第十九話 酔いどれ息子
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『ねんねんぶぶにおこすところのつみ しんごんのいりょくをもてみなしょうめつす。
なむだいにちだいしょうふどうみょうおうふんぬそん・・・。
こないだおとんのきいておぼえたんや』
得意げに言うは、幼い頃の勝呂。
脇にいる二人は、今も昔もかわらない子猫丸と志摩。
勝呂の暗記力の凄さに、素直に子猫丸は関心している。
『えらいなぁ、坊は・・・。二回きいたらおぼえてまうもんなぁ』
だが逆に、志摩は眉を寄せる。
『ヘンタイや、ヘンタイ。ぎゃくにアタマおかしいで』
『だれがヘンタイや!おれはこの寺つぐんやからこんくらい・・・』
『もう限界や』
ふと聞こえてきた、弱々しい声。顔をそちらへ向ければ、
大人三人、輪になり会話をしている。自分たちの存在に気づいてるのかいないのか、
その会話は聞き取りやすい声量。
『・・・また、檀家減ったらしいわ。このままじゃ、家族養えへん・・・!私は明陀を抜ける・・・!』
『!』
思わぬ言葉を耳に入れてしまい、勝呂の集中は大人たちへむく。
『・・・なにより、青い夜がまた起こるかもと思うと恐ろしい・・・!
他の衆も、皆抜けてる言うてたわ』
たまらず、立ち上がる勝呂。
『あ!』
『坊!!』
二人の呼び止めなど構うことなく、勝呂はあの大人たちのもとへ。
『まって!!』
『!!』
『金やったら・・・今、おとんがあつめてまわってはるから・・・。
そのうち、ぜったい、よぉなるから・・・みんなでがんばろうや!!』
『『竜士さま・・・』』
『それに・・・』
ぎゅっと、握りこぶしに力が入る。
『おれが大きくなって寺ついだら、おとんとサタンたおす!
二どと青い夜がおこらんようにする!!だから・・・もうちょっとしんぼうしてや!!』
勝呂にとっては必死だ。必死だった。
けれど、自分はまだ幼すぎるのか、夢も希望もない大人から見れば、
単なる子供の叶わぬ夢。夢はただ語るだけのもの。
勝呂の大きすぎるその"野望"は、バカバカしいのだ。
『ははは・・・!サタン倒すか・・・』
『竜士さま。和尚の金策はうまくいってへん。
・・・それに、抜ける理由はそれだけやないんです。
和尚は、大事な"本尊"を他所へやってしもうたんや。
それは門徒を・・・いや、明陀を裏切ったも同じ事・・・、
我らはもう、達磨和尚にはついていかれへんのです』
つきつけられる現実に、涙が溢れ出す。
『ま、まって・・・まってや。おとんはきっと・・・』
尚もひき止めようと必死の彼に、子猫丸と志摩が止めに出る。
『坊・・・もうええやろ』
『はなせ・・・!』
『坊』
優しい声が、頭上から降ってくる。
抵抗も何も出来ない内に、ひょいと体を持ち上げられた。
『どうしはったんです?』
振り向いた先にいたのは、柔造と蝮だった。
『柔造!蝮!みんな、寺出てくてゆうんや!
柔造も蝮も・・・志摩も子猫丸も・・・みんなみんな、出てくんか・・・!?』
悲しい顔でも、一生懸命なその姿。
みんなのことが好きだから。大事だから。仲間だから。
離れたくない理由など、考えなくともすぐに脳裏に浮かぶ。
そんな勝呂の様子を見て、柔造はニコリと人懐こい笑みを見せた。
『・・・そんな事には、ならへんですよ』
『!?』
『皆の衆、話がある』
『!!』
ハッとし、勝呂の顔は別の方へ。
『八百造・・・?』
『青い夜以降・・・悪評の蔓延、門徒の減少財政難・・・、
明陀宗はかつてない難局で風前の灯や。
和尚と我ら僧正で幾度も話し合いを重ね・・・そして、
ひとつ結論に達した・・・!明陀宗は・・・正十字騎士團に所属する・・・!』
『!!』
正十字騎士團・・・!
『正十字騎士團は皆知っての通り、あらゆる宗教の祓魔師が所属する世界組織。
・・・形は変わるやろうが、純粋な祓魔を掲げる明陀の教えとは矛盾せん・・・!
和尚も、納得してくれはった』
蟒の説明に、皆がざわつき始める。
その中で、八百造が自ら手を上げてみせた。
『・・・これに従う者は手ェ挙げえ!!』
その日のうちに、勝呂は達磨の後を追っていた。
『おとん!"せいじゅうじきしだん"のこときいたで!
