王国編 /1
名前変換
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海沿いに森の拓けた場所へ着陸したヘリから、海馬が降り立った。
「海馬!」
「海馬くん!」
遊戯と名前が駆け寄る。
「久しぶりだな、遊戯、名前。」
「うん!…名前の言ってた事、ほんとに当たったね。」
遊戯が名前を見ると、海馬も「どういう事だ?」と名前に視線を向ける。名前は海馬と目が合うと、小さく心臓が跳ねた気がした。
「!…べ、べつに。」
「…さっき、名前が海馬くんに呼ばれた気がしたって言って、海馬くんがいま来た方向を見てたんだ。そしたら本当に海馬くんが来たんだ!」
遊戯が楽しそうに言うと、海馬も少しドキリとした。…確かに海上を飛行中、名前の事を考えていたからである。
だが顔は決して崩さず、鼻で笑うだけであった。
「あ…そういえば。」
名前は腰のデッキケースを外すと、自分のデッキの横に入れた 海馬のデッキを取り出した。
「これ、海馬のデッキ。私が預かっていたの。…一応、傷付いたりはしてないと思うけど。」
海馬が受け取る際に、手が少し触れる。
すぐにその手を引こうとすると、海馬はデッキを小指と薬指で手の平に抱えて持ったまま、残りの3本の指で名前の手首を掴んで引き寄せた。
「!!!!」
勢いで抵抗に出したもう片方の腕をさらに捕まれ、そのまま反転してヘリの機体に身体を追いやられる。
「か、海馬くん!」
「…! な、なにするのよ…!」
一瞬何が起きたかわからなかったが、ヘリの機体に押し倒された名前を見て 遊戯はやっと状況を理解した。
「とりあえず礼は言っておく。だが、貴様がまだペガサスの仲間でないと言う確証はまだ無い。」
海馬は少し険しい表情で名前を見下ろす。
内心、海馬も正直なところ心臓は高鳴っていた。それが何故だかはわからない。
だが、普段名前の居ない所で名前の事を考え続けていた所為か、実際 久しぶりに彼女を前にして やっと自分がどれだけこの女に逢いたかったのかを思い知った。
しかしその気持ちとは別に、身体が勝手に名前を取り押さえたのだ。
口から出た“ペガサスの仲間である可能性”は確かに本心から疑っている。それでも それ以上に、遊戯と夜を過ごしていた事への嫉妬が海馬を動かした。
「(何だ…この胸の奥から湧き上がる この昂りは…!)」
心の中で自らとの戦いに苛まれる海馬もだが、名前も胸中は大荒れであった。
海馬に捕まれた両の手が熱い。それどころか、膝から下の足が海馬の長い足と絡み合い、地面を踏み締める感覚よりも 海馬の足と触れ合っている所にばかり感触が集中している。
…青い目が上から射殺さんばかりに名前を見ている。それを彼女はただ目を見開いて受け取るしかなかった。
早鳴る心臓の所為で脈も上がっているだろう。不幸にも海馬は両の手首を掴んでいる。名前に今出来ることは ただただ大人しく、海馬が自分の脈拍に気付かない事を祈るだけであった。
「…あ、の、…海馬……」
海馬の顔をこんなに近くで見たのは初めてだ。
それはもちろん海馬もである。
「(美しい…)」
海馬はふと彼女の瞳にそんな言葉が出掛かり、飲み込んだ。
何故自分がこんな風に名前を捕まえて居るのかさえ曖昧になるほど、彼女で思考を奪われてしまう。
だがそれを表に出す海馬ではなかった。
「モクバと海馬コーポレーションを守るため、ペガサスを倒すまでは手段を選んではいられない。」
まだ海馬との顔の距離は、30センチの定規を差し込んでも少し余るくらいあるだろう。
だが海馬が喋ると、その吐息が名前のまつ毛を震わせる。
「俺が今から聞くことに余計な事は言わず素直に答えろ。」
