/ Domino City side
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「ようやく見つけたぜ」
カフェテラスでデュエリストデータを漁っていたレアハンターの男の前に城之内が立つ。男は「おやおや……」と不適に笑い、カップを手にした。
「必ずこのバトルシティに現れると思ってたぜ。街の雑踏に紛れてもよ、このオレの目はごまかせねぇ!」
店前で吠える城之内に、男は悠長にお茶を啜ってから席を立つ。
「ふう…… 負け犬のくせに、吠えまくることは忘れてないか」
「負け犬だと?!」
「城之内君!」
騒ぎを聞きつけた遊戯が駆けつける。それを目にした瞬間、男の眼光は鋭く光った。
「(武藤遊戯か!!! これはちょうどいい!)」
「遊戯! コイツが言ってたグールズの手先だ! オレはこの野郎にレッドアイズを……!」
「コイツがグールズ?!」
城之内が指差した男に遊戯の肩が強張る。不穏な緊張感がその場に張り詰め出していた。
「(グールズ、裏ゲーム界を支配する闇組織のメンバー!)」
遊戯の登場に目の色を変えた男がノートパソコンを畳むと、カフェテラスから降りて来る。
「こっちはレアカードのないお前になど用はない。武藤遊戯! お前が相手をしろ」
「待て! これはオレの問題だ!」
「いや、このデュエル僕が受ける」
「遊戯?!」
城之内を抑えて一歩前に出た遊戯の千年パズルが輝きを放ち始める。
「デュエリストにとってかけがえのないカード…… それを強奪するヤツは───」
一歩ずつ足を前に進める遊戯が、一度大きく千年パズルの光に包まれた。続けられる言葉は遊戯のもの、だがその意識は別。
「オレが絶対に許さねぇ!」
まんまとデュエルの相手に名乗り出た遊戯を、レアハンターのよく動く眼球が捉える。その視線を城之内は知っていた。
「遊戯! ヤツらは勝つために手段を選ばねぇ。ヤツらはあらゆるレアカードを偽造して最強デッキを組んでいやがるんだ! ヤツのデッキには───」
そこまで言いかけた城之内の前に遊戯の諫める手が翳される。
「その先はなにも言うな、城之内君」
「けど!」と言いかける城之内を遊戯は再び諫める。そして真剣な眼差しで城之内を見上げた。
「たとえ相手がどんな卑怯な手を使おうと、ゲームの前にオレが敵の手の内を知る権利は無い。」
その言葉に城之内が言葉を詰まらせる。
「レアハンターよ、いま貴様の持ちうる最高のタクティクスで挑んできな! オレのデッキが真っ向から粉砕してやるぜ!」
***
「なぁ、あれクイーンじゃねぇか?」
「オイ目ぇ合わせるなよ、初戦で敗退したくねぇだろ」
「(……根性無しばっか)」
メインストリートだけあってデュエルディスクをつけた人物は多い。だが海馬の開会宣言に沸いた有象無象は、所詮有象無象に過ぎなかった。
馴れ合ってばかりでデュエルを始める気配はなし。無論初っ端から勝てそうにないヤツを相手にする骨のあるヤツもなし。名前の顔を見て目を逸らすデュエリスト達に、ただただため息か舌打ちだけ繰り返す。
「(やっぱ顔をネットに出されたのは痛いわよね、……これじゃあパズルカードを集める1発目の相手探しが大変───
「見つけたでぇ! “元”デュエルクイーン!」
───でもなかったようだ。
挑発するような言葉に振り返る。周りのデュエリストや一般人達が道をあけてその男を取り囲んで注目していた。
見覚えのある出で立ちと関西弁。意外すぎる相手に、名前は口を開けっぱなしにしてしばらくその相手を眺めた。
「……ダイナソー竜崎?」
***
「兄さま、最初のデュエルが始まるぜ!」
