第二十話 修業
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「シュラさん」
名前を呼ばれ、シュラは振り向く。そこには、リニュウの背中から降りる玲薇がいた。
「風美夜か。どしたの?」
「ここに燐もいますよね?」
「おう、いるけど。今はどっかにいったにゃ~。それ、無意識に点けてな」
「え?」
シュラが指さす方を見ると、三本の蝋燭の内真ん中を除いた両端の二つの蝋燭に火が灯っていた。
でも、これは無意識だと・・・そういうことならば、本人はまったく知らないと。
「無意識、ですか・・・」
「そう。で?燐の奴を茶化しに来たわけじゃないんだろ?」
「あ、はい。出来ればその・・・私も・・・」
一人席を外した燐は、水道の蛇口をひねりシャワーのように頭から水を被っていた。
声を出して、頭の中を一度リセットする。まずは落ち着け。
焦れば焦るだけ、うまくいかないのかもしれないから。
そこでふと、声が聞こえる。なにかと思い見てみれば、
子猫丸が墓の前で腰を低くし両手を合わせていた。
明陀集まりの会議が終わってからのこと。
「お父さん、お母さん、ご先祖さん、僕は無力です」
"三輪家の当主"。志摩に言われたその言葉、
言われなくとも自分がしっかりしなければいけないということなんてわかってる。
でも、そう思えば思うほど空回りばかりしているような気さえするのだ。
頼れる身内が一人もいない。その現実に押し潰されそうな時だってある。
「どうしたらええんでしょう・・・!」
「・・・子猫丸!!」
「!!!」
燐に呼ばれ、体が強張る。逃げ出そうと、踵を返す。
「ちょ・・・おいッ」
呼び止めるだけでは、子猫丸は止まってくれない。
「もー怒った!!」
「ひっ・・・!」
彼の前に、燐は飛び出した。
「何なんだ!何で逃げんだよ!!俺はお前と仲直りしてーんだ!!」
「お・・・お・・・おっ、奥村くんはもう坊には近づかんで欲しい!
坊は今、とにかく大変なんや!!」
「坊の話なんかしてねー!今はお前と話してんだ!!!」
どうして、自分をみようとしないのだろう。
震える声で、子猫丸は静かに語る。
「・・・ぼ、ぼくは・・・僕には・・・何もない・・・!」
「!?」
「このとおり・・・僕は両親もいないから、身寄りもない。(坊や志摩さんみたいな才能も・・・)
そんな僕を、明陀の人達はここまで育ててくれはって・・・、
僕はいつか恩返しがしたいんや。将来は、明陀のために働きたい・・・!!
明陀が僕の唯一の居場所・・・それを壊す危険のある人は・・・、
僕にとっては敵や!!!」
初めて、子猫丸自身の本音を聞いた気がする。
その本音を知ったからこそ結べる友情も、きっとある。
「・・・そうか・・・わかった」
教えてくれて、ありがとう。どうすればいいのか、やっとわかった。
燐はにこりと微笑む。
「じゃあ、俺が危険じゃないって判ったら、仲直りしてくれるか?」
驚きの表情になる子猫丸。あんなに酷いことをしたのに、
まだ燐は仲直りしてくれるというのか。
「・・・お前の言うとおりだよ。俺・・・修業うまくいってなくて、
炎のコントロールもまだ全然でさ。こんなんじゃ、お前らも不安だよな!
