/ Domino City side
名前変換
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「たっだいま〜! 名前? 先に帰ってたの?」
舞はポーチからドアを開けるなり名前の靴を見つけ、上機嫌でダイニングへ向かった。だが返事どころか物音ひとつしないダイニングに「名前?」と顔を出せば、デュエルディスクもデッキホルダーのベルトも千年秤も身に付けたままの名前が、ソファに倒れ込んで熟睡している。
あらあら…と笑って、舞はデュエルディスクを外すとテーブルに置く。
今朝完全に徹夜して家を出た事を思い出しで小さく息をつくと、舞は名前の寝室からブランケットを持ってきて掛けてやった。
「城之内君!」
「よう遊戯! 舞と名前もか!」
「ハーイ」
「おはよう」
駅前の広場。時計は朝8時を指していた。
駆けてきた城之内と舞がハイタッチをする。
バトルシティ大会、2日目の朝。朝早いせいもあるのだろうが、見える範囲で街中に佇むデュエリストの数はだいぶ減っているようだった。
「ちゃんと生き残れたわね」
「あたぼうよ! 人の心配するなら自分の心配しやがれ!」
息巻く城之内に舞が名前に顔を向けて「フッ」と笑い合った。
「城之内、誰に口聞いてるか分かってる?」
「そんなの、私たちには余計なお世話よ」
それぞれ4枚のパズルカードを取り出す舞と名前に城之内が驚く。
「ゲッ……! もう4枚も集めたのかよ!」
「2人とも流石だね」
2人を見上げると、遊戯もデッキホルダーに手を伸ばす。
「舞さんと名前が4枚、僕が3枚、城之内君が2枚か」
「トホホ…… この4人になると、やっぱオレがドンケツかよ」
朝から落ち込む城之内に遊戯が「まあまあ」と宥めた。
「昨日で他のデュエリスト達も一戦以上してるハズだし、半分以上は消えた事になるわね」
名前がもう一度広場を見渡す。デュエリストの目印にもなっているデュエルディスクを着けた人物は、思いの外少ない。
「決勝トーナメント出場者は8人。グズグズしてられないわよ」
「わかってらぁ!」
少ないとは言え、やはり時間が経つほどデュエリストの姿も増えてきている。4人はそれぞれ別の方向を向いて足を前に進めた。
「じゃあオレは獲物を探しに行かせてもらうぜ」
「みんな、決勝まで消えちゃダメよ?」
「決勝の会場で会いましょう」
「うん!」
方々に散っていく3人の背中を眺めながら、遊戯はホルダーの上からデッキに手を触れた。
「(マリクが言ってた神のカード…… 今日こそ出会うかもしれない)」
意を決して遊戯も街へと繰り出して行った。
その背後、少し離れたベンチの上───…… 寡黙な人形が佇んでいるとも知らずに。
***
「この街で始まろうとしている、三千年前の偉大なる王 にまつわる闘い。それは既に避けられない未来。……王 に関わりし者の魂がこの世に再び生 を与えられ、その運命に導かれるままこの地に集う」
2枚の石盤を前に、イシズはため息にも似た息を吐く。美術館のすぐ目の前にまで来ているもう1人の“運命を抱えた人物”……彼がここで石盤を見るために、イシズは千年タウクの気配を少しも抑えることなくそこに立っていた。
美術館の前、5本の鉤全てが震えて指し示す先…… イシズの居る美術館に向けて闇の人格の方の獏良が足を進めていた。
「フフ…… 千年リングがオレに教えてるぜ。この街に千年アイテムが集まってくるってな。そしてそのひとつがここにある」
「……来る」
展示物に見向きもせず館内を探索していた獏良の足が、反応しなくなった千年リングによって止められた。
「チッ…… 逃したか」
舌打ちして顔を上げた先─── 獏良の目にあの2枚の石盤が飛び込んだ。
「───! なんだ、この壁画は……」
千年リングに宿っている闇の人格の獏良、……その魂に眠っていたものが微睡から目覚めようとしている。
争う王と神官の姿、黒い魔術師と白き龍、
「フッ オレの知らない間に、面白れぇ事がこの街で起きようとしているワケか。だったらこのオレも仲間に入れてもらわなくちゃな」
「フハハハハ……」という獏良の笑い声が冷たい大理石の床を震わせる。ビリビリと反響する千年タウクを、イシズの首のごく薄い皮膚は今にも破れそうなほど無防備に、そして呆然と受け入れるしかない。
「(彼もまた千年アイテムによって紡がれる運命のピース。そしてマリク…… あなたも、やはりここへやって来るのですね)」
本来なら指を伸ばして触れることすら畏れていたはずの千年タウク。それが常に首を覆い、静かに語りかける。「ああしろ」「こうしろ」とでも言うように。
「(……シャーディー、今はまだ、全てあなたの預言した通り。でも私には見えています。私に与えられた宿命の結末…… あの方は私に敗北する。その先で姉と弟が再び相見えるとき、そこは戦いの場になるか、それとも───)」
