第二十五話 紅蓮
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達磨は続ける。
「私は、十五年前このカルラと"刧波焔"を借りる契約をした。刧波焔は人の生きた年月を焔に変える術。
一生の終わりに放出し、一切を焼きつくす大火焔・・・。私はそれを切り札に不浄王を倒そうと考えとった。
しかし、十五年ほど蓄えた焔を、不浄王の足を止めるのに使ってしもた。残る焔はあと僅か・・・。
私はこの残りの刧波焔で、胞子嚢が破裂しても瘴気が外へ漏れんよう結界を張る。
燐くん、君にはその降魔剣で不浄王の心臓を焚滅して欲しい」
手紙の内容と同じ。分かってる、分かってた。だから移動中何度も剣を抜こうとしていた。
みんなの前では、自分はサタンの息子で青い炎を持っているってことは知られ、隠すことはないから。
でも・・・今のこの状態では、どうすることもできない・・・。
「・・・すんません、俺・・・」
「・・・・・いや、当然や。命に関わる事やさかいな・・・」
「え?」
思わず間抜けな返事を返す。達磨からして、今の謝罪は燐は怖がってると思われたのだろう。
だが、燐の謝ったワケは別だ。
「いや・・・俺、今剣抜けなくて・・・」
まさかの告発に、固まる一同。
「「「え?」」」
燐は一生懸命にみんなに見えるよう降魔剣を抜いてみせるが、やはり抜けない。
「さっきから抜こうとしてんだけど、やっぱダメだ」
「はぁ!?何でや!?」
「俺もわかんねーけど、どうも精神的(メンタル)な問題らしくて」
「そんな事あるんか!?」
「俺だって悩むんだよ!!・・・だから今は力になれない。勝呂の父ちゃん、ゴメン!」
重要な頼みの綱が、なくなった・・・。
「そうか・・・それはそれで心配やな」
けれど、ここで立ち止まっていても仕方ない。
「しかし!そうとなれば・・・とにかく私一人で結界だけでも・・・!!」
《無理だ、達磨》
動こうとする達磨に、静止をかけたのは使い魔のカルラだった。
《お前は力を失い過ぎた》
「なんの・・・」
負けじと体を動かすも、立ちくらみが激しい。
「和尚!!」
《傷は癒したが、お前は失血死寸前だった。その身体で"結界呪"を唱えようものなら、間違いなく死ぬぞ》
「しばらくもてばええ・・・!私の命より、大事なことや・・・!」
父親の意思は固い。なにか、代わりに出来る事はないだろうか。
「子猫丸、霧隠先生にまだ連絡つかへんか?」
「それが、さっきからノイズ音しかせんくて・・・瘴気が濃すぎるんかもしれません」
「おとん、俺らに出来ることはないんか?」
「・・・・・・」
黙りこくる達磨。代わりに切り出したのは、カルラだった。
《おや?そういえばお前は達磨の息子か、なら丁度いい。
血が繋がっている者へならば、刧波焔を移すことが出来る》
「!」
「あかん!!」
「!!」
勝呂が答える前に、達磨がすかさず止めに入った。非常に焦った顔で、必死に訴える。
「それだけはあかん・・・!!まだ子供や!竜士は絶対に巻き込ませへん!!
こんな柵は当代で断つて、私はこの命を懸けて誓うたんや!!それだけは・・・」
(ああ・・・そうか。これが・・・)
やっと、分かった気がした。なぜ今まで自分を祓魔師の世界から遠ざけようとしていたか。
周りの人間から、遠ざけていたのかも・・・。
(ずっと、一人で)
「今まで・・・そうやって一人で背負うて来たんか・・・」
「・・・・・・は・・・なに・・・。私が好きでやってきたことや」
「そうはさせん・・・!!」
「!!」
「俺も背負う!!!その様で、文句は言わせへんぞ・・・!!」
「・・・!!」
《達磨・・・息子の方が賢明だ》
これ以上、どう言っても勝呂の気持ちは変わらないだろう。
「・・・ああゆう子やから・・・関わらせたなかったんやけどなぁ・・・」
《では、刧波焔の継承を行う》
改めて向き直る、勝呂とカルラ。
《ここに、所有者勝呂達磨の血の者であるという血の証を示せ》
勝呂は親指を噛み、血を垂れ流す。その血に向け、カルラは勝呂の身体に入り込んでいく。
《確かに、お前は勝呂達磨の血の者・・・》
燃え上がる、カルラの炎。
《勝呂竜士、これでお前が刧波焔の所有者となった》
「赤い炎・・・!」
「竜士」
父親に名を呼ばれ、勝呂は振り向く。
「お前に本来、座主だけが受け継ぐ最も強力な結界呪を伝える。おいで」
そして、背を向ける達磨。
「お前が初めて見る印もある。後ろから印の組み方も、よう見とるんやで。
ええか、一度しかやれへんから一度で見て聞いて諳じろ」
・・・ああ、懐かしい。ずっとずっと、大好きだった父親の背中。
『・・・ここに来たらアカンて、言うてるやろ。
・・・しょうのない子やなぁ、こっちおいで』
