◇遊戯王
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「自分のものは自分で買う」
って何回も何回も何回も言ってる筈なんだけど。
「……また、ある。」
海馬の邸宅内に与えられた部屋に入ると、リビングには “また” ラッピングされた色とりどりの箱や花束なんかが積まれていた。
最初は申し訳なくて、次第に嬉しくて、今は流石に迷惑。
見なかった事にして部屋の奥に進むと、窓際沿いのドアから寝室に入ってスクールバッグや制服の上着をベッドに放り投げる。寝室からさらに奥、ウォークインクローゼットを開ければ、ほぼほぼ海馬が揃えたなまえ用の服や靴がズラリと待ち構えていた。
正直、ここを開けるたびに頭痛がするし、まだ高校生なのに眉間の皺を気にしなければならない。さっきリビングに積まれていたものもどうせ此処へ押し込まれて終わりだ。
なまえは適当に…比較的着易そうな服を選んで着替え、履き慣れたルームシューズを履く。
たぶん女としては最高に憧れる状態ではあるのだろうが、正直海馬のこういう部分だけは度が過ぎているように思える。
というか……たぶん、海馬はこういう愛情の表現方法しか知らないんだろうと、なんとなく感じ取っていた。
リビングに戻ってやっとプレゼントの山と向き合えば、なまえは花束だけを手に取り顔を埋める。もしこれがロマンチックなドラマなんかだったら、「実はこれの花言葉は〜〜」とか言って気分を盛り上げるんだろうが、生憎海馬もなまえもそういった感性を持ち合わせてはいない。
ただただ、バラだけの花束。それが赤だったり白だったりの気分があるくらいなもので、世の中にこんなぶっきらぼうな花束が存在するのかと笑えるくらい、毎回添えられている。
あまりにもバラ続きで(もしかしてバラ以外の花の名前を知らないんじゃ……)と海馬の知識を疑ったこともあったが、モクバ君の理科の勉強の手伝いで一緒にアサガオを育てたし、海馬が「アサガオ」と発言していたから、たぶんそうでもない……はず。
「───…… ェッくし!」
匂いを深く吸いすぎたらしい。不細工なクシャミをしたあと鼻の奥にむず痒いような不快感に、ティッシュを求めて振り返った。
「……」
「…………」
海馬も気まずい顔をする事が出来るらしい。垂れそうになる鼻を最小限の力で “おしとやかに” 啜ると、海馬はごく僅かだなハッとしたような顔をしてハンカチを差し出して来た。
「……どこから見てたの?」
「花束に顔を突っ込んだあたりからだ。」
鼻を押さえてズ…と吸い込んで何とか見た目だけを取り繕う。今さら猫を被ったところで見せてしまったものは仕方ないし、一緒にいる時間が長くなるほど汚い部分がいずれ互いの目に入るものだとも分かっている。分かっていても自然と取り繕ってしまうのだから、やはり自分でも女の子の部分があるのだなぁと頭の片隅でしみじみと省みてもいた。
というか本心を言うなら鏡が見たい。悲惨な事になっていたらと思うだけで、何事もなかったような顔を海馬に向ける事ができないからだ。
「それで…… 後悔してる?」
「鏡が見たいならなぜ話しを長引かせる。」
読まれてた。ちくしょう。
なまえは花束をテーブルに置くと、指で《ちょっと待ってて》という合図を見せる。寝室の方へ足を一歩踏み出したところでまた海馬に軽く向き直ると《待つなら、座ってて》とハンドサインを出しなおし、あとは一直線に寝室へ駆け込んで行った。
普通なら誰かの指示も受けない海馬も、この時ばかりはなまえの機嫌を考えて大人しくソファに腰掛ける。
座ってみて気付いた事だが、大した数を選んだつもりがなくても、座った目線からこうして見上げるという事は、それなりに圧迫感があるものだと海馬は思い返していた。
なまえが鼻をかんで鏡をチェックしてから戻る……正味3分くらいの間に、リビングのプレゼントは部屋の隅で磯野がまとめ、メイドがテーブルにお茶を用意していた。
海馬の向かいのソファに座ると、海馬はわざわざ移動してきてなまえの横に腰を下ろす。メイドがチラチラと此方を見ている。たぶん磯野も。なまえはため息を漏らしてからソファの端に座り直すと、海馬もなまえのぴったり真横に座り直した。
「なに?!」
「怒鳴るな。」
