/ Domino City side
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あれ? 舞さんは?」
駅前に1人できた名前に杏子が辺りを見回す。
「出掛けちゃったみたいで居なかったのよ」
「そうなんだ、ちょっと残念」
全員制服から私服に着替えて集まったが、遊戯だけは日直からそのまま駅にやって来た。
街を歩きすすめたところで遊戯が目当ての店を探す。
「たしかこの辺だと思ったんだけど……」
「あ、……ひょっとしてこの先曲がったとこ?」
「よし! 早いとこゲットしようぜ!」
杏子が指差した方向へ駆け出す城之内を本田も追いかける。名前は行き先が海馬と来たお店だと気付いて少し気恥ずかしくなったが、杏子がそのカードショップを知っていることにも首を傾げた。
それは遊戯も同じだったようで、意外そうな顔で杏子を見上げた。
「杏子よく知ってたね、そのお店」
「実は昨日、もう1人の遊戯と来たんだァ」
「そうだったんだ」
昨日、その言葉に小さく胸がうずく。名前は「先に行ってるね」と声を掛けて城之内達を追いかけた。
その話題を少し避けているような名前に遊戯の表情が曇る。杏子も、そして名前もあんな大癇癪を起こしておいて朝には何事もなかったかのように笑い合っていた。もう1人の自分も「もう大丈夫だ」と言っていたけれど、遊戯はその経緯を知らない。
「ねぇ……もう1人の遊戯となにか話した?」
「え? ……あ、うん。バトルシティの事をね! 杏子、昨日は色々ゴメンね。でもありがとう! もう1人の僕、少し元気を取り戻してたよ」
「そう、……」
「(やっぱり壁画のことや、イシズって人のこと、……名前のことも話してないんだ)」
僅かに目を伏せる杏子に遊戯は気付けなかった。
「でもなんか変なんだよね」
遊戯は昼休みの名前と同じようにデッキを取り出してカードを見つめた。一番上表になっているブラック・マジシャンのカードが杏子の目に止まる。
「もう1人の僕はね、アンティルールなんて絶対やらない主義なたんだ。本当のレアカードっていうのは希少価値があるとかそういうことじゃない。何千という中から選び抜いた40枚のカード…… 全部掛け替えの無いレアカードなんだって。だからそれを賭けの対象にはできない。そう言ってたのに───」
たどり着いたカードショップを遊戯が見上げた。城之内と本田がショーウィンドウに張り付き、一歩引いて見ていた名前が振り返る。
同じ色の瞳を重ねて、遊戯と名前はどちらともなく微笑んだ。
「何かもう1人の僕は、もっと別なものを追い求めているような気がする。……それは、きっと名前も」
そう杏子に言い切ると、遊戯は城之内たちに駆け寄って一緒にショーウィンドウに並ぶカードを眺めた。その背中を名前も笑って見ている。
「(遊戯はもう1人の遊戯の求めているものにすぐに気付く…… 隠し事をするには2人の距離は近すぎるよ)」
***
遊戯と名前は最高レベル8のデュエリストとして登録されたデータを元にデュエルディスクを受け取った。城之内は《レベル2・馬の骨》と登録されていた海馬コーポレーションのデータにまたも地団駄を踏むが、城之内のレアカード登録を見た店員が画面を誤魔化してデュエルディスクを城之内に渡す。
違和感に遊戯と名前が顔を見合わせたが、城之内が出場できる事に越した事はないと一緒に喜ぶ。
そして店を出て行く全員の背中を見送った店員が、眼鏡の奥で目を吊り上げて笑うと、電話を手にした。
「───あぁ、オレだ。まずは一匹、いいカモを見つけたぜ」
***
「ちょいと遅くなっちまったな」
ビルの隙間からは星の輝き出した空が敷かれている。住宅街へ向かう道と駅へ向かう道に挟まれた四角に差し掛かったところで、城之内が足を止めた。
「悪いけどよ、オレは病院に行かなきゃなんねぇから、ここで」
「静香ちゃんの手術がうまくいくように、祈ってるからね」
「ありがとうよ」
遊戯にそう返してから、城之内は駅への近道になる細い路地を走っていった。その背中を本田が心配そうに見送る。
「いよいよか。アイツも複雑な気持ちだろうな……」
「?」
顔を向けた名前に本田が「そいやぁお前は知らないよな」と付け加える。
「お袋さんは、アイツが小さい時に妹を連れて出て行っちまったんだ。……静香ちゃんの手術となりゃ、病院にはお袋さんも来てるだろ」
「そうよね、手術の立ち会いとなると、お母さんに会わないわけにはいかないもの……」
杏子も本田に同調して、小さくなる城之内の背中を見つめた。
「そう、城之内も……」
城之内も、と口にした名前に遊戯と杏子が振り返る。どこか陰を負った名前の声と、重い空気を振り払うように本田が拳を振り上げた。
「よし、明日はオレも病院に行って、家族の絆を取り持ってやるぜ!」
「な〜んか、本田って静香ちゃんの事になると妙に積極的じゃない?」
からかうように本田を覗きこむ杏子に、遊戯も笑う。
「だって、静香ちゃんは本田君の好みなんだよね」
