第二十六話 結界呪
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「・・・・・・」
その質問に、燐は答えない。代わりにクロが話かけた。
《りん!したにいわばがある!つかまってろ!!》
言うや、地を駆け走るクロは、道を外れ高い距離からでも関係なく飛び降りた。
それに続くよう、リニュウも急降下を試みる。
無事、岩場に着地すればまだほんの僅かだが飛沫は来ていない。
《すだまのいないあしばは、もうここしかないよ!》
クロの背中から降りる勝呂。ここでなら、なんとか結界を張ることが出来るだろう。
「よし、ここで勝負決めようぜ!!」
燐の言葉で、いままで押さえていた緊張が再び走り出す。
玲薇は自分の胸に手を当て、大きく一呼吸した。
「そう気張るなよ、玲薇」
俺がいる。
「大丈夫」
燐の励まし。でも、これでも燐が一人で突っ走ってしまうんじゃないかと心配になる。
「お前、また自暴自棄になっとるんやないやろな」
「!」
考え、悩む必要はない。勝呂にキッパリ答えてやった。
「なってねーよ、今は。つーか、お前こそビビってんじゃねー!」
逆にビシッと言い聞かす。
「!!」
「多分みんな、今頃やれる事やってんだろーから、俺達もやれる事やろうぜ!」
「燐・・・」
そして、とんでもない事を口にした。
「勝呂姫は結界つくるのに集中しとけ!」
・・・と。
「姫・・・」
冷めた目線の玲薇。立派な男なのに姫とは、なんたる侮辱。
「だ!?だれが姫や!ドツキ回すぞ、アァア!?」
「メソメソしてっからだろ。俺だってお前みてーなゴツイ姫の騎士なんてごめんだよ」
「グ・・・!!クッソ・・・お前なんぞに言われんでもやるわ!!」
「おうッ、よろしく頼むぜ!」
あくまで強気でいる燐。ここに辿り着くまでだって、何度も剣を抜こうとしていた。
だが、まだ抜けてくれることはないようだ。
「さぁ、こっからね!」
とにかく勝呂を守る役目には、代わりない。
リニュウと玲薇の隣に、クロと燐が並ぶ。
「勝つぞ、勝呂!!玲薇!!」
「うん!」
「行くぜ、愛馬クロ!!」
《おれはうまじゃないぞ!》
二人と二匹が、それぞれ勝呂の周りを囲むように離れる。
やるなら、今しかない。
(こいつ(燐)が、ただのバカやない事は知っとる。そんな事は、判っとるんや!)
勝呂は輪を作るように手を合わせ、結界呪を唱え始めた。
「(ただ、俺は)オン!!キリキリバサラバジリ・・・」
ーーーーー
僕は。
小さい頃
"拾って下さい"と書かれた紙が張られた段ボールの中に、小さな子犬がいた。
その子犬を拾い、三人で面倒みれば飼う事を獅郎が許してくれのだ。
でも・・・何日も経つ事なく新たな貰い手が見つかった。
獅郎が子犬を取り上げると、燐は必死に取り返そうとする。
父に敵う筈もなく、子犬は新たな飼い主の元へ。
別れ際、玲薇も雪男も大粒の涙を流す。けど、燐は笑顔で大きく手を振っていたのだ。
玲薇の肩に手を置き、一緒に手を振らなくちゃ・・・って。
彼女も涙を拭き、大きく手を振る。
兄さんに憧れてた。
だけど
いじめっ子から助けてくれた兄。兄の後ろにはいつものように玲薇がいた。
燐が雪男に手を伸ばす。だが、それが無償に腹立たしかった。
だからその手を弾く。なにより、玲薇にこんな姿を見られたくなかった。
その後はもちろん、兄と口喧嘩。
次の日の朝は玲薇と顔を合わせない。
遅れて来て椅子に座る燐を睨むように見た。
憧れるのと同時に本当は。
ずっと
悪意なんて感じ取らないのだろう。昨日の事をすっかり忘れたように、
きょとんとした顔で醤油を手渡すように見せるのだ。
ずっと
引っ込み思案のしえみに出逢った時だって、なかなか彼女は自分に心を開いてくれる気配はない。
しかし、燐とは初めから突っかかりつつも馴染んでいるように、満面な笑顔で話しているのだ。
自分に出来ない事を、兄は何でもすぐにやりとげる。
それが
ずっと
くやしかったんだ。
(おとんもこいつも、いつも一人でカッコつけおって・・・俺はそれがどうしても)
結界呪も、もう少しで唱え終える。
「・・・サラバタタラタセンダンマカロシャダケンギャキギャキサラバビキンナンウンタラタカンマン!!!」
(腹が立つんや!!!)
