/ Domino City side
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城之内は罠 カード《マジックアーム・シールド》で《空の昆虫兵》を撃破し、なんとかそのターンを凌いで羽蛾のライフを削ることも出来た。だが本当にその場凌ぎに過ぎない。
「城之内、いい加減悪あがきはよしたらどうだ? お前のデッキが戦士、獣戦士族で構築されてるのは調べがついてるんだよ…… パラサイドに対する免疫は皆無だってな」
「くっ…… このターンはなにも出来ねぇ…… 全てのモンスターを守備表示にしてターン終了だ」
「ヒヒヒ、どうやら本当に万策尽きたみたいだな。じっくり料理してやるぜ、僕のターン!」
コカローチ・ナイトを召喚してインセクト・クイーンの攻撃コストに充てると、羽蛾は城之内のパンサー・ウォーリアーを撃破した。城之内のフィールドにはもう羽蛾に仕込まれたパラサイドしか残っていない。
「(羽蛾のヤロウ、守備表示にした途端パラサイドに攻撃してこない……! オレのモンスターを虫にするため、最後まで場に残しておくつもりか」
パンサー・ウォーリアーを破壊したことでインセクト・クイーンがまた卵トークンを生み出す。
城之内の手札に状況を打開するカードはない。次の城之内のターンで何かを引かなければ、羽蛾のターンで確実に負ける。
「(オレの未来は─── こんな醜い化け物に閉ざされちまうのか……?)」
デュエルディスクを嵌めた腕が下される。
「頑張って城之内! 諦めちゃダメよ!」
杏子からの声にも城之内は目を閉じた。
「(だがよ、今度ばかりはどうにもならねぇ……!)」
「城之内! こんな所で諦めるなんてテメェらしくねぇぜ! お前は真のデュエリストになって、遊戯と対決するんじゃなかったのかよ!」
「───! 真のデュエリスト……!」
本田からの言葉に城之内が顔を上げた。開かれた目に映ったのは、真紅眼の黒龍 のカードを預けた遊戯の姿だった。
『それまでこのカードは、大切に預かっておくぜ』
そうだ、オレは遊戯とレッドアイズに約束したんだ。オレが真のデュエリストになったとき───
『そのときは、もう一度闘おう……!』
「───!」
***
「がんばれ、頑張れお兄ちゃん!」
「健太くん」
押し黙っていた健太が上げた声に、包帯の中で静香の眉頭が上がる。
「お兄ちゃんが勝てれば、僕も頑張れそうな気がするんだ。だから一緒に応援しようよ、お姉ちゃん!」
口元だけでもパッと明るく笑ったのが分かるほど、静香は大きく頷いた。
扉越しに廊下まで聞こえるほどの声援が上がる。パソコンの画面越しに、静香と健太の思いが城之内へ向けられた。
***
「頑張れ、城之内!」
「あんな昆虫野郎に負けんじゃねぇぞ!」
静香と健太の声が重なるように、杏子と本田が城之内の背中に声援を送る。
「城之内……」
秤の腕を掴んで、デュエルの勝敗を見定めようとする千年秤のウジャド眼を覆い隠す。城之内ならきっと大丈夫…… そう信じるから、名前は今だけ千年秤を抑え込んだ。
「オレは諦めねぇ。絶対に風穴を開けてやるぜ!」
デュエルディスクを着けた腕を振り上げる。城之内の指がデッキに触れたとき、カードは確かに城之内に応えた。
「ドロー!」
千年秤が瞬きをしたように一度だけ小さく揺れる。それが何を意味するか、名前にはもう分かっていた。
「(───! このカードは……!)」
引いたカードをじっと見つめる。
「(まだ勝利の女神は、オレを見放したわけじゃなさそうだぜ。)」
「ムダムダ! パラサイドの寄生できないモンスターなんて、お前のデッキにいるわけが───」
「オレはリバースカードを1枚出し、《ギア・フリード》召喚!」
羽蛾の言葉を遮るように城之内はモンスターを召喚した。
「バカめ! そんな戦士族のモンスターなんかパラサイドの餌食さ!」
