/ Domino City side
名前変換
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「あの中に人がいるんです! はやく助けて!」
放水する消防士に杏子が詰め寄る。すると開け放たれたドアから人影が現れ、放水と崩れる建物の轟音の中を割って根性入れる叫びと共に本田と城之内が飛び出してきた。
「遊戯!」
杏子が駆け寄ると、本田は勢いに任せて立ちどまれずに尻餅をつく。
本田を下敷きにして、名前にしっかりと抱かれたままの遊戯が杏の目に飛び込んだ。
「す、すんげぇなオイ…… 火事場の馬鹿力にも程があるぜ」
息を切らせてた城之内が本田の横で膝に手をつき息を整える。本田も「もう無理だ……」と大の字に背中を地面に預けた。
「みんな、良かった、ホントに良かったよ……」
杏子も安心したのか、腰が抜けたように座り込む。城之内と本田は顔を見合わせて笑い、疲れ果てた腕を持ち上げて拳同士をぶつけた。
「本田、テメェの大手柄だぜ」
「おうよ」
「コイツらは炎の中でも離さなかったんだ。絆をな……」
***
「それで、兄様は今新しいデュエルのシステムを開発してて、近いうちに名前にも見せてくれるぜ!」
名前の病室に、モクバのハツラツとした声が響く。病室の外では、また海馬コーポレーションからの黒服と、名前の家から遣いで出された黒服の2人が、ピリピリした空気を纏って控えていた。
「そう、楽しみだわ。でもそれじゃあ相変わらず忙しいのね。モクバ君もわざわざ来てくれてありがとう」
ベッド横のテーブルには千年秤とモクバが持ってきた盛大な花束、そして少し焦げてしまったデッキホルダーが置かれていた。
モクバが心配そうな目をそのホルダーに向けるので、名前は微笑んでそれを手に取ってボタンを外す。
「幸いカードに傷は付かなかったわ。まぁ、ホルダーは買い替えなきゃね。」
パラっと広げたデッキからブラック・マジシャンのカードが覗く。ふと、あの炎の中で初めて触れた遊戯のブラック・マジシャンのカードが頭によぎった。
「良かった、……名前のカードも、兄様のブルーアイズと同じくらいレアなカードだもんな」
ペガサスは、魔導書を世界に3枚ずつしか作らずにばら撒いた。……それを全て集めたのが名前のデッキ。クイーンの証である反面、それは“代えがない”ことも表している。
ブルーアイズを全て手中に収め、自分の代わりが現れないよう4枚目のブルーアイズを破った海馬を思い出す。流石にそれを聞いた時は名前も引いた。
「名前は、本当は兄様に会いたかったんじゃないのか?」
なにを感じ取ったのか、モクバの突然の言葉に肩が揺れた。
花束に挿されたカードに目をやるモクバの頭に、名前は笑って手を伸ばして撫でる。
「まさか! モクバ君の方が気が楽で嬉しいわ」
モクバは、へへ…と照れ臭そうに笑った。
「怪我はもう大丈夫なのか?」
「ええ。ちょっと火傷しただけで、大した事じゃないの。明日には退院よ! 海馬のおかげでまた帰りの荷物が増えたわ」
そう言って笑うと、モクバも笑うが、ふと何かに気付く。
「名前は、喋るときいつも兄様の事ばっかだよな。」
名前はハッとして口に手を伸ばした。自分でも気が付かなかいでいたのだ。
「まあでも、口止めされてたんだけど…… 兄様もさ、実はオレの前じゃ名前の事ばっか喋ってるんだぜ! 兄様こそ、名前に会いに来ればいいのにな」
モクバはまだ幼く、名前の気持ちも、海馬の気持ちも、どういった事なのかハッキリと理解はしていない。それ故、思った事を口に出すのだろう。
「……そうね」
名前はどういった顔をしていいのか分からないまま、海馬のサインが書かれたカードに目を向けた。
***
同じ病院の違う病室。千年パズルを手にした遊戯を杏子が見ていた。
「最初に千年パズルを完成させて時は8年もかかったのに。……もう1人の僕が手伝ってくれなのかな」
「……そうね、」
怪我をしている遊戯以上に元気のない様子に気付き、遊戯は杏子に顔を向ける。
「杏子?」
「私、なにか飲み物買ってくるね」
そういつものように笑った杏子に、遊戯は「うん」としか返せなかった。
傷付きながら、女の子なのに火傷も恐れないで、名前は遊戯をずっと守ってた。その姿が杏子の瞼から離れない。
「(もう1人の遊戯…… 私は彼の存在が、最初から遊戯の中にあったもので、千年パズルがきっかけで現れた人格だと信じていた。でも本当はパズルの中に存在する、別の人格なの?)」
ガコン、と缶飲料が自販機の扉を揺らす。取り出すために膝を折ったところで、杏子は胸に焦げ付いた感情に背中を丸めた。
「(名前は…… どっちの遊戯を、守ろうとしたの?)」
***
「ようこそいらっしゃいました。外務省を代表して歓迎申し上げます」
「お出迎え感謝します」
国際空港の要人向け入国ゲートに、今新たな千年アイテムの所持者が足を踏み入れた。
