王国編 /2
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「お前がこのゲームの開発者だと?!」
御伽の思惑通りに驚きを表情に出す遊戯に口元が緩む。
「ああ。本来なら、今ごろは世界中の注目を浴びているはずだった。ダンジョン・ダイス・モンスターズの発明者にして、初代チャンピオンとしてね」
言葉を紡ぐたびに御伽の胸中ではフツフツと怒りが込み上げる。今ごろは、本来なら…… その“if”を潰した張本人を前にして、次第に感情は昂っていた。
「遊戯君! キミがデュエリスト・キングダムでデュエルモンスターズの発明者であり初代チャンピオンでもあったペガサスを倒した事は知っている。
しかしキミが栄光を掴んだとき、同時に僕の夢が頓挫したことを知らないだろう……?」
ダンジョン・ダイス・モンスターズ…… 僕のアイデアの全てを注ぎ込んで完成させたこのゲームは、まさに最高傑作だった。僕はこのゲームを世界中に広めるために、企画書をあのペガサスに送ったんだ。
それから数日たったある日、僕の企画書を読んでくれたペガサスからメールが届いていた。
そして僕はペガサスに会うため、あのデュエリスト・キングダムに渡った……
ペガサスはわずかな時間でダンジョン・ダイス・モンスターズに手を加え、完璧なゲームに昇華させていた。そして初めての勝負にも関わらず、このゲームの発明者であるこの僕に勝った!
デュエリスト・キングダムでの大会が終わったら正式契約を交わす約束だったんだ…… ところがデュエリスト・キングダムでペガサスがキミに敗れた日から、一切の連絡が取れなくなってしまった───
「DDMの世界戦略は、武藤遊戯! キミのおかげで挫折したんだ!」
「そういう事になっていたとは……知らなかった」
困惑する遊戯に御伽はダイスを握りしめた。
「忘れるな! デュエルモンスターズが出来なくなるという条件を! ペガサスに代わって僕が復讐してやる!」
***
「(海馬も中身は食べ盛りの男子高校生と変わんないのね)」
海馬の“好み”に合わせたというメインの肉料理 、仔牛のフィレステーキにフォアグラ乗せ。脂が口の中で溶けるように、つい頬も緩んでしまう。
名前の視線に彼女が何を考えているのか察したのか、海馬は視線を逸らした。
無言の食事は続く。ずっと演奏し続けているピアニストも大変だと思う。ショパンからシューベルト、街中で聞いたことのある流行りものまでのレパートリーを弾き続けているのだから。
海馬のナイフに反射した光が名前の片目に煌めいた。ふと目線を上げても、黙々とフォークを口に運ぶ海馬がいるだけ。……それだけなのに、名前は胸にこみ上げるものがある。
……ディナーは独りで黙々と済ませるもの。それが今はどうだろう。同じ沈黙だとしても、目の前に同じお皿を囲む人が居るだけでこんなにも違う。
場所や食べているものはこの際置いておいたとしても、決して悪いものではない───
「(違う、……忘れてたものを思い出してるだけなんだわ)」
手の止まっている名前に海馬が顔を上げた。
「口に合わなかったか」
「えっ……」
ハッとして見れば、もう半分以上食べ終わっている海馬が目を細めていた。動揺からか初めてカトラリーで皿を叩いてしまう。僅かだがカチャンという陶器と金属の触れ合う音が2人の沈黙に亀裂を入れた。
「あ、……そうじゃなくて、」
海馬のせっかちそうな目が気持ちを逸らせる。それでもなんて言葉にしていいのか迷って、照れもあり名前は口を緩めて笑った。
「こうして食事してると、……私にも家族が居た頃があったなァって、昔を思い出してただけよ」
