王国編 /2
名前変換
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「なに? クイーンとの対決にエントリーするゲコ?」
ヒキガエルのような風貌の支配人に、名前の顔は引きつっていた。
***
「キミも命がけでクイーンに挑戦してみませんか? 今なら賞品に“ コケ ”のカードが手に入る……闇のコロシアムで開催中…?」
名前に案内されて見つけたビラには、確かにそう書いてあった。遊戯が名前を見上げると、彼女も面倒くさそうに肩を竦める。
城之内だけは面白そうに乗り気を見せた。
とりあえずゲームとして必要な攻略だと割り切って、一行はそのコロシアムへと向かった。
「いやいや、勇敢な戦士たちゲコ。クイーンが強すぎて、挑むヤツが少なくて困ってたところだったゲコ。」
それで、今に至る。
差し出された豚のマスクに薄汚いマント。名前は振り向いてしゃがみ込むと、青い顔で遊戯を見上げた。
「え? あれ着るの? 嘘でしょ?」
本当に勘弁して。そう続けた名前に遊戯とモクバは顔を見合わせるが、城之内が名前の肩を叩いた。
「オイオイ、なにも全員が闘うわけじゃねぇだろ? ここはオレに任せとけって!」
「城之内……」
困惑した顔で見上げる名前に、城之内は初めて彼女からデュエルで頼られる事に顔がニヤけた。つい最近まで町内大会8位がベストレコードだった自分が、今ではデュエリスト・キングダム準優勝にまで昇りつめ、さらにはデュエルクイーンからも頼りにされている。そう思うと、ここで名前に恩を売っておくのも悪くはない。
「もしそのクイーンが私のコピープログラムだったら100%城之内が負けるけど本当に大丈夫なの?」
否、本当の困惑顔だった。モクバも名前に並んで頷いている。城之内も予想の範囲内ではあったものの、2人の反応に大きく肩を落として落ち込んだ。
「あ、あの…… そんなに危険なんですか?」
遊戯は支配人に念を押す。支配人役のモンスターはニタニタ笑いながらも、その返事はあっけらかんとしたものだった。
「なに、ライフがゼロになるまで闘ってもらうだけだゲコ。」
「ライフがゼロって……」
遊戯の顔色が暗転するのも構わず、城之内はマスクとマントを取り上げた。
「やっぱりオレが出るぜ。」
「ちょっと城之内!」
名前は立ち上がり、今度は真剣な目で向き合う。城之内は「ヘッ」と短く笑って衣装を抱え込む。
「ライフがゼロになったら、この世界から生きて帰れる保証はねぇ。」
「だったら城之内のライフは少なくなってるし……!」
モクバの反論にも城之内は耳を貸さない。それどころか、3人から完全に背を向けてしまった。
「オレなんて居ても居なくても大した違いはねぇが、お前ぇたちがいなくちゃ、ゲームをクリアできねぇだろ!」
「だったらライフが一番少なくて、使えるカードが少ない私が……!」
名前の反論に、城之内は「バカヤロウ!」と厳しく返した。
「オレたちの目的はあくまで“コケ”のカードだろ! そんな指定枚数も割ってるデッキしか無ぇ名前が行ったところで、無駄死にするかもしれねぇ。この中で適任はオレだけだ。……もうとやかく言うんじゃねぇ。オレは出ることに決めたぜ!」
「城之内……」
***
「レディース アンド ジェントルメン!───無敵のクイーンに挑む挑戦者が、久々に登場したゲコ!」
太陽が直上から照りつけるコロシアムに、支配人の声が響き渡った。“オオカミ殺しのジョー”とファイトネームを付けられた城之内が、マスク姿で現れる。
そう大して満員でもない観客の声がかかる中、城之内に一番近い席で遊戯と名前、モクバが座っていた。
「ねぇ、今さらだけどこれってスター・ウォー…
「このゲームを作ったのはビッグ5の連中だ。兄さまみたいなゲームデザインのセンスなんて、アイツらにあるわけ無いだろ。」
モクバが淡々と遮るので、名前は口を噤んだ。遊戯も苦笑いでまわりを見回している。
そうこう喋っているうちに、このコロシアムチャンプであるクイーンが、御輿に担がれて現れる。
「さぁ!迎え撃つのは無敵のクイーン、“バタフライのお蝶”だゲコ〜!」
「ねぇ、蝶 の蝶って」と名前が口を開いたところで、今度は視線だけでモクバは名前を黙らせた。
***
「クソ! なんとか持ち堪えてくれよ!」
ドアに鍵をかけ、動かせるだけのもので塞いだ本田と杏子は、バリケードが崩れないよう押さえていた。
叩き破ろうとする男たちの怒号や振動が、手の平から伝わって来ている。
杏子は背後に横たわる、無防備な3人の身体を渡すまいと、その手に一層力を入れた。
「(遊戯───……)」
***
「ねぇ、気のせいよね?」
