/ Domino City side
名前変換
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事の顛末を足早に話し終えると、杏子は城之内と本田を呼びに学校へ走った。
遊戯を探すべく名前が振り返ると、獏良の目つきが一瞬鋭いものだったように見えた。
「……!」
咄嗟に千年秤に手を触れる。千年リングを見つけることができなかった時点で嫌な予感はしていた。だが名前の不信感をよそに獏良はいつもより少し真剣な顔で名前に向き合った。
目の前の獏良からはやはり闇の気配は感じない。……見間違いだったろうかと少し警戒を解いた。
「遊戯君が大変だ! 僕たちも遊戯君を探そう!」
「そ、……そうね、行きましょう」
やはり警戒しすぎだったんだろう。名前は自分にそう言い聞かせて、今は千年秤から手を離した。
***
杏子の言っていた占い師と出会った小路にたどり着くと、路地裏には矢印の書かれた紙が一定の方向を指し示して貼られていた。
「なにこれ……」
「ねぇ、きっと最初から遊戯君を狙ってたんだよ! 急ごう!」
名前の脳裏にシャーディーの姿が浮かんだ。その言葉の一端が、胸に恐れを吹き掛ける。
「(シャーディーの言っていた、新たなる闇……! まさか)
遊戯……!」
名前は一目散に駆け出した。彼女の目が離れた途端に、獏良は千年リングを手にしてその指針に集中する。
「(千年リングに不吉な兆しが─── 千年アイテムはやがて束ねられる記憶の断片。遊戯にはまだあの千年パズルの所有者であってもらわねば…… 今ヤツに危害を加える人間はオレの敵だ。だが、まだ名前や遊戯にオレの存在を知られるわけにはいかねぇ。)」
バクラは舌打ちをした。とりあえずは善良な顔で名前を追いかけなくてはならない。
一歩踏み出したところで何かを思いついたように立ち止まると、バクラは矢印の張り紙を見上げた。そして矢印の紙をバラバラに張り替えながら、名前のあとを追いはじめる。
***
「誰かいるの?」
矢印の示すままに辿り着いた廃工場。その扉を開けて進んだ先、遊戯は薄暗いその中を見渡した。
「僕の千年パズルを返して!」
そう叫んだとき、地を這うような低い笑い声が響きだす。そしてバチリという電源音と共にスポットライトが点され、杭に鎖で繋がれた千年パズルが遊戯の目に飛び込んだ。
「千年パズル!」
「フフフフフ…… 武藤遊戯、返してほしいか? それならオレとデュエルして勝つんだな!」
バッとライトが灯される。
千年パズルのぶら下がった杭で打ち込んでいたのはデュエルリングだった。そしてその横に立つ、さっきの黒いマントの占い師。
「お前は誰だ! なぜ僕にデュエルさせようとするんだ!」
だがその男は傍若と佇むだけで、遊戯は目深く被ったフードに隠された表情を掴めぬまま唇を噛む。
「その問いに答える必要はない。……お前の選択は二つに一つ。デュエルを受けるか、受けないかだ。」
『あれが武藤遊戯───』
男の目を使っているのがその男とは限らない。そこから遠く離れたどこか、同じマントに身を包んだ男が、占い師を騙った男の目を通し、口を通して遊戯を相手にしていた。
……その手に黄金のウジャド眼が光る千年アイテムを携えて。
『デュエリスト・キングダムの優勝者には見えない、……その力は千年パズルに秘められたもう1人の遊戯のものなのか? そのもう1人の遊戯の正体を探り出すことこそ、オレの目的───』
「デュエルしないと返してもらえないんだね?!」
遊戯は目の前の男こそが敵だと思い込んだまま手を握り締めた。
「わかった。だから約束は守って!」
遊戯はチラリと千年パズルを見上げる。少し距離があるがもう1人の遊戯の心が確かに感じられた。
「(もう1人の僕、聞こえる?)」
『相棒……』
「(よかった。ここからでも君を呼び出せるね?)」
安堵し掛けたのも束の間、もう1人の自分は体の入れ替わりを拒絶した。
『ダメだ、ここはお前1人で闘え』
「(えっ、どうして……?)」
『不吉な気配がする。何者かがオレの正体を見ているような……』
いつになく不安げな闇人格に、遊戯はすぐに心を決めた。
「(君の力を借りられないんだね)」
『すまない、相棒……』
