王国編 /2
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石壁にこだまする足音に海馬が顔を上げると、デスサタンが帽子を手にして立っていた。
「また貴様か……」
デスサタンは帽子を頭に戻すなり笑ってみせる。
「フフフフフ…… お待たせしました。第2の生け贄が到着しました。」
デスサタンが手を振り上げると、海馬の前にドレスを纏ったモクバが現れる。モクバはすぐに目を開けて立ち上がると、ドレスを脱ぎ捨ててみせた。
「兄様!」
「モクバ! なぜここに?!」
思いがけないモクバの登場に海馬が驚く。モクバはそんな兄の元へと駆け寄って、囚われたままの海馬を見上げた。
「オレ、兄様を助けようと思って……」
そこへデスサタンの不気味な笑い声が足元に迫る。
「おやおや……だがかえって好都合というもの。そろそろ儀式のお時間です。 始めましょうか!」
海馬とモクバの険しい目がデスサタンに向けられる。余裕を見せるデスサタンだが、ドレスに隠されていたデュエルディスクがいまモクバの腕にあることを完全に見落としていた。
「今こそ偉大なるファイブ・ゴッド・ドラゴンに生け贄を捧げ……!」
「“ソード・ストーカー”!」
モクバは聞く耳を持たないと言わんばかりにモンスターを召喚し、ソード・ストーカーの一振りで囚われていた海馬を解放した。
「兄様! これを!」
「よくやったぞ! モクバ!」
モクバはすぐに、海馬のデッキが収められたデュエルディスクを、元のマスターである海馬に渡した。
「な、なに?!」
デスサタンはやっと焦りを見せる。海馬の腕にデュエルディスクが嵌められるのをただ呆然と眺め、余裕と自信に満ちていたはずの端正な顔はゆっくりと崩されていく。
「クククッ ……これまでの借りを返させてもらうぞ!
いでよ!青眼の白龍 !!!」
「あぁ!!」
「ソイツを蹴散らせ! “滅びのバースト・ストリーム”!!!」
デスサタンは最後に何かを言うことすら許されず、ブルーアイズの閃光にその身を焼き尽くされた。未練がましく残る一筋の煙を前に、ブルーアイズを従えた海馬とモクバは顔を見合わせる。
「行くぞ、モクバ!」
「うん。」
その一歩を踏み出そうとしたとき、陰から忍者モンスターが飛び出した。
またなにかのカードを投げられると、2人の前にはあの“ドラゴン族封印の壺”が現れる。
だが海馬は鼻で笑い、デッキに手を伸ばした。
「このオレに同じ手は通用せん! 出ろ! “トラップ・マスター”!」
トラップ・マスターによって封印の壺は破壊され、海馬の前には2体の青眼の白龍が揃った。
「消えろ! 雑魚ども!」
***
目の前を一掃した海馬は、とりあえず気が晴れたというように鼻で笑うと、もう一度モクバに目を向けた。
「しかしモクバ、どうやってここに?」
モクバは少し迷ったあと、観念したように海馬を見上げる。
「オレ、兄様が心配で……遊戯たちに手伝ってもらったんだ。」
「遊戯だと?! 遊戯がこの世界に来ているのか?」
「う…うん。それに名前もいる。ビッグ5がこの世界に無理やり連れてこられたみたいなんだ。」
「名前が? チッ アイツら、余計なことを……!」
海馬は見るからに機嫌を損ねて舌打ちをすると、コートの裾を翻してズカズカと進んでいった。
「行くぞ!」
「あ、待ってよ兄様!」
***
「あれ見て!」
暗黒城を取り囲む暗い森の中を遊戯たちは駆け抜けていた。だが木々の開けたところで舞が指差す先を見て、4人は一斉に足を止める。
一際大きな大木に、幾つもの“進化の繭”が取り付いていた。
「あれを孵化させちゃダメよ!」
舞のいう通りもし刺激を与えれば、少なくとも4体の“グレート・モス”を相手にしなくてはならなくなる。だがその懸念も色濃くなるように、昆虫族モンスターが一斉に森から飛翔して遊戯たちの前に現れた。
「上等だぜ! “ギルティア”!」