海馬は悪びれもせず、クリップ留された書類の束から顔を上げる様子もない。なまえがテーブル横のマガジンラックから適当に一冊引き抜き、足を組み直したところで、2人の目の前に2つのカップが出された。
海馬のは真っ白い陶磁器のカップに、ブラックのコーヒー。なまえには年季の入った青いマグに紅茶。海馬がコーヒーに手を伸ばす前になまえは肘で少し押しやり、「せまい」と目で訴える。海馬が渋々といった様子で片足分くらいのスペースを空けると、なまえはやっとマグカップに手を伸ばした。
海馬のカップどころか、この部屋と比べても明らかに浮いた、アンティークとも言えないマグカップに海馬が眉を顰める。
「ティーカップくらい用意してあるはずだが。」
「これが私のセキュリティ・ブランケットなの。紅茶を飲むときに限りね。」
海馬が不服そうに鼻で笑うのを横目に、なまえはマグカップの中身を見てからひと啜りしてテーブルに戻す。
「ところでミルクが入っていない紅茶ほど野蛮なものは無いと思わない?」
給仕を終えて部屋を出ようとしたメイドが慌てて振り返るのと同時に、海馬はコーヒーカップを手にしたままなまえを横目で見た。
「映画の見過ぎだ。」
「カードやチェスと睨めっこするよりはタメになるわよ。……経験値が乏しいから心理戦に負けるんじゃないの?」
「まて、これもゲームか?」
「『THE GREAT ESCAPE』よ、モクバ君と見るべきね。ただし、ポップコーンは禁止。」
「デヴィッド・マッカラムが死んで退場した途端にカードを触りだしたのは誰だったか」
「じゃああなたもいい仕事をすることね」
機嫌や声のトーンはこの際無視したとしても、あの海馬がテンポ良く会話を続けるのがよっぽど珍しいのだろう。メイドはまたチラチラと海馬に目をやりながら、マグカップにミルクを追加しようとするので、なまえはカップに手を被せて拒否する。
「ミルクを入れてから紅茶。それ以外ならこのまま飲むわ。」
海馬も書類から顔を上げもしないで、「…だそうだ、覚えておけ」の一言で済ませる。背後では出て行き損ねたであろう磯野がソワソワしている気配も感じていた。……海馬もなまえも。
ここから先なにも思い浮かばなかったのでボツになりました。
合掌
って何回も何回も何回も言ってる筈なんだけど。
「……また、ある。」
海馬の邸宅内に与えられた部屋に入ると、リビングには “また” ラッピングされた色とりどりの箱や花束なんかが積まれていた。
最初は申し訳なくて、次第に嬉しくて、今は流石に迷惑。
見なかった事にして部屋の奥に進むと、窓際沿いのドアから寝室に入ってスクールバッグや制服の上着をベッドに放り投げる。寝室からさらに奥、ウォークインクローゼットを開ければ、ほぼほぼ海馬が揃えたなまえ用の服や靴がズラリと待ち構えていた。
正直、ここを開けるたびに頭痛がするし、まだ高校生なのに眉間の皺を気にしなければならない。さっきリビングに積まれていたものもどうせ此処へ押し込まれて終わりだ。
なまえは適当に…比較的着易そうな服を選んで着替え、履き慣れたルームシューズを履く。
たぶん女としては最高に憧れる状態ではあるのだろうが、正直海馬のこういう部分だけは度が過ぎているように思える。
というか……たぶん、海馬はこういう愛情の表現方法しか知らないんだろうと、なんとなく感じ取っていた。
リビングに戻ってやっとプレゼントの山と向き合えば、なまえは花束だけを手に取り顔を埋める。もしこれがロマンチックなドラマなんかだったら、「実はこれの花言葉は〜〜」とか言って気分を盛り上げるんだろうが、生憎海馬もなまえもそういった感性を持ち合わせてはいない。
ただただ、バラだけの花束。それが赤だったり白だったりの気分があるくらいなもので、世の中にこんなぶっきらぼうな花束が存在するのかと笑えるくらい、毎回添えられている。
あまりにもバラ続きで(もしかしてバラ以外の花の名前を知らないんじゃ……)と海馬の知識を疑ったこともあったが、モクバ君の理科の勉強の手伝いで一緒にアサガオを育てたし、海馬が「アサガオ」と発言していたから、たぶんそうでもない……はず。
「───…… ェッくし!」
匂いを深く吸いすぎたらしい。不細工なクシャミをしたあと鼻の奥にむず痒いような不快感に、ティッシュを求めて振り返った。
