第十九話 一歩前進
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「技も披露するのか?インタビューでは?」
常闇の疑問に、Mt.レディがいう。
「あらら!ヤだわ雄英生、皆があなた達のこと知ってるワケじゃありません!必殺技は己の象徴!
何が出来るのかは、技で知ってもらうの。即時チームアップ、連携。ヴィラン犯罪への警鐘。
命を委ねてもらう為の信頼。ヒーロー名が技名を叫ぶのには、大きな意味がある」
「・・・ちょっと前までカメラ映りしか考えてなかったハズだぜ、あの女・・・」
彼女の変わりように、峰田は驚いている。
「Mt.レディだけじゃないよ。今、ヒーローたち皆、引っ張られてるんだ。No.1ヒーローに」
そして順番に、インタビューの練習が始まった。雄英を目指して入ってるだけあり、各々の意志や強さがちゃんとある。
じゃあ、歌恋はどうなのだろう。単純な動機、必死な思いでヒーローになりたいというおもいで、雄英に来たわけじゃない。
委員長、副委員長と順番に、歌恋の前の席にいる常闇は、新たな必殺技をみせつけている。
Mt.レディも、生徒によってそれぞれ質問を少し変えたりして・・・。
「じゃあ、次は・・・キルシュ、いいかしら?」
「あ、はい!」
ドキドキと、みんなの視線を感じながら壇上にあがる。
「神野事件でちょこっと有名になったわね。桜の"個性"自身ではどんな風に思ってますか?」
内心、やはりそこは聞かれるよな、と準備しておいてよかった。あの時マスコミは、相澤先生の主観しか触れていないから。
でも、もう付き合いの長くなったA組のだいたいは、その理由を知っている。ちょこっと緑谷の言葉を借りて。
「中学までは、この"個性"あまり好きじゃなかったです。でも、ある人が言ってくれました。
桜吹雪の技を見て、綺麗な"個性"だって。それがとても嬉しくて、相澤先生も言ってくれました。
私の桜の"個性"は、私がヒーローになる為に必要な"個性"です。大好きな"個性"です」
マイクを持つMt.レディが、微笑んでくれたような気がした。
「ヴィランの言葉に、押し負けてないようで良かったわ。貴女が強い心でヒーローとして目指せる理由はなにかしら?」
「強い、心・・・?」
思ってもないような言葉を送られ、首をかしげた。疑問を疑問で返してしまった。
「ヴィランからの誘いを断り、ヒーローを目指す理由」
「それ、は・・・」
歌恋は、A組の皆の顔を見る。そして、視線は轟で止まる。心なしか、彼が答えるように笑った気がした。
(あ・・・)
前に轟に感情をぶつけ、聞いたっけ。ヴィランとヒーローの違い。その時、轟は迷わず答えてくれて。
「私は、壊すものがないからです。守りたい大切なものが雄英にきてたくさん出来たらです。
私の守りたいものを、壊す奴らから守りたいからヒーローを目指してます。
例えそれが、ヴィラン側から見てこちらが壊しているんだとしても、今、私が守りたいのがここにあるから」
皆が、笑ってくれた気がした。ちゃんとした目標が歌恋に出来たのは、皆のお陰だ。
仲間、友達の大切さを教えてくれた一番の親友の耳郞。話すきっかけはなんであれ、真っ直ぐな切島。
インターンと学ぶ基礎と、共に訓練に励んでくれる常闇。いつも冗談に話題を振ってくれる瀬呂。
歌恋にとって、クラス一紳士的な尾白。いつも、事ある事に背中を押してくれる緑谷。
勝ちと欲を真っ向から教えてくれた爆豪。他にも、皆が歌恋に大切なものをくれた。
そして何より・・・隣を歩いてくれる轟が、いつも一番に傍にいてくれる。
この大好きな場所を、ただただ、守りたい。それだけだ。これでも、ちっぽけな理由だと笑われてもかまわない。
自分の居場所を見つけた、与えてくれた。皆の優しさを―・・・。
