海馬瀬人
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「海馬瀬人の彼女、残念ブス説」
「だってさ〜」
クスクス
こわーい…クスクス
当の本人に聞こえるように笑うお前たちの方がよっぽどいい性格してますよ。
なまえはそう口から出る前にため息を溢す。
事実、「KC社長の彼女」についてまとめられたブログ記事やSNS、掲示板の類いには、それはもう根掘り葉掘りその姿が書かれていた。男子高校生の彼女が同じ学校の女子高校生という事の一体何が面白いのだろうか。
卒業を前にして情報の共有化が進んだ時代が追い付いてしまった事を呪うばかりだ。どこへ居てもいつ携帯のカメラが向けられているかわからない。とくにその男子高校生が世界的な大企業の社長であるというだけで、彼女の生活は常にスキャンダルを望む大衆が見張り、破局すら望んでいる一部の人間が手ぐすねを引いている。
「なまえちゃん」
いつ拡散されるかわからない状況下で、親しく声を掛けてくれるのはいつだって“同じ階級”にいる人間だった。なまえのクラスなら、この「ゲーム開発者」の御伽龍児。海馬とはライバルメーカーに当たるだろうが、なまえには順当な関係を築いてくれている。
「やだねぇ、女の子を敵に回すと。」
「その女の子達をたらし込む悪い男がこのクラスに居るらしいんだけど。」
「へぇ!僕より女子に人気な男なんて、このクラスに居たかなあ?」
互いに冗談のつもりで言っているが、どちらも同性からひどく僻まれるネタにしかならない事は重々承知だった。前の席の椅子を勝手に拝借してなまえの机に肘をつく御伽に、なまえはつまらなさそうに視線を外へ向ける。
「それより、君の事をネットで中傷するヤツが最近エスカレートしてるんじゃないかい?僕で良ければ、君の力になるよ。海馬君、まだ暫く学校に来れないんだろ?」
御伽があまり周囲に聞こえないような静かな声で話してくる。なまえはチラリと御伽の方を見るが、その向こうでヒソヒソ話す女子達が目に付いて眉間に皺を寄せた。
「大丈夫よ。学校から家までは車で送迎してくれてるし、誹謗中傷なんてデュエルクイーンの頃からあった事だわ。本当にマズいやつは、海馬がネット経由でなんとかしてくれるでしょ。」
お気楽そうなフリをして笑って見せるが、御伽の目は真剣そのものだ。なんとなしにスマートフォンを取り出してSNSを開けば、通知をオフにしていた分だけユーザーリアクションが滝のように溢れる。御伽もさすがに「スゴいね…」と引きつった笑いを見せた。
「なまえちゃんは何人くらいフォロワーがいるの?」
「えーと…12.2k」
「怖」
素でそんな声が出たのだろう、口を手で覆って咳払いをしてから御伽はもう一度なまえのスマホを覗き込む。
なにかムッとしたのか、なまえは口を曲げて自分のフォロー欄をタップした。
「海馬と遊戯なんて公式マーク付いてんのよ?桁も2個違うし。」
「あはは、あの2人は別次元だから…」
苦笑して御伽もスマホを取り出すと、同じSNSを開いてスクロールし始める。
「でも…なまえちゃんのアカウント、けっこうぶっきらぼうって言うか…『◯日 ◯時からKC主催 童実野スタジアム◯◯大会エキシビジョンマッチに出ます。』『◇日の夜頃アップロード、KCチャンネル“◇月発売 最新デッキ解説動画”に出演しました。』『△日カイバランド内イベントでエキシビジョンマッチ… …もう少し他に書く事はないのかい?」
「他に何を書くのよ。」
「いや、ほら…『海馬くんとデートしました♡』とか、『ブルーアイズ型ジェット機に乗ってます♡ #操縦はカレシ #センス #ない #センスゼロだね #仕事高飛び #何で作った』 みたいなさ。」
なんでそんなにキラキラ女子の生態に詳しいんだと言いかけて、まあ御伽なら可愛い女の子のアカウントなんて常にチェックしてるだろうしな…と自問自答してしまう。
「そんな事書いて大炎上したらどうするのよ。」
想像しただけで寒気がする。なまえはもはや海馬と海馬コーポレーションのイメージに直結しているだけあって、彼女自身下手な事をして海馬に不利益を起こす事を恐れていた。
「じゃあせめて自撮りは?」
「なんで自分の顔なんかわざわざ載せるのよ…イベントとか大会の流出してる写真で充分じゃない。」
「でも他人が撮った写真なんて、半目だったりブサイクに写ったものを使われたりするんだよ?君だって拡散されるなら、綺麗な自分の方がいいんじゃない?」
「う”…」
「ホラね。それに、このまま海馬瀬人の恋人がザンネンな顔の子だって思われ続ける事の方が、海馬君には不利益なんじゃないのかい?」
「ちょっとまって、もしかして私ディスられてる?」
