王国編 /2
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「海馬くんがアドベンチャーゲームの世界に?!」
タオルに身を包まれたモクバが遊戯に頷いた。ホットミルクの入ったマグカップが冷え切った指先の感覚を取り戻し始めている。
「ゲームに負けたらその世界から抜け出せなくなっちゃうなんて…そんなのゲームじゃないわ!」
杏子の正論にモクバも海馬を止めきれなかった後悔が押し寄せる。
「遊戯、兄さまを… 兄さまを助けてくれ。」
遊戯達が互いに顔を見合わせる中で、双六はすぐに懸念を示した。
「しかし海馬コーポレーションの重役達が絡んでるとなると、やっかいな問題じゃぞ。」
モクバは双六の意見に俯く。兄弟の秘密を言葉にするのが兄に憚られるだろうことを承知で、モクバは彼らに燻る海馬への誤解を晴らそうと決意した。
「兄さまは…… 兄さまの本当の夢は、世界中に“海馬ランド”を建てて子供たちを楽しませることなんだ。」
「まさか…… あの海馬がそんな事を?」
真っ先に耳を疑った城之内に目を向けるでもなく、モクバは手の中のマグカップに集中したまま頷く。
「本当だ。そのために兄さまは海馬コーポレーションに命を懸けてきたんだ。……心休まる日なんてなかったんだ。」
モクバの様子に城之内と遊戯が顔を見合うが、城之内はすぐにフッと笑った。
「安心しろモクバ! 誰も見捨てるなんて言ってねぇぜ!」
「うん! 僕たちは知ってるよ。海馬くんとモクバくんの絆の強さを!」
***
モクバの案内で海馬ランドに忍び込んだ遊戯達は、海馬の居るゲームプログラムと繋がったシュミレーションルームへ向かう。
「よし! 生きてる! アクセスできるぞ!」
プログラムボードを触っていたモクバが顔を上げると、城之内は目の前に並んだ座席を見回した。
「行けるのは3人か……」
3つのシートを指差しながら、「オレと遊戯と……」と続けると、モクバが「オレが行く!」と名乗りをあげる。
「ゲームに負けたら二度と戻ってこれねぇんだぞ!」
本田の言葉にもモクバの目は屈する事を知らない。
「兄さまがいない世界で、オレだけ生き残ったって何の意味もないよ。」
「モクバ……」
それぞれシートに体を預けて座った3人に、急に不安な気持ちが杏子にこみ上げた。
「必ず帰ってきてね……」
消え入りそうな声に遊戯と城之内がすぐに笑って見せる。
「安心しろって!」
「僕たちは絶対戻ってくるよ。海馬くんを連れて!」
***
モニタリングしていたビッグ5が、外部からのアクセスにいち早く反応した。
「やはり戻ってきましたね。」
冷静な大岡に対して、大下は気難しい顔で画面を見ている。
「モクバめ…… あの武藤遊戯を連れて来たのか。」
そこへオートドアを開けて、2人の黒服を連れた猿渡が入ってきた。
「計画通り、苗字名前を確保しました。」
「猿渡、計画は少し変更だ。先に海馬ランドへ向かい、モクバと武藤遊戯を閉じ込めて来るのです。」
「おい! 取引きが先だろ! 海馬の元へ武藤遊戯だけでなく、苗字名前まで送り込んでしまってゲームをクリアされたらどうするつもりだ!」
大声で反論する大田に、罵声を浴びせられた当の大岡は嫌そうな顔で耳を触る。
「まさか。このゲームはクリア出来ない内容になっている。海馬瀬人然り、武藤遊戯も然り。ましてやクイーンの扱うデッキでは…序盤から必ず詰むと断言しましょう。」
眼鏡の奥で光る大岡の目に、大田は「うぬ……」と言葉が詰まる。
「さぁ猿渡、早く海馬ランドへ向かうのです!」
***
名前は自分が目が覚めたのかどうかを疑っていた。
目の前には数値を頭に付けたモンスターが2体並んでいるし、自分のデッキから引いたカードを手にした途端に現れた[ERROR]という赤文字と警告音に頭が痛くなる。
《禁止カードの使用はできません、他のカードをお選びください。……禁止カードの使用はできません、他のカードを───
「は?」
