第十九話 一歩前進
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「あ、焦凍!」
前の方で、ふんわりとした笑顔を浮かべ、轟と同じように銀髪の所々赤毛の入った女の人がいる。
「姉さん」
明るい声で呼ばれるのとは裏腹に、轟はいつものように落ち着いた声で答えた。
(この人が、お姉さん・・・)
さすが、轟がクラス一のイケメンであるように、お姉さんもとても美人だ。なんてハイスペックな家族なんだろう。
「初めまして!焦凍の姉の冬美です!焦凍を好きになってくれて、ありがとう」
事前に轟から話を聞いているからだろう、彼女を連れてくると。
だが、改めて真っ正面から、しかも家族の人から言われると照れてしまう。
「あ・・・いえ、こちらこそ・・・?」
なんて答えていいのか迷い、変な返事になってしまう。
「姉さん、紹介する前なのに」
「あら。でも、間違いじゃないでしょ?登坂歌恋ちゃん。あんなライン送っといて違うんじゃ失礼よ」
「まぁ、そうだけど・・・夏兄は?」
「夏は今日は来ないって。また会える時に紹介してあげて」
「そうか・・・」
「本当はお家で紹介できればよかったんだけど、病院でごめんなさい」
頭を下げる冬美に、歌恋は慌てて首を横に振るう。
「いえ、そんな!しょ・・・えと、轟くんから話は聞いてますから」
轟くん。そう呼ぶ歌恋を、不思議に思う。そんな二人を見て、冬美は小さく笑った。
「ふふ。いつものように呼んであげて。私は冬美でいいし、歌恋ちゃんて呼んでいいかしら?」
「あ、はい・・・!」
「初めて妹が出来たみたいで、嬉しい」
「あ、ありがとうございます」
「お母さんは元気?」
「うん。歌恋ちゃんの顔を見たら、もっと元気になっちゃうかもね」
冬美を先頭に、轟が姉の隣を歩き歌恋は一歩後ろに下がった状態になる。
寮制になり、ずっと家族に会えていない。毎日会えてる歌恋よりも会話が増えるのは自然なことだろう。
(・・・兄弟同士はホントは仲がいいのかな)
「お母さん、入るよ?」
「・・・冬美?」
ドア越しから、女の人の声がする。
「焦凍も来てくれたよ。あと、今日は可愛いお客さんも」
轟に背中を押され、部屋に入る。そこには、ベッドから身体を起こしている轟のお母さんがいた。
「わぁ・・・」
たまらず声を出してしまう。なんて儚げで綺麗な人。
「いらっしゃい。よく、来てくれたわね」
歌恋は慌てて頭を下げる。
「焦凍がお手紙でよく名前を書いてくれる、歌恋ちゃんでいいかしら」
「あ・・・はいっ」
やはり家族の人に会うのは緊張する。
「焦凍が女の子と付き合ってるって聞いて驚いたけど、迷惑かけてないかしら。色々、大変な思いをさせてきちゃったから・・・」
隣にいる轟を見れば、彼は何もいわず、申し訳なさそうに歌恋と目を合わせることなく頬をかいている。
「大丈夫です」
そんな彼を、ここに迎え入れてくれた家族の人に安心させたくて、歌恋は笑顔で答えた。
「焦凍、くんは優しい人です」
「っ・・・!」
「最初、私達も色々ありました。だけど私は、自分の"個性"の在り方に迷っていた時にも助けてくれたのが、焦凍くんです。
私もまだまだ一人前のヒーローには程遠いですけど、これからも焦凍くんと一緒に強くなれていけたらなと思ってます」
「ふふ」