全ての始まりとなる石盤が飛行機から下される。
その行き先は、童実野町へと向けられていた。
放水する消防士に杏子が詰め寄る。すると開け放たれたドアから人影が現れ、放水と崩れる建物の轟音の中を割って根性入れる叫びと共に本田と城之内が飛び出してきた。
「遊戯!」
杏子が駆け寄ると、本田は勢いに任せて立ちどまれずに尻餅をつく。
本田を下敷きにして、名前にしっかりと抱かれたままの遊戯が杏の目に飛び込んだ。
「す、すんげぇなオイ…… 火事場の馬鹿力にも程があるぜ」
息を切らせてた城之内が本田の横で膝に手をつき息を整える。本田も「もう無理だ……」と大の字に背中を地面に預けた。
「みんな、良かった、ホントに良かったよ……」
杏子も安心したのか、腰が抜けたように座り込む。城之内と本田は顔を見合わせて笑い、疲れ果てた腕を持ち上げて拳同士をぶつけた。
「本田、テメェの大手柄だぜ」
「おうよ」
「コイツらは炎の中でも離さなかったんだ。絆をな……」
***
「それで、兄様は今新しいデュエルのシステムを開発してて、近いうちに名前にも見せてくれるぜ!」
名前の病室に、モクバのハツラツとした声が響く。病室の外では、また海馬コーポレーションからの黒服と、名前の家から遣いで出された黒服の2人が、ピリピリした空気を纏って控えていた。
「そう、楽しみだわ。でもそれじゃあ相変わらず忙しいのね。モクバ君もわざわざ来てくれてありがとう」
ベッド横のテーブルには千年秤とモクバが持ってきた盛大な花束、そして少し焦げてしまったデッキホルダーが置かれていた。
モクバが心配そうな目をそのホルダーに向けるので、名前は微笑んでそれを手に取ってボタンを外す。
「幸いカードに傷は付かなかったわ。まぁ、ホルダーは買い替えなきゃね。」
パラっと広げたデッキからブラック・マジシャンのカードが覗く。ふと、あの炎の中で初めて触れた遊戯のブラック・マジシャンのカードが頭によぎった。
「良かった、……名前のカードも、兄様のブルーアイズと同じくらいレアなカードだもんな」
ペガサスは、魔導書を世界に3枚ずつしか作らずにばら撒いた。……それを全て集めたのが名前のデッキ。クイーンの証である反面、それは“代えがない”ことも表している。
ブルーアイズを全て手中に収め、自分の代わりが現れないよう4枚目のブルーアイズを破った海馬を思い出す。流石にそれを聞いた時は名前も引いた。
「名前は、本当は兄様に会いたかったんじゃないのか?」
なにを感じ取ったのか、モクバの突然の言葉に肩が揺れた。
花束に挿されたカードに目をやるモクバの頭に、名前は笑って手を伸ばして撫でる。
「まさか! モクバ君の方が気が楽で嬉しいわ」
モクバは、へへ…と照れ臭そうに笑った。
「怪我はもう大丈夫なのか?」
「ええ。ちょっと火傷しただけで、大した事じゃないの。明日には退院よ! 海馬のおかげでまた帰りの荷物が増えたわ」
そう言って笑うと、モクバも笑うが、ふと何かに気付く。
「名前は、喋るときいつも兄様の事ばっかだよな。」
名前はハッとして口に手を伸ばした。自分でも気が付かなかいでいたのだ。
「まあでも、口止めされてたんだけど…… 兄様もさ、実はオレの前じゃ名前の事ばっか喋ってるんだぜ! 兄様こそ、名前に会いに来ればいいのにな」
モクバはまだ幼く、名前の気持ちも、海馬の気持ちも、どういった事なのかハッキリと理解はしていない。それ故、思った事を口に出すのだろう。
「……そうね」
名前はどういった顔をしていいのか分からないまま、海馬のサインが書かれたカードに目を向けた。
***
同じ病院の違う病室。千年パズルを手にした遊戯を杏子が見ていた。
「最初に千年パズルを完成させて時は8年もかかったのに。……もう1人の僕が手伝ってくれなのかな」
「……そうね、」
怪我をしている遊戯以上に元気のない様子に気付き、遊戯は杏子に顔を向ける。
「杏子?」
「私、なにか飲み物買ってくるね」
そういつものように笑った杏子に、遊戯は「うん」としか返せなかった。
傷付きながら、女の子なのに火傷も恐れないで、名前は遊戯をずっと守ってた。その姿が杏子の瞼から離れない。
「(もう1人の遊戯…… 私は彼の存在が、最初から遊戯の中にあったもので、千年パズルがきっかけで現れた人格だと信じていた。でも本当はパズルの中に存在する、別の人格なの?)」
ガコン、と缶飲料が自販機の扉を揺らす。取り出すために膝を折ったところで、杏子は胸に焦げ付いた感情に背中を丸めた。
「(名前は…… どっちの遊戯を、守ろうとしたの?)」
***
「ようこそいらっしゃいました。外務省を代表して歓迎申し上げます」
「お出迎え感謝します」
国際空港の要人向け入国ゲートに、今新たな千年アイテムの所持者が足を踏み入れた。
全ての始まりとなる石盤が飛行機から下される。
その行き先は、童実野町へと向けられていた。