自然と答えが出た。一旦ナイフもフォークも置き、脂を拭うようにグラスの炭酸水に口をつける。
「変よね、別に食べているものとか場所なんて、関係ないものばかりなのに。人と食事するのが久しぶりだから余計そう感じるのかしら」
グラスの底面から浮き上がる小さな泡の一粒くらいしかない記憶の中で、確かに両親と囲む食卓を見た。グラス一杯の水と比べたら本当に僅かな泡沫…… そのグラスに映る海馬の青い目が閉じる。
「“オレだから”ではないのか」
「!……、」
グラスから顔を上げて海馬に目を向けた。あの海馬らしい傲慢な言葉とは思えないほどその目は不安げに曇っている。その憂いを孕んだ海馬の瞼に思いがけず息を呑んだ。
次第に高鳴る心臓が指を伝い、グラスの水面を震わせる。返事をしようにも言葉は何も浮かばない。ただ僅かに動かすしかできない名前の唇を、海馬の目がゆっくりとなぞった。
「冷めるぞ」
「……ッ、え、ええ」
グラスを置いてナイフとフォークを再び握り、視線をお皿に集中させる。……いま、海馬を見てはいけないような気がしたから。
視界のうんと端のほう、瞼のあたりで海馬が咳払いをした。お互いの顔なんて分からないのに、きっと同じ顔をしているんだと分かっている。
お皿に広がる真紅のソースに、泣きそうなほど顔を赤くした自分が映っていた。
***
「お前にはいくら説明しても分かってもらえないようだな。」
遊戯はデュエリスト・キングダムで起こった事を御伽に説明しても無駄だと悟った。
ならば勝つしかない、遊戯はダイスを手に取る。
「オレのターン! ダイスロール!」
レベル3の召喚クレストが揃い、遊戯は“鉄球魔神ゴロゴーン”を召喚した。
御伽は新たなモンスター召喚に臆するでもなく、御伽のターン、進行クレストで“爆弾蜥蜴”と“リザードラゴン”を遊戯の目の前まで進行させた。リザードラゴンのプレイヤー攻撃で、遊戯のライフが2/3に削られる。
「ハッハッハ! これでライフは残り2つだ! イカサマでペガサスを敗ったようなヤツに、ダンジョン・ダイス・モンスターズは勝ち抜けやしない!」
「イカサマだと?!」
御伽の口ぶりに遊戯の目が険しくなる。
「(もう1人のオレとオレが一緒に手に入れたデュエルモンスターズの栄光を傷付けさせはしない! オレは負けない……! 城之内君のためにも、そしてペガサス戦の誤解を解くためにも、負けるわけにはいかないんだ!)」
御伽の思惑通りに驚きを表情に出す遊戯に口元が緩む。
「ああ。本来なら、今ごろは世界中の注目を浴びているはずだった。ダンジョン・ダイス・モンスターズの発明者にして、初代チャンピオンとしてね」
言葉を紡ぐたびに御伽の胸中ではフツフツと怒りが込み上げる。今ごろは、本来なら…… その“if”を潰した張本人を前にして、次第に感情は昂っていた。
「遊戯君! キミがデュエリスト・キングダムでデュエルモンスターズの発明者であり初代チャンピオンでもあったペガサスを倒した事は知っている。
しかしキミが栄光を掴んだとき、同時に僕の夢が頓挫したことを知らないだろう……?」
ダンジョン・ダイス・モンスターズ…… 僕のアイデアの全てを注ぎ込んで完成させたこのゲームは、まさに最高傑作だった。僕はこのゲームを世界中に広めるために、企画書をあのペガサスに送ったんだ。
それから数日たったある日、僕の企画書を読んでくれたペガサスからメールが届いていた。
そして僕はペガサスに会うため、あのデュエリスト・キングダムに渡った……
ペガサスはわずかな時間でダンジョン・ダイス・モンスターズに手を加え、完璧なゲームに昇華させていた。そして初めての勝負にも関わらず、このゲームの発明者であるこの僕に勝った!
