第二十三話 父語り
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雪男の口から、手紙の内容が語り出された・・・。
"奥村燐くん、初めまして。私は、京都に住む坊主で、勝呂達磨という者です。
何故この手紙を書いたかというと、君に大切なお願いがあるからです。
しかし、見知らぬ者からこんな手紙をもらって君も戸惑うことでしょうから、
まずは昔話をすることにします。文才がないので、まとまりのない内容を許してください。
そう、あれは君が生まれる少し前のことです。"
しとしと真っ白な雪が降りしきる季節の中、床に眠る妻に寄り添う達磨がいた。
目の前にいる医師に、達磨が不安気に問いかける。
『それでどうなんや、虎子は』
医師はただ、首を横に振る。
"あの頃の私はまだ若く、身重で病みついてしまった妻が、
日に日に弱っていくのに何も出来ず、とても追いつめられていました。"
『虎子・・・!!』
ぎゅっと、手を握りしめると、虎子は重たそうな瞼を開けてくれた。
消え入りそうな声で、名前を呼ぶ。
『達磨さん・・・。私もこの子も大丈夫やし、お務めに戻って・・・?』
『・・・!!』
その優しい笑顔に、気遣いに、胸が熱くなる。
自分は、何もしてやれていないのに。
『達磨さま』
そんな中、障子を少し開けて八百造が顔を覗かせる。
『和尚が呼んではります』
呼ばれて、トボトボ歩いていくと怒鳴り声が聞こえた。
『達磨!!なんしとるんや!日々の務めを怠るな!!
"右目"の不浄から皆を守るんは、お前の務めやろ!』
そう言う和尚も、虎子と似た病に侵され初めていたのだ。
『一日でも仏との対話を欠けば、仏はお前を見限り、"力"は離れてしまうんや!』
『や・・・やってます!!もう七年も続けとる。
せやけど、この七年良うなるどころか十五人も亡うなったわ!!
虎子はもう限界や!・・・このままやったら子もろとも・・・、
ホンマにあの護摩で皆救えるんですか!!』
『今お前に護摩焚く以外になんが出来る』
『そ、それは・・・!』
上手く言えるような言葉が見つからない。
『祖先が導いた尊い教えを務めることこそが最良の・・・ゲホッゲホッ、ゴホォッ』
『おとん!!』
"私の父は・・・母が亡くなり己が病んでからというもの、
明陀宗の務めを果たすことに固執していました。"
『話は終わりや』
貸そうとした手を、弾き返される。
『私は私の務めに戻る。いずれお前が継ぐ務めや。
私が死ねばお前はこの寺の本当の"秘密"を知る。
そしてその秘密を一生守っていかなあかんのや。
虎子があかんくなったら、もっと身体の丈夫な嫁をとれ』
『!!』
『跡目つくるんも、お前の大事な務めやさかいな。"無心"や。俗世は捨て』
遠ざかる父の背中に、もう何も言い返せることはなかった・・・。
"無力な私は、ただただ思い込んだ。そうや、私は明陀宗十七代目の座主血統として生まれた。
門徒は皆、私達座主の血筋を守る為に毎日その務めを果たしてくれとる。
私も務めを果たさなければ、ただ無心に。それが明陀を、いや、
虎子や子供を守ることなんや、と・・・その時、その時空から・・・"
ズドォンと、凄まじい爆発音が響き渡る。
独特の金属音が鳴り、顔を上げ見れば銃を構えた輩がいた。
『!!』
護摩壇に向け、そいつは無数の弾をぶち込んでいく。
その場は一気に混乱の渦と化していった。
『うわぁあ!!』
『なんだ!?』
『達磨さまを守れ!』
崩壊する護摩壇を、達磨はなすすべなく立ち尽くす。
『な・・・なんちゅうこっちゃ・・・護摩壇が・・・』
すると、たちのぼる煙の中から聞こえる声。
『チッ・・・ってぇ~』
『!?』
『なァッ』
よけることが出来ず、飛んできたものが達磨の顔に当たる。
『達磨さま!』
『くっ』
達磨を守るように、門徒は身構える。
『・・・ったく、何だこの山は!化け物だらけじゃねーか!!