***
「え〜! 遊戯、もう出掛けちゃったんですか?」
「あぁ。今日も張り切っておったぞ」
遊戯の自宅─── ゲームショップ亀の前で、例の如くホウキをもった双六に杏子が大きなため息をついて本田を睨む。
「もう! 本田が待ち合わせに遅れてくるからよ!」
「い、いやぁ…… 静香ちゃんとの電話が長引いちゃってさ。オレが切るって言ってもなかなか切らせてくれなくて」
「逆じゃないの?」
「ウッ」
呆れた顔もそこそこに、昨日遊戯達を探し回った労苦を思い出して杏子はまたため息をつくしかできない。……なんとなく、名前が遊戯に本気でキレた理由も納得できてしまいそうにほどだ。
「よし、どうせ捜すなら人手は多い方がいいじゃろう」
杏子の表情に内心を察知したのか、双六が微笑んでホウキを動かすのをやめた。
***
「(神のカード…… 私にそれを倒せるの?)」
人通りのある街中から、人目を避けるように路地を曲がったビルの壁と壁の間。名前はそこでサイドデッキを手の中に広げて眺める。
7種類の魔導書、13人の魔導士、そして魔導書を納める“塔”と3つの“部屋”、それらをサポートする2枚の魔法カード。名前が持ち得る魔導シリーズのカード全てを、名前はいつでも組み直せるようにデッキと共に持ち歩いていた。
「……」
普通のデュエルモンスターズの中で組まれたデッキならそれこそ負け知らずだった。しかし、挑むべき相手は神の領域へと達している。
神のカードは3枚。1枚は既に海馬が持っているが、海馬は決勝トーナメントで当たらない限り名前と闘うつもりはないと宣言されている。もう2枚がどこにあるのかも検討はつかない。
なんの対策もなしに当たってしまったら、それこそこちらが瞬殺される可能性だってあるだろう。
だからこそ、決勝トーナメントに進む前に何としてでも残りの神のカードを1枚でも手に入れておきたい。決勝進出までパズルカードはあと2枚、童実野町でのバトルロイヤル中なら、一敗したくらいどうとでもリカバリーできるはずだ。
今日1日でなにができるかはわからない。それでもまずは街を歩こうと名前は路地からメイン通りへ足を踏み出し───
「キャッ」
「うわぁッ」
角を出たところで、走ってきた誰かと間一髪ぶつかりそうになった。だが少年は名前に目もくれず走り去っていく。その手にはデュエルディスクが抱え込まれていた。
「な、なん……」
「テメェ〜! 待てコラ〜!」
「城之内?」
少年を追いかけていたのは城之内だった。道の向こうから全力で走る城之内の腕にデュエルディスクがない。
「名前! アイツ捕まえてくれ!」
「ハァ?!」
舞はポーチからドアを開けるなり名前の靴を見つけ、上機嫌でダイニングへ向かった。だが返事どころか物音ひとつしないダイニングに「名前?」と顔を出せば、デュエルディスクもデッキホルダーのベルトも千年秤も身に付けたままの名前が、ソファに倒れ込んで熟睡している。
あらあら…と笑って、舞はデュエルディスクを外すとテーブルに置く。
今朝完全に徹夜して家を出た事を思い出しで小さく息をつくと、舞は名前の寝室からブランケットを持ってきて掛けてやった。
「城之内君!」
「よう遊戯! 舞と名前もか!」
「ハーイ」
「おはよう」
駅前の広場。時計は朝8時を指していた。
駆けてきた城之内と舞がハイタッチをする。
バトルシティ大会、2日目の朝。朝早いせいもあるのだろうが、見える範囲で街中に佇むデュエリストの数はだいぶ減っているようだった。
「ちゃんと生き残れたわね」
「あたぼうよ! 人の心配するなら自分の心配しやがれ!」
息巻く城之内に舞が名前に顔を向けて「フッ」と笑い合った。
「城之内、誰に口聞いてるか分かってる?」
「そんなの、私たちには余計なお世話よ」
それぞれ4枚のパズルカードを取り出す舞と名前に城之内が驚く。
「ゲッ……! もう4枚も集めたのかよ!」
「2人とも流石だね」
2人を見上げると、遊戯もデッキホルダーに手を伸ばす。
「舞さんと名前が4枚、僕が3枚、城之内君が2枚か」
「トホホ…… この4人になると、やっぱオレがドンケツかよ」
朝から落ち込む城之内に遊戯が「まあまあ」と宥めた。
「昨日で他のデュエリスト達も一戦以上してるハズだし、半分以上は消えた事になるわね」
名前がもう一度広場を見渡す。デュエリストの目印にもなっているデュエルディスクを着けた人物は、思いの外少ない。
「決勝トーナメント出場者は8人。グズグズしてられないわよ」
「わかってらぁ!」
少ないとは言え、やはり時間が経つほどデュエリストの姿も増えてきている。4人はそれぞれ別の方向を向いて足を前に進めた。
「じゃあオレは獲物を探しに行かせてもらうぜ」
「みんな、決勝まで消えちゃダメよ?」
「決勝の会場で会いましょう」
「うん!」
方々に散っていく3人の背中を眺めながら、遊戯はホルダーの上からデッキに手を触れた。
