王国編 /1
名前変換
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「…ん、ぐ…んん…」
名前はベッドの中で酷く魘されていた。滲んだ汗にハッと目を開けると、暗い石造りの部屋に立っていた。
『…!こ、これは…?』
突然の状況に、すぐこれが夢であると理解する。それでも靴底越しにも伝わる冷たい石の感覚と、肩を撫でる冷ややかな空気が名前の身体に現実味を持たせる。
目の前には二つの石棺が並び、片方は蓋がされておらず、中身も空だった。しかし左側の石棺は蓋がされ、様々な宝飾や壁画が施されている。…それも、文字や絵の雰囲気からして古代エジプトを連想させた。
『な、に…これ…』
ゾワリとした冷たいものが背中を撫でた。
石棺の奥にある壺から異常なまでに重々しい空気を感じて、一歩たりとも足を動かす事ができない。それでも無意識に手が伸び、それを運ぶように足が一歩、また一歩と前に進んでいく。
『やだ、やめてよ…身体が勝手に…』
棺の蓋に手をやったとき、突然どこかからかの光に包まれてまた視界を失った。
『…────!!!!』
***
「怖かった〜〜」
獏良が半泣きで、自身の目隠しを外した。すっかり目が闇夜に慣れて、窓を開ける本田が目に入る。杏子は既に中へ入ったようだ。
「グズグズしている暇はないぜ。早いとこ調べるんだ。」
しかし、いくらその部屋を捜索しても、何かしら出て来る気配は無かった。
「本田、何もないわよ。」
「そんなはずは…」
「これ…何かな」
獏良の声に二人は駆け寄って、彼が見上げるものを同じ様に見た。
厚いベルベットの幕の中に、金色の額縁だけが僅かな光に反射している。
「何かの絵みたいだな。」
「暗くてよく見えないわ…」
そこへ突然、パッと部屋の明かりが着いた。
「ッ、誰だ?!」
本田が声を上げて振り返るが、三人が見渡す限り誰も部屋には居ない様子だ。しかし杏子と獏良はすぐに絵に向き直る。
「…ずいぶんキレイな人だけど、誰の肖像かしら?」
杏子がその絵の人物を見上げると、獏良は夕食の席の事を思い出していた。
「居間にも同じ絵があったよ。」
「ペガサスに、何か関係あるのかしら…」
三人の目はその絵に釘付けになり、背後に迫る陰に気付くのが遅れてしまった。
「フフフフ…」
聞き覚えのある不敵な笑い声に、三人は心臓を掴まれたような驚きを持って振り返った。
「ペガサス!!!」
杏子の口が真っ先に開いた。ペガサスは腕を組んで、罠にはまった獲物を見るような目で三人を見渡している。
「チッ…バレてたのか!」
本田は二人を守るように、最悪手を出す覚悟で前に出る。しかしペガサスはため息混じりに笑うだけであった。
「ユー達の行動など、全てお見通しデ〜ス。」
「だったら話しは早いぜ…!ペガサス!テメェがイカサマしてるのは分かってるんだ!証拠を隠そうとしたってムダだぜ!」
本田が指を立てて挑発まがいにペガサスへ捲し立てるが、それでもペガサスは優位な立場を示すように笑う。
「フフフ…私にはそんな事をする必要は無いのデ〜ス。なぜなら、私はユー達の想像を絶する世界に身を置くのデスからね。」
「なんだと…」
その表情から真意を掴みきれない本田と杏子に、冷たい汗が走る。だが獏良だけは、その顔を崩さずにペガサスを見据えていた。
「なんなら少しだけ見せてあげまショウか?…その世界を…」
ペガサスは左手で、幕のように下ろした銀色の前髪を上げた。そこには黄金に輝く千年眼がペガサスの瞼を押し開けて覗いている。
その千年眼が光りを放って三人を捕らえてしまえば、部屋は闇に包まれ、本田達は足元から意識を溶かされて身体ごと何処かへ落とされてしまった。
