◇遊戯王
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兄弟 +1
モクバの思いは複雑だった。
兄である海馬がなまえのことを憎からず思っていた事は知っていたし、モクバ自身もなまえとは仲良くしていた。だが、それとこれとは別だ。
「───という訳だ。」
ソファに座って向かい合う兄の横には、……なまえがいる。海馬は淡々としているが、なまえはどこか恥ずかしそうと言うか、照れているような、…とにかく気まずそうな面持ちでモクバの目をチラチラと見ていた。
年が離れているとは言え、モクバなりに2人の関係の進展は悟っていたし、いつかこうなるだろうとは予測していた。だが実際その時が訪れてみると、自分の気持ちは意外と複雑な様相を呈している。
「おめでとう兄さま! これからも宜しくな、なまえ! オレも安心だぜ、なんせ兄さまを射止めるなんて、レアカードにしか出来ないと思ってたからな。」
「モクバ」
「プふッ…… 」
顔色を変える海馬に、クスクスと笑うなまえ。
──今の自分に出来ることは、善い弟であることだけだ。
モクバはそう思って笑顔を見せる。……2人は交際を始めたという報告をしてきただけだ。まだ深刻に考える段階ではない。
「レストランを予約してある。着替えて下で待っていろ。」
「うん、じゃあ…またあとで」
ソファから立ち上がり、部屋を出る。扉を閉めたところで、モクバは気分が重くなるのを感じた。
そしてなんとなく……静かにドアを少しだけ開けて中を覗いてみる。ほんの僅かだが、海馬がなまえの髪を撫でてから強引に引き寄せ、頭を彼女の方に下げたのが目に入った。
モクバはひどく胸を撃たれたような衝撃を覚えた。
テレビでキスシーンを見たことはあったが、実際の……とくに父親代わりでもあった最愛の兄が、そういう事をしているのを目にして、モクバは嫌悪感にも似た衝動が沸き起こる。しかしこのモクバの身体を駆け巡ったものの正体は(純粋な嫌悪感というでもなく)エロティシズムを含んだ困惑や興味、そして興奮といったものだったが、モクバはまだその名称すら知らないが故に、ただ “恐さと、複雑なきもち” という大雑把な認識しかできない。
恐れは自分に沸き起こった感情に対してだけではない。……モクバ自身一番恐れていた事だろう。独り立ちによる兄との別離だ。だがそれすらもモクバにはまだよく分からない事の分類に入るようで、…どちらかといえば、なまえに兄を盗られてしまったような気持ちが強かった。
モクバはそっとドアを閉めて離れると、自室に向かって走って行く。
海馬が、それに気付いていないわけがなかった。もちろんなまえも。なまえが不安そうに海馬から身を離すと、髪を軽く手櫛で直しながらドアの方へ目をやった。
「やっぱり今の見られてたんじゃないの? ……ねぇ、私はモクバ君になるべくショックは与えたくないのよ。」
手櫛で直した髪をまたクシャッと握って海馬に向き直る。海馬も少し落ち着かない様子で襟を直してから、なまえとその後ろのドアに背を向ける。
窓の外を遠い目で眺めてから、海馬はやっと長いため息をついてなまえに顔を向けた。
「オレがモクバの父親代わりになると決心したのは、今のモクバと同じ年の頃だった。……出来る事なら、オレはずっとモクバを甘やかしてやりたい。だがそれは、モクバのためにはならん。」
「だからって───」
「わかっている。なまえは、…今は元のように、モクバと接してやってくれ。」
高校生同士の交際は総じて家族が障害になるらしいが、両親が居なければそうでもないのかと言えばむしろ逆で、たった2人の家族だからこそ問題の根は深いのだと感じていた。もちろん海馬も、なまえも。その点に限るなら、兄弟が居ない分なまえの方が身軽なのかもしれない。
「それより着替えはどうした。そこに置いてあるだろう。」
なまえは閉口して問題の箱を見た。部屋の隅……カウチの上で無造作に放置されているのは、ベルベットのジュエリーケース。そしていかにもプレゼントらしい包装紙に平たい大きな箱。蓋は既に開けられ、何枚も重ねられた深紅のシースルーの裾だけが覗いている。
「ねぇ、前にも言ったけど私…自分のものは自分で──」
「時間が無いぞ。それとも今オレの前で着替えるか?」
「──…… 隣の部屋を借りるわ。」
諦めたようにドレスとアクセサリーを引っ掴んで、なまえは部屋を後にした。
どう転んでも大怪我しかしない気がしたので、一旦筆を止めました。