再びモンスターの壁を前にして城之内は“ギルティア”に攻撃命令を出すが、威勢よく飛び出していった先で寄生モンスターに飛び付かれ、ギルティアは破壊されてしまった。
「ギルティア?!」
「“人食い虫”よ! 紛らわしいのが混ざってる……!」
名前の声に舞や遊戯も自分のモンスターを無闇に前線へ出せなくなる。それでもブラック・マジシャン達はマスターを守るように立ち塞がって身構えた。
「“聖なるバリア ミラー・フォース”!」
遊戯が出したカードで攻撃態勢を取っていた昆虫族モンスターは全て破壊された。しかし守備表示である進化の繭はミラー・フォースの効果を抜け、眩い光を放って繭に亀裂が走りはじめた。
「間に合わなかったか……」
城之内が喉を鳴らす横で、舞も息を飲んで4体もの“グレート・モス”の飛翔をただ呆然と眺めた。名前がデッキに手をやったところで遊戯はそれを引き止める。
「待て名前! お前のデッキはもう殆ど残ってない。ここは温存するんだ。」
「でも……!」
迫り来るグレート・モスを前に、遊戯は名前の手首を握る。闇人格の方の遊戯と名前の同じ色の瞳が重なる中で、名前は“彼の方”にはっきりと違和感を感じ取った。
「大丈夫だ。オレに任せてくれ。」
手袋越しにも伝わる熱と鼓動が、まるで海馬を前にした時の自分を鏡で見ているようだった。決して自意識過剰ではないだろう。遊戯の強い眼差しが突き刺さり、名前はその既視感が自らと同じものだと直感的に悟ってしまったのだ。
パッと手を離すなり遊戯は背を向けて、3枚のカードを出した。“カタパルト・タートル”で“クリボー”を射出し、さらに“増殖”で無数になったクリボーが機雷化したことで、“グレート・モス”は粉砕され、墜落していく中で森は火の海と化した。
「すごい……」
名前がそう静かにもらしたのを、遊戯は確かに背中で聞いていた。舞や城之内も手を取り合って喜んでいる。だが名前のその一言を、遊戯は一番に飲み込んだ。
***
「なんということだ!」
大下はテーブルを叩いた。モニターには順調にストーリーをクリアしていく4人のパーティが映し出されている。
「武藤遊戯がここまでやるとは……」
大田が舌を巻くほどの結果に、一同は焦りを見せはじめている。
「かくなる上は。」
大下が周りを見渡してそう呟くと、5人は決心したように立ち上がった。
「また貴様か……」
デスサタンは帽子を頭に戻すなり笑ってみせる。
「フフフフフ…… お待たせしました。第2の生け贄が到着しました。」
デスサタンが手を振り上げると、海馬の前にドレスを纏ったモクバが現れる。モクバはすぐに目を開けて立ち上がると、ドレスを脱ぎ捨ててみせた。
「兄様!」
「モクバ! なぜここに?!」
思いがけないモクバの登場に海馬が驚く。モクバはそんな兄の元へと駆け寄って、囚われたままの海馬を見上げた。
「オレ、兄様を助けようと思って……」
そこへデスサタンの不気味な笑い声が足元に迫る。
「おやおや……だがかえって好都合というもの。そろそろ儀式のお時間です。 始めましょうか!」
海馬とモクバの険しい目がデスサタンに向けられる。余裕を見せるデスサタンだが、ドレスに隠されていたデュエルディスクがいまモクバの腕にあることを完全に見落としていた。
「今こそ偉大なるファイブ・ゴッド・ドラゴンに生け贄を捧げ……!」
「“ソード・ストーカー”!」
モクバは聞く耳を持たないと言わんばかりにモンスターを召喚し、ソード・ストーカーの一振りで囚われていた海馬を解放した。
「兄様! これを!」
「よくやったぞ! モクバ!」
モクバはすぐに、海馬のデッキが収められたデュエルディスクを、元のマスターである海馬に渡した。
「な、なに?!」
デスサタンはやっと焦りを見せる。海馬の腕にデュエルディスクが嵌められるのをただ呆然と眺め、余裕と自信に満ちていたはずの端正な顔はゆっくりと崩されていく。
「クククッ ……これまでの借りを返させてもらうぞ!
いでよ!