メフィストのヤロー、適当ぬかしやがって・・・弾もうねーよ。
超軽装備で来ちゃっただろーが!』
『誰やアンタ・・・!!』
『きっ、貴様ァ儀式の最中に何て事を!!降りて来い!』
『んあ?おっ、そーそーコレコレ』
『!!それは!』
『降魔剣だっけ。コレ、もらってくわ』
『は!?』
『な・・・なん言うてんのや!それは・・・明陀の本尊やぞ!!』
"それが君の育てのお父さん、藤本獅郎くんとの最悪な出逢いでした"
"奥村燐くん、初めまして。私は、京都に住む坊主で、勝呂達磨という者です。
何故この手紙を書いたかというと、君に大切なお願いがあるからです。
しかし、見知らぬ者からこんな手紙をもらって君も戸惑うことでしょうから、
まずは昔話をすることにします。文才がないので、まとまりのない内容を許してください。
そう、あれは君が生まれる少し前のことです。"
しとしと真っ白な雪が降りしきる季節の中、床に眠る妻に寄り添う達磨がいた。
目の前にいる医師に、達磨が不安気に問いかける。
『それでどうなんや、虎子は』
医師はただ、首を横に振る。
"あの頃の私はまだ若く、身重で病みついてしまった妻が、
日に日に弱っていくのに何も出来ず、とても追いつめられていました。"
『虎子・・・!!』
ぎゅっと、手を握りしめると、虎子は重たそうな瞼を開けてくれた。
消え入りそうな声で、名前を呼ぶ。
『達磨さん・・・。私もこの子も大丈夫やし、お務めに戻って・・・?』
『・・・!!』
その優しい笑顔に、気遣いに、胸が熱くなる。
自分は、何もしてやれていないのに。
『達磨さま』
そんな中、障子を少し開けて八百造が顔を覗かせる。
『和尚が呼んではります』
呼ばれて、トボトボ歩いていくと怒鳴り声が聞こえた。
『達磨!!なんしとるんや!日々の務めを怠るな!!
"右目"の不浄から皆を守るんは、お前の務めやろ!』
そう言う和尚も、虎子と似た病に侵され初めていたのだ。
『一日でも仏との対話を欠けば、仏はお前を見限り、"力"は離れてしまうんや!』
『や・・・やってます!!もう七年も続けとる。
せやけど、この七年良うなるどころか十五人も亡うなったわ!!
虎子はもう限界や!・・・このままやったら子もろとも・・・、
ホンマにあの護摩で皆救えるんですか!!』
『今お前に護摩焚く以外になんが出来る』
『そ、それは・・・!』
上手く言えるような言葉が見つからない。
『祖先が導いた尊い教えを務めることこそが最良の・・・ゲホッゲホッ、ゴホォッ』
『おとん!!』
"私の父は・・・母が亡くなり己が病んでからというもの、
明陀宗の務めを果たすことに固執していました。"
『話は終わりや』
貸そうとした手を、弾き返される。
『私は私の務めに戻る。いずれお前が継ぐ務めや。
私が死ねばお前はこの寺の本当の"秘密"を知る。
そしてその秘密を一生守っていかなあかんのや。
虎子があかんくなったら、もっと身体の丈夫な嫁をとれ』
『!!』
『跡目つくるんも、お前の大事な務めやさかいな。"無心"や。俗世は捨て』
遠ざかる父の背中に、もう何も言い返せることはなかった・・・。
"無力な私は、ただただ思い込んだ。そうや、私は明陀宗十七代目の座主血統として生まれた。
門徒は皆、私達座主の血筋を守る為に毎日その務めを果たしてくれとる。
私も務めを果たさなければ、ただ無心に。それが明陀を、いや、
虎子や子供を守ることなんや、と・・・その時、その時空から・・・"
ズドォンと、凄まじい爆発音が響き渡る。
独特の金属音が鳴り、顔を上げ見れば銃を構えた輩がいた。
『!!』
護摩壇に向け、そいつは無数の弾をぶち込んでいく。
その場は一気に混乱の渦と化していった。
『うわぁあ!!』
『なんだ!?』
『達磨さまを守れ!』
崩壊する護摩壇を、達磨はなすすべなく立ち尽くす。
『な・・・なんちゅうこっちゃ・・・護摩壇が・・・』
すると、たちのぼる煙の中から聞こえる声。
『チッ・・・ってぇ~』
『!?』
『なァッ』
よけることが出来ず、飛んできたものが達磨の顔に当たる。
『達磨さま!』
『くっ』
達磨を守るように、門徒は身構える。
『・・・ったく、何だこの山は!化け物だらけじゃねーか!!
メフィストのヤロー、適当ぬかしやがって・・・弾もうねーよ。
超軽装備で来ちゃっただろーが!』
『誰やアンタ・・・!!』
『きっ、貴様ァ儀式の最中に何て事を!!降りて来い!』
『んあ?おっ、そーそーコレコレ』
『!!それは!』
『降魔剣だっけ。コレ、もらってくわ』
『は!?』
『な・・・なん言うてんのや!それは・・・明陀の本尊やぞ!!』
"それが君の育てのお父さん、藤本獅郎くんとの最悪な出逢いでした"