/ Domino City side
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エクトプラズマーに変換されたキラードールの砲撃を食らって、その攻撃力の半分を削られた遊戯のライフは700にまで落ちた。
あと一撃でやられる……その焦りで加速する回転カッターの刃が、あと数十センチのところまで迫り来る。足枷に捕らえられた足首には、既にその風圧が息を吹きかけていた。
「遊戯、ブラック・マジシャン使いとして私に勝てなかった要因はなにかお分かりですか? ……それは、自分の僕 への非情さです! 信頼などなんの役にも立たない。そんなもので勝てるほど甘くはないのですよ!
現にあなたの僕 は磔 にされて、あなたを守ることすらできないでいる。いいですか? 忠実なる僕 とは、敵を倒すためならば命をも投げ出す手駒でなければならないのですよ!」
パンドラは無情にも自らのブラック・マジシャンにエクトプラズマーを発動させた。絶望の色を残したまま赤いブラック・マジシャンが、その身から魂を剥ぎ取られる。
「パンドラ……貴様のブラック・マジシャンが泣いてるぜ」
「ほざけ! エクトプラズマー砲撃!」
***
迫り来るエクトプラズマーの砲撃の光。だがそれとは違う光が遊戯を包む。
目を見開いた遊戯の目の前に、女がいた。見覚えのある赤い髪……だがその肌は名前のものではない。褐色よりも赤みがかった赤銅色の肌、白いドレスのような服に数々の黄金の装飾。
その女が何にも憚らずに、白い布に包まれた誰かの亡骸に体を伏せて泣いている。
布のある一点から流れ出る鮮血。一直線に結ばれた左右の肩が、その肢体に首がない事を物語っていた。
『お前は、───お前たちは、誰だ』
千年パズルが重く遊戯の首を下ろそうとする。まるでそれ以上見るなとでも言うような意思をも感じて、遊戯は抵抗して顔を見上げた。
心臓が体の中から遊戯の胸を叩いた。
あの石盤に描かれていたブラック・マジシャン。女が縋る亡骸が転がされていたのは、その巨大な石盤の前だった。
耳鳴りが遊戯を襲う。これはなんだと震える心臓、その答えを、ブラック・マジシャンが持っているとでも言うのか。
思い出せ、───これは何だ。
『……、我が魂は貴方の永遠の剣。我が肉体は貴女の永遠の盾。
私はあなた方の永遠の僕 』
***
遊戯を包んだのは、遊戯自身のブラック・マジシャンが解放した魂によるものだった。迫りきていたエクトプラズマーの砲撃を、同じくその効果によってエクトプラズマー化したブラック・マジシャンが盾となって遊戯の残りのライフを守って見せた。
「そ、そんなバカな……」
驚きでパンドラが開けたまま閉じることのできない口を震わせる。
「遊戯のブラック・マジシャンが、自らの意思でエクトプラズマーを解放したというのか?!」
遊戯も光と耳鳴りの中で聞いた、どこか酷く懐かしい声に震えていた。
「ブラック・マジシャン、……おまえは、オレのために、……」
「(このターンで私はエクトプラズマーに変換できるモンスターに、《ブラック・マジシャン》を選択した。つまりヤツのブラック・マジシャンも、その権利を得てはいた……
だが自らの意思で魂を解放し、プレイヤーの盾となったと言うのか?!)」
驚きを隠せないパンドラを前に、遊戯はブラック・マジシャンとの深い繋がりと信頼に手を握り締める。そしてあの光の中で見たビジョン─── 遊戯は、ここで負けられないと意を決した。
必ずこの全ての記憶を取り戻して見せる。決して自分のためだけではない。身を砕いてまで守ってくれたブラック・マジシャンを思い出すために、そしてあの光景の真実を知るために。
「非情さだけではゲームを制する事はできない。それを貴様に教えてやるぜ! パンドラ!」
***
「ここね」
息切れした体を落ち着かせながら、杏子と名前が街の一角にあったカードショップを見上げる。遅れて双六が着くと、名前と杏子が顔を見合って頷く。
「オレを待ってろと言ったはずだ」
ドアに伸ばされた名前の手が止まる。
「海馬君、モクバ君!」
振り返った杏子が驚く。声がした方を見れば、海馬とアタッシュケースを抱えたモクバがこちらにズカズカと歩み寄ってきていた。
「でも遊戯が、」
「わかっている。乗り込むぞ」
***
「く……! 私のエンドフェイズ! リバースカードをセットしてターン終了!」
(手札2→1)
このターンでの遊戯抹殺に失敗したものの、パンドラはまだ勝利のチャンスを確信していた。
この世にペガサスが残した、たった2枚の《ブラック・マジシャン》。それを愚かにも遊戯と名前がそれを1枚ずつ所有している。つまり1体の
ブラック・マジシャンを葬った今、遊戯のデッキにもうブラック・マジシャンは残っていない。
だがパンドラはデッキに3枚のブラック・マジシャンがいれてある。
「真のブラック・マジシャン使いの称号は、やはり私のもの。そして私の勝利も揺るぎない!」
「それはどうかな。貴様が真のブラック・マジシャン使いなら聞こえるはずだ。主に裏切られ、犠牲となったカードの……魂の嘆きが!」
戦いの結末はカードだけが知っている。
「(ブラック・マジシャン、……お前が自ら散らした魂。オレは決してムダにはしないぜ!)」
