/ Domino City side
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『(クソッ、クソォ…… 所詮器は器。器の遊戯を葬ったところで、憎き
器の人格の遊戯と入れ替わったターン、遊戯は城之内から預かっていたカード《
遊戯の手札はこれで5枚。場には《ビッグ・シールド・ガードナー》と《クリボー》の2体が出ている。この2体を生贄にすれば、レッドアイズは召喚できる……
「(僕は闘うよ。君の心を取り戻すために。僕たちの友情を証明するために!)」
遊戯はレッドアイズを手札に加えると、別のカードに手をかけた。
「(もう1人の僕、……僕が今からする事を、何も言わずに見守ってて欲しいんだ)」
『……! そのカードは!』
───僕は城之内君を信じる!
「いくよ…… 《エクスチェンジ》!」
互いの手札を見せ合い、その中から2枚を交換するカード。意外な魔法カードの使用に城之内が目を細める。
「へっ、手札を交換するほど手が悪いってことかよ。しゃあねぇな」
桟橋を一歩ずつ踏むたび、足枷についた鎖がサラサラと音を立てて城之内に付き纏う。城之内がフィールドを半周回って遊戯の元へたどり着くと、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「ケッ どうせロクなカードじゃ───」
遊戯の差し出した4枚の手札。その一番正面に出された《
「さぁ城之内君、この4枚の中から…… 欲しいカードを1枚持っていっていいよ」
『相棒……』
闇人格の方の遊戯が言葉にできないものを抱えて、震える顔を背けた遊戯をただ眺めた。
『ハッハッハッハ! 器の方はデュエリストとして未熟なのは知っていたが、ここまでとはね! わざわざレアカードを渡してくれるとは……フフフ』
マリクの声が城之内の頭に響く。『レッドアイズをいただきな」と。
「へ、へへ…… 当たり前だぜ、このカードがありゃ怖いもん無しよ」
城之内の指がレッドアイズのカードに向かう。やはりダメなのか……? レッドアイズをもってしても、城之内の心は取り戻せないというのか。
だがいつまで経っても、手札の中からカードは抜き取られなかった。次第に震えだす城之内に気がついて、遊戯は顔を上げる。
そこにいたのは、片手で頭を抱えて苦しむ城之内だった。
「な、なんで取れねぇ…… なんでだ!」
『どうした!
急かすマリクの声が城之内をさらに追い込む。
「う、ぐぅ…… く、───チクショウ!」
───!
城之内が取り上げたカード、それを見た遊戯の顔に希望が差した。
「城之内君!!!」
城之内が取ったのは《手札抹殺》。レッドアイズのカードの隣にあった魔法カードだった。洗脳したはずの城之内が自分の意思に背いた事に、マリクは眉を顰める。
『レッドアイズを奪わなかっただと─── なぜだ?!』
「僕も、城之内君の手札から1枚引かせてもらうよ」
遊戯は城之内の手札から《マジックアーム・シールド》を引く。自分の場に戻る城之内の背中に、遊戯は真っ直ぐ目を向けた。
「城之内君! 僕にははっきりわかったよ。キミは真のデュエリストの心を失ってはいないって事が。……キミはバトルシティで、僕とデュエリストのプライドを賭けて闘う誓いを立てたね。キミはその時まで、大切なレッドアイズのカードは手にしないって決心したんだよね」
「……うるせぇ」
「だからレッドアイズを奪うことができなかったんだ」
「うるせぇって言ってんだよ! ウダウダ言ってんじゃねぇ!」
「僕は確信したんだ。このレッドアイズなら、キミのデュエリストの心を呼び覚ますことができるって」
舌打ちをして場に付いた城之内に、遊戯は唇を噤んで決心を固めた。僕たちはいつまでも友達だ。だから今こそ、このカードを出すのだと。
「僕のターンは終わってないよ。2体のモンスターを生け贄に捧げ─── 《
召喚された
「城之内君、このレッドアイズの紅い目が悲しみの色に染まっているのが、キミにはわかるはずだよ」
意を決した遊戯の目には涙が浮かんでいた。それを振り払うように、遊戯が手を握る。
「レッドアイズもキミにデュエリストの心を取り戻して欲しいと願っている。───だから、……だから闘うんだ!」
攻撃宣言に呼応してレッドアイズが咆哮を上げる。ワイバーンの戦士を撃破された城之内に、遊戯がもう一度声を上げた。