「(マリクが言ってた神のカード…… 今日こそ出会うかもしれない)」
意を決して遊戯も街へと繰り出して行った。
その背後、少し離れたベンチの上───…… 寡黙な人形が佇んでいるとも知らずに。
***
「この街で始まろうとしている、三千年前の偉大なる
2枚の石盤を前に、イシズはため息にも似た息を吐く。美術館のすぐ目の前にまで来ているもう1人の“運命を抱えた人物”……彼がここで石盤を見るために、イシズは千年タウクの気配を少しも抑えることなくそこに立っていた。
美術館の前、5本の鉤全てが震えて指し示す先…… イシズの居る美術館に向けて闇の人格の方の獏良が足を進めていた。
「フフ…… 千年リングがオレに教えてるぜ。この街に千年アイテムが集まってくるってな。そしてそのひとつがここにある」
「……来る」
展示物に見向きもせず館内を探索していた獏良の足が、反応しなくなった千年リングによって止められた。
「チッ…… 逃したか」
舌打ちして顔を上げた先─── 獏良の目にあの2枚の石盤が飛び込んだ。
「───! なんだ、この壁画は……」
千年リングに宿っている闇の人格の獏良、……その魂に眠っていたものが微睡から目覚めようとしている。
争う王と神官の姿、黒い魔術師と白き龍、
「フッ オレの知らない間に、面白れぇ事がこの街で起きようとしているワケか。だったらこのオレも仲間に入れてもらわなくちゃな」
「フハハハハ……」という獏良の笑い声が冷たい大理石の床を震わせる。ビリビリと反響する千年タウクを、イシズの首のごく薄い皮膚は今にも破れそうなほど無防備に、そして呆然と受け入れるしかない。
「(彼もまた千年アイテムによって紡がれる運命のピース。そしてマリク…… あなたも、やはりここへやって来るのですね)」
本来なら指を伸ばして触れることすら畏れていたはずの千年タウク。それが常に首を覆い、静かに語りかける。「ああしろ」「こうしろ」とでも言うように。
「(……シャーディー、今はまだ、全てあなたの預言した通り。でも私には見えています。私に与えられた宿命の結末…… あの方は私に敗北する。その先で姉と弟が再び相見えるとき、そこは戦いの場になるか、それとも───)」
***
「え〜! 遊戯、もう出掛けちゃったんですか?」
「あぁ。今日も張り切っておったぞ」
遊戯の自宅─── ゲームショップ亀の前で、例の如くホウキをもった双六に杏子が大きなため息をついて本田を睨む。
「もう! 本田が待ち合わせに遅れてくるからよ!」
「い、いやぁ…… 静香ちゃんとの電話が長引いちゃってさ。オレが切るって言ってもなかなか切らせてくれなくて」
「逆じゃないの?」
「ウッ」
呆れた顔もそこそこに、昨日遊戯達を探し回った労苦を思い出して杏子はまたため息をつくしかできない。……なんとなく、名前が遊戯に本気でキレた理由も納得できてしまいそうにほどだ。
「よし、どうせ捜すなら人手は多い方がいいじゃろう」
杏子の表情に内心を察知したのか、双六が微笑んでホウキを動かすのをやめた。
***
「(神のカード…… 私にそれを倒せるの?)」
人通りのある街中から、人目を避けるように路地を曲がったビルの壁と壁の間。名前はそこでサイドデッキを手の中に広げて眺める。
7種類の魔導書、13人の魔導士、そして魔導書を納める“塔”と3つの“部屋”、それらをサポートする2枚の魔法カード。名前が持ち得る魔導シリーズのカード全てを、名前はいつでも組み直せるようにデッキと共に持ち歩いていた。
「……」
普通のデュエルモンスターズの中で組まれたデッキならそれこそ負け知らずだった。しかし、挑むべき相手は神の領域へと達している。
神のカードは3枚。1枚は既に海馬が持っているが、海馬は決勝トーナメントで当たらない限り名前と闘うつもりはないと宣言されている。もう2枚がどこにあるのかも検討はつかない。
なんの対策もなしに当たってしまったら、それこそこちらが瞬殺される可能性だってあるだろう。
だからこそ、決勝トーナメントに進む前に何としてでも残りの神のカードを1枚でも手に入れておきたい。決勝進出までパズルカードはあと2枚、童実野町でのバトルロイヤル中なら、一敗したくらいどうとでもリカバリーできるはずだ。
今日1日でなにができるかはわからない。それでもまずは街を歩こうと名前は路地からメイン通りへ足を踏み出し───
「キャッ」
「うわぁッ」
角を出たところで、走ってきた誰かと間一髪ぶつかりそうになった。だが少年は名前に目もくれず走り去っていく。その手にはデュエルディスクが抱え込まれていた。
「な、なん……」
「テメェ〜! 待てコラ〜!」
「城之内?」
少年を追いかけていたのは城之内だった。道の向こうから全力で走る城之内の腕にデュエルディスクがない。
「名前! アイツ捕まえてくれ!」
「ハァ?!」