王国編 /2
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王国編 Rebecca side
遊戯らは童実野町の病院を訪れていた。少なくはない人の中で、遊戯は入院病棟のゲートを抜けてこちらに笑い掛ける祖父・双六の姿を見つける。
「じいちゃん…… じいちゃん!」
「遊戯!」
駆け寄って飛び付く遊戯を、双六が受け止めた。城之内や本田、杏子がそれを後ろで見守っていた。
***
遊戯の果たした優勝という結果に、双六は大いに喜んだ。自宅へ帰る道を進んでいると、自宅に繋がっているゲームショップの前に立つ一人の少女が遊戯達を待ち構えていた。
大量のスーツケースを乗せたカートを引きながら、その少女は双六に向かって真っ直ぐ歩み寄った。金髪をツインテールに結い上げクマのぬいぐるみを抱いた少女は、そのビジュアルの情報だけでもかなり幼い事が見て取れる。彼女は口を真一文字に結び、強気で勝ち気そうな目で双六をジッと見つめると、カートを引いていた手を離して指を指す。
「You, Sugoroku Mtou?」
「そうじゃが……どちらさんかな?」
「I'm Rebecca, …今朝アメリカから着いたのよ。まったくもう、遅いじゃない! レディを待たせるなんて、いったいどういうこと?!」
遊戯が「レディー?」と返すと、レベッカと名乗った少女は遊戯に詰め寄った。
「なによ! レディじゃないっていうの?!」
「おいおい、お子ちゃま1人ではるばる日本まで…いったい何の用だよ。」
レベッカの態度を見兼ねた城之内が遊戯に助け船をだすが、彼女はすぐにそっぽを向いてしまう。
「goddamn! 下品なお兄さんとはお話ししな〜い!」
「なんだとこの!」
城之内の短気が暴発する前に、双六は「まあまあ」と宥めた。
「レベッカ、ワシにどんな用かな?」
「 “青眼の白龍”を返して! アレは私のなんだから。」
「えぇっ」
先にたじろいだのは遊戯だった。遊戯や双六たちの脳裏には共通して、海馬が「4枚目だったから」という理由だけでブルーアイズのカードを破ってしまった事が蘇る。
「あのカードは……」
「“青眼の白龍”はもともとアメリカにあった、特別強いカードなんだからね! という事は、アメリカでいちばん強〜いアタシが持ってて当然ってワケ。」
「アメリカで、1番強い?」
「そう! だってアタシ、全米チャンピオンだも〜ん!」
自信たっぷりに言い放つレベッカに、城之内や本田は半笑いでそれを見た。
「あのなぁ…… もっとマシな冗談言えねぇのかよ!」
しかし遊戯は、レベッカの顔をジッと見てすぐに思い出した。
「……あ! 間違いないよ! 雑誌で見た覚えがある。わずか12歳でアメリカチャンピオンシップを制して、センセーショナルな話題を呼んだ、天才デュエリスト…」
まだ信じられないといった様子で、城之内が遊戯に耳打ちをする。
「おいおい、このクソ生意気なガキが全米チャンピオンだって? 冗談じゃ……」
「なによ! 全米チャンピオンをバカにする気?!」
しっかりと聞こえていたレベッカが、また強気な眉を釣り上げて城之内に食って掛かる。それでも城之内は踏ん反り返ってレベッカを見下ろした。
「うっせえな! オレだってデュエリスト・キングダムの準優勝だぜ。」
「あぁ。ついこの前まで町内8位だったけどな。」
ちゃちゃをいれる本田に、城之内がムスっとして「オマエはどっちの味方だ!」と言い返す。
「そんなこと知ってるもん。デュエリスト・キングダムの1位はユウギ・ムトウ。て、あとの1位以下はビリも同然だけどね。」
「ンだとてめ〜!」
「落着けよ!」
ヤケになって腕を振り上げる城之内を、本田や杏子が押し留めた。レベッカはスッと真剣な目になると、今度は遊戯を見つめた。
「だからこそ信じられない。クイーンが負けただなんて。」
「えっ」
「名前は優勝者以外になるようなデュエリストじゃないわ。ブルーアイズを盗んだ双六の孫なら、イカサマして勝ったんじゃない?」
「オイ! 何だよそれ!」
流石に聞き流せなかった言葉に、城之内が詰め寄る。
「待って、僕たちは正々堂々戦ったんだ! それに、じいちゃんはブルーアイズを盗んだりしていない! 誰がそんな事を言ったんだい?」
「だってだって、バンデット・キースがそう言ってたもん。ブルーアイズは盗まれたんだって!」
城之内は頭を抱え、遊戯や本田達も呆れた顔であの意地汚い男の顔を思い出す。
「あのバカ! なんてこと言いやがる……!」
「とにかく、ブルーアイズは全米チャンプであるアタシのものなの! はやく返してよ。それに名前はどこ?! アンタとのデュエルの真偽を聞くまでアタシは信じないからね!」
「……あ、えっと、…名前はダメだ。今は…会えない。」
***
点滴の落ちる音だけが響いているような、静かで真っ白な部屋に、名前の赤い髪が白いシーツの上に流れ落ちていた。点滴を繋がれていない方の腕は、掛け布団の中でしっかりと千年秤を握って手放さない。これについては、医者や看護師がどうしようと名前が手を離す事は無かった。
