/ Domino City side
名前変換
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「やっぱ風邪ひくかも……」
博物館の前に着いたものの、思った以上に人がいない。名前は少し入り難さを感じて足が止まった。
しかし千年秤が震え、2つの杯がカタカタと音を立てる。
「え、……」
こんな反応は初めて見た。千年アイテムや闇の力への反応とは違い、ウジャド眼は光らない。ただ「はやく行け」と言わんばかりに震えているのだと、名前は直感的に悟る。
夜の中を煌々とライトで照らされる博物館に視線を戻した。
さっきまでの気まずさはどこへやら、名前は吸い寄せられるように階段に足を掛ける。
***
「ごめん、もうやめよう。こんな話し……」
『わかっているのは、お前が千年パズルを持つことでオレが存在できるということだけ……』
「もういいよ!!!」
遊戯らしくない癇癪にもう1人の遊戯が目を見開く。
遊戯は泣いていた。
『……それでもオレは、永遠にお前といたい。』
「え、」と小さく漏らす遊戯の手に、千年パズルが渡された。そしてパズルごと包み込むように、もう1人の遊戯の手が添えられる。
『オレの記憶なんて戻らなくても構わない。』
「僕も……! 僕もずっと、……キミといたい。僕の記憶を全部あげるから、……!」
『相棒……』
***
ガラスドアの前に立つと、名前はホール全体を見渡した。自動ドアが普通に開き、おっかなびっくり中へ歩みを進める。
すると奥からエジプトの民族衣装のような格好をした集団と、暗い紫のコートを翻す見慣れた男がこちらへ出てくるのに遭遇した。
「……!」
「……」
あと数歩というところで互いに立ち止まり、見つめ合う。
「……海馬」
「フン、貴様も呼ばれていたのか」
お互いどこか動揺が隠せない。名前はすぐ目を逸らし、海馬もいつもの調子の振りをしているが、どこか目が泳いでいる。
正直あのデート以降は会っていなかったし、連絡もマチマチだった。
「お待ちしておりました。ミス苗字。」
イシズが一歩寄り、名前に声を掛けた。それを遮るように海馬は歩みを進め、名前の腕を掴むとエントランスの方へ強引に引っ張る。
「……!、ちょ、ちょっと海馬!」
「行くぞ。この女の相手なら必要ない」
「は?!」
イシズは静かに溜め息をつく。
「もっと名前さんにお話しがありましたが、1番気になっていた事はもう確認する事ができました。ご足労お掛けして申し訳ございませんでした。……また近いうちに、どうぞいらして下さいね。」
腰のベルトに差された千年秤と、名前の胸元に目配せをすると、名前もイシズの首に光る千年タウクを見てまたイシズと視線を交わす。
「(あなたは近いうちに、名もなきファラオと共に此処へ真実を確かめに来る。ただ今は、…)」
「行くぞ。」
海馬に手を引かれるまま、名前はイシズから目を離さず出て行った。
イシズはガラス張りの自動ドアから2人が出て行くのを見送ると、踵を返して博物館の奥へ去って行く。
「(あの人、千年アイテムを付けてたけど悪い人には見えなかった。本当の用事って何だったのかし……)
……ん?」
名前はようやく前を向いて違和感に気付く。海馬がしっかりと名前の手を握っていたのだ。
「!!!」
「階段だぞ」
手の甲の側から握られた手を引き寄せるともう片方の手をその手の平の下へ滑り込ませ、流れるような動作でそのまま肩を抱かれる。
後ろから抱かれるような見事なエスコートに、名前はただ身を固くするしかない。
だが此処で恥じらうのも癪に障ると覚悟を決め込むと、落ち着いた動作で自然に階段を降りて行く。
「さすが海馬コーポレーションの社長ね。どんな女性を相手にしていたら、こんな所作が身に着くのかしら」
何かひとつでも嫌味でも言ってやりたい。そんな意地悪で口にしたが、心臓は自分の耳の中でもその脈の衝撃が感じられるほど高鳴っている。
「口だけは達者だな。だが貴様こそもう少しはレディらしい所作を身に付けたらどうだ。声が震えているぞ」
「!」
思わずギッと睨み付けるが、海馬は何処吹く風といった涼しい顔をしている。
運転手がドアを開けて待つ車まで階段を降りると、先程までのエスコートとは打って変わって、早く乗れと言わんばかりに車へ押し込まれた。
「!、ちょ、ちょっと!なんで私が海馬の車に乗らなきゃ……!」
「こんな夜中に1人で歩くつもりか?」
海馬は少し苛立たしげに名前を見下ろす。
「な、なによ……」
「今から海馬コーポレーションに来い。……貴様に見せたいものがある」
「私のスケジュールは無視ってこと?」
しかしもう海馬の口は開かなかった。返事の代わりに車のドアを閉められ、反対側に回った海馬が車に乗り込んでくると「出せ」とだけ運転手に言い放った。
