/ Domino City side
名前変換
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「早く千年パズルを……!」
遊戯が必死に引っ張ってみても、打ち込まれた杭に通された鎖が砕けてくれることはない。火の手が回らないうちに名前はリングから遊戯のデッキをかき集めた。
デッキの1番正面になった遊戯のブラック・マジシャンと目が合い、一瞬だけ手が止まる。だがすぐに唇を噛むとブレザーのボタンを外し、火の粉が降り掛からないよう内ポケットに仕舞い込んでボタンを閉め直した。
「遊戯!」
服越しに遊戯のデッキを胸に押さえ込んで、プレイヤースタンドから苦戦する遊戯のもとへ飛び降りる。
「デッキは一枚も残さず無事よ」
「ありがとう! でも千年パズルが……!」
「ッ!」
杭を見上げるが、こればかりは魔導士の力や千年秤の力も関係ない。物理的に自分たちでどうにかしなければ───
「ちょっと待ってて」
名前はリングから飛び降り、転がった鉄パイプに手を伸ばす。まだ熱くなってないことを確認してから持ち上げると、再びリングへと登った。
「せーぇ……の!」
遊戯と2人で鉄パイプを引く。杭の穴にパイプを通して、手子の原理で思い切り引き抜こうとした。
「うわァッ」「キャッ」
遊戯が壁についた足をすべらせてバランスを崩せば、名前も一緒に尻餅をついた。熱くなり始めた鉄パイプだけが転がり、限界に近いことを物語る。
原理としては抜けるはずだが、名前と遊戯では力不足だった。
容赦なく煽ってくる熱気に滴る汗と、明らかに足りなくなってきた酸素で力が入らない。しかし、ここで千年パズルを失うわけにもいかなかった。
この中には、もう1人の遊戯が宿っているのだから。
「名前はもう逃げて! あとは僕が……!」
「バカ言わないで動きなさい!!!」
熱を帯びて持てなくなったパイプに名前はハンカチを巻いて持ち、立ち上がる。
「あーもう! 日本も銃規制緩和しなさいよ!」
「グロック持ってたら!一発なのにぃ!」と、文句を自分の掛け声にして1人でパイプを引く。遊戯では身長が足りないのだ。思い切り壁を蹴り上げて、スカートが捲れるのも気にしていられない。
「パンツ覗いたら後で川に投げ込んでやるんだから!」
「名前……」
ぐぬぬぬぬ……!と歯を食いしばる名前に、遊戯は千年パズルを見上げる。
「今見捨てたら、……もう1人の僕と、二度と会えなくなる───!」
遊戯はポケットに入れていた千年パズルのピースにてをやった。
***
「印がここで切れてる!」
煙を頼りに駆けつけたところで、杏は火の手が上がるその廃屋を見上げた。
「オイ! これ名前の鞄じゃねぇか?」
「!」
本田が指差した先、敷地を囲う塀の内側に、見覚えのあるランチトートと一緒に立てかけてあるスクールバッグが杏子と城之内の目に入る。
「じゃあやっぱり遊戯はここに?!」
「クソっ! 名前も一緒か!」
一斉に足を踏み出したところで、本田と城之内は杏子に振り返った。
「杏子は119番してくれ! 中にはオレと城之内で行く!」
「でも……!」
「本田の言う通りだぜ! まずは通報が先だ! 頼むぜ杏子!」
「わかったわ。2人とも気をつけてね!」
杏子が電話を探して駆け出すのを見送ってから、本田と城之内は顔を見合わせる。
「悪りぃな城之内。静香ちゃんがいるってのによぉ」
「本田、今は遊戯と名前だ。まだ中にいるかもしれねぇ。急ぐぞ!」
***
「ハァ、ハァ……ハァ、」
「ゲホッ、ケホケホッ……」
炎はだいぶ近くまで燃え広がっていた。熱さと煙にもうどうすることもできない。そんな中にあっても、遊戯は集中してパズルを組み立てていた。