繰り返し再生される自動音声に、左腕についたデュエルディスクに目をやった。音声はこれから流れているらしい。
手にしているのは“魔導法士 ジュノン”。これは何かの悪い夢だろうか。しかし敵らしいモンスターは名前の困惑の解消を待つはずもなく襲い掛かってきた。
「“シャドール・リザード”を召喚!」
ジュノンを諦めて次にドローしたカードを出すと、こちらは問題なく現れてモンスターを一体破壊した。
「さらにシャドール・リザードの効果で、モンスターを1体破壊する!」
自分に向けて襲いかかってきたモンスターも効果で破壊され、ようやく名前は安堵の息をつく。
安っぽい効果音が響くと、金色のコインが描かれたカードが落とされる。シャドール・リザードがカードに戻ると、名前は《禁止カード》と断言されたジュノンのカードを見た。
脳裏では「魔導を全て禁止カードに指定する」と言い出したペガサスを思い出していた。
「……まさか」
青い顔でデッキを取り外して広げると半分以上が赤いふちで覆われ、魔導に関するカードがこの空間で全て禁止カードに指定されているのを悟った。
「ここはドコ」という簡単な疑問よりも先に、魔導のカードが軒並み使えないことに名前は混乱した。正直言って、相当マズい状況にある事だけは確かだ。
きっと悪い夢だ。そう考えて、名前は魔導カードを全て取り除き、僅かに残ったカードだけをデッキに収めた。
ようやく周りを見渡せば、だだっ広い森にどこまで続いているかわからない一本の道があるだけ。現実味のない空間に、ゲーム画面みたいなモンスターの現れ方や腕につけられたデュエルディスク。
最後の記憶は水かホイップクリームに薬を盛られて、あの猿渡が部屋に入ってきたことと、大理石の床に倒れたことくらいしか思い出せない。
眠っている間にまた何かされたのは明白だが、この状況には困惑しかできないでいた。
大きくため息をついて、とりあえず落とされたコインのカードを拾い上げる。
「まいったわね……」
幸い服装や千年秤はそのままだ。とりあえずポケットにコインカードを突っ込むと、おそらく進むべき方向であるだろう正面に足を進めた。
タオルに身を包まれたモクバが遊戯に頷いた。ホットミルクの入ったマグカップが冷え切った指先の感覚を取り戻し始めている。
「ゲームに負けたらその世界から抜け出せなくなっちゃうなんて…そんなのゲームじゃないわ!」
杏子の正論にモクバも海馬を止めきれなかった後悔が押し寄せる。
「遊戯、兄さまを… 兄さまを助けてくれ。」
遊戯達が互いに顔を見合わせる中で、双六はすぐに懸念を示した。
「しかし海馬コーポレーションの重役達が絡んでるとなると、やっかいな問題じゃぞ。」
モクバは双六の意見に俯く。兄弟の秘密を言葉にするのが兄に憚られるだろうことを承知で、モクバは彼らに燻る海馬への誤解を晴らそうと決意した。
「兄さまは…… 兄さまの本当の夢は、世界中に“海馬ランド”を建てて子供たちを楽しませることなんだ。」
「まさか…… あの海馬がそんな事を?」
真っ先に耳を疑った城之内に目を向けるでもなく、モクバは手の中のマグカップに集中したまま頷く。
「本当だ。そのために兄さまは海馬コーポレーションに命を懸けてきたんだ。……心休まる日なんてなかったんだ。」
モクバの様子に城之内と遊戯が顔を見合うが、城之内はすぐにフッと笑った。
「安心しろモクバ! 誰も見捨てるなんて言ってねぇぜ!」
「うん! 僕たちは知ってるよ。海馬くんとモクバくんの絆の強さを!」
***
モクバの案内で海馬ランドに忍び込んだ遊戯達は、海馬の居るゲームプログラムと繋がったシュミレーションルームへ向かう。
「よし! 生きてる! アクセスできるぞ!」
プログラムボードを触っていたモクバが顔を上げると、城之内は目の前に並んだ座席を見回した。
「行けるのは3人か……」
3つのシートを指差しながら、「オレと遊戯と……」と続けると、モクバが「オレが行く!」と名乗りをあげる。
「ゲームに負けたら二度と戻ってこれねぇんだぞ!」