童実野町一帯どころか地球の球面ごとデュエリストたちを眺める人工衛星。そこからの信号をキャッチした、海馬コーポレーションのメインシステム制御室。
「遊戯だ!」
画面に映し出されたデュエリストデータにモクバが楽しそうに海馬を見上げる。
「遊戯め、……早速始めるか。しばしここで観戦させてもらおう」
どこか満足気に目を細める海馬の横で、モクバは再び手元のキーボードを叩き始める。デュエルディスク初の実戦登用と神のカードの追跡で、オペレーター室の社員達も忙しなく動いていた。
「残り2枚の神のカードを持っているデュエリストが、必ず潜んでいるはずだ。デュエルディスクから送られて来るデータを徹底チェックしろ!」
***
「オレの先行! ドロー!」
遊戯(手札5→6)
バトルシティ、ファーストデュエル。遊戯とレアハンターとの闘いは遊戯のターンから始まった。
背後では城之内をはじめ多くの観衆がそれを眺めている。だが観衆達の好奇や楽しむような目とは裏腹に、城之内だけはレアハンターのデッキに潜む強大な力に遊戯を案じていた。
その不安な眼差しになお陰をもたらすレアハンターの吊り上げられた口端。城之内は自分が味あわされた屈辱に拳を握る。
「(遊戯、……気付いてくれ! ヤツの戦法に!)」
「いくぜ! オレは2枚のカードをフィールドに伏せ、《
オレのターンは終了だ!」
遊戯(手札6→3 / LP:4000)
「私のターン、ドロー。
(手札5→6)
《天使の施し》! デッキからさらに3枚引き、2枚を捨てる。」
レアハンター(手札6→5→8→6)
手札を眺めて笑いを堪えきれないレアハンター。
墓地を肥した割になにかコンボを仕掛けて来る気配もない。その笑みと余裕に隠された戦略に、遊戯の目がさらに鋭くなる。
「(手札入れ替えのカード…… なにかを狙っているな?)」
「ならば
このトラップカードが出ている限り、全てのモンスターはオモテ表示にしなければならない!」
「フッ…… ムダな事を。《アステカの石像》(★4・攻/300 守/2000)を守備表示!」
レアハンター(手札6→5)
「オレのターン!
(手札3→4)
《
(手札4→3)
さらに伏せカードオープン!《融合》! 2体のモンスターを融合させ、《有翼幻獣キマイラ》(★6・攻/2100 守/1800)召喚!
バトルシティルールでは、融合召喚したモンスターは次のターンまで攻撃できない。だが次のターンにお前の壁モンスターは確実に破壊できるぜ!
さらにカードを1枚伏せてターンを終了。」
遊戯(手札3→2)
「(ダメだ遊戯! 場のモンスターなんてほっとけ! 既にヤツの手札には《エグゾディア》のパーツカードが揃いつつあるはず)」
***
さっきまで顔を見ただけで知らん顔をしていたデュエリスト達が、ダイナソー竜崎とデュエルクイーンのデュエルが始まるとなった途端に集まり始める。
「ここで
「……」
元西日本チャンプか…… 羽蛾と闘ったことはあるが、竜崎と当たったことはない。
相手はやる気満々だし、断ってハイそうですかと道を開けるような奴でもないだろう。
「いいわ。……受けてあげる」
デュエリスト・キングダム以来の本気のデュエル。久しぶりのピリついたこの感覚に、名前は堪えきれない喜びと楽しみに背中が震えた。……遊戯がひとりのデュエリストに戻してくれてから、初めてのデュエル。
懐かしさすら感じるこのワクワクは、全身の血をゆっくりと沸かせる。
デュエルディスクを起動させ、互いにデッキをセットした。正直まだ新しいデッキを実戦で回していないせいで、練り途中ではある。
これは新しいルールと、自分の新しいデッキ構成を知るためのデュエルになる……!
「フン、いくで! パズルカードは1枚賭けや!」
「「デュエル!!!」」