/ Domino City side
名前変換
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ヘリを着陸させたのはスタジアムのど真ん中。ここから歩いて街に行ってパズルカードを勝ち取って戻ってくるには相当時間が掛かる。それを承知の上で海馬は名前を決勝の舞台であるここへ降ろした。
「いや何かのいじめでしょ、完全に」
青い顔で詰め寄る名前に海馬は素知らぬ顔。さっさとシートベルトを外すなり、名前を押し除けてドアを開け放つ。
ドアが開いた途端に風が吹き込むが、それも回転翼がゆっくりと動きを止めるまでの間だけ。段々と間延びする風を切る音に髪を掻き上げれば、海馬の不穏な声が降り掛かった。
「なぜ貴様がここに居る」
は? と顔を上げてドアから顔を出す。風に煽られて細めた目に、同じく風に大きくはためいた白い服が飛び込んだ。
「───イシズ」
海馬の呼びかけに、イシズが顔を上げた。真っ直ぐ見つめたのは声をかけてきた海馬にではない。その後ろ─── 名前に、その目は向けられていた。
***
「まさか姉さんが会場一番乗りとはね。……いや、千年タウクの見せる未来に従うならば、当然か……」
灯りのついていないスタンド席で、マリクとリシドが闇に紛れてその様子を伺っていた。それぞれの腕にはデュエルディスクが付けられ、千年ロッドと千年秤が僅かな光をも反射してその存在を誇張する。
「なぁリシドよ、お前が僕の父上と交わした契約を、忘れてはいないだろうな?」
「はい、マリク様」
「フッ…… それならいい」
リシドが手にしている千年秤にマリクは横目を僅かに細た。
「僕は、我が一族が三千年もの間受け継がれた呪われし定めに終止符を打つつもりだ。……遊戯の命と引き換えにね。あの闇の象徴を守るために、我が一族は多くの犠牲を払わされてきたのだ。
太陽神ラーの力で、遊戯を再び真の闇に葬ってやる。それが僕が自由を手にする、唯一の方法なんだ」
***
「───」
静かに見合っていたイシズが目を逸らす。その視線に名前も海馬も敏感に反応した。
「磯野。カクテルライトを」
「はっ?」
「ライトでスタンドを照らすんだ!」
は、はい! と磯野が返事をしてすぐ、無線で磯野が点灯を指示する。ライトが一斉にスタンド席を照らすと、名前も海馬も見える限りのスタンド席を見渡した。
「(ネズミめ……)」
海馬が小さく鼻で笑うと、視界の端でスタジアムに向けて歩いてくる影が蠢いた。ライトで照らされた中に真っ直ぐ進むその集団─── 遊戯と城之内、そして舞。その後ろをさらに4人がついて歩く。
「遊戯、……」
ヘリから飛び降りた名前が海馬の近くに寄ってその一団に顔を向ける。遊戯の後ろで、海馬と名前が対峙する人物に気がついた杏子が小さく声を上げた。
「……!(あの人は)」
「杏子?」
歩きながら振り返る遊戯にハッとして、杏子は口を継ぐむ。もう1人の遊戯と約束したのだ。……イシズの事は、いつもの遊戯には内緒だと。
小さく首を傾げる遊戯が正面に向き直って海馬と名前に歩み寄る。だがそこまで来たところで、イシズの首に光るものが目に入ってたしまった。
「(───! あれは、千年アイテム!)」
心の騒めきに反応したのか、その影から闇人格の遊戯が様子を覗いていた。
「海馬君、その人は……」
「……」
聞いていないのか、答える気がないのか、海馬は黙ってイシズを睨むばかり。早々に諦めた遊戯が名前に声を掛けようとしたところで、海馬がイシズに向けて口を開いた。
「バトルシティ予選を通過した者だけが知り得る決勝トーナメントの舞台…… ここはデュエルキングの称号を賭け強豪どもが集う場所だ。そこに立っていたということは、まさか貴様もそれに参戦しようとでも言い出すつもりか?」
名前も海馬の横に立ってイシズと目を合わせる。その首に輝く千年タウク─── そしてその腕に確かに付けられたデュエルディスクを眺めたあと、怪訝な顔を上げた。
「この千年タウクには、未来を見通す力が秘められています。“この大会の決勝参加者がどこに集まるか”など、
「フン……未来ねぇ。また例のオカルトグッズか。貴様らの下らん冗談は聞き飽きたぞ。美術館でこのオレにオベリスクを託し、グールズの殲滅を頼んできたのは誰だ? それが……そのために開催したこのトーナメントに貴様が立とうとはな」
この大会が海馬とイシズとの共謀だったと知った遊戯と城之内に波風が立つ。だが海馬も名前もそれに少したりとも気にする素振りは見せず、またイシズも、海馬の威圧的な態度にも臆さない。
イシズはゆっくりと目を閉じる。そして意を決したようにその口をもう一度開けた。
「……デュエリスト達を襲い、世界を暗躍するグールズの総帥こそ、
デュエルディスクからイシズは4枚のパズルカードを取り出した。それを目にした名前が、最初から自分を刺すように見つめていたイシズの意思を悟った。
「あなたもパズルカードは4枚。名前さん、私はたった今─── あなたにデュエルを申し込みます」