「なんか、ホントのインタビューみたいだった」
耳郞の隣に戻った時、彼女がそう言ってくれる。
「へへ、ありがとう。私が変われたのは、皆のおかげだよ」
そして、爆豪の番。多分、今回のこの授業は彼の為のものだったんじゃないかと思わせられる。
「俺ァテキトーな事ァ言わねェ!黙ってついて来い!」
うん、やはり相変わらずである。
「一人だと、まだマシね・・・。わかった、ソリが合わないのね、人類と」
Mt.レディの言葉を受け、轟が申し訳なさそうに言った。
「ワリィ、俺がいたから丸々カットに・・・」
だが、爆豪は言う。
「思い上がんな!てめーなんぞが俺に影響与えられるワケねェだろが!!」
「そうか」
ミッドナイトが相澤先生の隣で、やれやれと肩をすくめた。
「相澤くんのメディア避けを参考にさせるべきかも」
「いや・・・あいつが今参考にすべきは他にいます」
首をかしげるミッドナイトをよそに、最後、緑谷の番。相澤先生の言葉に、納得せざるを得ない。
「デクくん、でしたっけ!?活躍みました!」
「それは・・・良かった、良かった、です・・・!」
カチカチの動作の緑谷に、クラスの皆は唖然とした。
「ご自身ではどのようにお考えでしょうか!?」
「それは・・・良かった・・・!」
「あいつ、俺の"硬化"を!!」
切島の言葉を否定する歌恋。
「いや・・・あれは違うと思うよ」
「アガリすぎ」
そう答えるのは蛙吹。
「そういえば、こういう場には恵まれてないものね」
「あなたの技は、オールマイトリスペクトが多いように思いましたが、やっぱり憧れてる?」
「はい!!」
「ここは声でかいんかい」
「でも・・・それだけじゃダメだと思って、自分なりにオールマイトの技をカスタマイズしてみたり」
ボソボソが長いので、割愛します。
「そういえば、例の"暴走"・・・進展があったと聞いたけど、大丈夫なの?」
ミッドナイトの問いに緑谷のボソボソが止まる。彼は集中し、その技を出すが。
「よっしゃ!」
彼の喜びと、技の質が、歌恋たちにはさっぱりだ。なぜならその、例の黒い鞭は、ピョロだったから。
「今はピョロっとですが、コントロールの第一歩です。ゆくゆくはこれも」
「なにそれ」
(ピョロで喜んでんじゃねェ)
人知れず、爆豪が突っ込んだ。
一先ず、授業はここまで。これからは楽しく、忙しない冬休みが始まっていく。
それは、爆豪と轟が仮免を取得して少し経った日。
「・・・本当に、会っていいのかな?」
不安そうに、轟の後ろでモジモジする歌恋がいる。
「それ、何度目だ」
少し、ため息混じりに言う轟に、これ以上呆れられては困ると内心は焦っているけれど。
二人の前に建っているのは、轟のお母さんが入院しているという病院なのだ。緊張しないわけがない。
「えっと・・・だって・・・」
なにか言われたらどうしよう。本人を目の前にして、想像していた子と違うとなれば、否定されてしまうかもしれない。
ギュッと、轟の裾を掴む歌恋。
「焦凍・・・どこにも行かないよね?(大丈夫、だよね・・・)」
「いなくならねェから」
「うん・・・」
「姉さん、受付で待たせてるから、行こう」
差し出してくれる轟の手を、優しく握り返す。
彼にとって行き慣れた病院は、迷うことなくエスコートしてくれる。
(ここにずっと、焦凍のお母さんは入院していたんだ・・・)
雄英に入って、寮制になるまで親と離れて暮らしたことのない歌恋にとって、
ずっと母親と会うことも暮らすことも出来なかった轟の心境はきっと、計り知れないだろう。
(知らなかったとはいえ、前に軽率に両親の話しちゃったから・・・)
あの頃、彼の怒りに触れてしまった気持ちが、今なら少し分かる気がした。
常闇の疑問に、Mt.レディがいう。
「あらら!ヤだわ雄英生、皆があなた達のこと知ってるワケじゃありません!必殺技は己の象徴!
