王国編 /1
名前変換
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遊戯は自分が闇の人格に触れた瞬間の事を何度も反復していた。
闇の人格の遊戯は、海馬の狂気とも言える煽りに乗って勝利を選んだ。それを表の人格の遊戯が引き止め、結果闇の人格の遊戯のデュエルを邪魔してしまったのだ。
「(しかたなかった。…もしあれ以上デュエルを続けていたら、海馬くんが、名前が…。)」
あの、杏子の呼び掛けに呼応して、表の遊戯は闇の遊戯の腕を引いた。
『やめて 遊戯!』
───杏子の声がまだ脳内に響き渡る。
───身の危険も顧みず城壁の窓から飛び降りた名前の顔が目から離れない。
「(だけど…僕が、もう1人の僕の邪魔をしてしまった事には変わりないんだ…。僕は、もう1人の僕がいなければ何もできないのに…!それなのに…!)」
こうしている間にも太陽は水平線に半分ほども沈み、タイムリミットまで刻々と時は進む。群青の空は水平線に向かってオレンジに輝き、遊戯の頬を伝って落ちる涙が一筋の光となって落ちていく。
「私があの時、遊戯を止めてさえいなければ…」
未だ顔を上げない遊戯に 杏子の顔色も段々と冴えず、後悔の念が浮かんでくる。
「気にすることねぇぜ。それに、止めに入ったのは杏子だけじゃねぇ。…名前にも止める理由があったんだ。杏子も、同じ理由で身体が先に動いちまったんだろ?」
「城之内…」
杏子は顔を上げて城之内を見ると、城之内は自分のグローブからスターチップを外していた。そして膝を落としたままの遊戯の前に膝をついて視線を合わせ、それを遊戯に差し出す。
「遊戯、俺のスターチップを持っていってくれ。もともと俺は、遊戯のスターチップで参加したワケだしよ。こいつは遊戯のモンだぜ。…まだ時間切れになったわけじゃねぇ。俺はこれからでも、必死こいてデュエルして集めてくる!…さぁ遊戯、受け取れよ。」
だが、遊戯の目は遥か遠くを見たまま微動だにする事ができない。差し出した手に視線すら動かさない遊戯に痺れを切らした城之内が、グッと眉間に力を入れて遊戯の胸倉を掴んで立ち上がった。
「おい遊戯!黙ってないで何とか言えよ!」
いきなりの乱暴な行為に杏子が「ちょっと城之内!」と口を挟むが、城之内に聞く耳はない。
「じいさんがどうなってもいいって言うのかよ?!」
それでも遊戯は目を逸らしている。杏子はただ遊戯を城に行かせるという名前との約束の為に、そして海馬とのデュエルを止めた責任感から、どうにかしなくてはと思惑していた。
「こんな所でなにやってんの?」
思い掛けない声に、遊戯を除く全員が振り返った。舞が階段の前に立っている。
「舞さん!」
舞は城之内のグローブに視線をやる。
「あら?城之内、アンタ スターチップ10個集めたの?」
「ああ…だけど今から、半分になっちまう所でよぉ…」
城之内が目を泳がせながら遊戯を見る。舞はハッとして遊戯を見た。
「まさか…遊戯…?」
***
名前は黒服に連行されて城の中を歩いていた。城門の入り口に留まる海馬が見え、自然と追いつく。
海馬はスターチップ10個を開門レバーに差し込んでいた。そして開門前、横に立った名前に目を向けた。
「…!、名前」
目の上くらいまである前髪で顔色は伺えないが、名前はまっすぐ前を向いたまま海馬の方をチラリとも見ようとはしなかった。業を煮やした海馬がその肩に触れようとすと、名前は避けてやっと目を合わせた。
「…!」
海馬は身体の芯から何かに突かれたような衝撃を感じた。名前は涙こそ見せてはいないが、眉間にシワを寄せて目を細めている。鼻の頭を赤くして、下唇を噛んでいた。
…海馬は彼女の表情から、一体何を受け取れば良いのかわからなくなってしまったのだ。
自分が名前に一体何をしてしまったのか。杏子が言っていた事が脳裏にこだまする。
「…海馬、もうあんな事しないで。」
名前は小さくも確かに、震える声でそう言った。
海馬が何か応える前に海馬の入る扉とは別の城門が開かれ、黒服の男達が名前を連行して先に中へ入ってしまう。
「海馬…!」
「…!名前、」
名前は出来る限り振り返って、黒服の男達の隙間から海馬を見ていた。海馬も自然と手を伸ばす。
「ペガサスと闘っては駄目…!モクバ君は私が助けるから…!お願い…!」
「…待て!名前!」
しかし鉄の扉は再び固く閉ざされ、2人は再び遠く隔てられてしまう。
名前との別れが、海馬に 淋しさのような恐ろしいほどの虚無感を与えた。もはやそれを『何故だ?』とは自問しない。塔の上で死の影が足元に差し迫ったとき、海馬は名前を異性のパートナーとして欲している事を自覚したのだ。…だが恋愛など陳腐な言葉にするつもりはない。自覚した以上、海馬の描く未来のロードに名前を書き加えるだけである。
だがそれも今は、全てにおいて危機的状況にある事が眼前の問題であった。
モクバを人質に取られ、海馬コーポレーションは乗っ取りの危機、そして今や名前ですらどうなってしまうか分からない。
ペガサス…!
