第二十四話 こころのひ
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『柔造、和尚の後をつけるんや』
八百造に言われ、後をつけていた柔造は一人、行き場所を確認していた。
(三人分の足跡が、ここで消えとる・・・)
顔を上げ、辺りを見回せばそこには懐かしい、寺の姿があった。
「降魔堂・・・!ここで一体何が・・・」
寺に近づき、様子を伺う。
「!!」
すると、近くでヒビでも入ったかのような不吉な音が耳に入った。
「なッ」
それはよく見れば地震にも似た現象で、まるで降魔堂が持ち上がりかけている。
「これは!?」
そして、どこからともかく人が現れた。
「和尚!!蝮も・・・」
「柔造か!!」
だが、悠長に話してる場合ではなかった。
完全に持ち上げられた降魔堂はバラバラに崩れ落ち、
その近くにいた柔造はまるで天地、ひっくり返った気分だ。
「うおお!?」
「柔造!そん飛沫(しぶき)に気ィつけぇ!」
「!?」
異様なまでの数の飛沫が、波のように押し寄せてくる。
「く・・・っ」
錫杖を振りかざしながら、飛沫をよけ達磨達の元へと飛び退く。
「何や、あれは!!」
「柔造、ええとこ来た。八百造の機転やな、助かったわ。
ここはええから、蝮連れて出張所に助け呼びに行ってくれへんか」
「連絡します!!あの化け物、一体何なんです!?」
「それは蝮が知っとる。不浄王の右目を身体に入れたせいで重症や。
お前、蝮を私の代わりに父さんとこに帰したってや」
「和尚は!?」
「私はここであいつを喰い止める」
蝮を柔造に預けた達磨は、優しく彼女の頭を撫でてやった。
「蝮」
「お、さま・・・」
「お前が皆に、真実を話すんや。頼むで」
「わかりました・・・」
そう返事を返せば、大きくて優しい手が離れていく。
「おっさま・・・」
「はよ行け!!」
「行くで蝮、おぶされ!」
「・・・おっさま・・・!!」
ーーーーー
"どうか奥村くん、降魔剣を使って不浄王を倒して欲しい。
理不尽で無謀なお願いであることは承知の上です。しかしもし・・・もし君が、
お父さんのようなほんの小さな慈悲の心を向けてくれるなら、
私はそれにすがりたい。勝呂達磨。ここまで読んでくれて有難う"
最後の一文を、雪男は読み終えた。
「・・・不浄王が、生きてる・・・?」
震える声で最初言葉にしたのは、玲薇だった。
すると、シュラが不適に笑い出す。
「フッ、クックックッ・・・思った通りのとんでもない内容だった」
「・・・しかし、勝呂くんのお父さんには悪いが、
兄さんの炎が不浄王に有効かどうかは推測でしかない。
こんな不確かな根拠で剣を使わせるわけにはいかない」
と、雪男の手の内にある手紙を、シュラが奪い取る。
「あっ!?」
「燐」
そして、その手紙を見せるようにシュラが問うた。
「これはお前に宛てられた手紙だ。お前はどうしたい?」
「・・・俺は・・・」
「シュラさん・・・!!そんな事を聞いてどうするんです!」
雪男が何かを言ってしまう前に、燐はハッキリと答えた。
「俺は助けたい」
「・・・!」
「燐・・・」
目を見開く雪男と玲薇。
燐は横目で玲薇を、チラリと見た。
その瞳は驚きも含まれ、どこか不安の色もある。
でも、彼女ならきっとついてきてくれる、そう確信があった。
だけど、立ちはだかるは弟の壁だ。
「兄さん!!今の自分の立場が判ってるのか!?」
「・・・俺も、親父に命を助けてもらった・・・。
だから、俺が何かの役に立つっつーなら、
戦いてーんだ!!
