/ Domino City side
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高層ビルのさらに屋上、吹き抜けの天井として嵌め込まれたガラス窓の上に4人が対峙した。晴天に浮かぶ白い雲が反射し、空の上に立っているかのような場所が、いま戦いの場となる。
「よく来たな、お前ら」
小男の方がそう笑う。フードで隠れていた顔が上げられ、それぞれの顔が露わになる。
「フフフ、紹介がまだだったな。俺たちはグールズの刺客……光の仮面!」
「闇の仮面」
顔の右半分を笑い顔の白い仮面に隠した小男と、顔の左半分を怒り顔の黒い仮面で隠した大男。
「俺たちはゴッドカードを狩るために結成されたタッグチームだ」
遊戯も海馬も特段驚くでも反応を見せるでもなく、ただ淡々とその男達を前にする。
「対戦方法は2対2のタッグデュエルだかんな。ライフポイントを失ったデュエリストはゲームから外れ、先に相手の2人を倒したチームの勝ち。
……だが気ぃつけな。ゲームを外れるってことは、死を意味するかんな。我々が立っている場所は130メートルのビルの屋上。しかも足元のガラスの下は、1階まで吹き抜けだ」
よく晴れた空を映し出すガラスの向こう、自分たちの陰になった光の裂け目からは、光の仮面がいう通り1階まで吹き抜けとなったフロアの断面図が見える。
「つまり俺たちの命を支えているのは、この透明なガラス板のみってことだ。デュエリストが立つ4つのブロックには、それぞれ爆破装置が置かれている。
ライフカウンターが0になった瞬間に、プレイヤーの足元の爆破装置が作動! 足場となるガラスが爆破され、プレイヤーはビルの屋上から落下する!
『落ちたら即おしまい。爆破タッグマッチ』だ! おもろ! グフフ、アハハハハ! ……ブルって声も出ないか?」
「フン、言いたいことはそれだけか」
長々とご高説よろしくルール説明をしてくれた光の仮面に、海馬は鼻で笑って一蹴した。
「貴様ら、名前はどうした! 人質にした城之内君達やモクバも安全なんだろうな?!」
遊戯の口から名前の名前が出たことに海馬が視線を向ける。光の仮面と闇の仮面は、2人が名前の所在を知らないと見るや顔を見合わせて笑った。
「あの女が一番先に捕まってんのに、お前ら知らなかったのか! グフ、グフフ、こりゃ傑作だぜ」
「まあ、万が一にもお前達が勝つようなことがあれば、もちろん無事に返してやるさ。……少なくともオレ達が捕まえた人質はな」
不安は的中していた。だが海馬を責めるわけにもいかない。遊戯は色々なこみ上げるものを堪えて手を握りしめる。
「貴様らグールズにも、最低限のプライドは残されているようだな」
わずかに震える海馬の声に、遊戯は顔を上げた。見れば、海馬も同じように握り締めた手を震わせている。
「ならば怒りの臨界点を超えたオレのデッキが応えてやる!」
「海馬……」
「(フフッ 俺たちに勝てると思ってるのか? あらゆる能力を封じ込める俺の仮面デッキには、神のカードと言えど通用しないんだかんな)」
「(我ら光と闇のダッグチームの前では、貴様らに勝つ手段などない!)」
「いくぜ! デュエルだ!」
せせら笑う光と闇の仮面と対峙して、遊戯と海馬がデュエルディスクディスクを起動させた。
「俺の先行だかんな!」
光の仮面のターン、先行ドローの後、カードを2枚伏せるだけでエンド宣言をした。
警戒心を見せる遊戯のターン、遊戯は《
「(タッグデュエルディスクでは、すべてのプレイヤーは1ターン目の攻撃ができない。ヤツらは一体どんな戦略でくるのか……)」
「俺のターン、《シャイン・アビス》(★4・攻/1600 守/1800)守備表示」
闇の仮面がモンスターを召喚した途端、光の画面が高笑いを上げた。
「相棒のモンスターが召喚された瞬間……
「ヘッヘッヘ、あの仮面カードによって俺のモンスターはパワーアップするのだ!」
《シャイン・アビス》(★4・攻/2600 守/1800)
光の仮面のサポートにより、闇の仮面のフィールドに1ターン目から攻撃力2600のモンスターが出現する。
「だが厄介なことに、このモンスターはスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのライフコストが掛かっちまうんだが……」
「へっ 心配はいらないぜ相棒」
まるで茶番劇でも見せられているかのようなやりとりのあと、闇の仮面が手札から魔法カードを出す。
「永続魔法《仮面人形》。これで我々に降りかかる仮面の呪いは、全てこの人形が受けてくれる」
「グフフ…… つまり《凶暴化の仮面》の維持コストも無効となるってワケか。最高だぜ相棒」