もしかしたら結末書いてメインページに昇格するかもしれません。
モクバの思いは複雑だった。
兄である海馬がなまえのことを憎からず思っていた事は知っていたし、モクバ自身もなまえとは仲良くしていた。だが、それとこれとは別だ。
「───という訳だ。」
ソファに座って向かい合う兄の横には、……なまえがいる。海馬は淡々としているが、なまえはどこか恥ずかしそうと言うか、照れているような、…とにかく気まずそうな面持ちでモクバの目をチラチラと見ていた。
年が離れているとは言え、モクバなりに2人の関係の進展は悟っていたし、いつかこうなるだろうとは予測していた。だが実際その時が訪れてみると、自分の気持ちは意外と複雑な様相を呈している。
「おめでとう兄さま! これからも宜しくな、なまえ! オレも安心だぜ、なんせ兄さまを射止めるなんて、レアカードにしか出来ないと思ってたからな。」
「モクバ」
「プふッ…… 」
顔色を変える海馬に、クスクスと笑うなまえ。
──今の自分に出来ることは、善い弟であることだけだ。
モクバはそう思って笑顔を見せる。……2人は交際を始めたという報告をしてきただけだ。まだ深刻に考える段階ではない。
「レストランを予約してある。着替えて下で待っていろ。」
「うん、じゃあ…またあとで」
ソファから立ち上がり、部屋を出る。扉を閉めたところで、モクバは気分が重くなるのを感じた。
そしてなんとなく……静かにドアを少しだけ開けて中を覗いてみる。ほんの僅かだが、海馬がなまえの髪を撫でてから強引に引き寄せ、頭を彼女の方に下げたのが目に入った。
モクバはひどく胸を撃たれたような衝撃を覚えた。
テレビでキスシーンを見たことはあったが、実際の……とくに父親代わりでもあった最愛の兄が、そういう事をしているのを目にして、モクバは嫌悪感にも似た衝動が沸き起こる。しかしこのモクバの身体を駆け巡ったものの正体は(純粋な嫌悪感というでもなく)エロティシズムを含んだ困惑や興味、そして興奮といったものだったが、モクバはまだその名称すら知らないが故に、ただ “恐さと、複雑なきもち” という大雑把な認識しかできない。
恐れは自分に沸き起こった感情に対してだけではない。……モクバ自身一番恐れていた事だろう。独り立ちによる兄との別離だ。だがそれすらもモクバにはまだよく分からない事の分類に入るようで、…どちらかといえば、なまえに兄を盗られてしまったような気持ちが強かった。
モクバはそっとドアを閉めて離れると、自室に向かって走って行く。
海馬が、それに気付いていないわけがなかった。もちろんなまえも。なまえが不安そうに海馬から身を離すと、髪を軽く手櫛で直しながらドアの方へ目をやった。
「やっぱり今の見られてたんじゃないの? ……ねぇ、私はモクバ君になるべくショックは与えたくないのよ。」
手櫛で直した髪をまたクシャッと握って海馬に向き直る。海馬も少し落ち着かない様子で襟を直してから、なまえとその後ろのドアに背を向ける。
窓の外を遠い目で眺めてから、海馬はやっと長いため息をついてなまえに顔を向けた。
「オレがモクバの父親代わりになると決心したのは、今のモクバと同じ年の頃だった。……出来る事なら、オレはずっとモクバを甘やかしてやりたい。だがそれは、モクバのためにはならん。」
「だからって───」
「わかっている。なまえは、…今は元のように、モクバと接してやってくれ。」
高校生同士の交際は総じて家族が障害になるらしいが、両親が居なければそうでもないのかと言えばむしろ逆で、たった2人の家族だからこそ問題の根は深いのだと感じていた。もちろん海馬も、なまえも。その点に限るなら、兄弟が居ない分なまえの方が身軽なのかもしれない。
「それより着替えはどうした。そこに置いてあるだろう。」
なまえは閉口して問題の箱を見た。部屋の隅……カウチの上で無造作に放置されているのは、ベルベットのジュエリーケース。そしていかにもプレゼントらしい包装紙に平たい大きな箱。蓋は既に開けられ、何枚も重ねられた深紅のシースルーの裾だけが覗いている。
「ねぇ、前にも言ったけど私…自分のものは自分で──」
「時間が無いぞ。それとも今オレの前で着替えるか?」
「──…… 隣の部屋を借りるわ。」
諦めたようにドレスとアクセサリーを引っ掴んで、なまえは部屋を後にした。
どう転んでも大怪我しかしない気がしたので、一旦筆を止めました。
もしかしたら結末書いてメインページに昇格するかもしれません。