羽蛾の言う通り、城之内のフィールドのパラサイドの触手がギア・フリードに向けて伸ばされる。しかしギア・フリードの身体を這うパラサイドの腕はいつまで経っても寄生できず、ついには引き下がっていった。
「な、なに……?! パラサイドが寄生できないだと?!」
「ギア・フリードは《鉄 の騎士》! さすがの寄生虫でも、鉄の塊りには住み着けねぇようだな!」
「鉄の騎士だと……!」
「でかしたぞ城之内! 寄生虫パラサイドは装備魔法扱い。じゃが鉄の騎士ギア・フリードは、一切の装備カードを受け付けない!」
「! 昆虫族にならなければ、攻撃封じの永続魔法《虫除けバリアー》の効果も対象外になる!」
「羽蛾! お前の女王様は決定的な弱点があるぜ! いけ! ギア・フリードの攻撃! インセクト・クイーンの卵に攻撃!」
攻撃表示で固定されているインセクト・クイーンの産んだ卵の攻撃力は100。ギア・フリードの攻撃で、羽蛾のライフは一気に削られる。
「くっそぉ、卵を狙われたか……!」
「インセクト・クイーンは、自分の攻撃力を上げるために敵を倒すたびに卵を産む。だがその卵は無防備なままだ。攻撃力の低い卵がやられると、お前のライフは大きく削られる。……それを阻止するために、オレのモンスターをインセクト化して、バリアーで防衛線を貼ったってわけか」
「クッ……! だが城之内。次のターンの攻撃を凌げなければどのみちお前は終わりだぜ。女王様を怒らせた代償は高く付くぞ!」
羽蛾のターン開始宣言、城之内はフッと笑った。
「……羽蛾。既に勝負は付いてんだぜ。お前の負けでな」
「なに?!」
「リバース罠 発動! 《墓荒らし》! お前の墓地から持ってくるカードは───!」
城之内は一度ふぅといきを吐いて戯けるように笑った。
「やっぱ、虫は好きじゃねぇんだ」
墓荒らしによって羽蛾の墓地から取り出されたカードが城之内のフィールドに現れる。それが目に入った瞬間、羽蛾は唖然と開けた口を閉めることすらも出来ずに立ち尽くした。
魔法カード《殺虫剤》。インセクト・クイーンを呼び出すために使われたその魔法カードが、インセクト・クイーンを破壊するため城之内の手によって使われる。
「おっしゃあ! インセクト女王 消滅!」
「じょ、女王様〜〜〜〜〜〜!!!」
城之内のターン、ギア・フリードの攻撃がインセクト・クイーンの残した卵に振り下ろされる。羽蛾はその場に膝を落として、ショックのあまり青い顔で震えることも出来なかった。
***
「すごい…… スゴいよお姉ちゃんのお兄ちゃん!!! あんな強い相手に勝っちゃうなんて!」
静香には見えないパソコンの画面、そこに映されたデュエルの結末に健太は両手を上げて飛び上がった。
喜びよりも安堵が先に静香の背中を撫でた。
「お姉ちゃん!」
健太は静香に飛び寄る。
「僕、学校に行くよ!」
見えていなくても、静香には健太の目が輝いていると感じ取れていた。
「僕も自分を信じてみる。僕もお兄ちゃんみたいになりたい! いろんな事を変えたいんだ!」
「健太くん……!」
パソコンの画面越しでも、たとえ直接会話をしていなくても、自慢の兄である城之内克也はデュエルを通して目の前の少年の心を変えて見せた。
静香には、それが一番の喜びだった。
「その代わり、お姉ちゃん。今度お兄ちゃんと会ったら、僕のこと絶対紹介してね!」
「うん、約束するわ!」
「やったあ!」と静香の病室に響く声。それを聞きつけた看護婦が病室を開けるまで、2人は笑い合った。
***
「すげえ! インセクター羽蛾を倒した奴がいるぜ!」
「馬の骨って、なんだ?」
大型ゲームセンターの掲示板モニター。そこに映し出された注目デュエルに騒めく声を聞いた遊戯が振り返る。
「そうか、城之内君が。やったね……!」
表の人格の方の遊戯がモニターから顔を下ろして1枚のカードを取り出す。《真紅眼の黒龍 》、このカードを彼に返す日も、きっと遠くはない。そうもう1人の自分に語り掛けた。