でも、もちろんあくまで俺の希望だよ!」
「じゃあ、その希望は却下だ」
「なら、私も燐と一緒に戦う!」
「・・・!」
「なっ・・・」
雪男がどうしてそこまで燐を戦わせたくないのか、分からない。
でも、理由を知ったところで燐自身も納得しないと思うし、
困ってる人がいたらなりふり構わず助けるのは、
燐の優しさに溢れた心の塊からきているものだから。
その彼の優しさを無駄にしたくないと思うから。
昔からずっと見てたから知ってる。
力が他の人より上回るが故にその優しさが無駄に空回りしてしまっていたこと。
それでも私は、何も言葉をかけてやれていなかった。
優しい言葉も慰めも、その頃は自分の事ばかりだったから。
でも・・・見て見ぬ振りは、もう終わりだ。
「これからどんな戦いになろうと、私は燐から離れない。離れたくない・・・!」
あなたの隣にどうか、私をずっと居させて欲しい。
「玲薇・・・」
ありがとう。そうだ、そうだった。忘れかけていたこの想い。
俺は・・・玲薇がいるだけで、十分なんだ。
八百造に言われ、後をつけていた柔造は一人、行き場所を確認していた。
(三人分の足跡が、ここで消えとる・・・)
顔を上げ、辺りを見回せばそこには懐かしい、寺の姿があった。
「降魔堂・・・!ここで一体何が・・・」
寺に近づき、様子を伺う。
「!!」
すると、近くでヒビでも入ったかのような不吉な音が耳に入った。
「なッ」
それはよく見れば地震にも似た現象で、まるで降魔堂が持ち上がりかけている。
「これは!?」
そして、どこからともかく人が現れた。
「和尚!!蝮も・・・」
「柔造か!!」
だが、悠長に話してる場合ではなかった。
完全に持ち上げられた降魔堂はバラバラに崩れ落ち、
その近くにいた柔造はまるで天地、ひっくり返った気分だ。
「うおお!?」
「柔造!そん飛沫(しぶき)に気ィつけぇ!」
「!?」
異様なまでの数の飛沫が、波のように押し寄せてくる。
「く・・・っ」
錫杖を振りかざしながら、飛沫をよけ達磨達の元へと飛び退く。
「何や、あれは!!」
「柔造、ええとこ来た。八百造の機転やな、助かったわ。
ここはええから、蝮連れて出張所に助け呼びに行ってくれへんか」
「連絡します!!あの化け物、一体何なんです!?」
「それは蝮が知っとる。不浄王の右目を身体に入れたせいで重症や。
お前、蝮を私の代わりに父さんとこに帰したってや」
「和尚は!?」
「私はここであいつを喰い止める」
蝮を柔造に預けた達磨は、優しく彼女の頭を撫でてやった。
「蝮」
「お、さま・・・」
「お前が皆に、真実を話すんや。頼むで」
「わかりました・・・」
そう返事を返せば、大きくて優しい手が離れていく。
「おっさま・・・」
「はよ行け!!」
「行くで蝮、おぶされ!」
「・・・おっさま・・・!!」
ーーーーー
"どうか奥村くん、降魔剣を使って不浄王を倒して欲しい。
理不尽で無謀なお願いであることは承知の上です。しかしもし・・・もし君が、
お父さんのようなほんの小さな慈悲の心を向けてくれるなら、
私はそれにすがりたい。勝呂達磨。ここまで読んでくれて有難う"
最後の一文を、雪男は読み終えた。
「・・・不浄王が、生きてる・・・?」
震える声で最初言葉にしたのは、玲薇だった。
すると、シュラが不適に笑い出す。
「フッ、クックックッ・・・思った通りのとんでもない内容だった」
「・・・しかし、勝呂くんのお父さんには悪いが、
兄さんの炎が不浄王に有効かどうかは推測でしかない。
こんな不確かな根拠で剣を使わせるわけにはいかない」
と、雪男の手の内にある手紙を、シュラが奪い取る。
「あっ!?」
「燐」
そして、その手紙を見せるようにシュラが問うた。
「これはお前に宛てられた手紙だ。お前はどうしたい?」
「・・・俺は・・・」
「シュラさん・・・!!そんな事を聞いてどうするんです!」
雪男が何かを言ってしまう前に、燐はハッキリと答えた。
「俺は助けたい」
「・・・!」
「燐・・・」
目を見開く雪男と玲薇。
燐は横目で玲薇を、チラリと見た。
その瞳は驚きも含まれ、どこか不安の色もある。
でも、彼女ならきっとついてきてくれる、そう確信があった。
だけど、立ちはだかるは弟の壁だ。
「兄さん!!今の自分の立場が判ってるのか!?」
「・・・俺も、親父に命を助けてもらった・・・。
だから、俺が何かの役に立つっつーなら、
戦いてーんだ!!
でも、もちろんあくまで俺の希望だよ!」
「じゃあ、その希望は却下だ」
「なら、私も燐と一緒に戦う!」
「・・・!」
「なっ・・・」
雪男がどうしてそこまで燐を戦わせたくないのか、分からない。
でも、理由を知ったところで燐自身も納得しないと思うし、
困ってる人がいたらなりふり構わず助けるのは、
燐の優しさに溢れた心の塊からきているものだから。
その彼の優しさを無駄にしたくないと思うから。
昔からずっと見てたから知ってる。
力が他の人より上回るが故にその優しさが無駄に空回りしてしまっていたこと。
それでも私は、何も言葉をかけてやれていなかった。
優しい言葉も慰めも、その頃は自分の事ばかりだったから。
でも・・・見て見ぬ振りは、もう終わりだ。
「これからどんな戦いになろうと、私は燐から離れない。離れたくない・・・!」
あなたの隣にどうか、私をずっと居させて欲しい。
「玲薇・・・」
ありがとう。そうだ、そうだった。忘れかけていたこの想い。
俺は・・・玲薇がいるだけで、十分なんだ。