腕と足を組むだけでも、名前からしたら嫌味ったらしく見える。
そして車は動き出し、名前は強制的に連行されて行った。
博物館の前に着いたものの、思った以上に人がいない。名前は少し入り難さを感じて足が止まった。
しかし千年秤が震え、2つの杯がカタカタと音を立てる。
「え、……」
こんな反応は初めて見た。千年アイテムや闇の力への反応とは違い、ウジャド眼は光らない。ただ「はやく行け」と言わんばかりに震えているのだと、名前は直感的に悟る。
夜の中を煌々とライトで照らされる博物館に視線を戻した。
さっきまでの気まずさはどこへやら、名前は吸い寄せられるように階段に足を掛ける。
***
「ごめん、もうやめよう。こんな話し……」
『わかっているのは、お前が千年パズルを持つことでオレが存在できるということだけ……』
「もういいよ!!!」
遊戯らしくない癇癪にもう1人の遊戯が目を見開く。
遊戯は泣いていた。
『……それでもオレは、永遠にお前といたい。』
「え、」と小さく漏らす遊戯の手に、千年パズルが渡された。そしてパズルごと包み込むように、もう1人の遊戯の手が添えられる。
『オレの記憶なんて戻らなくても構わない。』
「僕も……! 僕もずっと、……キミといたい。僕の記憶を全部あげるから、……!」
『相棒……』
***
ガラスドアの前に立つと、名前はホール全体を見渡した。自動ドアが普通に開き、おっかなびっくり中へ歩みを進める。
すると奥からエジプトの民族衣装のような格好をした集団と、暗い紫のコートを翻す見慣れた男がこちらへ出てくるのに遭遇した。
「……!」
「……」
あと数歩というところで互いに立ち止まり、見つめ合う。
「……海馬」
「フン、貴様も呼ばれていたのか」
お互いどこか動揺が隠せない。名前はすぐ目を逸らし、海馬もいつもの調子の振りをしているが、どこか目が泳いでいる。
正直あのデート以降は会っていなかったし、連絡もマチマチだった。
「お待ちしておりました。ミス苗字。」
イシズが一歩寄り、名前に声を掛けた。それを遮るように海馬は歩みを進め、名前の腕を掴むとエントランスの方へ強引に引っ張る。
「……!、ちょ、ちょっと海馬!」
「行くぞ。この女の相手なら必要ない」
「は?!」
イシズは静かに溜め息をつく。
「もっと名前さんにお話しがありましたが、1番気になっていた事はもう確認する事ができました。ご足労お掛けして申し訳ございませんでした。……また近いうちに、どうぞいらして下さいね。」
腰のベルトに差された千年秤と、名前の胸元に目配せをすると、名前もイシズの首に光る千年タウクを見てまたイシズと視線を交わす。
「(あなたは近いうちに、名もなきファラオと共に此処へ真実を確かめに来る。ただ今は、…)」
「行くぞ。」
海馬に手を引かれるまま、名前はイシズから目を離さず出て行った。
イシズはガラス張りの自動ドアから2人が出て行くのを見送ると、踵を返して博物館の奥へ去って行く。
「(あの人、千年アイテムを付けてたけど悪い人には見えなかった。本当の用事って何だったのかし……)
……ん?」
名前はようやく前を向いて違和感に気付く。海馬がしっかりと名前の手を握っていたのだ。
「!!!」
「階段だぞ」
手の甲の側から握られた手を引き寄せるともう片方の手をその手の平の下へ滑り込ませ、流れるような動作でそのまま肩を抱かれる。
後ろから抱かれるような見事なエスコートに、名前はただ身を固くするしかない。
だが此処で恥じらうのも癪に障ると覚悟を決め込むと、落ち着いた動作で自然に階段を降りて行く。
「さすが海馬コーポレーションの社長ね。どんな女性を相手にしていたら、こんな所作が身に着くのかしら」
何かひとつでも嫌味でも言ってやりたい。そんな意地悪で口にしたが、心臓は自分の耳の中でもその脈の衝撃が感じられるほど高鳴っている。
「口だけは達者だな。だが貴様こそもう少しはレディらしい所作を身に付けたらどうだ。声が震えているぞ」
「!」
思わずギッと睨み付けるが、海馬は何処吹く風といった涼しい顔をしている。
運転手がドアを開けて待つ車まで階段を降りると、先程までのエスコートとは打って変わって、早く乗れと言わんばかりに車へ押し込まれた。
「!、ちょ、ちょっと!なんで私が海馬の車に乗らなきゃ……!」
「こんな夜中に1人で歩くつもりか?」
海馬は少し苛立たしげに名前を見下ろす。
「な、なによ……」
「今から海馬コーポレーションに来い。……貴様に見せたいものがある」
「私のスケジュールは無視ってこと?」
しかしもう海馬の口は開かなかった。返事の代わりに車のドアを閉められ、反対側に回った海馬が車に乗り込んでくると「出せ」とだけ運転手に言い放った。
腕と足を組むだけでも、名前からしたら嫌味ったらしく見える。
そして車は動き出し、名前は強制的に連行されて行った。