デュエリスト・キングダムでの大会が終わったら正式契約を交わす約束だったんだ…… ところがデュエリスト・キングダムでペガサスがキミに敗れた日から、一切の連絡が取れなくなってしまった───
「DDMの世界戦略は、武藤遊戯! キミのおかげで挫折したんだ!」
「そういう事になっていたとは……知らなかった」
困惑する遊戯に御伽はダイスを握りしめた。
「忘れるな! デュエルモンスターズが出来なくなるという条件を! ペガサスに代わって僕が復讐してやる!」
***
「(海馬も中身は食べ盛りの男子高校生と変わんないのね)」
海馬の“好み”に合わせたというメインの
名前の視線に彼女が何を考えているのか察したのか、海馬は視線を逸らした。
無言の食事は続く。ずっと演奏し続けているピアニストも大変だと思う。ショパンからシューベルト、街中で聞いたことのある流行りものまでのレパートリーを弾き続けているのだから。
海馬のナイフに反射した光が名前の片目に煌めいた。ふと目線を上げても、黙々とフォークを口に運ぶ海馬がいるだけ。……それだけなのに、名前は胸にこみ上げるものがある。
……ディナーは独りで黙々と済ませるもの。それが今はどうだろう。同じ沈黙だとしても、目の前に同じお皿を囲む人が居るだけでこんなにも違う。
場所や食べているものはこの際置いておいたとしても、決して悪いものではない───
「(違う、……忘れてたものを思い出してるだけなんだわ)」
手の止まっている名前に海馬が顔を上げた。
「口に合わなかったか」
「えっ……」
ハッとして見れば、もう半分以上食べ終わっている海馬が目を細めていた。動揺からか初めてカトラリーで皿を叩いてしまう。僅かだがカチャンという陶器と金属の触れ合う音が2人の沈黙に亀裂を入れた。
「あ、……そうじゃなくて、」
海馬のせっかちそうな目が気持ちを逸らせる。それでもなんて言葉にしていいのか迷って、照れもあり名前は口を緩めて笑った。
「こうして食事してると、……私にも家族が居た頃があったなァって、昔を思い出してただけよ」
自然と答えが出た。一旦ナイフもフォークも置き、脂を拭うようにグラスの炭酸水に口をつける。
「変よね、別に食べているものとか場所なんて、関係ないものばかりなのに。人と食事するのが久しぶりだから余計そう感じるのかしら」
グラスの底面から浮き上がる小さな泡の一粒くらいしかない記憶の中で、確かに両親と囲む食卓を見た。グラス一杯の水と比べたら本当に僅かな泡沫…… そのグラスに映る海馬の青い目が閉じる。
「“オレだから”ではないのか」
「!……、」
グラスから顔を上げて海馬に目を向けた。あの海馬らしい傲慢な言葉とは思えないほどその目は不安げに曇っている。その憂いを孕んだ海馬の瞼に思いがけず息を呑んだ。
次第に高鳴る心臓が指を伝い、グラスの水面を震わせる。返事をしようにも言葉は何も浮かばない。ただ僅かに動かすしかできない名前の唇を、海馬の目がゆっくりとなぞった。
「冷めるぞ」
「……ッ、え、ええ」
グラスを置いてナイフとフォークを再び握り、視線をお皿に集中させる。……いま、海馬を見てはいけないような気がしたから。
視界のうんと端のほう、瞼のあたりで海馬が咳払いをした。お互いの顔なんて分からないのに、きっと同じ顔をしているんだと分かっている。
お皿に広がる真紅のソースに、泣きそうなほど顔を赤くした自分が映っていた。
***
「お前にはいくら説明しても分かってもらえないようだな。」
遊戯はデュエリスト・キングダムで起こった事を御伽に説明しても無駄だと悟った。
ならば勝つしかない、遊戯はダイスを手に取る。
「オレのターン! ダイスロール!」
レベル3の召喚クレストが揃い、遊戯は“鉄球魔神ゴロゴーン”を召喚した。
御伽は新たなモンスター召喚に臆するでもなく、御伽のターン、進行クレストで“爆弾蜥蜴”と“リザードラゴン”を遊戯の目の前まで進行させた。リザードラゴンのプレイヤー攻撃で、遊戯のライフが2/3に削られる。
「ハッハッハ! これでライフは残り2つだ! イカサマでペガサスを敗ったようなヤツに、ダンジョン・ダイス・モンスターズは勝ち抜けやしない!」
「イカサマだと?!」
御伽の口ぶりに遊戯の目が険しくなる。
「(もう1人のオレとオレが一緒に手に入れたデュエルモンスターズの栄光を傷付けさせはしない! オレは負けない……! 城之内君のためにも、そしてペガサス戦の誤解を解くためにも、負けるわけにはいかないんだ!)」