王国編 /2
名前変換
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DMクエスト 編
「ほれ! 新しいカードが入ったぞ〜!」
誰よりも子供らしい声を上げる双六に、遊戯や城之内も目を輝かせてそれを見ていた。
遊戯の自宅兼、双六のゲームショップ。そこで城之内と本田、杏子が集まって遊戯と共にカウンターでカードを囲んでいた。
笑い声の壁を越えて、ドアベルがカラコロと軽快な音を上げる。来客の報せに全員が振り向くと、そこには雨でずぶ濡れになったモクバが息を切らせて立っていた。
「ゆ、遊戯……」
「モクバ君?」
名前を呼ばれた遊戯は、それが悪い出来事の始まりであることを本能的に悟っていた。
***
[───11時間前]
早朝にもかかわらず、海馬は寝起き一番に聞かされた報せに大きくため息をついていた。
「行き先は?」
電話越しに話す磯野にも疲労の色が伺える。時計を確認すると、ベッドから立ち上がってパソコンテーブルに向かった。
「わかった。至急自家用機を用意しろ。1時間半後に離陸できるよう管制塔に都合をつけておけ。」
携帯電話を切ると、パソコンをつけてほんの数分立ったままマウスを触る。どこかソワソワと落ち着かない自分が腹立たしい。海馬はすぐにログアウトして、まずは着替えに寝室へ戻って行った。
おそらく徹夜であったでだろう磯野が、いびきをかかないよう気にしながらも搭乗員用シートに頭を預けて仮眠を取っていた。
プライベート・ジェット機で約3時間半。忙しなく消費する時間の中で、移動時間は貴重な休憩時間でもある。海馬もそれを咎める気は無く、窓の下に広がる雲間の海に目を向けた。その手に、名前が病室へ残したカードを持って。
───名前が残したのは、“魔導老士 エアミット”だった。
魔導書はモンスターや魔法カードがそのまま大アルカナ・タロットカードを意味している。海馬もすぐにその意味を察して、“エアミット”に該当するタロットカードを探した。
「隠者 」の意味は、「自分を見つめ直す」「本質回帰」。
海馬はエアミットのカードを見つめながら、磯野に調べさせた名前の調査書の内容を思い出していた。……飛行機を降りた先で、一体何日かぶりか分からない名前との会話が待っている。
どこか居心地の悪い体の感触が彼女と話す事に対する緊張の現れだと知っていて、ことさら海馬の機嫌は悪化していく。
「着陸態勢に入ります。シートベルトをお締めください。」
隣の区画で磯野が搭乗員に起こされる声がしている。機内放送に海馬はカードを懐のポケットに仕舞い込んだ。
***
「あの、名前ちゃん来てる?」
遊戯は隣のクラスの入り口にいた女子生徒に声を掛けた。彼女は名前の席を見るまでもなく首を横に振る。
「苗字さんならもう3日休んでるけど。」
「そっか…… ありがとう。」
騒がしい廊下に戻ると、遊戯はぐるりと見回した。遠近疎らに教材運びを手伝う獏良、そして戯れる本田と城之内に、ガールズトークをする杏子が見える。
デュエリスト・キングダムを経て遊戯達の生活は平穏そのものに戻っていた。ただ1人、名前の存在だけを記憶のどこかへ落としたまま。
もう一度名前のいるクラスを覗き込む。座っている人の方が少ない休み時間では、どれが名前の席なのか遊戯には検討も付かない。……同じように名前を見失っている。寂しさのような心寒さが遊戯の顔に陰を落としていた。
「ほれ! 新しいカードが入ったぞ〜!」
誰よりも子供らしい声を上げる双六に、遊戯や城之内も目を輝かせてそれを見ていた。
遊戯の自宅兼、双六のゲームショップ。そこで城之内と本田、杏子が集まって遊戯と共にカウンターでカードを囲んでいた。
笑い声の壁を越えて、ドアベルがカラコロと軽快な音を上げる。来客の報せに全員が振り向くと、そこには雨でずぶ濡れになったモクバが息を切らせて立っていた。
「ゆ、遊戯……」
「モクバ君?」
名前を呼ばれた遊戯は、それが悪い出来事の始まりであることを本能的に悟っていた。
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[───11時間前]
早朝にもかかわらず、海馬は寝起き一番に聞かされた報せに大きくため息をついていた。
「行き先は?」
電話越しに話す磯野にも疲労の色が伺える。時計を確認すると、ベッドから立ち上がってパソコンテーブルに向かった。
「わかった。至急自家用機を用意しろ。1時間半後に離陸できるよう管制塔に都合をつけておけ。」
携帯電話を切ると、パソコンをつけてほんの数分立ったままマウスを触る。どこかソワソワと落ち着かない自分が腹立たしい。海馬はすぐにログアウトして、まずは着替えに寝室へ戻って行った。
おそらく徹夜であったでだろう磯野が、いびきをかかないよう気にしながらも搭乗員用シートに頭を預けて仮眠を取っていた。
プライベート・ジェット機で約3時間半。忙しなく消費する時間の中で、移動時間は貴重な休憩時間でもある。海馬もそれを咎める気は無く、窓の下に広がる雲間の海に目を向けた。その手に、名前が病室へ残したカードを持って。
───名前が残したのは、“魔導老士 エアミット”だった。
魔導書はモンスターや魔法カードがそのまま大アルカナ・タロットカードを意味している。海馬もすぐにその意味を察して、“エアミット”に該当するタロットカードを探した。
「
海馬はエアミットのカードを見つめながら、磯野に調べさせた名前の調査書の内容を思い出していた。……飛行機を降りた先で、一体何日かぶりか分からない名前との会話が待っている。
どこか居心地の悪い体の感触が彼女と話す事に対する緊張の現れだと知っていて、ことさら海馬の機嫌は悪化していく。
「着陸態勢に入ります。シートベルトをお締めください。」
隣の区画で磯野が搭乗員に起こされる声がしている。機内放送に海馬はカードを懐のポケットに仕舞い込んだ。
***
「あの、名前ちゃん来てる?」
遊戯は隣のクラスの入り口にいた女子生徒に声を掛けた。彼女は名前の席を見るまでもなく首を横に振る。
「苗字さんならもう3日休んでるけど。」
「そっか…… ありがとう。」
騒がしい廊下に戻ると、遊戯はぐるりと見回した。遠近疎らに教材運びを手伝う獏良、そして戯れる本田と城之内に、ガールズトークをする杏子が見える。
デュエリスト・キングダムを経て遊戯達の生活は平穏そのものに戻っていた。ただ1人、名前の存在だけを記憶のどこかへ落としたまま。
もう一度名前のいるクラスを覗き込む。座っている人の方が少ない休み時間では、どれが名前の席なのか遊戯には検討も付かない。……同じように名前を見失っている。寂しさのような心寒さが遊戯の顔に陰を落としていた。