「(ううん。わかった! 僕が必ず千年パズルを取り返すよ!)」
唇を噛んで男に向き直り、デュエルリングに足を踏み入れた。ソリッドビジョンが起動し、男が虚な目で笑う。
「デュエル開始だ!」
***
聞き覚えのある声に、フィールド魔法に並んだマシンモンスター。遊戯はハッとして男を見た。
「まさかお前は…… バンデッド・キース?!」
目深く被ったフードをとり、男がその顔を露わにする。
だが遊戯の知るキースとは似ても似つかない様相に、違和感は大きくなった。
「(キースだ! 別人に見えるがあのバンダナ、間違いない! デュエリスト・キングダムで城之内くんに敗れ、ペガサスに追放されたはず……)」
「『確かに、この男はキースと呼ばれていた』」
「?!」
声色が僅かに変わった。キースの喉を通してはいるが、あきらかにキースのものではない。
「『あのあと、キースは海に捨てられた。恨まれるのも仕方がないな。お前たちがいなければ、キースは今ごろ全米ナンバーワンのデュエリストに返り咲いていただろう』」
「(どうして自分のことを「この男」と言うんだ? それに、なぜ僕と……)」
じわじわと攻め来る不信感に遊戯が身構える。それを覗き見ていた男が僅かに笑い、キースの目を通して手札を見渡した。
『(ウルトラレアカードでもっとビビらせてやるさ……!)』
“機械王”を召喚し、特殊効果によって場の機械族モンスター1体につき攻撃力を100ポイント加算させ、攻撃力2400になった機械王で遊戯の“シルバー・フォング”を破壊する。遊戯は守備モンスターを出したが、次のキースのターンで機械族モンスターをさらに場に出し、攻撃力2500にまで増強した機械王で再び守備モンスターを撃破した。
「『お前のモンスターは尽く消滅したぞ。そろそろもう1人のお前を出したらどうだ?』」
「(なぜそれを?! もう1人の僕を、キースは知らないはずだ……!)」
***
「ここか……」
入り組んだ路地を抜けると、先を走っていた名前の背中と一緒に大きな廃工場がバクラの前に現れた。千年リングの鉤も、名前の背中とその向こうに向けて震えている。
目を閉じて千年リングを仕舞い込むと、宿主である獏良に戻す。
獏良はおそるおそる名前の横に立ってその人気のない建物を見上げた。
冷静さを失って中に飛び込むほどこの女もバカじゃないらしい。本来その冷静さが厄介なのだが、今だけは先走らない彼女に、宿主の陰に潜んだバクラも感心した。
「名前ちゃん……? どうしたの?」
「……すごく僅かだけど、千年アイテム……というより、闇の力の気配がする。」
千年秤を手にした名前を横目に、獏良は目を細める。
「(フン、気付いてるようだな。……この気配、ただのデュエルじゃねぇ。闇の力が裏で糸を引いてやがる)」
問題は名前がどこまで闇の力に干渉できるのか。いや、むしろ個人の力と言うより千年秤の能力にかかっている。
「(千年秤は、7つの千年アイテムの中で最も善と悪に中立なアイテム。……だが、今の千年秤は殆ど休眠してやがる。コイツが使いこなせるとも思えねぇ)」
獏良の中で千年リングの鉤が一本、名前の方に向かって震えているのを感じ取っていた。千年リングや千年パズルほどの力はないにしろ、デュエリスト・キングダムや病室で見た時よりも闇の気配が濃くなってはいるようだ。
「(コイツにはパラサイト・マインドで植え付けたオレの一部が既に入り込んでいる。もしコイツに闇の人格があるなら、このまま闇の力に目覚めさせれば……あるいは心の奥底にあった謎の部屋への扉が開かれるかもしれねぇ。
フ、オレも思い出してきたぜ、段々とな……!)」
***
『(千年パズルに手を伸ばし、その中の心を呼び起こすんだ! その男の正体を知りたいのだ!)』
キースの瞳の奥、その陰に潜む者が苛立たしげに遊戯に目を注ぐ。
遊戯は融合召喚した“竜騎士ガイア”や、“魔霧雨”と“デーモンの召喚”のコンボで“機械王”を撃破したが、キースは袖に隠した“ゼラの儀式”を使い、コピーカードである“ゼラ”を召喚し、遊戯は自分の劣勢を覆すことができない。
表の人格に用はないと言わんばかりに、キースを操る人物は遊戯を追い込み続けた。
「『どうした? 後がないぞ? あのデュエリスト・キングダムでの無敵の遊戯はどこにいる』」
