、味がしっかり染み込んでるのに衣はザクザクで、仕込みの丁寧さに」
「飯まで分析すんな!」
緑谷のブツブツを、一瞬で止める爆豪。その二人に、夏雄が説明する。
「そらそうだよ。お手伝いさんが腰やっちゃって引退してから、ずっと姉ちゃんがつくってたんだから」
「なる程」
「夏もつくってたじゃん、かわりばんこで」
想いもよらなかったのか、轟の驚いた顔が上がる。
「え!?じゃあ、俺も食べてた!?」
「あー、どうだろ。俺のは味濃かったから・・・エンデヴァーが、止めてたかもな」
睨む夏雄の目が、エンデヴァーを捉えている。再び針積める空気に、気まずい。
夏雄の隣に座る冬美が、暴れ出さないように彼の拳をグッと押さえ込む。
「焦凍は学校でどんなの食べてるの」
「学食で」
「気付きもしなかった・・・ムッ」
轟とエンデヴァーの言葉が重なる。
「ごちそうさま」
そう小さく呟く夏雄は、席を立ってしまう。
「席には着いたよ。もういいだろ」
「夏」
「「!!」」
「ごめん姉ちゃん、やっぱムリだ・・・」
緑谷の視線の先には、冬美の悲しそうな、寂しそうな表情が入ってしまう。
複雑な空気のまま、終わった食事に片付けを始める。
緑谷と爆豪、二人で洗い物をするエンデヴァーのもとに食器を置きにいったあと、ここの家の事情の話になる。
「ていうか、かっちゃんも知ってたんだ」
「は?俺のいるところでてめーらが話してたんだよ」
「聞いてたの!?」
「・・・アイツは、登坂も知ってんだよな」
「うん」
だから、体育祭の時必死だったんだ。あのままじゃ本当に轟が一人になってしまうから。
「だからか」
「かっちゃん」
「わーってるよ」
幼なじみだから。歌恋と爆豪の後を追って、爆豪を止めようとしたあの日。
爆豪の気持ちを知ってしまった緑谷。爆豪が彼女にしてしまった行為も。
「言うな、何も」
「・・・・・・・・・」
入る余地など、もうない。
「手伝わせちゃってわるいなァ」
「手伝わせないほうが二人にわるい」
「私だって、夏みたいな気持ちがないわけじゃないんだ・・・」
語り始める、初めて知る冬美の気持ち。
「でも・・・チャンスが訪れてるんだよ・・・。焦凍はお父さんの事、どう思ってるの?」
聞かれ、少し悩み考える。
「この火傷は、親父から受けたものだと思ってる。お母さんは堪えて堪えて・・・あふれてしまったんだ。
お母さんを蝕んだあいつを、そう簡単に許せない・・・。でもさ、お母さん自身が今、乗り越えようとしてるんだ」
送られた手紙には、前向きな姿を見せてくれる母の姿。
《焦凍へ
元気にしていますか?寒い日が続いているので、風邪をひいていないかと心配です。
お母さんは最近、外出の日を増やせるようになってきました。順調にいけば、退院できる日も近いとお医者さんに言われました。
また、焦凍、夏くん、冬美と一緒に暮らしたいです。もう絶対あんな事にならないように、お母さん頑張るね》
「正直・・・自分でもわからない。親父をどう思えばいいのか」
家族の本当のあり方。
「わからないから、歌恋に酷い事言った」
幸せそうな歌恋の家族が羨ましくて。
「アンタみたいな幸せな両親の元で産まれた奴に、俺の何が分かるって・・・」
「焦凍・・・」
「けど、俺に気付かせてくれたのも歌恋なんだ」
幸せの在りかたを探してくれた。
「でも、親父の事は・・・まだ、何も見えちゃいない」
母に会うきっかけはできても、長年恨み嫌ってきた父だけは。