「城之内君……!」
城之内(LP:2400)
「うぅ……ッ」
『なにしてる城之内!』
戸惑いにも似た城之内の心の揺らぎにマリクが苛立たしげに千年ロッドを振り上げる。
頭に直接響くマリクの声に、遊戯に向けてあげられた城之内の顔はさらに険しくなっていた。
「……どうって事ァねぇよンな攻撃。オレの次のターン、テメェはもう終わりだ遊戯!」
『そうだ! ヤツを潰せ、潰せ!』
強まるマリクの意思に闇人格の方の遊戯が表の遊戯の心を叩く。
『相棒! これ以上は危険だ。オレが行くぜ!』
「(ううん…… 僕に最後まで戦わせて)」
遊戯は千年パズルを首から外した。その鎖を手に真っ直ぐ城之内を見る遊戯に、闇人格の方の遊戯が戸惑う。
「(僕は、……親友が欲しいって千年パズルに願った。そして心の中でキミと出会うことで、僕は勇気を与えてもらった。大切な友達も出来たんだ。
でも、ずっと心のどこかで、……もし僕がキミと出会うことがなかったら、今も昔みたいな弱虫の僕のままだったんじゃないかって……そんな気がしていたんだ)」
『……』
精神世界の中で、2人の遊戯が確かに向き合っていた。
「(だからこのデュエルだけは、自分の力で城之内君の心を取り戻してみせる!)」
『相棒……』
「(だからお願い。このまま見守っていて、もう1人の僕。たとえ命を失う危険があったとしても、僕は最後まで城之内君を信じる。)」
闇人格の遊戯は少し悩んだが、相棒の目になにを言っても無駄だと理解していた。
『そこまで言うなら、オレはもう引き止めはしない。ただ─── 絶対に死ぬな! もう1人のオレ!』
「(……! うん、ありがとう。もう1人の僕)」
遊戯は視線を城之内に戻して向き直る。手にぶら下げた千年パズルが揺れていた。このまま体から離してしまえば、もう1人の自分と心を入れ替えることができなくなる。
「(僕はいつも、もう1人の僕に守ってもらってばかりいた。だけど僕が強くならなきゃ、キミは永遠に僕の心から離れることはできない)」
千年パズルをぶら下げる鎖を握った手に力が入る。いずれ別れる時が来るのだと、遊戯にはわかっていたのかもしれない。
「(ここからは、……僕自身の戦いなんだ!)」
***
「オレはブルーアイズを攻撃表示のままターン終了だ」
(手札2)
「ふぅん、大口を叩く割に何もしないなんて。あぁ…… 自分が死ぬ覚悟でもできた? 私を生かすために」
クスクスと笑う名前に海馬が舌打ちをする。それを少しも気にするでもなく、名前はデッキに手を伸ばした。
「海馬、自分のターンで何もしなかった事……きっと後悔するよ。私が新しく組み始めていたデッキ、その力の一端を、いま見せてあげる。」
「……!」
やはり何か来ると海馬が身構えた。
「私のターン、ドロー!
(手札1→2)
リバースカードオープン、
フィールドの《シャドール・リザード》と、手札の光属性《太陽の神官》を融合する
(手札2→1)
現れろ……これが
エルシャドール・ネフィリムが召喚に成功したことで、デッキから「シャドール」と名のつくモンスター1体を墓地へ送る。
私は《シャドール・ビースト》を墓地へ。そして《シャドール・ビースト》の効果、このモンスターが墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローできる」
(手札1→2)
「だが攻撃力ではオレのブルーアイズの方が上だ」
「私が何も考えずに融合召喚するとでも思ってるの?
エルシャドール・ネフィリムの効果! 特殊召喚されたモンスターとのバトルでは、ダメージ計算を無視してそのモンスターを破壊できる!
いま海馬のフィールドにいるブルーアイズは、《ドラゴンを呼ぶ笛》で特殊召喚されたブルーアイズ。つまり効果対象ということ。……残念だったわね」
「───! それを計算尽くで……」
ネフィリムの攻撃が突き刺さり、咆哮を上げたブルーアイズが砕け散った。海馬のフィールドはガラ空き。次のターンで守備を固めないと、本当に名前の心を解放する前に自分の身の心配をしなくてはいけなくなる。
「クソッ…… オレのターン!」
(手札2→3)
「モンスターを裏守備表示で召喚し、リバースカードをセット。……ターン終了だ」
(手札3→1)
裏守備で出したのは《ジャイアント・ウイルス》。さらに《収縮》も伏せた。
「(少なくともこれで次のターンは凌げる……!)」