まじまじと覗き込むと御伽はフッと笑い、癖が向くままに前髪を指でクルクルと巻いて遊ぶ。
「まぁ海馬君と付き合う前に君と出会っていたら、僕は真っ先に君を落としたかった、かな?」
「いや出会ってる。あなた自分で開発したゲームで遊戯に負けた時からずっとクラス一緒でしょ。悔しいからって記憶を改竄しちゃダメよ。」
「な…!べ、別にそれを根に持ってるんじゃないよ!…てゆーか、君だって誤魔化しはダメじゃないか。僕が転校してきた時、君はもう海馬君のこと好きだったんだろう?」
なぶるようにニヤニヤ笑う御伽に、ぐっと奥歯を噛みしめる。悔しいがたぶん顔が赤くなっている。それを見てさらに笑う御伽に、なまえは大きくため息をつくしかできなかった。
「い…いいじゃない、べつに…」
なまえは肘を支柱に顎を手の平に乗せたまま顔を背けて外を見た。窓から風が吹き込んで前髪を揺らすと、御伽の方から「パシャリ」と軽快なシャッター音がする。
バッと御伽の方を見ると、彼は既にSNSの投稿画面にテキストを打ち込んでいた。
「ちょ…ッと!消しなさいよ!」
「ダメだね!今のなかなか良かったよ。なまえちゃんのイメージアップになるんじゃないかな?」
「あ?????」
ドスの聞いた声で詰め寄ると、流石に御伽も一瞬怯む。だがなまえのスマホが「ピコン」メッセージの通知を告げ、2人の言い合いは終了した。
「…? 海馬から…?」
なんでこのタイミングで…と画面を開くと、なまえの心臓が少し跳ねた。
『今から学校へ行く。15分後に昇降口にいろ。』
「15分後って授業始まってる時間だから無理…と。」
返事を口に出すタイプかぁ…と御伽はなまえを傍観していた。なまえが「あ」と顔を上げて御伽を見ると、バッチリ視線が合ってドキリとする。
「で、さっきの画像消しときなさいよ?」
なまえはスマホをポケットに入れるなり立ち上がって、いそいそと教室を出て行った。その際で、隣の海馬の席をひと撫でしたのを御伽は見逃さない。
「さっきの画像か〜…海馬君もだけど、たぶん色んなユーザーがもう保存してると思うけどなぁ。」
『御伽龍児@otogi.DDM
なまえちゃんが彼氏を待っている時の顔です。
海馬君へ。なまえちゃんがクラスで孤立気味だよ。心配なら今すぐ来い。』
『海馬瀬人@KC_Seto.K
@otogi.DDM オレに指図するな
今向かうところだ
貴様あとで覚えておけ』
「だってさ〜」
クスクス
こわーい…クスクス
当の本人に聞こえるように笑うお前たちの方がよっぽどいい性格してますよ。
なまえはそう口から出る前にため息を溢す。
事実、「KC社長の彼女」についてまとめられたブログ記事やSNS、掲示板の類いには、それはもう根掘り葉掘りその姿が書かれていた。男子高校生の彼女が同じ学校の女子高校生という事の一体何が面白いのだろうか。
卒業を前にして情報の共有化が進んだ時代が追い付いてしまった事を呪うばかりだ。どこへ居てもいつ携帯のカメラが向けられているかわからない。とくにその男子高校生が世界的な大企業の社長であるというだけで、彼女の生活は常にスキャンダルを望む大衆が見張り、破局すら望んでいる一部の人間が手ぐすねを引いている。
「なまえちゃん」
いつ拡散されるかわからない状況下で、親しく声を掛けてくれるのはいつだって“同じ階級”にいる人間だった。なまえのクラスなら、この「ゲーム開発者」の御伽龍児。海馬とはライバルメーカーに当たるだろうが、なまえには順当な関係を築いてくれている。
「やだねぇ、女の子を敵に回すと。」
「その女の子達をたらし込む悪い男がこのクラスに居るらしいんだけど。」
「へぇ!僕より女子に人気な男なんて、このクラスに居たかなあ?」
互いに冗談のつもりで言っているが、どちらも同性からひどく僻まれるネタにしかならない事は重々承知だった。前の席の椅子を勝手に拝借してなまえの机に肘をつく御伽に、なまえはつまらなさそうに視線を外へ向ける。
「それより、君の事をネットで中傷するヤツが最近エスカレートしてるんじゃないかい?僕で良ければ、君の力になるよ。海馬君、まだ暫く学校に来れないんだろ?」
御伽があまり周囲に聞こえないような静かな声で話してくる。なまえはチラリと御伽の方を見るが、その向こうでヒソヒソ話す女子達が目に付いて眉間に皺を寄せた。
「大丈夫よ。学校から家までは車で送迎してくれてるし、誹謗中傷なんてデュエルクイーンの頃からあった事だわ。本当にマズいやつは、海馬がネット経由でなんとかしてくれるでしょ。」
お気楽そうなフリをして笑って見せるが、御伽の目は真剣そのものだ。なんとなしにスマートフォンを取り出してSNSを開けば、通知をオフにしていた分だけユーザーリアクションが滝のように溢れる。御伽もさすがに「スゴいね…」と引きつった笑いを見せた。