名前は瞬きも忘れて、ただ小さく首を縦に振るだけである。…もう脈拍の高鳴りでは済まず、その手は小さく震えていた。もちろん海馬は、その震えも、酷く高鳴る脈拍も感じ取っていた。
「お前はペガサスの差し金か」
「!…どちらでもないわ。…ッ痛!!!」
しっかりと捕まれている方の手首を握りしめられる。
「説明しろ。」
「…く、ゥ…ッ!」
「待ちやがれ海馬ァ!」
そこへ城之内が駆け寄ってくると、海馬の胸倉を掴んで引き寄せた。海馬は意外にも名前をすんなりと離す。
「テメェ、名前はモクバを助けるために1人で闘って、テメェのデッキまで取り返したんだぞ!それが仲間にする態度かよ!」
「…!」
海馬は名前を見るが、名前は握りしめられていた手首を摩りながら、目を逸らしている。
「フン…そうか。」
海馬はすぐに城之内の手首を捻って自分から離し、そのまま背後へ投げ飛ばした。
「痛ってェー!テメェ!海馬ァ!」
城之内は起き上がって食らいつくが、遊戯と杏子に窘められる。
「…だが、貴様の口から本当の事を聞くまでは引くつもりはない。話せ。」
「…」
名前はバツの悪そうな顔で海馬を見ると、チラリと周りを見渡した。そこには遊戯、獏良、城之内、本田、杏子がこちらを見ている。
正直どこまで話すか考えたが、掻い摘むにも辻褄が合うように話さなければ海馬は納得しないだろう。…だが、それは千年アイテムの事にまで言及するという事である。
「(どこまで伏せて話しても納得してくれるか、それによるわね…。)」
名前はため息を吐くと、諦めか、それとも決心か。目を閉じて背筋を伸ばし、真っ直ぐ海馬と向き合う。
「…あ、」
目をあけて海馬を見ると、青い真剣な眼差しが名前の心を射る。つい少し吃ってしまい、瞬きをして取り繕った。
「…私がまだ中学生に入ったばかりの頃よ。ペガサスがデュエルモンスターズというカードゲームを生み出し、私はすぐに始めて大会にも出るようになった…。」
………
「海馬!」
「海馬くん!」
遊戯と名前が駆け寄る。
「久しぶりだな、遊戯、名前。」
「うん!…名前の言ってた事、ほんとに当たったね。」
遊戯が名前を見ると、海馬も「どういう事だ?」と名前に視線を向ける。名前は海馬と目が合うと、小さく心臓が跳ねた気がした。
「!…べ、べつに。」
「…さっき、名前が海馬くんに呼ばれた気がしたって言って、海馬くんがいま来た方向を見てたんだ。そしたら本当に海馬くんが来たんだ!」
遊戯が楽しそうに言うと、海馬も少しドキリとした。…確かに海上を飛行中、名前の事を考えていたからである。
だが顔は決して崩さず、鼻で笑うだけであった。
「あ…そういえば。」
名前は腰のデッキケースを外すと、自分のデッキの横に入れた 海馬のデッキを取り出した。
「これ、海馬のデッキ。私が預かっていたの。…一応、傷付いたりはしてないと思うけど。」
海馬が受け取る際に、手が少し触れる。
すぐにその手を引こうとすると、海馬はデッキを小指と薬指で手の平に抱えて持ったまま、残りの3本の指で名前の手首を掴んで引き寄せた。
「!!!!」
勢いで抵抗に出したもう片方の腕をさらに捕まれ、そのまま反転してヘリの機体に身体を追いやられる。
「か、海馬くん!」
「…! な、なにするのよ…!」
一瞬何が起きたかわからなかったが、ヘリの機体に押し倒された名前を見て 遊戯はやっと状況を理解した。
「とりあえず礼は言っておく。だが、貴様がまだペガサスの仲間でないと言う確証はまだ無い。」
海馬は少し険しい表情で名前を見下ろす。
内心、海馬も正直なところ心臓は高鳴っていた。それが何故だかはわからない。
