エルピス・プロジェクト
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自分はどこまで嘘を重ねるのか。
デュエルをしているのはあくまでアバターだ。体感デュエルだとしても肉体にダメージがバウンスされる事はない。だがそれは「健康な肉体」あっての話し。リンク・ヴレインズと同じネットワーク層に精神を置き、そして弱った肉体で力を使い果たした父がどうなったか目の当たりにしておいて、いまなまえにも同じことが起きているのを見て見ぬ振りをしている。
心配してないわけがない。……恐れていないわけがない。
だからこそ早く決着を付ける。そして精算し、やり直すのだ。もう一度、全てを失った者同士として。
「終わりだ。……《ヴァレルソード》の攻撃!!!」
「
《
なぜ
リボルバーは顔を顰めた。なまえの諦めが悪いところはこの10年でよく理解している。しかしそうだとしても、この場でその粘り強さが彼女自身の命に関わることは、彼女自身がよく知っているはずだ。
「このカードは墓地の《シャドール》モンスターを表側攻撃表示、または裏側守備表示で特殊召喚させるカード! 私は《シャドール・ファルコン》を裏守備表示で特殊召喚!」
《シャドール・ファルコン》(裏守備)
「またそのモンスターか……!」
《ヴァレルソード》の2回攻撃を承知の上で……! 内心舌打ちすらするリボルバーの前で、《ヴァレルソード》が《シャドール・ファルコン》を破壊する。
「《シャドール・ファルコン》の効果! 戦闘破壊で墓地に行ったとき、《シャドール・ファルコン》は再び裏側守備表示で特殊召喚される!」
「だがこれで破壊できる!!! 《ヴァレルソード》2度目の攻撃!」
爆風になまえの髪が大きく翻る。しかしモンスターを全て排除したと言えど、なまえのライフを削ることは出来ず、エルシャドール達の効果により墓地の《シャドール》魔法・罠カードは全てなまえの手札に戻った。
「墓地の《マグナヴァレット》と、《シェルヴァレット》の効果。効果で破壊されたターンのエンドフェイズに、デッキからそれぞれ同名以外のモンスターを特殊召喚する。
私は《マグナヴァレット》の効果で《メタルヴァレット》を、《シェルヴァレット》の効果で《シルバーヴァレット》を特殊召喚。
《メタルヴァレット・ドラゴン》
(★4・闇・攻/1700→2000)
《シルバーヴァレット・ドラゴン》
(★4・闇・守/1900→2100)
私はこれでターンエンドだ」
リボルバー(手札 0/ LP:1500)
フィールドには《ヴァレルソード・ドラゴン》と《メタルヴァレット》《シルバーヴァレット》の3体。だが手札はゼロ。伏せカードも無い。……ここで負ければなまえは帰ってこない。それどころか、イグニス・アルゴリズムの解析プログラムまでもがSOLの手に渡る。イグニス・アルゴリズムの解析とは、つまりイグニスを量産コピーすることが可能ということ。それをカネの亡者が牛耳るSOLテクノロジーに渡すわけにはいかない。そして、なまえを失うわけにもいかない。
───私は……!
「(了見……)」
平然としているようで、その実、心の中で苦しんでいるのをなまえは見抜いていた。アバターという共通認識映像上の虚構だとしても、たとえビジュアルデータとして再現されていなかったとしても、なまえには見えていた。
自分の未来についても。
「私のター……」
視界が白く弾け、鼓動が耳を打ち付けた。
「……!」
笑え、笑え! と自分を殴る。目を開けなおして見たのは、自分と闘い続けるリボルバーの姿。
「私のターン、ドロー!」
(手札3→4)
あなたは今ごろ、どこにいるでしょう。きっとまだ微睡みのなか、あのスターダスト・ロードの海の底。……あなたは私。いつか鏡の中を覗いて知った、本当の自分の姿。どうかせめて、このデュエルの間だけでも彼を悲しませたくはない。私に出来ることは、───出来ることは……
「
自分の手札・フィールドから「シャドール」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する」
「お前の手札は読めている。4枚中3枚は、墓地から戻した《
「そう。私の手札にモンスターカードはない。でもね……《
「……デッキ融合だと?!」
「私はデッキから闇属性《シャドール・ヘッジホッグ》、《シャドール・ファルコン》を墓地へ送り、───融合召喚!!!
《エルシャドール・ミドラーシュ》!!!
(★5・闇・攻/2200)
「また私の特殊召喚制限か」
芸がない、と失笑するリボルバーに、なまえは動じない。
「《シャドール・ファルコン》の効果。墓地へ送られたことで、自身を裏守備表示で特殊召喚する。
《シャドール・ファルコン》(裏守備)
さらに《シャドール・ヘッジホッグ》の効果。墓地へ送られたとき、デッキから同名モンスター以外の《シャドール》1体を手札に加える。(手札3→4)
私はデッキから《
《
(★3・風・攻/ 1500)
「(……リバースモンスターを攻撃表示だと?)」
歴戦の経験か、それとも本能か。リボルバーはすぐさま不可解さに警戒を見せた。それはプレイメーカーも同じ。呑気に『ん?』なんて言っているのはアイだけだ。……まあ、不自然さには気付いているようだが。
「そして伏せていた
私は手札から装備魔法《
これにより、裏守備で召喚していた《シャドール・ファルコン》が反転召喚!
《シャドール・ファルコン》
(★2・闇・攻/ 600→1600)
……《シャドール・ファルコン》を、まさか“本来の使い方”をすることになるとは思わなかったわ」
「本来の……? まさか、そのモンスターは───」
それから先を口にするより前に、なまえの手が振り上げられる。
「私は、───レベル3《
「(チューナーモンスター!)」
「───永劫の闇より魂を解き放つ竜、冥界を裂き、新たなる次元が開かれる! シンクロ召喚!!! 現れよ、」
《転生竜 サンサーラ》!!!
(☆5・闇・攻/ 100)
《エルシャドール・ミドラーシュ》、そして新たなシャドール以外のモンスター《転生竜サンサーラ》がリボルバーに対峙する。しかしどちらも攻撃力では《ヴァレルソード》に届かない。もちろん《転生竜サンサーラ》の攻撃力100という数値を目にした瞬間から、リボルバーは彼女がまだ何かしてくると察してはいた。