/ Domino City side
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狂気に色付いたパンドラの笑い声が部屋中に反響する。それに呼応するかのように回転鋸が頭を出すと、けたたましい音を立てて起動した。パンドラはまるでバスガイドでもしているかのような口振りで説明を始める。
「ヒャハハハ! 大仕掛けのマジックに使われる回転式のカッターです。もうおわかりでしょう、このデュエルのルールが……!
カッターが移動するレールには数字が記されている」
「くっ…… ライフポイントか! 0に近づくたびに回転する刃が迫って来る……!」
「その通り! 負けた方が切り刻まれる悪夢のゲーム。さらに足元をご覧ください。あなたと私、それぞれ一つずつ箱がありますね?
この中には足を固定している枷を外すための鍵が入っています。箱の上数字は相手プレイヤーのライフポイント。相手のライフが0になったら開く仕組みになっています。
つまり、勝ち残った者だけが脱出することができるのです! 遊戯! まずはあなたから抹殺してあげましょう! この世にブラック・マジシャン使いは3人も必要ない」
パンドラの言葉に遊戯がハッとして手を握った。
「貴様! まさか名前にも手を出すつもりか!」
「サァそれはどうでしょう。あなたはここで死ぬのです。それからの事など知ってどうするおつもりで?」
また高笑いを始めるパンドラ。そして名前の事まで匂わせて来たグールズを相手に、堪えきれない怒りで遊戯は震えた。
「楽しいかよ…… 命を奪い合う闘いが! 楽しいかって聞いてんだよ!」
「えぇもちろん。勝つのは私ですから。」
「腐ってるぜ貴様! なら教えてやる! 真のデュエリストの、闘いってヤツをな!」
***
「ブラック・マジシャンでダイレクトアタック!」
「クソォ!」と膝を折るデュエリストを前にしても、名前は少しも顔色を変えない。ソリッドビジョンシステムを取り囲んでいた観衆のざわめきも、戦いの場においてはただの背景音でしかない。
名前はまだフィールドに残っているブラック・マジシャンの横を通って、挑戦してきた青年の前に立った。
「いいデュエルだったわ」
正直まだ心が安定していなかった。あのあと路地裏を出てすぐにこの青年からデュエルを挑まれて最初は断った。それでも食い下がってきた彼は、パズルカード全賭けを申し出た。流石にそこまで言われては名前も背を向けられない。それでもやはり、内心ではブラック・マジシャンを召喚したのも気が気ではないほどだった。
幸いそんなに拗れたプレイにはならず、少しホッとしている。
「パズルカードだ。約束通り2枚。レアカードも……」
「パズルカードだけでいい」
レアカードが欲しくて参加してるわけじゃない。それだけは貫きたかった。差し出されたパズルカードのうち1枚だけを取り上げると、さっさと背を向けてブラック・マジシャンを見上げる。
「あ、あの、……!」
「次負けたら終わりよ。頑張ってね」
ディスクからブラック・マジシャンのカードを取ってしまえば、ソリッドビジョンである彼も消えてしまう。……やっぱり前のように、頻繁に自ら精神体として姿を表してくれないらしいのを再確認してため息が溢れる。
……なにか、危機的状況か、さっきみたいに自分の真実らしきものに触れそうになった時だけはすぐに飛び出してきて、あの青い手で視界を遮ってくるというのに。
「あの!」
突然の大声に驚いて振り向けば、さっきの青年が立ち上がって震えていた。
「な、……なによ」
「お、思いあがらないでください! いくら強くて有名だからって、アンティを受け取らないのは負けたヤツに失礼です!」
「……え、」
思いがけない言葉に心臓が締め付けられる。
「な、……でも、そのカードはあなたの大切なものでしょう。私が受け取ったところで、私はそのカードを使う保証はしないし、活躍させてあげることもできないわ。それならあなたが、愛情をもって大切にするべきよ」
「そうやって良い人ぶってるんですよ、アナタは。勝負に勝っておいて、敗北した者に贖罪してるだけだ。自分が勝つのが当然だから、戦いを挑んできた者が全員可哀想に見えてるんだ!」
「───!」
「僕からカードを奪わないのも、約束した枚数のパズルカードを受け取らないのも、生半可なプレイで勝てる相手だと最初から値踏みして、ハナから本気で向き合っていないんじゃないですか?