だが、普段名前の居ない所で名前の事を考え続けていた所為か、実際 久しぶりに彼女を前にして やっと自分がどれだけこの女に逢いたかったのかを思い知った。
しかしその気持ちとは別に、身体が勝手に名前を取り押さえたのだ。
口から出た“ペガサスの仲間である可能性”は確かに本心から疑っている。それでも それ以上に、遊戯と夜を過ごしていた事への嫉妬が海馬を動かした。
「(何だ…この胸の奥から湧き上がる この昂りは…!)」
心の中で自らとの戦いに苛まれる海馬もだが、名前も胸中は大荒れであった。
海馬に捕まれた両の手が熱い。それどころか、膝から下の足が海馬の長い足と絡み合い、地面を踏み締める感覚よりも 海馬の足と触れ合っている所にばかり感触が集中している。
…青い目が上から射殺さんばかりに名前を見ている。それを彼女はただ目を見開いて受け取るしかなかった。
早鳴る心臓の所為で脈も上がっているだろう。不幸にも海馬は両の手首を掴んでいる。名前に今出来ることは ただただ大人しく、海馬が自分の脈拍に気付かない事を祈るだけであった。
「…あ、の、…海馬……」
海馬の顔をこんなに近くで見たのは初めてだ。
それはもちろん海馬もである。
「(美しい…)」
海馬はふと彼女の瞳にそんな言葉が出掛かり、飲み込んだ。
何故自分がこんな風に名前を捕まえて居るのかさえ曖昧になるほど、彼女で思考を奪われてしまう。
だがそれを表に出す海馬ではなかった。
「モクバと海馬コーポレーションを守るため、ペガサスを倒すまでは手段を選んではいられない。」
まだ海馬との顔の距離は、30センチの定規を差し込んでも少し余るくらいあるだろう。
だが海馬が喋ると、その吐息が名前のまつ毛を震わせる。
「俺が今から聞くことに余計な事は言わず素直に答えろ。」
名前は瞬きも忘れて、ただ小さく首を縦に振るだけである。…もう脈拍の高鳴りでは済まず、その手は小さく震えていた。もちろん海馬は、その震えも、酷く高鳴る脈拍も感じ取っていた。
「お前はペガサスの差し金か」
「!…どちらでもないわ。…ッ痛!!!」
しっかりと捕まれている方の手首を握りしめられる。
「説明しろ。」
「…く、ゥ…ッ!」
「待ちやがれ海馬ァ!」
そこへ城之内が駆け寄ってくると、海馬の胸倉を掴んで引き寄せた。海馬は意外にも名前をすんなりと離す。
「テメェ、名前はモクバを助けるために1人で闘って、テメェのデッキまで取り返したんだぞ!それが仲間にする態度かよ!」
「…!」
海馬は名前を見るが、名前は握りしめられていた手首を摩りながら、目を逸らしている。
「フン…そうか。」
海馬はすぐに城之内の手首を捻って自分から離し、そのまま背後へ投げ飛ばした。
「痛ってェー!テメェ!海馬ァ!」
城之内は起き上がって食らいつくが、遊戯と杏子に窘められる。
「…だが、貴様の口から本当の事を聞くまでは引くつもりはない。話せ。」
「…」
名前はバツの悪そうな顔で海馬を見ると、チラリと周りを見渡した。そこには遊戯、獏良、城之内、本田、杏子がこちらを見ている。
正直どこまで話すか考えたが、掻い摘むにも辻褄が合うように話さなければ海馬は納得しないだろう。…だが、それは千年アイテムの事にまで言及するという事である。
「(どこまで伏せて話しても納得してくれるか、それによるわね…。)」
名前はため息を吐くと、諦めか、それとも決心か。目を閉じて背筋を伸ばし、真っ直ぐ海馬と向き合う。
「…あ、」
目をあけて海馬を見ると、青い真剣な眼差しが名前の心を射る。つい少し吃ってしまい、瞬きをして取り繕った。
「…私がまだ中学生に入ったばかりの頃よ。ペガサスがデュエルモンスターズというカードゲームを生み出し、私はすぐに始めて大会にも出るようになった…。」
………