何が出来るのかは、技で知ってもらうの。即時チームアップ、連携。ヴィラン犯罪への警鐘。
命を委ねてもらう為の信頼。ヒーロー名が技名を叫ぶのには、大きな意味がある」
「・・・ちょっと前までカメラ映りしか考えてなかったハズだぜ、あの女・・・」
彼女の変わりように、峰田は驚いている。
「Mt.レディだけじゃないよ。今、ヒーローたち皆、引っ張られてるんだ。No.1ヒーローに」
そして順番に、インタビューの練習が始まった。雄英を目指して入ってるだけあり、各々の意志や強さがちゃんとある。
じゃあ、歌恋はどうなのだろう。単純な動機、必死な思いでヒーローになりたいというおもいで、雄英に来たわけじゃない。
委員長、副委員長と順番に、歌恋の前の席にいる常闇は、新たな必殺技をみせつけている。
Mt.レディも、生徒によってそれぞれ質問を少し変えたりして・・・。
「じゃあ、次は・・・キルシュ、いいかしら?」
「あ、はい!」
ドキドキと、みんなの視線を感じながら壇上にあがる。
「神野事件でちょこっと有名になったわね。桜の"個性"自身ではどんな風に思ってますか?」
内心、やはりそこは聞かれるよな、と準備しておいてよかった。あの時マスコミは、相澤先生の主観しか触れていないから。
でも、もう付き合いの長くなったA組のだいたいは、その理由を知っている。ちょこっと緑谷の言葉を借りて。
「中学までは、この"個性"あまり好きじゃなかったです。でも、ある人が言ってくれました。
桜吹雪の技を見て、綺麗な"個性"だって。それがとても嬉しくて、相澤先生も言ってくれました。
私の桜の"個性"は、私がヒーローになる為に必要な"個性"です。大好きな"個性"です」
マイクを持つMt.レディが、微笑んでくれたような気がした。
「ヴィランの言葉に、押し負けてないようで良かったわ。貴女が強い心でヒーローとして目指せる理由はなにかしら?」
「強い、心・・・?」
思ってもないような言葉を送られ、首をかしげた。疑問を疑問で返してしまった。
「ヴィランからの誘いを断り、ヒーローを目指す理由」
「それ、は・・・」
歌恋は、A組の皆の顔を見る。そして、視線は轟で止まる。心なしか、彼が答えるように笑った気がした。
(あ・・・)
前に轟に感情をぶつけ、聞いたっけ。ヴィランとヒーローの違い。その時、轟は迷わず答えてくれて。
「私は、壊すものがないからです。守りたい大切なものが雄英にきてたくさん出来たらです。
私の守りたいものを、壊す奴らから守りたいからヒーローを目指してます。
例えそれが、ヴィラン側から見てこちらが壊しているんだとしても、今、私が守りたいのがここにあるから」
皆が、笑ってくれた気がした。ちゃんとした目標が歌恋に出来たのは、皆のお陰だ。
仲間、友達の大切さを教えてくれた一番の親友の耳郞。話すきっかけはなんであれ、真っ直ぐな切島。
インターンと学ぶ基礎と、共に訓練に励んでくれる常闇。いつも冗談に話題を振ってくれる瀬呂。
歌恋にとって、クラス一紳士的な尾白。いつも、事ある事に背中を押してくれる緑谷。
勝ちと欲を真っ向から教えてくれた爆豪。他にも、皆が歌恋に大切なものをくれた。
そして何より・・・隣を歩いてくれる轟が、いつも一番に傍にいてくれる。
この大好きな場所を、ただただ、守りたい。それだけだ。これでも、ちっぽけな理由だと笑われてもかまわない。
自分の居場所を見つけた、与えてくれた。皆の優しさを―・・・。
「なんか、ホントのインタビューみたいだった」
耳郞の隣に戻った時、彼女がそう言ってくれる。