……僕はデュエルクイーンだったアナタに憧れてデュエリストになった。でも今のアナタは、僕が憧れていた真のデュエリストじゃない」
ズキリ、となにかが胸に突き立てられた。血が流れるような感覚と、身体中の生気が奪われていくような感覚。ひとりの無名のデュエリストを前にして、プライドやスタンスだけが「真のデュエリスト」の条件ではないのだと目の前に突き付けられる。
心のどこかで見下していた? そう自問すれば、確かにそうだったかもしれない。海馬のようにそれが突き抜けていればそれはそれで正しいのだろう。だが名前にはそれを咎める良心をも抱えていた。だからこそ、格下のデュエリストに対して無意識のうちにそんな仕打ちをしていたのだろう。
「……あなた、サイドデッキはあるの?」
「え、」
名前はディスクからデッキを取り上げると、ブラック・マジシャンや墓地のカードも戻してシャッフルを始める。
「あなたに再戦を申し込むわ。パズルカードはお互いの持ってる全枚数。レアカードは2枚。……ただし、本気で倒す。手加減はしない」
シャッフルし終えたデッキを青年に差し出して「はやくカットしろ」と目で訴えた。戸惑いを見せていた青年も決心がついたのか、息を飲んでから名前のデッキを受け取りカットする。
「……私はまだ真のデュエリストじゃないかもしれない。でも、私が真のデュエリストになれる女だと理解してから帰ってもらわなきゃ、私のプライドが許さないのよ」
フッと笑うと、名前は戻ってきたデッキをデュエルディスクに装着した。
「ただし、さっきのヌルいプレイをするなら3ターンで倒す」
***
「「デュエル!」」
回転式のカッターが不気味な音を上げ続ける中で、遊戯とパンドラのデュエルは始まった。先行をとった遊戯がデッキに手を掛ける。
遊戯をチラリとも見ずに、パンドラは手札に口を歪めて笑った。その手札にはすでにブラック・マジシャンが来ている。
「(奇術師はカードを操るテクニックを千以上体得している。手札に思い通りのカードを持ってくることなど容易いこと!)」
パンドラはブラック・マジシャンのカードを僅かにカットし、他のカードと大きさを変えていたのだ。3枚のブラック・マジシャンにその細工を施し、デッキをカットすると必ず1番上に来るようにしてある。
「(遊戯…… 奇術師相手のカード勝負がいかに愚かな行動であるか、身をもって教えてあげましょう!!!)」
「ヒャハハハ! 大仕掛けのマジックに使われる回転式のカッターです。もうおわかりでしょう、このデュエルのルールが……!
カッターが移動するレールには数字が記されている」
「くっ…… ライフポイントか! 0に近づくたびに回転する刃が迫って来る……!」
「その通り! 負けた方が切り刻まれる悪夢のゲーム。さらに足元をご覧ください。あなたと私、それぞれ一つずつ箱がありますね?
この中には足を固定している枷を外すための鍵が入っています。箱の上数字は相手プレイヤーのライフポイント。相手のライフが0になったら開く仕組みになっています。
つまり、勝ち残った者だけが脱出することができるのです! 遊戯! まずはあなたから抹殺してあげましょう! この世にブラック・マジシャン使いは3人も必要ない」
パンドラの言葉に遊戯がハッとして手を握った。
「貴様! まさか名前にも手を出すつもりか!」
「サァそれはどうでしょう。あなたはここで死ぬのです。それからの事など知ってどうするおつもりで?」
また高笑いを始めるパンドラ。そして名前の事まで匂わせて来たグールズを相手に、堪えきれない怒りで遊戯は震えた。
「楽しいかよ…… 命を奪い合う闘いが! 楽しいかって聞いてんだよ!」
「えぇもちろん。勝つのは私ですから。」
「腐ってるぜ貴様! なら教えてやる! 真のデュエリストの、闘いってヤツをな!」
***
「ブラック・マジシャンでダイレクトアタック!」
「クソォ!」と膝を折るデュエリストを前にしても、名前は少しも顔色を変えない。ソリッドビジョンシステムを取り囲んでいた観衆のざわめきも、戦いの場においてはただの背景音でしかない。
名前はまだフィールドに残っているブラック・マジシャンの横を通って、挑戦してきた青年の前に立った。
「いいデュエルだったわ」
正直まだ心が安定していなかった。あのあと路地裏を出てすぐにこの青年からデュエルを挑まれて最初は断った。それでも食い下がってきた彼は、パズルカード全賭けを申し出た。流石にそこまで言われては名前も背を向けられない。それでもやはり、内心ではブラック・マジシャンを召喚したのも気が気ではないほどだった。