《勝呂竜士、お前の結界呪・・・確かに聞き届けた》
結界の完成だ。
その質問に、燐は答えない。代わりにクロが話かけた。
《りん!したにいわばがある!つかまってろ!!》
言うや、地を駆け走るクロは、道を外れ高い距離からでも関係なく飛び降りた。
それに続くよう、リニュウも急降下を試みる。
無事、岩場に着地すればまだほんの僅かだが飛沫は来ていない。
《すだまのいないあしばは、もうここしかないよ!》
クロの背中から降りる勝呂。ここでなら、なんとか結界を張ることが出来るだろう。
「よし、ここで勝負決めようぜ!!」
燐の言葉で、いままで押さえていた緊張が再び走り出す。
玲薇は自分の胸に手を当て、大きく一呼吸した。
「そう気張るなよ、玲薇」
俺がいる。
「大丈夫」
燐の励まし。でも、これでも燐が一人で突っ走ってしまうんじゃないかと心配になる。
「お前、また自暴自棄になっとるんやないやろな」
「!」
考え、悩む必要はない。勝呂にキッパリ答えてやった。
「なってねーよ、今は。つーか、お前こそビビってんじゃねー!」
逆にビシッと言い聞かす。
「!!」
「多分みんな、今頃やれる事やってんだろーから、俺達もやれる事やろうぜ!」
「燐・・・」
そして、とんでもない事を口にした。
「勝呂姫は結界つくるのに集中しとけ!」
・・・と。
「姫・・・」
冷めた目線の玲薇。立派な男なのに姫とは、なんたる侮辱。
「だ!?だれが姫や!ドツキ回すぞ、アァア!?」
「メソメソしてっからだろ。俺だってお前みてーなゴツイ姫の騎士なんてごめんだよ」
「グ・・・!!クッソ・・・お前なんぞに言われんでもやるわ!!」
「おうッ、よろしく頼むぜ!」
あくまで強気でいる燐。ここに辿り着くまでだって、何度も剣を抜こうとしていた。
だが、まだ抜けてくれることはないようだ。
「さぁ、こっからね!」
とにかく勝呂を守る役目には、代わりない。
リニュウと玲薇の隣に、クロと燐が並ぶ。
「勝つぞ、勝呂!!玲薇!!」
「うん!」
「行くぜ、愛馬クロ!!」
《おれはうまじゃないぞ!》
二人と二匹が、それぞれ勝呂の周りを囲むように離れる。
やるなら、今しかない。
(こいつ(燐)が、ただのバカやない事は知っとる。そんな事は、判っとるんや!)
勝呂は輪を作るように手を合わせ、結界呪を唱え始めた。
「(ただ、俺は)オン!!キリキリバサラバジリ・・・」
ーーーーー
僕は。
小さい頃
"拾って下さい"と書かれた紙が張られた段ボールの中に、小さな子犬がいた。
その子犬を拾い、三人で面倒みれば飼う事を獅郎が許してくれのだ。
でも・・・何日も経つ事なく新たな貰い手が見つかった。
獅郎が子犬を取り上げると、燐は必死に取り返そうとする。
父に敵う筈もなく、子犬は新たな飼い主の元へ。
別れ際、玲薇も雪男も大粒の涙を流す。けど、燐は笑顔で大きく手を振っていたのだ。
玲薇の肩に手を置き、一緒に手を振らなくちゃ・・・って。
彼女も涙を拭き、大きく手を振る。
兄さんに憧れてた。
だけど
いじめっ子から助けてくれた兄。兄の後ろにはいつものように玲薇がいた。
燐が雪男に手を伸ばす。だが、それが無償に腹立たしかった。
だからその手を弾く。なにより、玲薇にこんな姿を見られたくなかった。
その後はもちろん、兄と口喧嘩。
次の日の朝は玲薇と顔を合わせない。
遅れて来て椅子に座る燐を睨むように見た。
憧れるのと同時に本当は。
ずっと
悪意なんて感じ取らないのだろう。昨日の事をすっかり忘れたように、
きょとんとした顔で醤油を手渡すように見せるのだ。
ずっと
引っ込み思案のしえみに出逢った時だって、なかなか彼女は自分に心を開いてくれる気配はない。
しかし、燐とは初めから突っかかりつつも馴染んでいるように、満面な笑顔で話しているのだ。
自分に出来ない事を、兄は何でもすぐにやりとげる。
それが
ずっと
くやしかったんだ。
(おとんもこいつも、いつも一人でカッコつけおって・・・俺はそれがどうしても)
結界呪も、もう少しで唱え終える。
「・・・サラバタタラタセンダンマカロシャダケンギャキギャキサラバビキンナンウンタラタカンマン!!!」
(腹が立つんや!!!)
《勝呂竜士、お前の結界呪・・・確かに聞き届けた》
結界の完成だ。