そう小さく笑う轟のお母さんの笑顔は、とても上品で気品がある。
「そう、よかった。家の家族の事は・・・?」
「全部、話してある。親父のことも、燈矢兄さんのことも」
「焦凍くんが話してくれました。正直、私の家と正反対でビックリしましたけど、きっと乗り越えられます」
轟がヒーローになろうとしてることも、今も尚、父親・エンデヴァーに最高傑作で見られていようとも。
「二人で、少しずつ・・・この先どうなるかわからねぇけど、今は一緒にいたいんだ。
親父にはまだ話せねーけど、二人と夏兄には安心して欲しいから」
「・・・わかったわ。これからも焦凍のこと、よろしくね」
冬美が寮の近くまで送ってくれると言ってくれたが、丁重に断った。轟と二人で、他に行きたい場所があったから。
一先ず一段落し、心の余裕が出てきた歌恋は、電車で人混みをさけるようにドア付近で庇うように立ってくれる轟にしがみつく。
「・・・?歌恋?」
こんな人が密集してるところで・・・と思ったが、スマホを弄る人、寝てる人、談笑してる人。
何より、身長170ある轟に、常闇と対して身長の変わらない歌恋は、彼の胸板にすっぽりおさまっている。
「緊張した・・・私、余計なこと言ってないかな・・・」
「平気だ。姉さんと母さんは、そんな追及してこない。むしろ、喜んでたよ。家、どちらかといえば男ばっかだし」
「そっ、かな・・・お母さん、綺麗な人だね、お姉さんも。私とじゃ、天と地の差だ」
「・・・そうやって、自分をすぐ否定するなよ。俺が隣にいるんだ」
「っ・・・う、うん」
そう、二人の目的はあとクラスで行われるクリスマスパーティーの買い出しをすることである。
ショッピングモールに行くと、街の雰囲気もそうだがクリスマス一色だ。入り口付近にはデカイクリスマスツリーも飾られている。
「凄いな・・・」
轟が、感嘆の声を上げる。時期も時期なのか、恋人同士で買い物をしている人も多くいた。
「やっぱ家の小さいツリーとはわけが違うね!(私達も、カップルみたいにみられるのかな・・・)」
すると、轟は右手を差し出す。どうやら、轟が自らエスコートしてくれるらしい。
いつも寄り添うのは、大抵歌恋からってのが多い気もしていたが。キョトンとしてしまう。
「・・・はぐれないように。その、たまにはいいだろ」
彼も心なしか、照れているようにみえる。そっぽ向かれてしまった。
「う・・・うんっ」
恥ずかしいのはこちらも一緒。いつもと変わらないのに、今日は煩く茶化してくるクラスメイトがいない。
その分、羽を伸ばせるんだ。
束の間の平和を、楽しもう。
「ご飯系は、ヤオモモや飯田くんたちが決めてくれるし、飾り付けは三奈ちゃんとか透ちゃんが張り切ってるし」
「そうなると・・・皆が食べたそうな菓子類もいいかもな」
「そうだね・・・皆何買ってるか聞いてみるよ」
あとは、一番大事なプレゼントだ。
「ねぇ、焦凍・・・」
「ん?」
「えっと・・・皆とプレゼント交換はするでしょ?」
「あぁ、それも決めないとな」
「それで、さ・・・」
繋いでいる手を、歌恋はギュッと、少し強く握る。
「プレゼント交換の時、私のプレゼントが焦凍に届くのか分からない・・・だから、その・・・。
今、ここで受け取って欲しいの。私から、焦凍の為にプレゼントを選ばせて?
出来ればその・・・お揃いのネックレスとか、キーホルダーでもいいの。ダメ、かな・・・?