「(僕も負けられないぞ)」
カードを仕舞い込むと、もと進んでいた方向に向き直る。
「(それにしても、……マリクが言ってた“寡黙な人形”って、そいつはいったいどこに居るんだ?)」
遊戯からそう遠くない駅前の公園。ベンチの上に立ったまま動かない人形。……その目が、いま動かされようとしていた。
「城之内、いい加減悪あがきはよしたらどうだ? お前のデッキが戦士、獣戦士族で構築されてるのは調べがついてるんだよ…… パラサイドに対する免疫は皆無だってな」
「くっ…… このターンはなにも出来ねぇ…… 全てのモンスターを守備表示にしてターン終了だ」
「ヒヒヒ、どうやら本当に万策尽きたみたいだな。じっくり料理してやるぜ、僕のターン!」
コカローチ・ナイトを召喚してインセクト・クイーンの攻撃コストに充てると、羽蛾は城之内のパンサー・ウォーリアーを撃破した。城之内のフィールドにはもう羽蛾に仕込まれたパラサイドしか残っていない。
「(羽蛾のヤロウ、守備表示にした途端パラサイドに攻撃してこない……! オレのモンスターを虫にするため、最後まで場に残しておくつもりか」
パンサー・ウォーリアーを破壊したことでインセクト・クイーンがまた卵トークンを生み出す。
城之内の手札に状況を打開するカードはない。次の城之内のターンで何かを引かなければ、羽蛾のターンで確実に負ける。
「(オレの未来は─── こんな醜い化け物に閉ざされちまうのか……?)」
デュエルディスクを嵌めた腕が下される。
「頑張って城之内! 諦めちゃダメよ!」
杏子からの声にも城之内は目を閉じた。
「(だがよ、今度ばかりはどうにもならねぇ……!)」
「城之内! こんな所で諦めるなんてテメェらしくねぇぜ! お前は真のデュエリストになって、遊戯と対決するんじゃなかったのかよ!」
「───! 真のデュエリスト……!」
本田からの言葉に城之内が顔を上げた。開かれた目に映ったのは、
『それまでこのカードは、大切に預かっておくぜ』
そうだ、オレは遊戯とレッドアイズに約束したんだ。オレが真のデュエリストになったとき───
『そのときは、もう一度闘おう……!』
「───!」
***
「がんばれ、頑張れお兄ちゃん!」
「健太くん」
押し黙っていた健太が上げた声に、包帯の中で静香の眉頭が上がる。
「お兄ちゃんが勝てれば、僕も頑張れそうな気がするんだ。だから一緒に応援しようよ、お姉ちゃん!」
口元だけでもパッと明るく笑ったのが分かるほど、静香は大きく頷いた。
扉越しに廊下まで聞こえるほどの声援が上がる。パソコンの画面越しに、静香と健太の思いが城之内へ向けられた。
***
「頑張れ、城之内!」
「あんな昆虫野郎に負けんじゃねぇぞ!」
静香と健太の声が重なるように、杏子と本田が城之内の背中に声援を送る。
「城之内……」
秤の腕を掴んで、デュエルの勝敗を見定めようとする千年秤のウジャド眼を覆い隠す。城之内ならきっと大丈夫…… そう信じるから、名前は今だけ千年秤を抑え込んだ。
「オレは諦めねぇ。絶対に風穴を開けてやるぜ!」
デュエルディスクを着けた腕を振り上げる。城之内の指がデッキに触れたとき、カードは確かに城之内に応えた。
「ドロー!」
千年秤が瞬きをしたように一度だけ小さく揺れる。それが何を意味するか、名前にはもう分かっていた。
「(───! このカードは……!)」
引いたカードをじっと見つめる。
「(まだ勝利の女神は、オレを見放したわけじゃなさそうだぜ。)」
「ムダムダ! パラサイドの寄生できないモンスターなんて、お前のデッキにいるわけが───」
「オレはリバースカードを1枚出し、《ギア・フリード》召喚!」
羽蛾の言葉を遮るように城之内はモンスターを召喚した。
「バカめ! そんな戦士族のモンスターなんかパラサイドの餌食さ!」