まるで力を誇示するかのように、2人の仮面の男は半分だけ見せる口元に笑みを浮かべた。
「ヘヘッ 見たか。これが俺と相棒のコンビネーションプレイだ!」
「……なるほど。ヤツらはタッグデュエルならではのチームワークを活かした戦略を立ててるってワケか」
「フン、くだらん」
一生に伏す海馬に遊戯が目を向ける。その視線に海馬も目を向けながらも、その内心は「さっさとデュエルを終わらせる」ことにのみ向けられていた。
「いくぞ、オレのターン! リバースカードをセット、さらに《ブラッド・ヴォルス》(★4・攻/1900 守/1200)を攻撃表示でターンエンドだ」
「(攻撃表示…… 相手の攻撃を誘い、リバースで迎え撃つつもりか)」
遊戯の思惑通り、海馬は手札に来ている六つ星モンスターのカードをチラリと見た。次のターンでブラッド・ヴォルスを生け贄にしモンスターを召喚する。
だがその戦略を読めないほど相手は甘くない。
「(だが、そううまくはいかないかんな)」
遊戯も海馬の戦略を読んだ上で、さらに相手がそれを読んで手を打って来るだろうとも読んでいた。
「(奴らの余裕は、タッグデュエルの戦略を持つ者の自信。それに対し、海馬は一人で闘えると考えている。……こんな状態で、名前や城之内君たちを救うことができるのか……?!)」
***
「(海の匂い…… きっと港近くの倉庫街なんだわ)」
どうしようもない事を悟って、名前は膝を抱えて座り込んでいた。大人しくしてみて、初めて窓から入り込む風に海と、そしてほんの少しの石炭と重油の匂いを感じる。
『アンタたち、こんな事してタダで済むと思ってんの?!』
その声にハッと顔を上げると、ドヤドヤと近付いてくる足音のあと鉄の扉の鍵を開ける音が部屋に響いた。
「キャッ……!」
バタンと開け放たれた扉と同時に杏子が押し込まれる。名前が立ち上がると同時に扉は閉められ、また鍵がかけられた。
「ちょっと待って! アタシをどうする気なの?!」
扉を叩く杏子を前に、「はぁ……」とまた息を吐く。多分まだ名前に気付いていないんだろう。
「杏子」
「名前!?」
振り返った顔は、やはり想像通りのものだった。見つめ合う間にも、扉の向こうからは男たちの足音が遠のく。
「杏子まで捕まったのね……」
眉を下げるしかできない名前に、扉の向こうからさらに鉄の引き戸を閉めるような音が響く。
「アタシだけじゃないわ、城之内もどこかへ連れて行かれちゃったのよ」
「城之内が?」
「ええ」と肩を落とす杏子。しばらくの沈黙のあと、杏子は名前の腰にあるべきものが無いことに目が向いた。
「名前、千年秤は?」
痛いところを突かれたように名前は顔をしかめた。返事を待たずとも、それがなにを意味しているか分からないほど杏子も鈍感では無い。
「まさか」
「奪われたみたい。私が気を失ってる間にね」
「そんな……」と顔色を変える杏子。千年秤の次は杏子。そして城之内までどこかへ連れて行かれたとなると、遊戯にも何かあったに違いない。
「あーもぅ、どうにかここから出られないかしら」
不安げな目であたりをキョロキョロと見回す杏子に、もう先に部屋を調べ尽くした名前が両の手を上げる。
「無理よ。どこにもでられそうな所は───」
「あの窓は?」
天井近くにある窓。それを指差す杏子に、名前はただ怪訝な顔をするしかできない。あんな高い所、一体どうやって……
名前が何を言いたいのか分かっているらしく、杏子は積み上げられた段ボール箱に駆け寄った。
「これを積み上げればいいのよ!」
「えぇ……」
「やってみなくちゃわかんないでしょ。諦めちゃダメよ」
***
「(光のやつはモンスターカードを出してこない……! 仮面カードで敵モンスターの能力を徹底的に封じる作戦か?!)」
遊戯のフィールドのモンスター《
遊戯のターン、《呪魂の仮面》の効果により遊戯はライフダメージを受ける。
遊戯(LP:3500)
「くっ……ドロー!」
「(呪魂の仮面で攻撃も守備も封じられたとは言え、遊戯はそのモンスターを生け贄にする事ができる。オレならば生け贄にして、上級モンスターを召喚する)」
「(だが、なにかイヤな予感がする……!)」
海馬が遊戯に向ける視線に、おそらく同じ事を考えているとデュエリストとして遊戯は感じ取っていた。だが遊戯は海馬以上に、奴らの巧妙なタクティクスに敏感に反応を見せている。
それでも、手を拱いているわけにもいかない。たとえ罠が張られていると分かっていても、攻めの姿勢を選んだ。
「よし、
遊戯のリリース宣言の瞬間、光の画面が大きく口を開けた。
「ヒャーハハハ!
「くっ!」
やはり来たかと歯を食いしばるが、開けられたカードは遊戯が想像していたよりも重篤な影響のあるものだった。
「永続
「なんだと?!」