海馬瀬人
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家族計画
仕事が忙しいとか、長い目で見たら平和で感覚が鈍ってたとか、色々言い訳はあると思う。事実、私は目の前の海馬と緑色の紙を挟んで、ボンヤリとその何も書かれていない“離婚届”を眺めるしかない。
高校を出てすぐに海馬と結婚して、海馬コーポレーションからランド経営部を子会社化したのをモクバ君に任せて、私はデュエル大会とかのイベント運営部を子会社化したのを任されて、……気が付いたら、童実野高校を卒業して10年は経っていた。
「何が不満だったんだ。」
頭上から海馬の声が降りかかる。少し掠れていて、たぶん、本人も反省に値するところが思い当たるのだろう。そうでなきゃ、こんな風に向かい合ってゆっくり話す時間さえ、彼は用意しなかった。
「……だから、なにもないってば。」
離婚届だって、結婚した時に“お守り”として持ったものであって、別に本気で持ってたわけじゃない。それを私の部屋で見つけたメイドが海馬にチクって、こんな事になってる。やっぱり若くて美人のメイドは雇うものじゃないと家訓にしよう。
「何も無いのにそんな物を隠し持っている理由は何だ。」
「お守りよ。結婚生活が嫌になりそうになったらソレを見るの。そうすれば冷静になれるから。……女って、結構そういうものなの。」
「フン、オレは並みの女を妻にした覚えはない。」
「話しがややこしくなるからやめて。」
こういう流れになれば、大体はすぐ仲直りする。10年も連れ添っていれば、お互いの気持ちの流れや本音は分かっているから。
「時間の無駄だな。」
海馬が腕時計を見れば、立ち上がってコートを脱ぎ始める。これは “ 早くシャワーを浴びてベッドに行くぞ ” っていう意味だ。なまえも渋々立ち上がって袖のボタンを外しはじめれば、海馬が腰を引き寄せて噛みつくようなキスをする。
キスを延々としながら、お互いに服を脱ぎ散らかす。このあとシャワーを浴びて、ベッドに入って、セックスをしたあと枕の上で仲直り。そうやって10年をやり繰りしてきた。
じゃあこの先の10年は?
「待って」
初めての「待て」に、海馬がちょっと驚いたような顔をしたが、問答無用でなまえはその顔を引き剥がした。もうお互い、殆ど服は脱いでいる。はたから見れば、セクシーと言うより情けない格好だ。
「……ひとつ確かめたい事があったの。」
応え次第では離婚する。そういう目をしたつもりだが、果たして伝わってるだろうか。…こんな格好で。
「なんだ。」
盛り上がろうとしたところを止められて、あからさまに不機嫌そうにする海馬を見ても、流石にもう動じなくなったと思う。思うけど、やっぱり違う意味でドキドキした。
「…… 」
何度か口をモゴモゴする。言いたい事は喉まで来ているのに、いざ口に出すには恥ずかしいというか、やっぱりプライドが咎めてくるのだ。
なまえは意を決してもう一度海馬を見ると、やっぱり目を逸らして、俯いたまま口を開いた。
「……せ、……セッ…いや、性交するなら、……そろそろ、子ども…が、ほしい、…ん、だけど。」
腕の中で小さく震える妻に、海馬はどんな顔をしたのか。
なまえは羞恥心からか、俯いたまま顔を上げられない。だがすぐに抱き上げられ、ベッドへ運ばれて行った。
「ちょっと!シャワー浴び……」
口を塞がれて、海馬の茶髪が顔をくすぐる。
「タイミングは見計らってたが、どうやら年内になりそうだ。」
「は?」
残りの下着もあっけなく取り払われれば、なまえも大人しくベッドに沈んだ。
次の朝、海馬がティーソーサーの上でお守りを燃やした臭いでなまえは目を覚ますことになる。
仕事が忙しいとか、長い目で見たら平和で感覚が鈍ってたとか、色々言い訳はあると思う。事実、私は目の前の海馬と緑色の紙を挟んで、ボンヤリとその何も書かれていない“離婚届”を眺めるしかない。
高校を出てすぐに海馬と結婚して、海馬コーポレーションからランド経営部を子会社化したのをモクバ君に任せて、私はデュエル大会とかのイベント運営部を子会社化したのを任されて、……気が付いたら、童実野高校を卒業して10年は経っていた。
「何が不満だったんだ。」
頭上から海馬の声が降りかかる。少し掠れていて、たぶん、本人も反省に値するところが思い当たるのだろう。そうでなきゃ、こんな風に向かい合ってゆっくり話す時間さえ、彼は用意しなかった。
「……だから、なにもないってば。」
離婚届だって、結婚した時に“お守り”として持ったものであって、別に本気で持ってたわけじゃない。それを私の部屋で見つけたメイドが海馬にチクって、こんな事になってる。やっぱり若くて美人のメイドは雇うものじゃないと家訓にしよう。
「何も無いのにそんな物を隠し持っている理由は何だ。」
「お守りよ。結婚生活が嫌になりそうになったらソレを見るの。そうすれば冷静になれるから。……女って、結構そういうものなの。」
「フン、オレは並みの女を妻にした覚えはない。」
「話しがややこしくなるからやめて。」
こういう流れになれば、大体はすぐ仲直りする。10年も連れ添っていれば、お互いの気持ちの流れや本音は分かっているから。
「時間の無駄だな。」
海馬が腕時計を見れば、立ち上がってコートを脱ぎ始める。これは “ 早くシャワーを浴びてベッドに行くぞ ” っていう意味だ。なまえも渋々立ち上がって袖のボタンを外しはじめれば、海馬が腰を引き寄せて噛みつくようなキスをする。
キスを延々としながら、お互いに服を脱ぎ散らかす。このあとシャワーを浴びて、ベッドに入って、セックスをしたあと枕の上で仲直り。そうやって10年をやり繰りしてきた。
じゃあこの先の10年は?
「待って」
初めての「待て」に、海馬がちょっと驚いたような顔をしたが、問答無用でなまえはその顔を引き剥がした。もうお互い、殆ど服は脱いでいる。はたから見れば、セクシーと言うより情けない格好だ。
「……ひとつ確かめたい事があったの。」
応え次第では離婚する。そういう目をしたつもりだが、果たして伝わってるだろうか。…こんな格好で。
「なんだ。」
盛り上がろうとしたところを止められて、あからさまに不機嫌そうにする海馬を見ても、流石にもう動じなくなったと思う。思うけど、やっぱり違う意味でドキドキした。
「…… 」
何度か口をモゴモゴする。言いたい事は喉まで来ているのに、いざ口に出すには恥ずかしいというか、やっぱりプライドが咎めてくるのだ。
なまえは意を決してもう一度海馬を見ると、やっぱり目を逸らして、俯いたまま口を開いた。
「……せ、……セッ…いや、性交するなら、……そろそろ、子ども…が、ほしい、…ん、だけど。」
腕の中で小さく震える妻に、海馬はどんな顔をしたのか。
なまえは羞恥心からか、俯いたまま顔を上げられない。だがすぐに抱き上げられ、ベッドへ運ばれて行った。
「ちょっと!シャワー浴び……」
口を塞がれて、海馬の茶髪が顔をくすぐる。
「タイミングは見計らってたが、どうやら年内になりそうだ。」
「は?」
残りの下着もあっけなく取り払われれば、なまえも大人しくベッドに沈んだ。
次の朝、海馬がティーソーサーの上でお守りを燃やした臭いでなまえは目を覚ますことになる。