遊戯は手をデッキに伸ばした。ブラック・マジシャンが残した魂の宿るデッキ、そしてブラック・マジシャンを通じて確かに交差する名前との魂。自分の記憶に語りかける、あの石盤の描いた真実───
「いくぜ! オレのターン!!!」
あと一撃でやられる……その焦りで加速する回転カッターの刃が、あと数十センチのところまで迫り来る。足枷に捕らえられた足首には、既にその風圧が息を吹きかけていた。
「遊戯、ブラック・マジシャン使いとして私に勝てなかった要因はなにかお分かりですか? ……それは、自分の
現にあなたの
パンドラは無情にも自らのブラック・マジシャンにエクトプラズマーを発動させた。絶望の色を残したまま赤いブラック・マジシャンが、その身から魂を剥ぎ取られる。
「パンドラ……貴様のブラック・マジシャンが泣いてるぜ」
「ほざけ! エクトプラズマー砲撃!」
***
迫り来るエクトプラズマーの砲撃の光。だがそれとは違う光が遊戯を包む。
目を見開いた遊戯の目の前に、女がいた。見覚えのある赤い髪……だがその肌は名前のものではない。褐色よりも赤みがかった赤銅色の肌、白いドレスのような服に数々の黄金の装飾。
その女が何にも憚らずに、白い布に包まれた誰かの亡骸に体を伏せて泣いている。
布のある一点から流れ出る鮮血。一直線に結ばれた左右の肩が、その肢体に首がない事を物語っていた。
『お前は、───お前たちは、誰だ』
千年パズルが重く遊戯の首を下ろそうとする。まるでそれ以上見るなとでも言うような意思をも感じて、遊戯は抵抗して顔を見上げた。
心臓が体の中から遊戯の胸を叩いた。
あの石盤に描かれていたブラック・マジシャン。女が縋る亡骸が転がされていたのは、その巨大な石盤の前だった。
耳鳴りが遊戯を襲う。これはなんだと震える心臓、その答えを、ブラック・マジシャンが持っているとでも言うのか。
思い出せ、───これは何だ。
『……、我が魂は貴方の永遠の剣。我が肉体は貴女の永遠の盾。
私はあなた方の永遠の
***
遊戯を包んだのは、遊戯自身のブラック・マジシャンが解放した魂によるものだった。迫りきていたエクトプラズマーの砲撃を、同じくその効果によってエクトプラズマー化したブラック・マジシャンが盾となって遊戯の残りのライフを守って見せた。
「そ、そんなバカな……」
驚きでパンドラが開けたまま閉じることのできない口を震わせる。
「遊戯のブラック・マジシャンが、自らの意思でエクトプラズマーを解放したというのか?!」
遊戯も光と耳鳴りの中で聞いた、どこか酷く懐かしい声に震えていた。
「ブラック・マジシャン、……おまえは、オレのために、……」
「(このターンで私はエクトプラズマーに変換できるモンスターに、《ブラック・マジシャン》を選択した。つまりヤツのブラック・マジシャンも、その権利を得てはいた……
だが自らの意思で魂を解放し、プレイヤーの盾となったと言うのか?!)」
驚きを隠せないパンドラを前に、遊戯はブラック・マジシャンとの深い繋がりと信頼に手を握り締める。そしてあの光の中で見たビジョン─── 遊戯は、ここで負けられないと意を決した。
必ずこの全ての記憶を取り戻して見せる。決して自分のためだけではない。身を砕いてまで守ってくれたブラック・マジシャンを思い出すために、そしてあの光景の真実を知るために。
「非情さだけではゲームを制する事はできない。それを貴様に教えてやるぜ! パンドラ!」
***
「ここね」
息切れした体を落ち着かせながら、杏子と名前が街の一角にあったカードショップを見上げる。遅れて双六が着くと、名前と杏子が顔を見合って頷く。
「オレを待ってろと言ったはずだ」
ドアに伸ばされた名前の手が止まる。
「海馬君、モクバ君!」
振り返った杏子が驚く。声がした方を見れば、海馬とアタッシュケースを抱えたモクバがこちらにズカズカと歩み寄ってきていた。
「でも遊戯が、」
「わかっている。乗り込むぞ」
***
「く……! 私のエンドフェイズ! リバースカードをセットしてターン終了!」
(手札2→1)
このターンでの遊戯抹殺に失敗したものの、パンドラはまだ勝利のチャンスを確信していた。
この世にペガサスが残した、たった2枚の《ブラック・マジシャン》。それを愚かにも遊戯と名前がそれを1枚ずつ所有している。つまり1体の
ブラック・マジシャンを葬った今、遊戯のデッキにもうブラック・マジシャンは残っていない。
だがパンドラはデッキに3枚のブラック・マジシャンがいれてある。
「真のブラック・マジシャン使いの称号は、やはり私のもの。そして私の勝利も揺るぎない!」
「それはどうかな。貴様が真のブラック・マジシャン使いなら聞こえるはずだ。主に裏切られ、犠牲となったカードの……魂の嘆きが!」
戦いの結末はカードだけが知っている。
「(ブラック・マジシャン、……お前が自ら散らした魂。オレは決してムダにはしないぜ!)」
遊戯は手をデッキに伸ばした。ブラック・マジシャンが残した魂の宿るデッキ、そしてブラック・マジシャンを通じて確かに交差する名前との魂。自分の記憶に語りかける、あの石盤の描いた真実───
「いくぜ! オレのターン!!!」