本田の言葉にもモクバの目は屈する事を知らない。
「兄さまがいない世界で、オレだけ生き残ったって何の意味もないよ。」
「モクバ……」
それぞれシートに体を預けて座った3人に、急に不安な気持ちが杏子にこみ上げた。
「必ず帰ってきてね……」
消え入りそうな声に遊戯と城之内がすぐに笑って見せる。
「安心しろって!」
「僕たちは絶対戻ってくるよ。海馬くんを連れて!」
***
モニタリングしていたビッグ5が、外部からのアクセスにいち早く反応した。
「やはり戻ってきましたね。」
冷静な大岡に対して、大下は気難しい顔で画面を見ている。
「モクバめ…… あの武藤遊戯を連れて来たのか。」
そこへオートドアを開けて、2人の黒服を連れた猿渡が入ってきた。
「計画通り、苗字名前を確保しました。」
「猿渡、計画は少し変更だ。先に海馬ランドへ向かい、モクバと武藤遊戯を閉じ込めて来るのです。」
「おい! 取引きが先だろ! 海馬の元へ武藤遊戯だけでなく、苗字名前まで送り込んでしまってゲームをクリアされたらどうするつもりだ!」
大声で反論する大田に、罵声を浴びせられた当の大岡は嫌そうな顔で耳を触る。
「まさか。このゲームはクリア出来ない内容になっている。海馬瀬人然り、武藤遊戯も然り。ましてやクイーンの扱うデッキでは…序盤から必ず詰むと断言しましょう。」
眼鏡の奥で光る大岡の目に、大田は「うぬ……」と言葉が詰まる。
「さぁ猿渡、早く海馬ランドへ向かうのです!」
***
名前は自分が目が覚めたのかどうかを疑っていた。
目の前には数値を頭に付けたモンスターが2体並んでいるし、自分のデッキから引いたカードを手にした途端に現れた[ERROR]という赤文字と警告音に頭が痛くなる。
《禁止カードの使用はできません、他のカードをお選びください。……禁止カードの使用はできません、他のカードを───
「は?」
繰り返し再生される自動音声に、左腕についたデュエルディスクに目をやった。音声はこれから流れているらしい。
手にしているのは“魔導法士 ジュノン”。これは何かの悪い夢だろうか。しかし敵らしいモンスターは名前の困惑の解消を待つはずもなく襲い掛かってきた。
「“シャドール・リザード”を召喚!」
ジュノンを諦めて次にドローしたカードを出すと、こちらは問題なく現れてモンスターを一体破壊した。
「さらにシャドール・リザードの効果で、モンスターを1体破壊する!」
自分に向けて襲いかかってきたモンスターも効果で破壊され、ようやく名前は安堵の息をつく。
安っぽい効果音が響くと、金色のコインが描かれたカードが落とされる。シャドール・リザードがカードに戻ると、名前は《禁止カード》と断言されたジュノンのカードを見た。
脳裏では「魔導を全て禁止カードに指定する」と言い出したペガサスを思い出していた。
「……まさか」
青い顔でデッキを取り外して広げると半分以上が赤いふちで覆われ、魔導に関するカードがこの空間で全て禁止カードに指定されているのを悟った。
「ここはドコ」という簡単な疑問よりも先に、魔導のカードが軒並み使えないことに名前は混乱した。正直言って、相当マズい状況にある事だけは確かだ。
きっと悪い夢だ。そう考えて、名前は魔導カードを全て取り除き、僅かに残ったカードだけをデッキに収めた。
ようやく周りを見渡せば、だだっ広い森にどこまで続いているかわからない一本の道があるだけ。現実味のない空間に、ゲーム画面みたいなモンスターの現れ方や腕につけられたデュエルディスク。
最後の記憶は水かホイップクリームに薬を盛られて、あの猿渡が部屋に入ってきたことと、大理石の床に倒れたことくらいしか思い出せない。
眠っている間にまた何かされたのは明白だが、この状況には困惑しかできないでいた。
大きくため息をついて、とりあえず落とされたコインのカードを拾い上げる。
「まいったわね……」
幸い服装や千年秤はそのままだ。とりあえずポケットにコインカードを突っ込むと、おそらく進むべき方向であるだろう正面に足を進めた。