「へへ、ありがとう。私が変われたのは、皆のおかげだよ」
そして、爆豪の番。多分、今回のこの授業は彼の為のものだったんじゃないかと思わせられる。
「俺ァテキトーな事ァ言わねェ!黙ってついて来い!」
うん、やはり相変わらずである。
「一人だと、まだマシね・・・。わかった、ソリが合わないのね、人類と」
Mt.レディの言葉を受け、轟が申し訳なさそうに言った。
「ワリィ、俺がいたから丸々カットに・・・」
だが、爆豪は言う。
「思い上がんな!てめーなんぞが俺に影響与えられるワケねェだろが!!」
「そうか」
ミッドナイトが相澤先生の隣で、やれやれと肩をすくめた。
「相澤くんのメディア避けを参考にさせるべきかも」
「いや・・・あいつが今参考にすべきは他にいます」
首をかしげるミッドナイトをよそに、最後、緑谷の番。相澤先生の言葉に、納得せざるを得ない。
「デクくん、でしたっけ!?活躍みました!」
「それは・・・良かった、良かった、です・・・!」
カチカチの動作の緑谷に、クラスの皆は唖然とした。
「ご自身ではどのようにお考えでしょうか!?」
「それは・・・良かった・・・!」
「あいつ、俺の"硬化"を!!」
切島の言葉を否定する歌恋。
「いや・・・あれは違うと思うよ」
「アガリすぎ」
そう答えるのは蛙吹。
「そういえば、こういう場には恵まれてないものね」
「あなたの技は、オールマイトリスペクトが多いように思いましたが、やっぱり憧れてる?」
「はい!!」
「ここは声でかいんかい」
「でも・・・それだけじゃダメだと思って、自分なりにオールマイトの技をカスタマイズしてみたり」
ボソボソが長いので、割愛します。
「そういえば、例の"暴走"・・・進展があったと聞いたけど、大丈夫なの?」
ミッドナイトの問いに緑谷のボソボソが止まる。彼は集中し、その技を出すが。
「よっしゃ!」
彼の喜びと、技の質が、歌恋たちにはさっぱりだ。なぜならその、例の黒い鞭は、ピョロだったから。
「今はピョロっとですが、コントロールの第一歩です。ゆくゆくはこれも」
「なにそれ」
(ピョロで喜んでんじゃねェ)
人知れず、爆豪が突っ込んだ。
一先ず、授業はここまで。これからは楽しく、忙しない冬休みが始まっていく。
それは、爆豪と轟が仮免を取得して少し経った日。
「・・・本当に、会っていいのかな?」
不安そうに、轟の後ろでモジモジする歌恋がいる。
「それ、何度目だ」
少し、ため息混じりに言う轟に、これ以上呆れられては困ると内心は焦っているけれど。
二人の前に建っているのは、轟のお母さんが入院しているという病院なのだ。緊張しないわけがない。
「えっと・・・だって・・・」
なにか言われたらどうしよう。本人を目の前にして、想像していた子と違うとなれば、否定されてしまうかもしれない。
ギュッと、轟の裾を掴む歌恋。
「焦凍・・・どこにも行かないよね?(大丈夫、だよね・・・)」
「いなくならねェから」
「うん・・・」
「姉さん、受付で待たせてるから、行こう」
差し出してくれる轟の手を、優しく握り返す。
彼にとって行き慣れた病院は、迷うことなくエスコートしてくれる。
(ここにずっと、焦凍のお母さんは入院していたんだ・・・)
雄英に入って、寮制になるまで親と離れて暮らしたことのない歌恋にとって、
ずっと母親と会うことも暮らすことも出来なかった轟の心境はきっと、計り知れないだろう。
(知らなかったとはいえ、前に軽率に両親の話しちゃったから・・・)
あの頃、彼の怒りに触れてしまった気持ちが、今なら少し分かる気がした。