「(早い…… 本当に苦労して組み立てたようには見えない。……それとも、千年パズルの意思で組み上がっているの?)」
熱気に目を開けていられない中で、名前は咳をしながら黙々とパズルを相手にする遊戯を見て、どこかゾッとしてもいた。
「(ごめん、ごめんね、もう1人の僕。君の心を砕いてしまって…… 必ずパズルを完成させるから、そしたら、君にまた会えるよね)」
それでもフラつく遊戯の足元に、名前は鉄パイプから手を離してその体を支えた。
「……! 名前」
背後から壁に追いやるような形で覆いかぶさった名前に、遊戯は驚いてすぐ横に来た名前の横顔を見た。
「組み上げてあげるんでしょ? 千年パズルが望むようにしてあげて。……私が必ず、あなたを守ってあげるから」
「……! うん!」
「行くぜ!」「おう!」
外では熱くて触れなくなったドアノブを諦めて、城之内と本田はドアを破ろうと何度も体当たりをしている。
だが炎の燃え盛る音で、遊戯と名前にその音は届いていなかった。
もう殆どが組み上がったパズルを前に、名前は息を飲んだ。
「もう少しで、また君に会える───!」
「遊戯……」
最後のピースが嵌められ、遊戯はウジャド眼のピースを押し込んだ。炎に照らされて煌々と燦く黄金の正逆三角錐に、遊戯と名前は同時に息をつく。
「できた───……!」
大きな音を立てて天井の一部が崩れる。大きな火の粉が降りかかり、名前は目を閉じて遊戯を抱きしめた。
「大丈夫?」
「名前こそ……! もう名前だけでも逃げて!」
「『ダメよ、私はあなたを二度も失ったりはしない!』」
「……ッ! 名前……?!」
千年パズルのウジャド眼が大きく光り、その鏡面は炎ではない赤い色─── 名前の髪と瞳が映された。
再び大きな音が足下を揺らす。遊戯も思わず目を瞑って千年パズルを握りしめると、背中でズルリと崩れかかる名前に痛いほど心臓が早鳴った。
「名前!」
「大丈夫、……大丈夫よ。」
ついに扉を打ち破った城之内と本田に、想像以上に火の海と化した屋内が広がる。そこへ何かを叫びながら、キースが外へ飛び出していった。
「キース! なんであいつが」
「あの野郎!」
追いかけそうになる本田の肩を掴み、城之内が諫める。
「待て! 遊戯と名前を探すのが先だ!」
外では次々と消防車や緊急車両がサイレンを呻らせて集まりだしていた。
燃え盛る火の中に構うことなく城之内と本田は屋内へ駆け込む。そこに名前と、名前が覆い被さるように抱きしめた遊戯を見つけた。
「何やってんだ! 早く逃げろ!」
声を上げても2人は動かない。炎の隙間をすり抜けて、城之内と本田が名前に手を掛けた。
「しっかりしろ! 名前!」
「遊戯、大丈夫か?!」
「城之内、本田……」
名前が汗で髪が張り付いた顔を上げる。その腕の中で、遊戯も虚な目を開けた。
「早く逃げるぞ!」
「ダメだ、僕はパズルを、置いていけない……」
名前も顔を横に振る。城之内が見上げると、鉄パイプを差したままの杭から伸びた鎖が、千年パズルに繋がっているのを見た。
「これか……!」
「本田! 城之内! まだ中にいるの?!」
杏子が声を上げても、中の城之内達には聞こえない。返事の代わりに崩れ行く建物の音が杏子の耳に響き渡る。
「遊戯! 名前!」
火が燃え移らないようにと避難させた名前の鞄を持つ杏子の手が握り締められた。
「支点、力点、作用点ッてかぁ!」
少し焦げた名前のハンカチ越しに、城之内と本田が歯を食いしばって杭を引き抜く。ゆっくりと動き出し、抜けた勢いのまま本田と城之内は尻餅をつき、遊戯と名前は崩れ落ちた。
「よし! 逃げるぞ!」
本田が起き上がって城之内を見ると、今度は名前が遊戯を抱きしめたまま離さないのに苦戦していた。
「クソ、ダメだ、2人とも気を失ってやがる」