「下心丸出しじゃない」
名前までもトドメとばかりにそう言うので、本田は慌てて取り繕った。
駅前に1人できた名前に杏子が辺りを見回す。
「出掛けちゃったみたいで居なかったのよ」
「そうなんだ、ちょっと残念」
全員制服から私服に着替えて集まったが、遊戯だけは日直からそのまま駅にやって来た。
街を歩きすすめたところで遊戯が目当ての店を探す。
「たしかこの辺だと思ったんだけど……」
「あ、……ひょっとしてこの先曲がったとこ?」
「よし! 早いとこゲットしようぜ!」
杏子が指差した方向へ駆け出す城之内を本田も追いかける。名前は行き先が海馬と来たお店だと気付いて少し気恥ずかしくなったが、杏子がそのカードショップを知っていることにも首を傾げた。
それは遊戯も同じだったようで、意外そうな顔で杏子を見上げた。
「杏子よく知ってたね、そのお店」
「実は昨日、もう1人の遊戯と来たんだァ」
「そうだったんだ」
昨日、その言葉に小さく胸がうずく。名前は「先に行ってるね」と声を掛けて城之内達を追いかけた。
その話題を少し避けているような名前に遊戯の表情が曇る。杏子も、そして名前もあんな大癇癪を起こしておいて朝には何事もなかったかのように笑い合っていた。もう1人の自分も「もう大丈夫だ」と言っていたけれど、遊戯はその経緯を知らない。
「ねぇ……もう1人の遊戯となにか話した?」
「え? ……あ、うん。バトルシティの事をね! 杏子、昨日は色々ゴメンね。でもありがとう! もう1人の僕、少し元気を取り戻してたよ」
「そう、……」
「(やっぱり壁画のことや、イシズって人のこと、……名前のことも話してないんだ)」
僅かに目を伏せる杏子に遊戯は気付けなかった。
「でもなんか変なんだよね」
遊戯は昼休みの名前と同じようにデッキを取り出してカードを見つめた。一番上表になっているブラック・マジシャンのカードが杏子の目に止まる。
「もう1人の僕はね、アンティルールなんて絶対やらない主義なたんだ。本当のレアカードっていうのは希少価値があるとかそういうことじゃない。何千という中から選び抜いた40枚のカード…… 全部掛け替えの無いレアカードなんだって。だからそれを賭けの対象にはできない。そう言ってたのに───」
たどり着いたカードショップを遊戯が見上げた。城之内と本田がショーウィンドウに張り付き、一歩引いて見ていた名前が振り返る。
同じ色の瞳を重ねて、遊戯と名前はどちらともなく微笑んだ。
「何かもう1人の僕は、もっと別なものを追い求めているような気がする。……それは、きっと名前も」
そう杏子に言い切ると、遊戯は城之内たちに駆け寄って一緒にショーウィンドウに並ぶカードを眺めた。その背中を名前も笑って見ている。
「(遊戯はもう1人の遊戯の求めているものにすぐに気付く…… 隠し事をするには2人の距離は近すぎるよ)」
***
遊戯と名前は最高レベル8のデュエリストとして登録されたデータを元にデュエルディスクを受け取った。城之内は《レベル2・馬の骨》と登録されていた海馬コーポレーションのデータにまたも地団駄を踏むが、城之内のレアカード登録を見た店員が画面を誤魔化してデュエルディスクを城之内に渡す。
違和感に遊戯と名前が顔を見合わせたが、城之内が出場できる事に越した事はないと一緒に喜ぶ。
そして店を出て行く全員の背中を見送った店員が、眼鏡の奥で目を吊り上げて笑うと、電話を手にした。
「───あぁ、オレだ。まずは一匹、いいカモを見つけたぜ」
***
「ちょいと遅くなっちまったな」
ビルの隙間からは星の輝き出した空が敷かれている。住宅街へ向かう道と駅へ向かう道に挟まれた四角に差し掛かったところで、城之内が足を止めた。
「悪いけどよ、オレは病院に行かなきゃなんねぇから、ここで」
「静香ちゃんの手術がうまくいくように、祈ってるからね」
「ありがとうよ」
遊戯にそう返してから、城之内は駅への近道になる細い路地を走っていった。その背中を本田が心配そうに見送る。
「いよいよか。アイツも複雑な気持ちだろうな……」
「?」
顔を向けた名前に本田が「そいやぁお前は知らないよな」と付け加える。
「お袋さんは、アイツが小さい時に妹を連れて出て行っちまったんだ。……静香ちゃんの手術となりゃ、病院にはお袋さんも来てるだろ」
「そうよね、手術の立ち会いとなると、お母さんに会わないわけにはいかないもの……」
杏子も本田に同調して、小さくなる城之内の背中を見つめた。
「そう、城之内も……」
城之内も、と口にした名前に遊戯と杏子が振り返る。どこか陰を負った名前の声と、重い空気を振り払うように本田が拳を振り上げた。
「よし、明日はオレも病院に行って、家族の絆を取り持ってやるぜ!」
「な〜んか、本田って静香ちゃんの事になると妙に積極的じゃない?」
からかうように本田を覗きこむ杏子に、遊戯も笑う。
「だって、静香ちゃんは本田君の好みなんだよね」
「下心丸出しじゃない」
名前までもトドメとばかりにそう言うので、本田は慌てて取り繕った。