「(このままじゃ千年パズルは取り戻せない……! どうすればいいんだ……!)」
遊戯を探すべく名前が振り返ると、獏良の目つきが一瞬鋭いものだったように見えた。
「……!」
咄嗟に千年秤に手を触れる。千年リングを見つけることができなかった時点で嫌な予感はしていた。だが名前の不信感をよそに獏良はいつもより少し真剣な顔で名前に向き合った。
目の前の獏良からはやはり闇の気配は感じない。……見間違いだったろうかと少し警戒を解いた。
「遊戯君が大変だ! 僕たちも遊戯君を探そう!」
「そ、……そうね、行きましょう」
やはり警戒しすぎだったんだろう。名前は自分にそう言い聞かせて、今は千年秤から手を離した。
***
杏子の言っていた占い師と出会った小路にたどり着くと、路地裏には矢印の書かれた紙が一定の方向を指し示して貼られていた。
「なにこれ……」
「ねぇ、きっと最初から遊戯君を狙ってたんだよ! 急ごう!」
名前の脳裏にシャーディーの姿が浮かんだ。その言葉の一端が、胸に恐れを吹き掛ける。
「(シャーディーの言っていた、新たなる闇……! まさか)
遊戯……!」
名前は一目散に駆け出した。彼女の目が離れた途端に、獏良は千年リングを手にしてその指針に集中する。
「(千年リングに不吉な兆しが─── 千年アイテムはやがて束ねられる記憶の断片。遊戯にはまだあの千年パズルの所有者であってもらわねば…… 今ヤツに危害を加える人間はオレの敵だ。だが、まだ名前や遊戯にオレの存在を知られるわけにはいかねぇ。)」
バクラは舌打ちをした。とりあえずは善良な顔で名前を追いかけなくてはならない。
一歩踏み出したところで何かを思いついたように立ち止まると、バクラは矢印の張り紙を見上げた。そして矢印の紙をバラバラに張り替えながら、名前のあとを追いはじめる。
***
「誰かいるの?」
矢印の示すままに辿り着いた廃工場。その扉を開けて進んだ先、遊戯は薄暗いその中を見渡した。
「僕の千年パズルを返して!」
そう叫んだとき、地を這うような低い笑い声が響きだす。そしてバチリという電源音と共にスポットライトが点され、杭に鎖で繋がれた千年パズルが遊戯の目に飛び込んだ。
「千年パズル!」
「フフフフフ…… 武藤遊戯、返してほしいか? それならオレとデュエルして勝つんだな!」
バッとライトが灯される。
千年パズルのぶら下がった杭で打ち込んでいたのはデュエルリングだった。そしてその横に立つ、さっきの黒いマントの占い師。
「お前は誰だ! なぜ僕にデュエルさせようとするんだ!」
だがその男は傍若と佇むだけで、遊戯は目深く被ったフードに隠された表情を掴めぬまま唇を噛む。
「その問いに答える必要はない。……お前の選択は二つに一つ。デュエルを受けるか、受けないかだ。」
『あれが武藤遊戯───』
男の目を使っているのがその男とは限らない。そこから遠く離れたどこか、同じマントに身を包んだ男が、占い師を騙った男の目を通し、口を通して遊戯を相手にしていた。
……その手に黄金のウジャド眼が光る千年アイテムを携えて。
『デュエリスト・キングダムの優勝者には見えない、……その力は千年パズルに秘められたもう1人の遊戯のものなのか? そのもう1人の遊戯の正体を探り出すことこそ、オレの目的───』
「デュエルしないと返してもらえないんだね?!」
遊戯は目の前の男こそが敵だと思い込んだまま手を握り締めた。
「わかった。だから約束は守って!」
遊戯はチラリと千年パズルを見上げる。少し距離があるがもう1人の遊戯の心が確かに感じられた。
「(もう1人の僕、聞こえる?)」
『相棒……』
「(よかった。ここからでも君を呼び出せるね?)」
安堵し掛けたのも束の間、もう1人の自分は体の入れ替わりを拒絶した。
『ダメだ、ここはお前1人で闘え』
「(えっ、どうして……?)」
『不吉な気配がする。何者かがオレの正体を見ているような……』
いつになく不安げな闇人格に、遊戯はすぐに心を決めた。
「(君の力を借りられないんだね)」
『すまない、相棒……』
「(ううん。わかった! 僕が必ず千年パズルを取り返すよ!)」
唇を噛んで男に向き直り、デュエルリングに足を踏み入れた。ソリッドビジョンが起動し、男が虚な目で笑う。