火の勢いは限界だった。だが2人いっぺんに抱き上げて運ぶなんて流石に───
「ふぅンガァァァァアア!!!!」
「本田ァ?!」
遊戯が必死に引っ張ってみても、打ち込まれた杭に通された鎖が砕けてくれることはない。火の手が回らないうちに名前はリングから遊戯のデッキをかき集めた。
デッキの1番正面になった遊戯のブラック・マジシャンと目が合い、一瞬だけ手が止まる。だがすぐに唇を噛むとブレザーのボタンを外し、火の粉が降り掛からないよう内ポケットに仕舞い込んでボタンを閉め直した。
「遊戯!」
服越しに遊戯のデッキを胸に押さえ込んで、プレイヤースタンドから苦戦する遊戯のもとへ飛び降りる。
「デッキは一枚も残さず無事よ」
「ありがとう! でも千年パズルが……!」
「ッ!」
杭を見上げるが、こればかりは魔導士の力や千年秤の力も関係ない。物理的に自分たちでどうにかしなければ───
「ちょっと待ってて」
名前はリングから飛び降り、転がった鉄パイプに手を伸ばす。まだ熱くなってないことを確認してから持ち上げると、再びリングへと登った。
「せーぇ……の!」
遊戯と2人で鉄パイプを引く。杭の穴にパイプを通して、手子の原理で思い切り引き抜こうとした。
「うわァッ」「キャッ」
遊戯が壁についた足をすべらせてバランスを崩せば、名前も一緒に尻餅をついた。熱くなり始めた鉄パイプだけが転がり、限界に近いことを物語る。
原理としては抜けるはずだが、名前と遊戯では力不足だった。
容赦なく煽ってくる熱気に滴る汗と、明らかに足りなくなってきた酸素で力が入らない。しかし、ここで千年パズルを失うわけにもいかなかった。
この中には、もう1人の遊戯が宿っているのだから。
「名前はもう逃げて! あとは僕が……!」
「バカ言わないで動きなさい!!!」
熱を帯びて持てなくなったパイプに名前はハンカチを巻いて持ち、立ち上がる。
「あーもう! 日本も銃規制緩和しなさいよ!」
「グロック持ってたら!一発なのにぃ!」と、文句を自分の掛け声にして1人でパイプを引く。遊戯では身長が足りないのだ。思い切り壁を蹴り上げて、スカートが捲れるのも気にしていられない。
「パンツ覗いたら後で川に投げ込んでやるんだから!」
「名前……」
ぐぬぬぬぬ……!と歯を食いしばる名前に、遊戯は千年パズルを見上げる。
「今見捨てたら、……もう1人の僕と、二度と会えなくなる───!」
遊戯はポケットに入れていた千年パズルのピースにてをやった。
***
「印がここで切れてる!」
煙を頼りに駆けつけたところで、杏は火の手が上がるその廃屋を見上げた。
「オイ! これ名前の鞄じゃねぇか?」
「!」
本田が指差した先、敷地を囲う塀の内側に、見覚えのあるランチトートと一緒に立てかけてあるスクールバッグが杏子と城之内の目に入る。
「じゃあやっぱり遊戯はここに?!」
「クソっ! 名前も一緒か!」
一斉に足を踏み出したところで、本田と城之内は杏子に振り返った。
「杏子は119番してくれ! 中にはオレと城之内で行く!」
「でも……!」
「本田の言う通りだぜ! まずは通報が先だ! 頼むぜ杏子!」
「わかったわ。2人とも気をつけてね!」
杏子が電話を探して駆け出すのを見送ってから、本田と城之内は顔を見合わせる。
「悪りぃな城之内。静香ちゃんがいるってのによぉ」
「本田、今は遊戯と名前だ。まだ中にいるかもしれねぇ。急ぐぞ!」
***
「ハァ、ハァ……ハァ、」
「ゲホッ、ケホケホッ……」
炎はだいぶ近くまで燃え広がっていた。熱さと煙にもうどうすることもできない。そんな中にあっても、遊戯は集中してパズルを組み立てていた。
「(早い…… 本当に苦労して組み立てたようには見えない。……それとも、千年パズルの意思で組み上がっているの?)」