めっちゃ納得したわ。修業に戻るな・・・!」
スッキリとした気持ちのまま、燐は踵を返す。
だがふと立ち止まり、振り返った。
「お、そーだ。気づいてないっぽいから言うけど、
お前、何もないって、んな事ねーだろ。守りてーもんとか大事なもん、
いっぱい持ってんじゃねーか!」
燐が去り、静寂になったころ。子猫丸は志摩の言葉を思い出す。
『・・・だって奥村くん、ええ人やんか。子猫さんかて、判ってはるんやろ』
「・・・・・・!!奥村くん・・・!!」
名前を呼ばれ、シュラは振り向く。そこには、リニュウの背中から降りる玲薇がいた。
「風美夜か。どしたの?」
「ここに燐もいますよね?」
「おう、いるけど。今はどっかにいったにゃ~。それ、無意識に点けてな」
「え?」
シュラが指さす方を見ると、三本の蝋燭の内真ん中を除いた両端の二つの蝋燭に火が灯っていた。
でも、これは無意識だと・・・そういうことならば、本人はまったく知らないと。
「無意識、ですか・・・」
「そう。で?燐の奴を茶化しに来たわけじゃないんだろ?」
「あ、はい。出来ればその・・・私も・・・」
一人席を外した燐は、水道の蛇口をひねりシャワーのように頭から水を被っていた。
声を出して、頭の中を一度リセットする。まずは落ち着け。
焦れば焦るだけ、うまくいかないのかもしれないから。
そこでふと、声が聞こえる。なにかと思い見てみれば、
子猫丸が墓の前で腰を低くし両手を合わせていた。
明陀集まりの会議が終わってからのこと。
「お父さん、お母さん、ご先祖さん、僕は無力です」
"三輪家の当主"。志摩に言われたその言葉、
言われなくとも自分がしっかりしなければいけないということなんてわかってる。
でも、そう思えば思うほど空回りばかりしているような気さえするのだ。
頼れる身内が一人もいない。その現実に押し潰されそうな時だってある。
「どうしたらええんでしょう・・・!」
「・・・子猫丸!!」
「!!!」
燐に呼ばれ、体が強張る。逃げ出そうと、踵を返す。
「ちょ・・・おいッ」
呼び止めるだけでは、子猫丸は止まってくれない。
「もー怒った!!」
「ひっ・・・!」
彼の前に、燐は飛び出した。
「何なんだ!何で逃げんだよ!!俺はお前と仲直りしてーんだ!!」
「お・・・お・・・おっ、奥村くんはもう坊には近づかんで欲しい!
坊は今、とにかく大変なんや!!」
「坊の話なんかしてねー!今はお前と話してんだ!!!」
どうして、自分をみようとしないのだろう。
震える声で、子猫丸は静かに語る。
「・・・ぼ、ぼくは・・・僕には・・・何もない・・・!」
「!?」
「このとおり・・・僕は両親もいないから、身寄りもない。(坊や志摩さんみたいな才能も・・・)
そんな僕を、明陀の人達はここまで育ててくれはって・・・、
僕はいつか恩返しがしたいんや。将来は、明陀のために働きたい・・・!!
明陀が僕の唯一の居場所・・・それを壊す危険のある人は・・・、
僕にとっては敵や!!!」
初めて、子猫丸自身の本音を聞いた気がする。
その本音を知ったからこそ結べる友情も、きっとある。
「・・・そうか・・・わかった」
教えてくれて、ありがとう。どうすればいいのか、やっとわかった。
燐はにこりと微笑む。
「じゃあ、俺が危険じゃないって判ったら、仲直りしてくれるか?」
驚きの表情になる子猫丸。あんなに酷いことをしたのに、
まだ燐は仲直りしてくれるというのか。
「・・・お前の言うとおりだよ。俺・・・修業うまくいってなくて、
炎のコントロールもまだ全然でさ。こんなんじゃ、お前らも不安だよな!
めっちゃ納得したわ。修業に戻るな・・・!」
スッキリとした気持ちのまま、燐は踵を返す。
だがふと立ち止まり、振り返った。
「お、そーだ。気づいてないっぽいから言うけど、
お前、何もないって、んな事ねーだろ。守りてーもんとか大事なもん、
いっぱい持ってんじゃねーか!」
燐が去り、静寂になったころ。子猫丸は志摩の言葉を思い出す。
『・・・だって奥村くん、ええ人やんか。子猫さんかて、判ってはるんやろ』
「・・・・・・!!奥村くん・・・!!」