「デュエル開始だ!」
***
聞き覚えのある声に、フィールド魔法に並んだマシンモンスター。遊戯はハッとして男を見た。
「まさかお前は…… バンデッド・キース?!」
目深く被ったフードをとり、男がその顔を露わにする。
だが遊戯の知るキースとは似ても似つかない様相に、違和感は大きくなった。
「(キースだ! 別人に見えるがあのバンダナ、間違いない! デュエリスト・キングダムで城之内くんに敗れ、ペガサスに追放されたはず……)」
「『確かに、この男はキースと呼ばれていた』」
「?!」
声色が僅かに変わった。キースの喉を通してはいるが、あきらかにキースのものではない。
「『あのあと、キースは海に捨てられた。恨まれるのも仕方がないな。お前たちがいなければ、キースは今ごろ全米ナンバーワンのデュエリストに返り咲いていただろう』」
「(どうして自分のことを「この男」と言うんだ? それに、なぜ僕と……)」
じわじわと攻め来る不信感に遊戯が身構える。それを覗き見ていた男が僅かに笑い、キースの目を通して手札を見渡した。
『(ウルトラレアカードでもっとビビらせてやるさ……!)』
“機械王”を召喚し、特殊効果によって場の機械族モンスター1体につき攻撃力を100ポイント加算させ、攻撃力2400になった機械王で遊戯の“シルバー・フォング”を破壊する。遊戯は守備モンスターを出したが、次のキースのターンで機械族モンスターをさらに場に出し、攻撃力2500にまで増強した機械王で再び守備モンスターを撃破した。
「『お前のモンスターは尽く消滅したぞ。そろそろもう1人のお前を出したらどうだ?』」
「(なぜそれを?! もう1人の僕を、キースは知らないはずだ……!)」
***
「ここか……」
入り組んだ路地を抜けると、先を走っていた名前の背中と一緒に大きな廃工場がバクラの前に現れた。千年リングの鉤も、名前の背中とその向こうに向けて震えている。
目を閉じて千年リングを仕舞い込むと、宿主である獏良に戻す。
獏良はおそるおそる名前の横に立ってその人気のない建物を見上げた。
冷静さを失って中に飛び込むほどこの女もバカじゃないらしい。本来その冷静さが厄介なのだが、今だけは先走らない彼女に、宿主の陰に潜んだバクラも感心した。
「名前ちゃん……? どうしたの?」
「……すごく僅かだけど、千年アイテム……というより、闇の力の気配がする。」
千年秤を手にした名前を横目に、獏良は目を細める。
「(フン、気付いてるようだな。……この気配、ただのデュエルじゃねぇ。闇の力が裏で糸を引いてやがる)」
問題は名前がどこまで闇の力に干渉できるのか。いや、むしろ個人の力と言うより千年秤の能力にかかっている。
「(千年秤は、7つの千年アイテムの中で最も善と悪に中立なアイテム。……だが、今の千年秤は殆ど休眠してやがる。コイツが使いこなせるとも思えねぇ)」
獏良の中で千年リングの鉤が一本、名前の方に向かって震えているのを感じ取っていた。千年リングや千年パズルほどの力はないにしろ、デュエリスト・キングダムや病室で見た時よりも闇の気配が濃くなってはいるようだ。
「(コイツにはパラサイト・マインドで植え付けたオレの一部が既に入り込んでいる。もしコイツに闇の人格があるなら、このまま闇の力に目覚めさせれば……あるいは心の奥底にあった謎の部屋への扉が開かれるかもしれねぇ。
フ、オレも思い出してきたぜ、段々とな……!)」
***
『(千年パズルに手を伸ばし、その中の心を呼び起こすんだ! その男の正体を知りたいのだ!)』
キースの瞳の奥、その陰に潜む者が苛立たしげに遊戯に目を注ぐ。
遊戯は融合召喚した“竜騎士ガイア”や、“魔霧雨”と“デーモンの召喚”のコンボで“機械王”を撃破したが、キースは袖に隠した“ゼラの儀式”を使い、コピーカードである“ゼラ”を召喚し、遊戯は自分の劣勢を覆すことができない。
表の人格に用はないと言わんばかりに、キースを操る人物は遊戯を追い込み続けた。
「『どうした? 後がないぞ? あのデュエリスト・キングダムでの無敵の遊戯はどこにいる』」
「(このままじゃ千年パズルは取り戻せない……! どうすればいいんだ……!)」