幸いそんなに拗れたプレイにはならず、少しホッとしている。
「パズルカードだ。約束通り2枚。レアカードも……」
「パズルカードだけでいい」
レアカードが欲しくて参加してるわけじゃない。それだけは貫きたかった。差し出されたパズルカードのうち1枚だけを取り上げると、さっさと背を向けてブラック・マジシャンを見上げる。
「あ、あの、……!」
「次負けたら終わりよ。頑張ってね」
ディスクからブラック・マジシャンのカードを取ってしまえば、ソリッドビジョンである彼も消えてしまう。……やっぱり前のように、頻繁に自ら精神体として姿を表してくれないらしいのを再確認してため息が溢れる。
……なにか、危機的状況か、さっきみたいに自分の真実らしきものに触れそうになった時だけはすぐに飛び出してきて、あの青い手で視界を遮ってくるというのに。
「あの!」
突然の大声に驚いて振り向けば、さっきの青年が立ち上がって震えていた。
「な、……なによ」
「お、思いあがらないでください! いくら強くて有名だからって、アンティを受け取らないのは負けたヤツに失礼です!」
「……え、」
思いがけない言葉に心臓が締め付けられる。
「な、……でも、そのカードはあなたの大切なものでしょう。私が受け取ったところで、私はそのカードを使う保証はしないし、活躍させてあげることもできないわ。それならあなたが、愛情をもって大切にするべきよ」
「そうやって良い人ぶってるんですよ、アナタは。勝負に勝っておいて、敗北した者に贖罪してるだけだ。自分が勝つのが当然だから、戦いを挑んできた者が全員可哀想に見えてるんだ!」
「───!」
「僕からカードを奪わないのも、約束した枚数のパズルカードを受け取らないのも、生半可なプレイで勝てる相手だと最初から値踏みして、ハナから本気で向き合っていないんじゃないですか?
……僕はデュエルクイーンだったアナタに憧れてデュエリストになった。でも今のアナタは、僕が憧れていた真のデュエリストじゃない」
ズキリ、となにかが胸に突き立てられた。血が流れるような感覚と、身体中の生気が奪われていくような感覚。ひとりの無名のデュエリストを前にして、プライドやスタンスだけが「真のデュエリスト」の条件ではないのだと目の前に突き付けられる。
心のどこかで見下していた? そう自問すれば、確かにそうだったかもしれない。海馬のようにそれが突き抜けていればそれはそれで正しいのだろう。だが名前にはそれを咎める良心をも抱えていた。だからこそ、格下のデュエリストに対して無意識のうちにそんな仕打ちをしていたのだろう。
「……あなた、サイドデッキはあるの?」
「え、」
名前はディスクからデッキを取り上げると、ブラック・マジシャンや墓地のカードも戻してシャッフルを始める。
「あなたに再戦を申し込むわ。パズルカードはお互いの持ってる全枚数。レアカードは2枚。……ただし、本気で倒す。手加減はしない」
シャッフルし終えたデッキを青年に差し出して「はやくカットしろ」と目で訴えた。戸惑いを見せていた青年も決心がついたのか、息を飲んでから名前のデッキを受け取りカットする。
「……私はまだ真のデュエリストじゃないかもしれない。でも、私が真のデュエリストになれる女だと理解してから帰ってもらわなきゃ、私のプライドが許さないのよ」
フッと笑うと、名前は戻ってきたデッキをデュエルディスクに装着した。
「ただし、さっきのヌルいプレイをするなら3ターンで倒す」
***
「「デュエル!」」
回転式のカッターが不気味な音を上げ続ける中で、遊戯とパンドラのデュエルは始まった。先行をとった遊戯がデッキに手を掛ける。
遊戯をチラリとも見ずに、パンドラは手札に口を歪めて笑った。その手札にはすでにブラック・マジシャンが来ている。
「(奇術師はカードを操るテクニックを千以上体得している。手札に思い通りのカードを持ってくることなど容易いこと!)」
パンドラはブラック・マジシャンのカードを僅かにカットし、他のカードと大きさを変えていたのだ。3枚のブラック・マジシャンにその細工を施し、デッキをカットすると必ず1番上に来るようにしてある。
「(遊戯…… 奇術師相手のカード勝負がいかに愚かな行動であるか、身をもって教えてあげましょう!!!)」