現状に至る全てにおいての根悪を、海馬は倒すと誓ったのだ。
「(ペガサスは俺が倒す!名前に闘わせる事などさせん)」
スターチップを城門のレバーに嵌め込み終わると、それを回してその扉をあけ広げた。
そして長く続く廊下へ足を踏み入れ、一直線に歩みを進める。
「(ペガサス…!今 行くぞ!!!)」
***
「ビューティフル」
ペガサスはモニターを見てワイングラスを掲げた。
「は?」
側に仕えるクロイツが返すと、ペガサスは不敵に笑う。
「噴き上がる怒りの炎が手に取るように見えマ〜ス。なんとも美しい光景ではありませんか。引き離された若い男女…そして私へのとびきりの憎悪。」
ペガサスはグラスに口をつけて一口あおった。
「私はこの、とびきりの憎悪を向けられるのが大好きなのデ〜ス。」
闇の人格の遊戯は、海馬の狂気とも言える煽りに乗って勝利を選んだ。それを表の人格の遊戯が引き止め、結果闇の人格の遊戯のデュエルを邪魔してしまったのだ。
「(しかたなかった。…もしあれ以上デュエルを続けていたら、海馬くんが、名前が…。)」
あの、杏子の呼び掛けに呼応して、表の遊戯は闇の遊戯の腕を引いた。
『やめて 遊戯!』
───杏子の声がまだ脳内に響き渡る。
───身の危険も顧みず城壁の窓から飛び降りた名前の顔が目から離れない。
「(だけど…僕が、もう1人の僕の邪魔をしてしまった事には変わりないんだ…。僕は、もう1人の僕がいなければ何もできないのに…!それなのに…!)」
こうしている間にも太陽は水平線に半分ほども沈み、タイムリミットまで刻々と時は進む。群青の空は水平線に向かってオレンジに輝き、遊戯の頬を伝って落ちる涙が一筋の光となって落ちていく。
「私があの時、遊戯を止めてさえいなければ…」
未だ顔を上げない遊戯に 杏子の顔色も段々と冴えず、後悔の念が浮かんでくる。
「気にすることねぇぜ。それに、止めに入ったのは杏子だけじゃねぇ。…名前にも止める理由があったんだ。杏子も、同じ理由で身体が先に動いちまったんだろ?」
「城之内…」
杏子は顔を上げて城之内を見ると、城之内は自分のグローブからスターチップを外していた。そして膝を落としたままの遊戯の前に膝をついて視線を合わせ、それを遊戯に差し出す。
「遊戯、俺のスターチップを持っていってくれ。もともと俺は、遊戯のスターチップで参加したワケだしよ。こいつは遊戯のモンだぜ。…まだ時間切れになったわけじゃねぇ。俺はこれからでも、必死こいてデュエルして集めてくる!…さぁ遊戯、受け取れよ。」
だが、遊戯の目は遥か遠くを見たまま微動だにする事ができない。差し出した手に視線すら動かさない遊戯に痺れを切らした城之内が、グッと眉間に力を入れて遊戯の胸倉を掴んで立ち上がった。
「おい遊戯!黙ってないで何とか言えよ!」
いきなりの乱暴な行為に杏子が「ちょっと城之内!」と口を挟むが、城之内に聞く耳はない。
「じいさんがどうなってもいいって言うのかよ?!」
それでも遊戯は目を逸らしている。杏子はただ遊戯を城に行かせるという名前との約束の為に、そして海馬とのデュエルを止めた責任感から、どうにかしなくてはと思惑していた。
「こんな所でなにやってんの?」