おとんも、エッ、エクソシストなるんやろ!?』
『・・・・・・』
だが、父から返ってきた言葉は、予想もしていないものだった。
『・・・ならんよ』
『え?』
『騎士團入ってからのことは、八百造と蟒に任せてあるしな。
・・・これで門徒は安心や・・・竜士。お前も、もう気にせんでええんやで。
じゃあ、おとん忙しいから・・・後でな』
部屋の障子を、勝呂の言葉など待たずに、閉められてしまった・・・。
『おっ、おとん・・・!?』
なむだいにちだいしょうふどうみょうおうふんぬそん・・・。
こないだおとんのきいておぼえたんや』
得意げに言うは、幼い頃の勝呂。
脇にいる二人は、今も昔もかわらない子猫丸と志摩。
勝呂の暗記力の凄さに、素直に子猫丸は関心している。
『えらいなぁ、坊は・・・。二回きいたらおぼえてまうもんなぁ』
だが逆に、志摩は眉を寄せる。
『ヘンタイや、ヘンタイ。ぎゃくにアタマおかしいで』
『だれがヘンタイや!おれはこの寺つぐんやからこんくらい・・・』
『もう限界や』
ふと聞こえてきた、弱々しい声。顔をそちらへ向ければ、
大人三人、輪になり会話をしている。自分たちの存在に気づいてるのかいないのか、
その会話は聞き取りやすい声量。
『・・・また、檀家減ったらしいわ。このままじゃ、家族養えへん・・・!私は明陀を抜ける・・・!』
『!』
思わぬ言葉を耳に入れてしまい、勝呂の集中は大人たちへむく。
『・・・なにより、青い夜がまた起こるかもと思うと恐ろしい・・・!
他の衆も、皆抜けてる言うてたわ』
たまらず、立ち上がる勝呂。
『あ!』
『坊!!』
二人の呼び止めなど構うことなく、勝呂はあの大人たちのもとへ。
『まって!!』
『!!』
『金やったら・・・今、おとんがあつめてまわってはるから・・・。
そのうち、ぜったい、よぉなるから・・・みんなでがんばろうや!!』
『『竜士さま・・・』』
『それに・・・』
ぎゅっと、握りこぶしに力が入る。
『おれが大きくなって寺ついだら、おとんとサタンたおす!
二どと青い夜がおこらんようにする!!だから・・・もうちょっとしんぼうしてや!!』
勝呂にとっては必死だ。必死だった。
けれど、自分はまだ幼すぎるのか、夢も希望もない大人から見れば、
単なる子供の叶わぬ夢。夢はただ語るだけのもの。
勝呂の大きすぎるその"野望"は、バカバカしいのだ。
『ははは・・・!サタン倒すか・・・』
『竜士さま。和尚の金策はうまくいってへん。
・・・それに、抜ける理由はそれだけやないんです。
和尚は、大事な"本尊"を他所へやってしもうたんや。
それは門徒を・・・いや、明陀を裏切ったも同じ事・・・、
我らはもう、達磨和尚にはついていかれへんのです』
つきつけられる現実に、涙が溢れ出す。
『ま、まって・・・まってや。おとんはきっと・・・』
尚もひき止めようと必死の彼に、子猫丸と志摩が止めに出る。
『坊・・・もうええやろ』
『はなせ・・・!』
『坊』
優しい声が、頭上から降ってくる。
抵抗も何も出来ない内に、ひょいと体を持ち上げられた。
『どうしはったんです?』
振り向いた先にいたのは、柔造と蝮だった。
『柔造!蝮!みんな、寺出てくてゆうんや!
柔造も蝮も・・・志摩も子猫丸も・・・みんなみんな、出てくんか・・・!?』
悲しい顔でも、一生懸命なその姿。
みんなのことが好きだから。大事だから。仲間だから。
離れたくない理由など、考えなくともすぐに脳裏に浮かぶ。
そんな勝呂の様子を見て、柔造はニコリと人懐こい笑みを見せた。
『・・・そんな事には、ならへんですよ』
『!?』
『皆の衆、話がある』
『!!』
ハッとし、勝呂の顔は別の方へ。
『八百造・・・?』
『青い夜以降・・・悪評の蔓延、門徒の減少財政難・・・、
明陀宗はかつてない難局で風前の灯や。
和尚と我ら僧正で幾度も話し合いを重ね・・・そして、
ひとつ結論に達した・・・!明陀宗は・・・正十字騎士團に所属する・・・!』
『!!』
正十字騎士團・・・!
『正十字騎士團は皆知っての通り、あらゆる宗教の祓魔師が所属する世界組織。
・・・形は変わるやろうが、純粋な祓魔を掲げる明陀の教えとは矛盾せん・・・!
和尚も、納得してくれはった』
蟒の説明に、皆がざわつき始める。
その中で、八百造が自ら手を上げてみせた。
『・・・これに従う者は手ェ挙げえ!!』
その日のうちに、勝呂は達磨の後を追っていた。
『おとん!"せいじゅうじきしだん"のこときいたで!
おとんも、エッ、エクソシストなるんやろ!?』
『・・・・・・』
だが、父から返ってきた言葉は、予想もしていないものだった。
『・・・ならんよ』
『え?』
『騎士團入ってからのことは、八百造と蟒に任せてあるしな。
・・・これで門徒は安心や・・・竜士。お前も、もう気にせんでええんやで。
じゃあ、おとん忙しいから・・・後でな』
部屋の障子を、勝呂の言葉など待たずに、閉められてしまった・・・。
『おっ、おとん・・・!?』