熱気に目を開けていられない中で、名前は咳をしながら黙々とパズルを相手にする遊戯を見て、どこかゾッとしてもいた。
「(ごめん、ごめんね、もう1人の僕。君の心を砕いてしまって…… 必ずパズルを完成させるから、そしたら、君にまた会えるよね)」
それでもフラつく遊戯の足元に、名前は鉄パイプから手を離してその体を支えた。
「……! 名前」
背後から壁に追いやるような形で覆いかぶさった名前に、遊戯は驚いてすぐ横に来た名前の横顔を見た。
「組み上げてあげるんでしょ? 千年パズルが望むようにしてあげて。……私が必ず、あなたを守ってあげるから」
「……! うん!」
「行くぜ!」「おう!」
外では熱くて触れなくなったドアノブを諦めて、城之内と本田はドアを破ろうと何度も体当たりをしている。
だが炎の燃え盛る音で、遊戯と名前にその音は届いていなかった。
もう殆どが組み上がったパズルを前に、名前は息を飲んだ。
「もう少しで、また君に会える───!」
「遊戯……」
最後のピースが嵌められ、遊戯はウジャド眼のピースを押し込んだ。炎に照らされて煌々と燦く黄金の正逆三角錐に、遊戯と名前は同時に息をつく。
「できた───……!」
大きな音を立てて天井の一部が崩れる。大きな火の粉が降りかかり、名前は目を閉じて遊戯を抱きしめた。
「大丈夫?」
「名前こそ……! もう名前だけでも逃げて!」
「『ダメよ、私はあなたを二度も失ったりはしない!』」
「……ッ! 名前……?!」
千年パズルのウジャド眼が大きく光り、その鏡面は炎ではない赤い色─── 名前の髪と瞳が映された。
再び大きな音が足下を揺らす。遊戯も思わず目を瞑って千年パズルを握りしめると、背中でズルリと崩れかかる名前に痛いほど心臓が早鳴った。
「名前!」
「大丈夫、……大丈夫よ。」
ついに扉を打ち破った城之内と本田に、想像以上に火の海と化した屋内が広がる。そこへ何かを叫びながら、キースが外へ飛び出していった。
「キース! なんであいつが」
「あの野郎!」
追いかけそうになる本田の肩を掴み、城之内が諫める。
「待て! 遊戯と名前を探すのが先だ!」
外では次々と消防車や緊急車両がサイレンを呻らせて集まりだしていた。
燃え盛る火の中に構うことなく城之内と本田は屋内へ駆け込む。そこに名前と、名前が覆い被さるように抱きしめた遊戯を見つけた。
「何やってんだ! 早く逃げろ!」
声を上げても2人は動かない。炎の隙間をすり抜けて、城之内と本田が名前に手を掛けた。
「しっかりしろ! 名前!」
「遊戯、大丈夫か?!」
「城之内、本田……」
名前が汗で髪が張り付いた顔を上げる。その腕の中で、遊戯も虚な目を開けた。
「早く逃げるぞ!」
「ダメだ、僕はパズルを、置いていけない……」
名前も顔を横に振る。城之内が見上げると、鉄パイプを差したままの杭から伸びた鎖が、千年パズルに繋がっているのを見た。
「これか……!」
「本田! 城之内! まだ中にいるの?!」
杏子が声を上げても、中の城之内達には聞こえない。返事の代わりに崩れ行く建物の音が杏子の耳に響き渡る。
「遊戯! 名前!」
火が燃え移らないようにと避難させた名前の鞄を持つ杏子の手が握り締められた。
「支点、力点、作用点ッてかぁ!」
少し焦げた名前のハンカチ越しに、城之内と本田が歯を食いしばって杭を引き抜く。ゆっくりと動き出し、抜けた勢いのまま本田と城之内は尻餅をつき、遊戯と名前は崩れ落ちた。
「よし! 逃げるぞ!」
本田が起き上がって城之内を見ると、今度は名前が遊戯を抱きしめたまま離さないのに苦戦していた。
「クソ、ダメだ、2人とも気を失ってやがる」
火の勢いは限界だった。だが2人いっぺんに抱き上げて運ぶなんて流石に───
「ふぅンガァァァァアア!!!!」
「本田ァ?!」