化灯籠の目が、しえみをとらえる。
《ヴォ･･･》
すると、目がハートになった。
《ボォーーッ》

あの巨体から、信じられない速さで燐としえみを追う化灯籠。
「こっちだよー」
「なに、呼んでんだ！」

《ボオオ》
ダメだ。間に合わねぇ･･･！
「玲薇！！」
「！」
「しえみ頼む！」
燐がしえみを押す。

「えっえっ」
どうやって受け止めろって･･･。
「「キャッ！」」
ガサッと、二人で倒れ込む。草が生い茂っていてくれてたため、痛みはそんなにない。

そして化灯籠は、リアカーに一直線。ドスンと、リアカーに乗った瞬間、
子猫丸が化灯籠に札を張り付けた。
「カーン」
子猫丸の経が成功したのか、化灯籠は先程の勢いをなくし、大人しくなった。

「やった･･･！」
志摩はガッツポーズ。
「俺、なんもしとらんけどね！！」
ホッと、玲薇と子猫丸は安堵する。
「燐！やったよ！」
しえみが、笑顔でそう報せて。

「うまくいったな！」
志摩が、錫杖を燐に差し伸ばす。
「奥村くん、早よつかまり！」
「大丈夫大丈夫。これで、一安心だな！！」

ブチン。
「「「？」」」
「はっ！？」
「え？」
喜びで飛び上がった燐のおかげで、札が張ってあった縄が、切れた･･･。

「れっ？」
手足が引っ張られる感覚。
《ギューヂヂギギギ》
あの虫沼から、巨大な蛾・チューチが現れた。
「･･･おッッ、ぎゃああああ～！」

「「な、なにやってんやー！！」」
一難去って、また一難。

(しまった。両腕、捕まっちまった･･･！！)
しょうがねぇ！
「大丈夫だ！」
皆がいなくなったら、炎使うしかねぇ･･･！
「倒してすぐ追いつくから！皆は先に行け！！夜が明けちまうぞ！急げ！」

「･････」
燐なら、大丈夫･･･。でも･･･。

「お前は･･･またそれか･･･！」
勝呂の強い言葉に、足を止める。
「悪りぃ！」

「阿呆が！助けるに、決まっとるやろ！！」
助ける･･･？俺を･･･？

「志摩！キリク！！あと、逃げる準備しとけ！！」
「はい、大切に使って下さいよ！！」
(勝呂くん･･･！)
彼の凄さは、グール戦から知っている。

勝呂は落ちていた札を拾い、錫杖の先に付け、チューチに突き刺す。
《ブギッ》
「"ノウマクサンマンダバサラダニカン！カンマーン"」
《ギエエエ！！》
詠唱の効果が出たのか、チューチは悲鳴を上げる。

「キリーク」
勝呂は素早く、錫杖を手の内に戻す。
「す･･･すげぇ～！！(かっけぇ！！)」
やっぱり凄いよ、勝呂くん。

「･･･カッコいい･･･」
一人、ぽつりと玲薇が呟く。

「早よ来い！俺には、これが限界や！！」
「え？倒してねーの？」
「坊！奥村くん、早よ！！」

「逃げろォーー！！！」

化灯籠としえみが乗っているリアカーを、残りの全員でひっぱる。
その時、玲薇は勝呂の後ろ姿を見た。彼は、今も十分強い。
決めた･･･まずは、勝呂を目標だ。それから、雪男で･･･。

「ありがとな！！」
燐が、勝呂に礼を述べる。
「別に、借り返しただけや！」

「借り！？」