名前は肘をついて、もはや茶番と化し始めていたデュエルを見ていた。モクバはあまり面識が無かったので仕方ないが、遊戯もこの落とし所を実際に戦っている2人に任せるしかないと感じている。
「間違いねぇ、この高飛車な笑い声、品のない言葉使い……」
初手からだされた“ハーピィ・レディ”に、城之内のモンスターの攻撃で発動された“銀幕のミラー・ウォール”。そこへ装備魔法“バラのムチ”が出れば、城之内はもう確信を持たざるを得ない。
「ハーピィ・レディの攻撃!」
「ま、待て!」
クイーンの攻撃が炸裂する寸前、城之内はマスクを取って素顔を見せた。
その顔を見たクイーンも驚いて攻撃をやめると、彼女もマスクを外した。
「城之内?!」
「舞さん!」
見知った顔は城之内だけでなかった。柵を飛び越えて上がり込んできた面々に、舞はさらに驚く。
「遊戯! 名前! モクバまで…… なんでアンタ達がここに?!」
「そりゃこっちのセリフだぜ。」
モンスターを下がらせて5人は歩み寄る。舞は驚きを隠せないようだが、遊戯たちは思いがけない仲間の登場に少し安堵していた。
「兄さまが人質に取られたんだ。」
「このゲームをクリアしないと、海馬の命も危ないかもしれないの。」
モクバと名前の真剣な表情に、舞も冷静さを取り戻す。
「海馬が?」
遊戯は舞の視線に頷く。
「僕たち仲間なんだから、こんな所で闘うことないよ。」
しかし、遊戯のその提案は受け入れられそうになかった。コロシアムに集まった観客たちの激しいヤジや、ゴミや石を投げ入れられ始めたことで、城之内は悪態を吐くように観客たちを見回す。
「だが、海馬を救うためには、闘って“コケ”のカードを手に入れる必要がある。砂漠を渡るにはどうしてもあのカードが必要なんだ。」
深刻そうな顔を揃えた4人を前に、当の舞は全く意に介さないといった様子で、いつものように腰に手を当てて支配人の方を横目で見た。
「要はあのカードさえあればいいのね?」
舞によからぬ雰囲気を感じた遊戯が「え?」と声を漏らすが、舞はそれにウインクで返して悪戯っ子のような笑みを見せる。
「アタシも実は、ここから逃げ出したかったのよ。」
あ、これなんかやらかすやつだ。
名前と遊戯がそう思ったのも束の間、舞はハーピィ・レディにバラのムチで支配人の目の前からコケのカードを奪い取った。
「さぁ! さっさと逃げるわよ!」
舞からケツを叩かれたように4人は一斉に走り出す。遠くから「逃すなゲコ〜!」という支配人の声が聞こえたあとは、もう風が耳をかすめる音しか聞こえなかった。
ヒキガエルのような風貌の支配人に、名前の顔は引きつっていた。
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「キミも命がけでクイーンに挑戦してみませんか? 今なら賞品に“ コケ ”のカードが手に入る……闇のコロシアムで開催中…?」
名前に案内されて見つけたビラには、確かにそう書いてあった。遊戯が名前を見上げると、彼女も面倒くさそうに肩を竦める。
城之内だけは面白そうに乗り気を見せた。
とりあえずゲームとして必要な攻略だと割り切って、一行はそのコロシアムへと向かった。
「いやいや、勇敢な戦士たちゲコ。クイーンが強すぎて、挑むヤツが少なくて困ってたところだったゲコ。」
それで、今に至る。
差し出された豚のマスクに薄汚いマント。名前は振り向いてしゃがみ込むと、青い顔で遊戯を見上げた。
「え? あれ着るの? 嘘でしょ?」
本当に勘弁して。そう続けた名前に遊戯とモクバは顔を見合わせるが、城之内が名前の肩を叩いた。
「オイオイ、なにも全員が闘うわけじゃねぇだろ? ここはオレに任せとけって!」
「城之内……」
困惑した顔で見上げる名前に、城之内は初めて彼女からデュエルで頼られる事に顔がニヤけた。つい最近まで町内大会8位がベストレコードだった自分が、今ではデュエリスト・キングダム準優勝にまで昇りつめ、さらにはデュエルクイーンからも頼りにされている。そう思うと、ここで名前に恩を売っておくのも悪くはない。
「もしそのクイーンが私のコピープログラムだったら100%城之内が負けるけど本当に大丈夫なの?」
否、本当の困惑顔だった。モクバも名前に並んで頷いている。城之内も予想の範囲内ではあったものの、2人の反応に大きく肩を落として落ち込んだ。
「あ、あの…… そんなに危険なんですか?」
遊戯は支配人に念を押す。支配人役のモンスターはニタニタ笑いながらも、その返事はあっけらかんとしたものだった。
「なに、ライフがゼロになるまで闘ってもらうだけだゲコ。」
「ライフがゼロって……」
遊戯の顔色が暗転するのも構わず、城之内はマスクとマントを取り上げた。
「やっぱりオレが出るぜ。」
「ちょっと城之内!」
