/ Domino City side
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「この僕が─── この僕が負けるなんて!」
頭を抱えるマリクの背中を、リシドは黙って見つめていた。
***
「やった! 遊戯が勝ちやがったぜ!」
想像だにしなかった勝利方法で遊戯が勝ち残った事で、モクバが驚きと歓喜を上げて河川敷へと走り降った。呆然と膝から崩れ落ちて動かなくなった人形に寄ると、そのレアハンターを覗き込む。
「さぁ、レアカードとパズルカードを渡しな。おい…… おいってば」
一向に反応を示さない人形にため息を漏らすと、哀れみすら込めた目で頭を掻く。
「……まあ、あんな負け方すりゃショックだろうけどな」
目線を下げた先で、モクバの目に1枚のカードが目につく。それを拾い上げると、モクバは問答無用とばかりにデュエルディスクからパズルカードも抜き取った。
「遊戯、アンティールールにより、この《オシリスの天空竜》のカードは、勝者であるお前に渡してやるぜ。
ほらよ、パズルカードも受け取りな。」
2枚のカードを受け取る遊戯を見届けると、モクバは無邪気に笑った。
「だがな、オシリスのカードは、すぐに兄様のものになるだろうぜ」
ヘヘッと笑うモクバの宣言通り、遊戯の背後からは海馬が歩み寄ってくる。
「これが、神のカード……」
「遊戯」
振り返ると、海馬が既に目の前まで降りてきて遊戯を真っ直ぐに射抜いていた。
「これで貴様も、選ばれし神のカードの所有者というわけだ。オレにとって敵とは、常に最強でなければ気が済まない」
「海馬……」
「でなければ、貴様を倒す意味がないからな」
海馬の青い目に、遊戯の赤紫色の目が映る。今となっては、たとえ生まれつきであろうと名前の瞳と同じ色をしている事ですら遊戯は海馬の嫉妬心を揺さぶっていた。なぜそんな感情が湧くのかすら海馬にはわからない。だが理由がいくつあろうと、遊戯を潰したいという気持ちに変わりはないのだ。
そしていま、その理由がまたひとつ増えた。
「遊戯、分かっているな? バトルシティではデュエリストが対峙するとき、そこが闘いのフィールドとなる!」
「(オレがいま闘うべきはグールズ! 海馬ではない。……だが、やるしかないのか……?!)」
「『遊戯』」
「うわっ」
ヌルッと立ち上がった人形に、モクバが驚いて一歩後退する。
「まだ神のカードに未練があるのか? 諦めが悪いぜ、マリク!」
「『フフフ…… なぁに、神のカードはすぐまた僕の手に戻る。オシリスも、そしてオベリスクもね! それほど深刻に考えちゃいないさ。
それよりひとつ、言い忘れたことがあってね。……僕はじきに童実野町に到着する。同時に進めていた、ある計画のためにね』」
「ある計画……?」
「『いま、僕には3つの景色が見えるんだ。ひとつは人形の目を通して見える、貴様らの姿。もうひとつは街の雑踏…… これは街中に放ったレアハンターの視点だ。
フフフ…… 遊戯、お前の仲間が見える。城之内というデュエリスト、他に数人』」
「城之内君! みんな……!」
城之内の名が出た途端、遊戯の顔色が変わった。マリクは人形越しの視界に見えるその反応に、さらに追い討ちを掛けようと不敵に笑った。
「『そして、近付いてくる童実野町、これは僕自身の見る景色だ。……海沿いのデッキに佇んでる女が見えてるよ。苗字名前、元デュエルクイーンがね』」
「名前だと……!」
「貴様!」
遊戯のように海馬も顔を険しくする。
「『フフフ…… 僕は用意周到なのさ。海馬、貴様が神のカードを所有していると知った時点で、どこに弱点があるのかすぐに調べさせてもらったよ。まさか海馬コーポレーションの社長の弱点が、そこの小さい弟と“女”だとはね』」
「貴様、名前に手を出してみろ。海馬コーポレーションの総力を挙げて貴様を探し出し、必ず叩き潰してやる……!」
海馬が人形の襟ぐりを掴んで引き上げる。目の焦点の合わない人形に、遊戯は海馬を諌めた。
「よせ、ソイツはマリクが洗脳して操っている人形だ。本体は別にいる……!」
「くっ……!」
「『貴様らの大切なものを引き込めば、神のカードは簡単に取り返せる。グールズのレアハンターは、貴様らと、貴様らの大切な仲間をずっと監視していたのさ。……いつでも利用できるようにな』」
「どこまで汚いんだ、マリク!」
「『貴様のせいだよ。貴様がここで負けていれば、大事な仲間に不幸が訪れる事はなかったんだ。フフフ……』」
「許さねぇ……!」
『(決して許さないのは僕のほうだ。我が一族の苦しみ、憎しみは、まだまだこんなものではない。)』
海馬は人形の襟を離して地面に叩きつけた。尻餅をついてなお笑うマリクを遊戯と海馬が見下ろす。
「『さぁ遊戯、城之内を選ぶか、苗字を選ぶか…… 貴様がどちらを選ぼうと、早く仲間のもとへ急がないと、取り返しのつかないことになるよ!』」
ハハハハハハ!と笑いながら人形は倒れた。完全に意識のなくなった人形を前に、海馬はモクバに振り返る。
「モクバ、すぐに名前と城之内のデュエルディスクの信号を追跡しろ。オレは名前の携帯に電話をする」
「海馬」
「……あくまで城之内はついでだ。大会を安全に開催することが主催の責任だからな」
「すまない……」
「だが遊戯、名前と馬の骨の安全を確保した時は覚悟しろ。その時はオレのオベリスクとお前のオシリス、雌雄を決する時だ!」
***
「オシリスの天空竜はすぐに奪い返す。……僕の千年ロッド、コイツの力で、貴様らの大事なものをひとつずつ僕の手駒にしてやるさ」
船を港に寄せたマリクは、大型バイクに乗り込みエンジンを吹かせる。
港から街へ向かう道へ乗り上げ、颯爽と駆け抜けた。
「(死と破壊の神、太陽神ラーの眠りしデッキよ。
我に
***
海を眺めていた名前の背後に、重い足音が近付いてきた。振り向いた先を、風に靡いた赤い髪が視界を隠す。それを手でかきあげたとき、レアハンター達の被っていたマントを目深く被った大男が立っているのが目に飛び込む。
「───!」
フードの濃い陰の中、黄金色に光る瞳が名前を捕らえた。