思い掛けない声に、遊戯を除く全員が振り返った。舞が階段の前に立っている。
「舞さん!」
舞は城之内のグローブに視線をやる。
「あら?城之内、アンタ スターチップ10個集めたの?」
「ああ…だけど今から、半分になっちまう所でよぉ…」
城之内が目を泳がせながら遊戯を見る。舞はハッとして遊戯を見た。
「まさか…遊戯…?」
***
名前は黒服に連行されて城の中を歩いていた。城門の入り口に留まる海馬が見え、自然と追いつく。
海馬はスターチップ10個を開門レバーに差し込んでいた。そして開門前、横に立った名前に目を向けた。
「…!、名前」
目の上くらいまである前髪で顔色は伺えないが、名前はまっすぐ前を向いたまま海馬の方をチラリとも見ようとはしなかった。業を煮やした海馬がその肩に触れようとすと、名前は避けてやっと目を合わせた。
「…!」
海馬は身体の芯から何かに突かれたような衝撃を感じた。名前は涙こそ見せてはいないが、眉間にシワを寄せて目を細めている。鼻の頭を赤くして、下唇を噛んでいた。
…海馬は彼女の表情から、一体何を受け取れば良いのかわからなくなってしまったのだ。
自分が名前に一体何をしてしまったのか。杏子が言っていた事が脳裏にこだまする。
「…海馬、もうあんな事しないで。」
名前は小さくも確かに、震える声でそう言った。
海馬が何か応える前に海馬の入る扉とは別の城門が開かれ、黒服の男達が名前を連行して先に中へ入ってしまう。
「海馬…!」
「…!名前、」
名前は出来る限り振り返って、黒服の男達の隙間から海馬を見ていた。海馬も自然と手を伸ばす。
「ペガサスと闘っては駄目…!モクバ君は私が助けるから…!お願い…!」
「…待て!名前!」
しかし鉄の扉は再び固く閉ざされ、2人は再び遠く隔てられてしまう。
名前との別れが、海馬に 淋しさのような恐ろしいほどの虚無感を与えた。もはやそれを『何故だ?』とは自問しない。塔の上で死の影が足元に差し迫ったとき、海馬は名前を異性のパートナーとして欲している事を自覚したのだ。…だが恋愛など陳腐な言葉にするつもりはない。自覚した以上、海馬の描く未来のロードに名前を書き加えるだけである。
だがそれも今は、全てにおいて危機的状況にある事が眼前の問題であった。
モクバを人質に取られ、海馬コーポレーションは乗っ取りの危機、そして今や名前ですらどうなってしまうか分からない。
ペガサス…!
現状に至る全てにおいての根悪を、海馬は倒すと誓ったのだ。
「(ペガサスは俺が倒す!名前に闘わせる事などさせん)」
スターチップを城門のレバーに嵌め込み終わると、それを回してその扉をあけ広げた。
そして長く続く廊下へ足を踏み入れ、一直線に歩みを進める。
「(ペガサス…!今 行くぞ!!!)」
***
「ビューティフル」
ペガサスはモニターを見てワイングラスを掲げた。
「は?」
側に仕えるクロイツが返すと、ペガサスは不敵に笑う。
「噴き上がる怒りの炎が手に取るように見えマ〜ス。なんとも美しい光景ではありませんか。引き離された若い男女…そして私へのとびきりの憎悪。」
ペガサスはグラスに口をつけて一口あおった。
「私はこの、とびきりの憎悪を向けられるのが大好きなのデ〜ス。」