まだ、付き合ってるだけなのに、重たい奴って思われたくなくて、その・・・」
だから、サプライズには出来なかった。ほんの少しの勇気がなくて、こうやって確認してしまう。
「いいよ、選ぼう。何がいいんだ?」
「いいの??」
「歌恋に、俺を見て欲しいって言ったのは俺自身だ。俺が俺でいる為にって。否定する義理もねェ。
あんなに酷い事もしたし、言ったりもした。それを歌恋は、許してくれてる。
俺の隣にいて、安心させてくれてる。大事なものを、俺も貰ってるよ」
人々の視線なんて、関係ない。嬉しくて、歌恋はたまらず轟に抱きついた。
彼も離れることなく、腰を強く抱きしめる。
「大好き」
前の方で、ふんわりとした笑顔を浮かべ、轟と同じように銀髪の所々赤毛の入った女の人がいる。
「姉さん」
明るい声で呼ばれるのとは裏腹に、轟はいつものように落ち着いた声で答えた。
(この人が、お姉さん・・・)
さすが、轟がクラス一のイケメンであるように、お姉さんもとても美人だ。なんてハイスペックな家族なんだろう。
「初めまして!焦凍の姉の冬美です!焦凍を好きになってくれて、ありがとう」
事前に轟から話を聞いているからだろう、彼女を連れてくると。
だが、改めて真っ正面から、しかも家族の人から言われると照れてしまう。
「あ・・・いえ、こちらこそ・・・?」
なんて答えていいのか迷い、変な返事になってしまう。
「姉さん、紹介する前なのに」
「あら。でも、間違いじゃないでしょ?登坂歌恋ちゃん。あんなライン送っといて違うんじゃ失礼よ」
「まぁ、そうだけど・・・夏兄は?」
「夏は今日は来ないって。また会える時に紹介してあげて」
「そうか・・・」
「本当はお家で紹介できればよかったんだけど、病院でごめんなさい」
頭を下げる冬美に、歌恋は慌てて首を横に振るう。
「いえ、そんな!しょ・・・えと、轟くんから話は聞いてますから」
轟くん。そう呼ぶ歌恋を、不思議に思う。そんな二人を見て、冬美は小さく笑った。
「ふふ。いつものように呼んであげて。私は冬美でいいし、歌恋ちゃんて呼んでいいかしら?」
「あ、はい・・・!」
「初めて妹が出来たみたいで、嬉しい」
「あ、ありがとうございます」
「お母さんは元気?」
「うん。歌恋ちゃんの顔を見たら、もっと元気になっちゃうかもね」
冬美を先頭に、轟が姉の隣を歩き歌恋は一歩後ろに下がった状態になる。
寮制になり、ずっと家族に会えていない。毎日会えてる歌恋よりも会話が増えるのは自然なことだろう。
(・・・兄弟同士はホントは仲がいいのかな)
「お母さん、入るよ?」
「・・・冬美?」
ドア越しから、女の人の声がする。
「焦凍も来てくれたよ。あと、今日は可愛いお客さんも」
轟に背中を押され、部屋に入る。そこには、ベッドから身体を起こしている轟のお母さんがいた。
「わぁ・・・」
たまらず声を出してしまう。なんて儚げで綺麗な人。
「いらっしゃい。よく、来てくれたわね」
歌恋は慌てて頭を下げる。
「焦凍がお手紙でよく名前を書いてくれる、歌恋ちゃんでいいかしら」
「あ・・・はいっ」
やはり家族の人に会うのは緊張する。
「焦凍が女の子と付き合ってるって聞いて驚いたけど、迷惑かけてないかしら。色々、大変な思いをさせてきちゃったから・・・」
隣にいる轟を見れば、彼は何もいわず、申し訳なさそうに歌恋と目を合わせることなく頬をかいている。
「大丈夫です」
そんな彼を、ここに迎え入れてくれた家族の人に安心させたくて、歌恋は笑顔で答えた。
「焦凍、くんは優しい人です」
「っ・・・!」
「最初、私達も色々ありました。だけど私は、自分の"個性"の在り方に迷っていた時にも助けてくれたのが、焦凍くんです。
私もまだまだ一人前のヒーローには程遠いですけど、これからも焦凍くんと一緒に強くなれていけたらなと思ってます」
「ふふ」
そう小さく笑う轟のお母さんの笑顔は、とても上品で気品がある。
「そう、よかった。家の家族の事は・・・?」
