第十九話 酔いどれ息子
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疲れた体がとれたように、風呂上がりはすっきりとしている玲薇たち。
部屋に戻る途中、こちらにしえみが息をきらしながら走ってきた。
「か、神木、さん・・・!」
「何よ」
「こ、これお弁当どうぞって女将さんが言ってくれて・・・」
「そう・・・」
玲薇の分も持ってきてくれたのだろう。
お弁当は全部で三つあった。出雲が二つを受け取り、一つは玲薇にくれた。
「ありがとう、杜山さん」
申し訳なく、いつもより引きぎみに礼を述べる玲薇。
出雲は話かけてくれて、仲は打ち解けているものの、
しえみとはまだ自分が燐と雪男と"幼馴染み"だと話してからは、
一度も話していない。いや、単に話す機会がなかっただけなのか否か・・・。
「じゃ、じゃあ私は・・・!」
踵を返して行ってしまうしえみに、出雲は眉を寄せた。
「アンタ、まだやってるの?」
「もう少しだけ、だから・・・」
本当は違う。本当は・・・玲薇と話にくいだけ・・・。
そう言うと、再び走り出した。
「竜士さま!」
缶ジュースを開けたと同時に呼ばれた名前に、勝呂は振り返る。
中庭の見える縁側で一人、弁当を食べようとしていた所に現れたのは、
先ほど蝮と柔造を叱りつけ注意していた人物。
「蟒!」
「お久しぶりでございます・・・!」
蟒は軽く会釈をする。
「こん度は、下の者を治めてくださったとか。ありがとうございます」
「いや・・・いいんや」
「それはそうと、丁度良かった」
言うや、蟒は勝呂と目線を合わせるように中腰になる。
「竜士さまのお耳にも、入れたいお話が」
「?」
「竜士さま。今回の一件、明陀の者が疑われとるん御存知か?」
蟒が言う今回の一件とは、"京都出張所侵入事件"に関してのことだろう。
そのことに対して、身内の者が疑われていると。
考えたくもないような事実だ。勝呂は僅かに目を見開く。
「何・・・?」
「そこで一度、明陀の者を一堂に集め、まず内々に詮議しよゆう話になりましてな」
「ま・・・まさか、誰か確信してるんか?」 「いいえ。ですが所長も疑われとる以上は、やらなあかんと」
裏切り者を探るため。
「何か、明らかになるかもしれません」
「・・・・・・おとんには、連絡取ったか・・・?」
「・・・いえ・・・あくまで、騎士團内部での出来事です。和尚は関係な・・・」
「関係あるやろ!!」
カッとなり、蟒の言葉を遮るように大声を上げる。
いくら生臭坊主でも、名ばかりの大僧正でも、騎士團に入っていなくとも、
この明陀に属す、座主血統なのだ。一番大事な場面で、
一番重要な存在の人がいないでどうする。
明陀の中の騎士團うんぬんなど、関係ない。
「疑われとるんは、明陀の者や!」
明陀の者ならば、全員だ。
だが、勝呂はハッと我に返る。
「・・・すまん」
少し、強く言いすぎた。らしくなく焦っている自分がいるのだろう。
やらなければならない問題が、山積みだ。
「俺も出る。和尚・・・引きずってでも連れて来てくれへんか」
「・・・判りました。全員が集まり次第、虎屋に一室設けまして行う手筈になっておりますので」
蟒の姿が見えなくなった数十分後、弁当を食べ終えた勝呂は、缶ジュースを飲み干していた。
「・・・・・・・」
ボーッとする頭から、なにやらかすかに声がする。
それは昔の、小さかった頃の自分の声。
『・・・にちにちややにつくるところのつみ』
(・・・なんや、頭わんわんして念仏きこえてきたな・・・)
部屋に戻る途中、こちらにしえみが息をきらしながら走ってきた。
「か、神木、さん・・・!」
「何よ」
「こ、これお弁当どうぞって女将さんが言ってくれて・・・」
「そう・・・」
玲薇の分も持ってきてくれたのだろう。
お弁当は全部で三つあった。出雲が二つを受け取り、一つは玲薇にくれた。
「ありがとう、杜山さん」
申し訳なく、いつもより引きぎみに礼を述べる玲薇。
出雲は話かけてくれて、仲は打ち解けているものの、
しえみとはまだ自分が燐と雪男と"幼馴染み"だと話してからは、
一度も話していない。いや、単に話す機会がなかっただけなのか否か・・・。
「じゃ、じゃあ私は・・・!」
踵を返して行ってしまうしえみに、出雲は眉を寄せた。
「アンタ、まだやってるの?」
「もう少しだけ、だから・・・」
本当は違う。本当は・・・玲薇と話にくいだけ・・・。
そう言うと、再び走り出した。
「竜士さま!」
缶ジュースを開けたと同時に呼ばれた名前に、勝呂は振り返る。
中庭の見える縁側で一人、弁当を食べようとしていた所に現れたのは、
先ほど蝮と柔造を叱りつけ注意していた人物。
「蟒!」
「お久しぶりでございます・・・!」
蟒は軽く会釈をする。
「こん度は、下の者を治めてくださったとか。ありがとうございます」
「いや・・・いいんや」
「それはそうと、丁度良かった」
言うや、蟒は勝呂と目線を合わせるように中腰になる。
「竜士さまのお耳にも、入れたいお話が」
「?」
「竜士さま。今回の一件、明陀の者が疑われとるん御存知か?」
蟒が言う今回の一件とは、"京都出張所侵入事件"に関してのことだろう。
そのことに対して、身内の者が疑われていると。
考えたくもないような事実だ。勝呂は僅かに目を見開く。
「何・・・?」
「そこで一度、明陀の者を一堂に集め、まず内々に詮議しよゆう話になりましてな」
「ま・・・まさか、誰か確信してるんか?」 「いいえ。ですが所長も疑われとる以上は、やらなあかんと」
裏切り者を探るため。
「何か、明らかになるかもしれません」
「・・・・・・おとんには、連絡取ったか・・・?」
「・・・いえ・・・あくまで、騎士團内部での出来事です。和尚は関係な・・・」
「関係あるやろ!!」
カッとなり、蟒の言葉を遮るように大声を上げる。
いくら生臭坊主でも、名ばかりの大僧正でも、騎士團に入っていなくとも、
この明陀に属す、座主血統なのだ。一番大事な場面で、
一番重要な存在の人がいないでどうする。
明陀の中の騎士團うんぬんなど、関係ない。
「疑われとるんは、明陀の者や!」
明陀の者ならば、全員だ。
だが、勝呂はハッと我に返る。
「・・・すまん」
少し、強く言いすぎた。らしくなく焦っている自分がいるのだろう。
やらなければならない問題が、山積みだ。
「俺も出る。和尚・・・引きずってでも連れて来てくれへんか」
「・・・判りました。全員が集まり次第、虎屋に一室設けまして行う手筈になっておりますので」
蟒の姿が見えなくなった数十分後、弁当を食べ終えた勝呂は、缶ジュースを飲み干していた。
「・・・・・・・」
ボーッとする頭から、なにやらかすかに声がする。
それは昔の、小さかった頃の自分の声。
『・・・にちにちややにつくるところのつみ』
(・・・なんや、頭わんわんして念仏きこえてきたな・・・)