「……」
「…………」
海馬も気まずい顔をする事が出来るらしい。垂れそうになる鼻を最小限の力で “おしとやかに” 啜ると、海馬はごく僅かだなハッとしたような顔をしてハンカチを差し出して来た。
「……どこから見てたの?」
「花束に顔を突っ込んだあたりからだ。」
鼻を押さえてズ…と吸い込んで何とか見た目だけを取り繕う。今さら猫を被ったところで見せてしまったものは仕方ないし、一緒にいる時間が長くなるほど汚い部分がいずれ互いの目に入るものだとも分かっている。分かっていても自然と取り繕ってしまうのだから、やはり自分でも女の子の部分があるのだなぁと頭の片隅でしみじみと省みてもいた。
というか本心を言うなら鏡が見たい。悲惨な事になっていたらと思うだけで、何事もなかったような顔を海馬に向ける事ができないからだ。
「それで…… 後悔してる?」
「鏡が見たいならなぜ話しを長引かせる。」
読まれてた。ちくしょう。
なまえは花束をテーブルに置くと、指で《ちょっと待ってて》という合図を見せる。寝室の方へ足を一歩踏み出したところでまた海馬に軽く向き直ると《待つなら、座ってて》とハンドサインを出しなおし、あとは一直線に寝室へ駆け込んで行った。
普通なら誰かの指示も受けない海馬も、この時ばかりはなまえの機嫌を考えて大人しくソファに腰掛ける。
座ってみて気付いた事だが、大した数を選んだつもりがなくても、座った目線からこうして見上げるという事は、それなりに圧迫感があるものだと海馬は思い返していた。
なまえが鼻をかんで鏡をチェックしてから戻る……正味3分くらいの間に、リビングのプレゼントは部屋の隅で磯野がまとめ、メイドがテーブルにお茶を用意していた。
海馬の向かいのソファに座ると、海馬はわざわざ移動してきてなまえの横に腰を下ろす。メイドがチラチラと此方を見ている。たぶん磯野も。なまえはため息を漏らしてからソファの端に座り直すと、海馬もなまえのぴったり真横に座り直した。
「なに?!」
「怒鳴るな。」
海馬は悪びれもせず、クリップ留された書類の束から顔を上げる様子もない。なまえがテーブル横のマガジンラックから適当に一冊引き抜き、足を組み直したところで、2人の目の前に2つのカップが出された。
海馬のは真っ白い陶磁器のカップに、ブラックのコーヒー。なまえには年季の入った青いマグに紅茶。海馬がコーヒーに手を伸ばす前になまえは肘で少し押しやり、「せまい」と目で訴える。海馬が渋々といった様子で片足分くらいのスペースを空けると、なまえはやっとマグカップに手を伸ばした。
海馬のカップどころか、この部屋と比べても明らかに浮いた、アンティークとも言えないマグカップに海馬が眉を顰める。
「ティーカップくらい用意してあるはずだが。」
「これが私のセキュリティ・ブランケットなの。紅茶を飲むときに限りね。」
海馬が不服そうに鼻で笑うのを横目に、なまえはマグカップの中身を見てからひと啜りしてテーブルに戻す。
「ところでミルクが入っていない紅茶ほど野蛮なものは無いと思わない?」
給仕を終えて部屋を出ようとしたメイドが慌てて振り返るのと同時に、海馬はコーヒーカップを手にしたままなまえを横目で見た。
「映画の見過ぎだ。」
「カードやチェスと睨めっこするよりはタメになるわよ。……経験値が乏しいから心理戦に負けるんじゃないの?」
「まて、これもゲームか?」
「『THE GREAT ESCAPE』よ、モクバ君と見るべきね。ただし、ポップコーンは禁止。」
「デヴィッド・マッカラムが死んで退場した途端にカードを触りだしたのは誰だったか」
「じゃああなたもいい仕事をすることね」
機嫌や声のトーンはこの際無視したとしても、あの海馬がテンポ良く会話を続けるのがよっぽど珍しいのだろう。メイドはまたチラチラと海馬に目をやりながら、マグカップにミルクを追加しようとするので、なまえはカップに手を被せて拒否する。
「ミルクを入れてから紅茶。それ以外ならこのまま飲むわ。」
海馬も書類から顔を上げもしないで、「…だそうだ、覚えておけ」の一言で済ませる。背後では出て行き損ねたであろう磯野がソワソワしている気配も感じていた。……海馬もなまえも。
ここから先なにも思い浮かばなかったのでボツになりました。
合掌