「でもまぁ、また奥村くんに会えてよかったです。
ぼ、僕は奥村くんに死んでもらったら困る。
危険やないって判ったら、仲直りするんやから」
「子猫丸･･･！」
燐は心の底から感動を味わう。

「ま、玲薇を大切にするってんなら認めなくはないけど。
それに、私がここに来たのは霧隠先生の指示に従っただけだから！」
いつものように、つんけんしている出雲。
「あ、俺？俺はかなりイヤイヤ来た。褒めたってや。
それに、いいもんみしてもろたしなー」
「し、志摩くん･･･」
「みんな･･･！ギャッ！？」
「！？」
途端、燐は蹴飛ばされた。

顔を上げればそこには、怒りを露にした勝呂。
「す･･･勝呂･･･サン･･･！」
「なんやさっきから･･･無事出てきたおもうたら急に風美夜にキ･･･キスするわ、
俺らの事は無視かいな。えぇ！？」
「いや･･･なんか、スイマセン？」
改めて一人ぼっちになって、誰が一番自分にとって大事な奴か、想い知らされたから。
あんなに泣かれて、ほっとけるわけないじゃないか。

「はぁ･･･前から感ずいていたからあれこれ言わん。
むしろくっついてなかったんが不思議な方やったからな」
なんだか、照れ臭い。
「･･････」
「それに･･･親父の件に関しては、俺が冷静やなかった･･･。
お前の言うとおりや。親父の件に関してはな！」
すると、勝呂は持っていた降魔剣を燐に向ける。
「戦うんやったら必要やろ、持ってけ！」

「お、俺こそ殴ってスマン･･･」

「金剛深山までは案内する。後はお前の勝手や、好きにしぃ。俺は俺で戦うさかい」
「･･････！！」
まだ、みんなに･･･特に勝呂には、信用してもらえてない。自分の力が、弱いから。
ギュッと握り拳を作る燐を見て、玲薇は彼の背中に手を当てた。

信じてもらうなら、今しかない。戦いが始まってからでは遅い。
みんなの気持ちが一つでなくちゃ、不浄王はきっと倒せない。
燐は一度目をつぶり、心を落ち着かせる。

「勝呂」
そして、ありったけの想いを。
「俺を信用してくれ」
ぴたっと、背中向けに歩いていた勝呂の足取りが止まる。

「サタンの子なのは変えらんねーけど、必ず炎を使いこなしてみせる。だから俺を信じてくれ！！」

「そんなん、どうでもええんや！！」
「！？」
どうでもいいってことは、勝呂は何に怒っている？
「･･･俺がお前許せんのは、そおゆう事全部一人で背負こんで･･･先に他人扱いしとったんがお前の方やからや･･･！」
「！」
言われて、初めて気づかされる。

「そんな奴、どう信じろっちゅうんや。味方や思とったんは、俺だけか！！」
･･･味方･･･こんな、俺のことを･･･？
「ちっ、違う！！そんなつもりじゃ･･･！」
「つーかそんな理由！？それで怒っとったんか･･･！はぁ～、斬新やなほんま」
「志摩さん･･･」

大丈夫だ。みんなと一緒なら。
「燐、あのね。私･･･」
今まで悩んでいたことがなんだかバカらしい。だからここで。
「燐とは、サタンの血を引いたキョウダイだからって自分にずっと言い聞かせてた」
「･･･････」
そうか。玲薇はずっと、その事を気にしてたから。
「雪男ともそうだけど。でも･･･私、やっぱり燐の事が一番大好き」
「玲薇」
「この戦いが始まって、生き残れるか分からないからさ！
それに、さっきの･･･キス、嬉しかったよ」

ありがとう、玲薇。お前の素直な気持ちが嬉しい。
死なせない･･･一緒に生き残るんだ。
「なぁ、もう一度･･･」
君にキスを。

「やれやれ、待たされたと思えば色恋とは･･･。でもまぁ、ようやく舞台と役者が揃ったな」
そう星が瞬く夜の空から様子を伺うのは、メフィストだった。
「さて、この戦い、存分に楽しませてもらおうか」

「ええな」
勝呂のその一言で、身を引き締める。
「目指すは、洛北金剛深山！倒すは、不浄王や！！！」

俺はこれからの行動で示すしかない！！