「あぁ!!」
「ソイツを蹴散らせ! “滅びのバースト・ストリーム”!!!」
デスサタンは最後に何かを言うことすら許されず、ブルーアイズの閃光にその身を焼き尽くされた。未練がましく残る一筋の煙を前に、ブルーアイズを従えた海馬とモクバは顔を見合わせる。
「行くぞ、モクバ!」
「うん。」
その一歩を踏み出そうとしたとき、陰から忍者モンスターが飛び出した。
またなにかのカードを投げられると、2人の前にはあの“ドラゴン族封印の壺”が現れる。
だが海馬は鼻で笑い、デッキに手を伸ばした。
「このオレに同じ手は通用せん! 出ろ! “トラップ・マスター”!」
トラップ・マスターによって封印の壺は破壊され、海馬の前には2体の青眼の白龍が揃った。
「消えろ! 雑魚ども!」
***
目の前を一掃した海馬は、とりあえず気が晴れたというように鼻で笑うと、もう一度モクバに目を向けた。
「しかしモクバ、どうやってここに?」
モクバは少し迷ったあと、観念したように海馬を見上げる。
「オレ、兄様が心配で……遊戯たちに手伝ってもらったんだ。」
「遊戯だと?! 遊戯がこの世界に来ているのか?」
「う…うん。それに名前もいる。ビッグ5がこの世界に無理やり連れてこられたみたいなんだ。」
「名前が? チッ アイツら、余計なことを……!」
海馬は見るからに機嫌を損ねて舌打ちをすると、コートの裾を翻してズカズカと進んでいった。
「行くぞ!」
「あ、待ってよ兄様!」
***
「あれ見て!」
暗黒城を取り囲む暗い森の中を遊戯たちは駆け抜けていた。だが木々の開けたところで舞が指差す先を見て、4人は一斉に足を止める。
一際大きな大木に、幾つもの“進化の繭”が取り付いていた。
「あれを孵化させちゃダメよ!」
舞のいう通りもし刺激を与えれば、少なくとも4体の“グレート・モス”を相手にしなくてはならなくなる。だがその懸念も色濃くなるように、昆虫族モンスターが一斉に森から飛翔して遊戯たちの前に現れた。
「上等だぜ! “ギルティア”!」
再びモンスターの壁を前にして城之内は“ギルティア”に攻撃命令を出すが、威勢よく飛び出していった先で寄生モンスターに飛び付かれ、ギルティアは破壊されてしまった。
「ギルティア?!」
「“人食い虫”よ! 紛らわしいのが混ざってる……!」
名前の声に舞や遊戯も自分のモンスターを無闇に前線へ出せなくなる。それでもブラック・マジシャン達はマスターを守るように立ち塞がって身構えた。
「“聖なるバリア ミラー・フォース”!」
遊戯が出したカードで攻撃態勢を取っていた昆虫族モンスターは全て破壊された。しかし守備表示である進化の繭はミラー・フォースの効果を抜け、眩い光を放って繭に亀裂が走りはじめた。
「間に合わなかったか……」
城之内が喉を鳴らす横で、舞も息を飲んで4体もの“グレート・モス”の飛翔をただ呆然と眺めた。名前がデッキに手をやったところで遊戯はそれを引き止める。
「待て名前! お前のデッキはもう殆ど残ってない。ここは温存するんだ。」
「でも……!」
迫り来るグレート・モスを前に、遊戯は名前の手首を握る。闇人格の方の遊戯と名前の同じ色の瞳が重なる中で、名前は“彼の方”にはっきりと違和感を感じ取った。
「大丈夫だ。オレに任せてくれ。」
手袋越しにも伝わる熱と鼓動が、まるで海馬を前にした時の自分を鏡で見ているようだった。決して自意識過剰ではないだろう。遊戯の強い眼差しが突き刺さり、名前はその既視感が自らと同じものだと直感的に悟ってしまったのだ。
パッと手を離すなり遊戯は背を向けて、3枚のカードを出した。“カタパルト・タートル”で“クリボー”を射出し、さらに“増殖”で無数になったクリボーが機雷化したことで、“グレート・モス”は粉砕され、墜落していく中で森は火の海と化した。
「すごい……」
名前がそう静かにもらしたのを、遊戯は確かに背中で聞いていた。舞や城之内も手を取り合って喜んでいる。だが名前のその一言を、遊戯は一番に飲み込んだ。
***
「なんということだ!」
大下はテーブルを叩いた。モニターには順調にストーリーをクリアしていく4人のパーティが映し出されている。
「武藤遊戯がここまでやるとは……」
大田が舌を巻くほどの結果に、一同は焦りを見せはじめている。
「かくなる上は。」
大下が周りを見渡してそう呟くと、5人は決心したように立ち上がった。