「…あぁ!」
声を上げるのも束の間、目の前は闇に包まれた。
名前はベッドの中で酷く魘されていた。滲んだ汗にハッと目を開けると、暗い石造りの部屋に立っていた。
『…!こ、これは…?』
突然の状況に、すぐこれが夢であると理解する。それでも靴底越しにも伝わる冷たい石の感覚と、肩を撫でる冷ややかな空気が名前の身体に現実味を持たせる。
目の前には二つの石棺が並び、片方は蓋がされておらず、中身も空だった。しかし左側の石棺は蓋がされ、様々な宝飾や壁画が施されている。…それも、文字や絵の雰囲気からして古代エジプトを連想させた。
『な、に…これ…』
ゾワリとした冷たいものが背中を撫でた。
石棺の奥にある壺から異常なまでに重々しい空気を感じて、一歩たりとも足を動かす事ができない。それでも無意識に手が伸び、それを運ぶように足が一歩、また一歩と前に進んでいく。
『やだ、やめてよ…身体が勝手に…』
棺の蓋に手をやったとき、突然どこかからかの光に包まれてまた視界を失った。
『…────!!!!』
***
「怖かった〜〜」
獏良が半泣きで、自身の目隠しを外した。すっかり目が闇夜に慣れて、窓を開ける本田が目に入る。杏子は既に中へ入ったようだ。
「グズグズしている暇はないぜ。早いとこ調べるんだ。」
しかし、いくらその部屋を捜索しても、何かしら出て来る気配は無かった。
「本田、何もないわよ。」
「そんなはずは…」
「これ…何かな」
獏良の声に二人は駆け寄って、彼が見上げるものを同じ様に見た。
厚いベルベットの幕の中に、金色の額縁だけが僅かな光に反射している。
「何かの絵みたいだな。」
「暗くてよく見えないわ…」
そこへ突然、パッと部屋の明かりが着いた。
「ッ、誰だ?!」
本田が声を上げて振り返るが、三人が見渡す限り誰も部屋には居ない様子だ。しかし杏子と獏良はすぐに絵に向き直る。
「…ずいぶんキレイな人だけど、誰の肖像かしら?」
杏子がその絵の人物を見上げると、獏良は夕食の席の事を思い出していた。
「居間にも同じ絵があったよ。」
「ペガサスに、何か関係あるのかしら…」
三人の目はその絵に釘付けになり、背後に迫る陰に気付くのが遅れてしまった。
「フフフフ…」
聞き覚えのある不敵な笑い声に、三人は心臓を掴まれたような驚きを持って振り返った。
「ペガサス!!!」
杏子の口が真っ先に開いた。ペガサスは腕を組んで、罠にはまった獲物を見るような目で三人を見渡している。
「チッ…バレてたのか!」
本田は二人を守るように、最悪手を出す覚悟で前に出る。しかしペガサスはため息混じりに笑うだけであった。
「ユー達の行動など、全てお見通しデ〜ス。」
「だったら話しは早いぜ…!ペガサス!テメェがイカサマしてるのは分かってるんだ!証拠を隠そうとしたってムダだぜ!」
本田が指を立てて挑発まがいにペガサスへ捲し立てるが、それでもペガサスは優位な立場を示すように笑う。
「フフフ…私にはそんな事をする必要は無いのデ〜ス。なぜなら、私はユー達の想像を絶する世界に身を置くのデスからね。」
「なんだと…」
その表情から真意を掴みきれない本田と杏子に、冷たい汗が走る。だが獏良だけは、その顔を崩さずにペガサスを見据えていた。
「なんなら少しだけ見せてあげまショウか?…その世界を…」
ペガサスは左手で、幕のように下ろした銀色の前髪を上げた。そこには黄金に輝く千年眼がペガサスの瞼を押し開けて覗いている。
その千年眼が光りを放って三人を捕らえてしまえば、部屋は闇に包まれ、本田達は足元から意識を溶かされて身体ごと何処かへ落とされてしまった。
「…あぁ!」
声を上げるのも束の間、目の前は闇に包まれた。