魔法円を描き終わったので、次ぎは夕食作りだ。
メインはカレー。料理はできる方の玲薇は、テキパキ準備する。
「カレー？」
だがしえみは、首をかしげる。

「え？杜山さん、カレー知らないの？」
「･･･カレーってなに･･･？」
玲薇は唖然だ。まさかカレーを知らない人がいるとは。
「いた！」
と、ジャガイモの皮を剥いていた出雲が、声を上げる。

「大丈夫、出雲･･･？」
「あ、大丈夫」
強がってるものの、指から血が出てる。
しまいにはあのシュラさんは何もやらないし･･･。

「･･････」
そこで、不安そうに彼女達を見ていた燐が、声をかけた。
「俺、手伝うよ」
「え？」
「貸して」

燐は出雲から包丁とジャガイモを手にして、皮を剥いていく。
「うまい！」
うーん、さすが燐。助かるよ。
「おまえら、サラダつくれよ」
「うん！」
しえみが、笑顔で頷く。

「玲薇はこっち、手伝ってくれ」
「はーい」

料理をする燐の姿を見て、勝呂と志摩、子猫丸は目を見開く。
「大丈夫か、アレ！？」
「玲薇ちゃんは判りますけどね･･･」

数時間後･･･。
「「「いただきまーす！」」」
恐る恐る一口カレーを運べば･･･。
「ええ～！？うめぇ！！まじか･･･！」
「これは･･･正にどこへ嫁がれても、恥ずかしくない味や！」
「奥村くん、お料理上手やったんやねぇ」

(おいしい･･･)
声に出さないが、出雲も感激だ。
「それに、やっぱ女は料理できひんとなぁ？」
「何よ！」
「まぁまぁ、二人とも」

「んー！！燐、おいふいよ！！」
しえみは口いっぱいカレーをつめて。
「ま･･･まーな！！得意だからな！」
「奥村くんの、唯一の生産的な特技です」
「黙れメガネ！！」

「もう一杯、おかわりしよう！」
「意外と喰うなー、杜山さん」

なんか･･･こういうのって、初めてだ。

昔は、何をやってもうまくいかなくて･･･。
獅郎が言っていた、やさしいことのために力を使ってたつもりでも、
空回りばっかりで･･･。自分が怒られるもんだから、隣にいてくれていた、
玲薇にも雪男にも、迷惑をかけて･･･。

『玲薇ちゃん、一緒に行動しようよ』
『奥村くんばかりに、かまわなくていいって』
『で、でも･･･』
『奥村くん、双子の弟がいるんでしょ？』
『そうそう。でもあの二人、全然違うじゃん』

『兄の悪い評判が弟にいくのも、カワイソー』
ガタッと、燐が席をたち、教室を出てしまう。
『あ、燐！』
『コワー』
彼女達の言い様に、玲薇は頭に血をのぼらせる。

『何よ！』
『『！』』
『燐のこと、ちゃんと見ないくせに酷い事ばっかり言って！サイテーだ！！』
そう吐き捨て、燐の後を追う。

『燐！燐！』
声が聞こえてるくせに、足を止めてくれない。
『待ってよ、燐！』
『離せよ！』
『！』
『お前だって、ずっとああに思ってたんだろ！？俺に構うなよ！！』
『あ･･･燐！』

この時からだ･･･。

『兄さんと玲薇、何かあったの？』
『『別に』』
学校に行くので、こんなモヤモヤするなんて･･･。
『兄さん･･･？』
『？』

燐だけが、別の道へ行ってしまう･･･。
『どこ行くの、そっちは学校じゃないよ。兄さん！』