あの頃と比べると、父親の背中は随分と小さくなったような気さえした・・・。
「私は、十五年前このカルラと"刧波焔"を借りる契約をした。刧波焔は人の生きた年月を焔に変える術。
一生の終わりに放出し、一切を焼きつくす大火焔・・・。私はそれを切り札に不浄王を倒そうと考えとった。
しかし、十五年ほど蓄えた焔を、不浄王の足を止めるのに使ってしもた。残る焔はあと僅か・・・。
私はこの残りの刧波焔で、胞子嚢が破裂しても瘴気が外へ漏れんよう結界を張る。
燐くん、君にはその降魔剣で不浄王の心臓を焚滅して欲しい」
手紙の内容と同じ。分かってる、分かってた。だから移動中何度も剣を抜こうとしていた。
みんなの前では、自分はサタンの息子で青い炎を持っているってことは知られ、隠すことはないから。
でも・・・今のこの状態では、どうすることもできない・・・。
「・・・すんません、俺・・・」
「・・・・・いや、当然や。命に関わる事やさかいな・・・」
「え?」
思わず間抜けな返事を返す。達磨からして、今の謝罪は燐は怖がってると思われたのだろう。
だが、燐の謝ったワケは別だ。
「いや・・・俺、今剣抜けなくて・・・」
まさかの告発に、固まる一同。
「「「え?」」」
燐は一生懸命にみんなに見えるよう降魔剣を抜いてみせるが、やはり抜けない。
「さっきから抜こうとしてんだけど、やっぱダメだ」
「はぁ!?何でや!?」
「俺もわかんねーけど、どうも精神的(メンタル)な問題らしくて」
「そんな事あるんか!?」
「俺だって悩むんだよ!!・・・だから今は力になれない。勝呂の父ちゃん、ゴメン!」
重要な頼みの綱が、なくなった・・・。
「そうか・・・それはそれで心配やな」
けれど、ここで立ち止まっていても仕方ない。
「しかし!そうとなれば・・・とにかく私一人で結界だけでも・・・!!」
《無理だ、達磨》
動こうとする達磨に、静止をかけたのは使い魔のカルラだった。
《お前は力を失い過ぎた》
「なんの・・・」
負けじと体を動かすも、立ちくらみが激しい。
「和尚!!」
《傷は癒したが、お前は失血死寸前だった。その身体で"結界呪"を唱えようものなら、間違いなく死ぬぞ》
「しばらくもてばええ・・・!私の命より、大事なことや・・・!」
父親の意思は固い。なにか、代わりに出来る事はないだろうか。
「子猫丸、霧隠先生にまだ連絡つかへんか?」
「それが、さっきからノイズ音しかせんくて・・・瘴気が濃すぎるんかもしれません」
「おとん、俺らに出来ることはないんか?」
「・・・・・・」
黙りこくる達磨。代わりに切り出したのは、カルラだった。
《おや?そういえばお前は達磨の息子か、なら丁度いい。
血が繋がっている者へならば、刧波焔を移すことが出来る》
「!」
「あかん!!」
「!!」
勝呂が答える前に、達磨がすかさず止めに入った。非常に焦った顔で、必死に訴える。
「それだけはあかん・・・!!まだ子供や!竜士は絶対に巻き込ませへん!!
こんな柵は当代で断つて、私はこの命を懸けて誓うたんや!!それだけは・・・」
(ああ・・・そうか。これが・・・)
やっと、分かった気がした。なぜ今まで自分を祓魔師の世界から遠ざけようとしていたか。
周りの人間から、遠ざけていたのかも・・・。
(ずっと、一人で)
「今まで・・・そうやって一人で背負うて来たんか・・・」
「・・・・・・は・・・なに・・・。私が好きでやってきたことや」
「そうはさせん・・・!!」
「!!」
「俺も背負う!!!その様で、文句は言わせへんぞ・・・!!」
「・・・!!」
《達磨・・・息子の方が賢明だ》
これ以上、どう言っても勝呂の気持ちは変わらないだろう。
「・・・ああゆう子やから・・・関わらせたなかったんやけどなぁ・・・」
《では、刧波焔の継承を行う》
改めて向き直る、勝呂とカルラ。
《ここに、所有者勝呂達磨の血の者であるという血の証を示せ》
勝呂は親指を噛み、血を垂れ流す。その血に向け、カルラは勝呂の身体に入り込んでいく。
《確かに、お前は勝呂達磨の血の者・・・》
燃え上がる、カルラの炎。
《勝呂竜士、これでお前が刧波焔の所有者となった》
「赤い炎・・・!」
「竜士」
父親に名を呼ばれ、勝呂は振り向く。
「お前に本来、座主だけが受け継ぐ最も強力な結界呪を伝える。おいで」
そして、背を向ける達磨。
「お前が初めて見る印もある。後ろから印の組み方も、よう見とるんやで。
ええか、一度しかやれへんから一度で見て聞いて諳じろ」
・・・ああ、懐かしい。ずっとずっと、大好きだった父親の背中。
『・・・ここに来たらアカンて、言うてるやろ。
・・・しょうのない子やなぁ、こっちおいで』
あの頃と比べると、父親の背中は随分と小さくなったような気さえした・・・。