羽蛾の言う通り、城之内のフィールドのパラサイドの触手がギア・フリードに向けて伸ばされる。しかしギア・フリードの身体を這うパラサイドの腕はいつまで経っても寄生できず、ついには引き下がっていった。
「な、なに……?! パラサイドが寄生できないだと?!」
「ギア・フリードは《
「鉄の騎士だと……!」
「でかしたぞ城之内! 寄生虫パラサイドは装備魔法扱い。じゃが鉄の騎士ギア・フリードは、一切の装備カードを受け付けない!」
「! 昆虫族にならなければ、攻撃封じの永続魔法《虫除けバリアー》の効果も対象外になる!」
「羽蛾! お前の女王様は決定的な弱点があるぜ! いけ! ギア・フリードの攻撃! インセクト・クイーンの卵に攻撃!」
攻撃表示で固定されているインセクト・クイーンの産んだ卵の攻撃力は100。ギア・フリードの攻撃で、羽蛾のライフは一気に削られる。
「くっそぉ、卵を狙われたか……!」
「インセクト・クイーンは、自分の攻撃力を上げるために敵を倒すたびに卵を産む。だがその卵は無防備なままだ。攻撃力の低い卵がやられると、お前のライフは大きく削られる。……それを阻止するために、オレのモンスターをインセクト化して、バリアーで防衛線を貼ったってわけか」
「クッ……! だが城之内。次のターンの攻撃を凌げなければどのみちお前は終わりだぜ。女王様を怒らせた代償は高く付くぞ!」
羽蛾のターン開始宣言、城之内はフッと笑った。
「……羽蛾。既に勝負は付いてんだぜ。お前の負けでな」
「なに?!」
「リバース
城之内は一度ふぅといきを吐いて戯けるように笑った。
「やっぱ、虫は好きじゃねぇんだ」
墓荒らしによって羽蛾の墓地から取り出されたカードが城之内のフィールドに現れる。それが目に入った瞬間、羽蛾は唖然と開けた口を閉めることすらも出来ずに立ち尽くした。
魔法カード《殺虫剤》。インセクト・クイーンを呼び出すために使われたその魔法カードが、インセクト・クイーンを破壊するため城之内の手によって使われる。
「おっしゃあ! インセクト
「じょ、女王様〜〜〜〜〜〜!!!」
城之内のターン、ギア・フリードの攻撃がインセクト・クイーンの残した卵に振り下ろされる。羽蛾はその場に膝を落として、ショックのあまり青い顔で震えることも出来なかった。
***
「すごい…… スゴいよお姉ちゃんのお兄ちゃん!!! あんな強い相手に勝っちゃうなんて!」
静香には見えないパソコンの画面、そこに映されたデュエルの結末に健太は両手を上げて飛び上がった。
喜びよりも安堵が先に静香の背中を撫でた。
「お姉ちゃん!」
健太は静香に飛び寄る。
「僕、学校に行くよ!」
見えていなくても、静香には健太の目が輝いていると感じ取れていた。
「僕も自分を信じてみる。僕もお兄ちゃんみたいになりたい! いろんな事を変えたいんだ!」
「健太くん……!」
パソコンの画面越しでも、たとえ直接会話をしていなくても、自慢の兄である城之内克也はデュエルを通して目の前の少年の心を変えて見せた。
静香には、それが一番の喜びだった。
「その代わり、お姉ちゃん。今度お兄ちゃんと会ったら、僕のこと絶対紹介してね!」
「うん、約束するわ!」
「やったあ!」と静香の病室に響く声。それを聞きつけた看護婦が病室を開けるまで、2人は笑い合った。
***
「すげえ! インセクター羽蛾を倒した奴がいるぜ!」
「馬の骨って、なんだ?」
大型ゲームセンターの掲示板モニター。そこに映し出された注目デュエルに騒めく声を聞いた遊戯が振り返る。
「そうか、城之内君が。やったね……!」
表の人格の方の遊戯がモニターから顔を下ろして1枚のカードを取り出す。《
「(僕も負けられないぞ)」
カードを仕舞い込むと、もと進んでいた方向に向き直る。
「(それにしても、……マリクが言ってた“寡黙な人形”って、そいつはいったいどこに居るんだ?)」
遊戯からそう遠くない駅前の公園。ベンチの上に立ったまま動かない人形。……その目が、いま動かされようとしていた。