「全部、話してある。親父のことも、燈矢兄さんのことも」
「焦凍くんが話してくれました。正直、私の家と正反対でビックリしましたけど、きっと乗り越えられます」
轟がヒーローになろうとしてることも、今も尚、父親・エンデヴァーに最高傑作で見られていようとも。
「二人で、少しずつ・・・この先どうなるかわからねぇけど、今は一緒にいたいんだ。
親父にはまだ話せねーけど、二人と夏兄には安心して欲しいから」
「・・・わかったわ。これからも焦凍のこと、よろしくね」
冬美が寮の近くまで送ってくれると言ってくれたが、丁重に断った。轟と二人で、他に行きたい場所があったから。
一先ず一段落し、心の余裕が出てきた歌恋は、電車で人混みをさけるようにドア付近で庇うように立ってくれる轟にしがみつく。
「・・・?歌恋?」
こんな人が密集してるところで・・・と思ったが、スマホを弄る人、寝てる人、談笑してる人。
何より、身長170ある轟に、常闇と対して身長の変わらない歌恋は、彼の胸板にすっぽりおさまっている。
「緊張した・・・私、余計なこと言ってないかな・・・」
「平気だ。姉さんと母さんは、そんな追及してこない。むしろ、喜んでたよ。家、どちらかといえば男ばっかだし」
「そっ、かな・・・お母さん、綺麗な人だね、お姉さんも。私とじゃ、天と地の差だ」
「・・・そうやって、自分をすぐ否定するなよ。俺が隣にいるんだ」
「っ・・・う、うん」
そう、二人の目的はあとクラスで行われるクリスマスパーティーの買い出しをすることである。
ショッピングモールに行くと、街の雰囲気もそうだがクリスマス一色だ。入り口付近にはデカイクリスマスツリーも飾られている。
「凄いな・・・」
轟が、感嘆の声を上げる。時期も時期なのか、恋人同士で買い物をしている人も多くいた。
「やっぱ家の小さいツリーとはわけが違うね!(私達も、カップルみたいにみられるのかな・・・)」
すると、轟は右手を差し出す。どうやら、轟が自らエスコートしてくれるらしい。
いつも寄り添うのは、大抵歌恋からってのが多い気もしていたが。キョトンとしてしまう。
「・・・はぐれないように。その、たまにはいいだろ」
彼も心なしか、照れているようにみえる。そっぽ向かれてしまった。
「う・・・うんっ」
恥ずかしいのはこちらも一緒。いつもと変わらないのに、今日は煩く茶化してくるクラスメイトがいない。
その分、羽を伸ばせるんだ。
束の間の平和を、楽しもう。
「ご飯系は、ヤオモモや飯田くんたちが決めてくれるし、飾り付けは三奈ちゃんとか透ちゃんが張り切ってるし」
「そうなると・・・皆が食べたそうな菓子類もいいかもな」
「そうだね・・・皆何買ってるか聞いてみるよ」
あとは、一番大事なプレゼントだ。
「ねぇ、焦凍・・・」
「ん?」
「えっと・・・皆とプレゼント交換はするでしょ?」
「あぁ、それも決めないとな」
「それで、さ・・・」
繋いでいる手を、歌恋はギュッと、少し強く握る。
「プレゼント交換の時、私のプレゼントが焦凍に届くのか分からない・・・だから、その・・・。
今、ここで受け取って欲しいの。私から、焦凍の為にプレゼントを選ばせて?
出来ればその・・・お揃いのネックレスとか、キーホルダーでもいいの。ダメ、かな・・・?
まだ、付き合ってるだけなのに、重たい奴って思われたくなくて、その・・・」
だから、サプライズには出来なかった。ほんの少しの勇気がなくて、こうやって確認してしまう。
「いいよ、選ぼう。何がいいんだ?」
「いいの??」
「歌恋に、俺を見て欲しいって言ったのは俺自身だ。俺が俺でいる為にって。否定する義理もねェ。
あんなに酷い事もしたし、言ったりもした。それを歌恋は、許してくれてる。
俺の隣にいて、安心させてくれてる。大事なものを、俺も貰ってるよ」
人々の視線なんて、関係ない。嬉しくて、歌恋はたまらず轟に抱きついた。
彼も離れることなく、腰を強く抱きしめる。
「大好き」