名前は立ち上がり、今度は真剣な目で向き合う。城之内は「ヘッ」と短く笑って衣装を抱え込む。
「ライフがゼロになったら、この世界から生きて帰れる保証はねぇ。」
「だったら城之内のライフは少なくなってるし……!」
モクバの反論にも城之内は耳を貸さない。それどころか、3人から完全に背を向けてしまった。
「オレなんて居ても居なくても大した違いはねぇが、お前ぇたちがいなくちゃ、ゲームをクリアできねぇだろ!」
「だったらライフが一番少なくて、使えるカードが少ない私が……!」
名前の反論に、城之内は「バカヤロウ!」と厳しく返した。
「オレたちの目的はあくまで“コケ”のカードだろ! そんな指定枚数も割ってるデッキしか無ぇ名前が行ったところで、無駄死にするかもしれねぇ。この中で適任はオレだけだ。……もうとやかく言うんじゃねぇ。オレは出ることに決めたぜ!」
「城之内……」
***
「レディース アンド ジェントルメン!───無敵のクイーンに挑む挑戦者が、久々に登場したゲコ!」
太陽が直上から照りつけるコロシアムに、支配人の声が響き渡った。“オオカミ殺しのジョー”とファイトネームを付けられた城之内が、マスク姿で現れる。
そう大して満員でもない観客の声がかかる中、城之内に一番近い席で遊戯と名前、モクバが座っていた。
「ねぇ、今さらだけどこれってスター・ウォー…
「このゲームを作ったのはビッグ5の連中だ。兄さまみたいなゲームデザインのセンスなんて、アイツらにあるわけ無いだろ。」
モクバが淡々と遮るので、名前は口を噤んだ。遊戯も苦笑いでまわりを見回している。
そうこう喋っているうちに、このコロシアムチャンプであるクイーンが、御輿に担がれて現れる。
「さぁ!迎え撃つのは無敵のクイーン、“バタフライのお蝶”だゲコ〜!」
「ねぇ、
***
「クソ! なんとか持ち堪えてくれよ!」
ドアに鍵をかけ、動かせるだけのもので塞いだ本田と杏子は、バリケードが崩れないよう押さえていた。
叩き破ろうとする男たちの怒号や振動が、手の平から伝わって来ている。
杏子は背後に横たわる、無防備な3人の身体を渡すまいと、その手に一層力を入れた。
「(遊戯───……)」
***
「ねぇ、気のせいよね?」
名前は肘をついて、もはや茶番と化し始めていたデュエルを見ていた。モクバはあまり面識が無かったので仕方ないが、遊戯もこの落とし所を実際に戦っている2人に任せるしかないと感じている。
「間違いねぇ、この高飛車な笑い声、品のない言葉使い……」
初手からだされた“ハーピィ・レディ”に、城之内のモンスターの攻撃で発動された“銀幕のミラー・ウォール”。そこへ装備魔法“バラのムチ”が出れば、城之内はもう確信を持たざるを得ない。
「ハーピィ・レディの攻撃!」
「ま、待て!」
クイーンの攻撃が炸裂する寸前、城之内はマスクを取って素顔を見せた。
その顔を見たクイーンも驚いて攻撃をやめると、彼女もマスクを外した。
「城之内?!」
「舞さん!」
見知った顔は城之内だけでなかった。柵を飛び越えて上がり込んできた面々に、舞はさらに驚く。
「遊戯! 名前! モクバまで…… なんでアンタ達がここに?!」
「そりゃこっちのセリフだぜ。」
モンスターを下がらせて5人は歩み寄る。舞は驚きを隠せないようだが、遊戯たちは思いがけない仲間の登場に少し安堵していた。
「兄さまが人質に取られたんだ。」
「このゲームをクリアしないと、海馬の命も危ないかもしれないの。」
モクバと名前の真剣な表情に、舞も冷静さを取り戻す。
「海馬が?」
遊戯は舞の視線に頷く。
「僕たち仲間なんだから、こんな所で闘うことないよ。」
しかし、遊戯のその提案は受け入れられそうになかった。コロシアムに集まった観客たちの激しいヤジや、ゴミや石を投げ入れられ始めたことで、城之内は悪態を吐くように観客たちを見回す。
「だが、海馬を救うためには、闘って“コケ”のカードを手に入れる必要がある。砂漠を渡るにはどうしてもあのカードが必要なんだ。」
深刻そうな顔を揃えた4人を前に、当の舞は全く意に介さないといった様子で、いつものように腰に手を当てて支配人の方を横目で見た。
「要はあのカードさえあればいいのね?」
舞によからぬ雰囲気を感じた遊戯が「え?」と声を漏らすが、舞はそれにウインクで返して悪戯っ子のような笑みを見せる。
「アタシも実は、ここから逃げ出したかったのよ。」
あ、これなんかやらかすやつだ。
名前と遊戯がそう思ったのも束の間、舞はハーピィ・レディにバラのムチで支配人の目の前からコケのカードを奪い取った。
「さぁ! さっさと逃げるわよ!」
舞からケツを叩かれたように4人は一斉に走り出す。遠くから「逃すなゲコ〜!」という支配人の声が聞こえたあとは、もう風が耳をかすめる音しか聞こえなかった。