「なまえちゃんは何人くらいフォロワーがいるの?」
「えーと…12.2k」
「怖」
素でそんな声が出たのだろう、口を手で覆って咳払いをしてから御伽はもう一度なまえのスマホを覗き込む。
なにかムッとしたのか、なまえは口を曲げて自分のフォロー欄をタップした。
「海馬と遊戯なんて公式マーク付いてんのよ?桁も2個違うし。」
「あはは、あの2人は別次元だから…」
苦笑して御伽もスマホを取り出すと、同じSNSを開いてスクロールし始める。
「でも…なまえちゃんのアカウント、けっこうぶっきらぼうって言うか…『◯日 ◯時からKC主催 童実野スタジアム◯◯大会エキシビジョンマッチに出ます。』『◇日の夜頃アップロード、KCチャンネル“◇月発売 最新デッキ解説動画”に出演しました。』『△日カイバランド内イベントでエキシビジョンマッチ… …もう少し他に書く事はないのかい?」
「他に何を書くのよ。」
「いや、ほら…『海馬くんとデートしました♡』とか、『ブルーアイズ型ジェット機に乗ってます♡ #操縦はカレシ #センス #ない #センスゼロだね #仕事高飛び #何で作った』 みたいなさ。」
なんでそんなにキラキラ女子の生態に詳しいんだと言いかけて、まあ御伽なら可愛い女の子のアカウントなんて常にチェックしてるだろうしな…と自問自答してしまう。
「そんな事書いて大炎上したらどうするのよ。」
想像しただけで寒気がする。なまえはもはや海馬と海馬コーポレーションのイメージに直結しているだけあって、彼女自身下手な事をして海馬に不利益を起こす事を恐れていた。
「じゃあせめて自撮りは?」
「なんで自分の顔なんかわざわざ載せるのよ…イベントとか大会の流出してる写真で充分じゃない。」
「でも他人が撮った写真なんて、半目だったりブサイクに写ったものを使われたりするんだよ?君だって拡散されるなら、綺麗な自分の方がいいんじゃない?」
「う”…」
「ホラね。それに、このまま海馬瀬人の恋人がザンネンな顔の子だって思われ続ける事の方が、海馬君には不利益なんじゃないのかい?」
「ちょっとまって、もしかして私ディスられてる?」
まじまじと覗き込むと御伽はフッと笑い、癖が向くままに前髪を指でクルクルと巻いて遊ぶ。
「まぁ海馬君と付き合う前に君と出会っていたら、僕は真っ先に君を落としたかった、かな?」
「いや出会ってる。あなた自分で開発したゲームで遊戯に負けた時からずっとクラス一緒でしょ。悔しいからって記憶を改竄しちゃダメよ。」
「な…!べ、別にそれを根に持ってるんじゃないよ!…てゆーか、君だって誤魔化しはダメじゃないか。僕が転校してきた時、君はもう海馬君のこと好きだったんだろう?」
なぶるようにニヤニヤ笑う御伽に、ぐっと奥歯を噛みしめる。悔しいがたぶん顔が赤くなっている。それを見てさらに笑う御伽に、なまえは大きくため息をつくしかできなかった。
「い…いいじゃない、べつに…」
なまえは肘を支柱に顎を手の平に乗せたまま顔を背けて外を見た。窓から風が吹き込んで前髪を揺らすと、御伽の方から「パシャリ」と軽快なシャッター音がする。
バッと御伽の方を見ると、彼は既にSNSの投稿画面にテキストを打ち込んでいた。
「ちょ…ッと!消しなさいよ!」
「ダメだね!今のなかなか良かったよ。なまえちゃんのイメージアップになるんじゃないかな?」
「あ?????」
ドスの聞いた声で詰め寄ると、流石に御伽も一瞬怯む。だがなまえのスマホが「ピコン」メッセージの通知を告げ、2人の言い合いは終了した。
「…? 海馬から…?」
なんでこのタイミングで…と画面を開くと、なまえの心臓が少し跳ねた。
『今から学校へ行く。15分後に昇降口にいろ。』
「15分後って授業始まってる時間だから無理…と。」
返事を口に出すタイプかぁ…と御伽はなまえを傍観していた。なまえが「あ」と顔を上げて御伽を見ると、バッチリ視線が合ってドキリとする。
「で、さっきの画像消しときなさいよ?」
なまえはスマホをポケットに入れるなり立ち上がって、いそいそと教室を出て行った。その際で、隣の海馬の席をひと撫でしたのを御伽は見逃さない。
「さっきの画像か〜…海馬君もだけど、たぶん色んなユーザーがもう保存してると思うけどなぁ。」
『御伽龍児@otogi.DDM
なまえちゃんが彼氏を待っている時の顔です。
海馬君へ。なまえちゃんがクラスで孤立気味だよ。心配なら今すぐ来い。』
『海馬瀬人@KC_Seto.K
@otogi.DDM オレに指図するな
今向かうところだ
貴様あとで覚えておけ』