海馬は1人掛けのソファに座り、足を組んでそれを見つめていた。
個室の病室と言うには少し豪華な部屋に、花束ひとつ無いテーブルやソファが並ぶ。部屋の外では海馬の側近である磯野と…もう1人、名前の家からの遣いだと名乗る男が立っている。海馬は名前の千年秤に挟まっていた3枚のカードを取り出して眺めた。
絵柄とカードの名前は消えている。記憶が正しいならば、これはペガサスが“魂の封印カード”だと言っていたもの。海馬は少なくとも囚われたモクバの絵柄が入ったカードを見ている。
名前は時々夢を見ているようで、時折小さく息を漏らしたような声を出したり、首を動かしたりはしていた。その度に外の人間に聞こえないくらいの声で呼び掛けるが、名前の瞼が開くことはない。
オカルト的なものや非科学的なものは信じない主義だ。だからこそ名前が目覚めない理由を…海馬はその根拠を求めていた。
***
「レベッカ、あのね、名前は……」
「なによ!」
遊戯は戸惑いながらも、レベッカに何からどう説明すべきか頭を振り回転させていた。それでもアメリカ人らしい気質というべきか、思った事をすぐに口に出してまくし立てる彼女に、既に気合負けしている。
一秒でも考えこむ遊戯の姿を見れば、レベッカは十秒喋った。
「あっそう。合わせたくないってわけね。」
「ちょっと待って! そういうわけじゃないんだけども、……なんて言うか、…えーと───」
「だったら勝負よ!」
「…えぇ…?!」
思わず片足を引き下げて驚く遊戯に、レベッカはオーバーサイズのピンクの袖から小さな白い指を出して遊戯を指す。
「デュエルよ、デュエル! クイーンに勝つほどの実力があるなら、全米チャンプであるアタシに勝って証明しなさい! ついでにブルーアイズのカードを賭けるのも条件よ。アタシが勝ったらブルーアイズを返しなさい! いいわね?!」
「あのなァ、オマエいいかげんに……」
「いいわね?! すぐにデュエルリングを手配して! Hurry up!」
城之内の抵抗にも耳を貸さないレベッカに、遊戯はただただ困った顔をするしかできなかった。
***
名前の病室にノックが響く。海馬が振り返るのとほぼ同時に扉をあけたのは磯野だった。
「社長、モクバ様よりお電話が…… そちらの内線にお繋ぎしてあります。」
「そうか。」
磯野はそのまま海馬に顔を寄せて、外を気にしながら耳打ちをする。
「……それと、例の件ですが───」
「……フン。粗方想像通りだ。この件はもういい、行け。」
「…はい」
磯野が一礼してから出て行ったのを横目に立ち上がると、海馬は名前のベッドに腰掛けて内線電話を取った。
「オレだ。…どうした。」
遊戯らは童実野町の病院を訪れていた。少なくはない人の中で、遊戯は入院病棟のゲートを抜けてこちらに笑い掛ける祖父・双六の姿を見つける。
「じいちゃん…… じいちゃん!」
「遊戯!」
駆け寄って飛び付く遊戯を、双六が受け止めた。城之内や本田、杏子がそれを後ろで見守っていた。
***
遊戯の果たした優勝という結果に、双六は大いに喜んだ。自宅へ帰る道を進んでいると、自宅に繋がっているゲームショップの前に立つ一人の少女が遊戯達を待ち構えていた。
大量のスーツケースを乗せたカートを引きながら、その少女は双六に向かって真っ直ぐ歩み寄った。金髪をツインテールに結い上げクマのぬいぐるみを抱いた少女は、そのビジュアルの情報だけでもかなり幼い事が見て取れる。彼女は口を真一文字に結び、強気で勝ち気そうな目で双六をジッと見つめると、カートを引いていた手を離して指を指す。
「You, Sugoroku Mtou?」
「そうじゃが……どちらさんかな?」
「I'm Rebecca, …今朝アメリカから着いたのよ。まったくもう、遅いじゃない! レディを待たせるなんて、いったいどういうこと?!」
遊戯が「レディー?」と返すと、レベッカと名乗った少女は遊戯に詰め寄った。
「なによ! レディじゃないっていうの?!」
「おいおい、お子ちゃま1人ではるばる日本まで…いったい何の用だよ。」
レベッカの態度を見兼ねた城之内が遊戯に助け船をだすが、彼女はすぐにそっぽを向いてしまう。
「goddamn! 下品なお兄さんとはお話ししな〜い!」
「なんだとこの!」
城之内の短気が暴発する前に、双六は「まあまあ」と宥めた。
「レベッカ、ワシにどんな用かな?」
「 “青眼の白龍”を返して! アレは私のなんだから。」
「えぇっ」
先にたじろいだのは遊戯だった。遊戯や双六たちの脳裏には共通して、海馬が「4枚目だったから」という理由だけでブルーアイズのカードを破ってしまった事が蘇る。
「あのカードは……」
「“青眼の白龍”はもともとアメリカにあった、特別強いカードなんだからね! という事は、アメリカでいちばん強〜いアタシが持ってて当然ってワケ。」
「アメリカで、1番強い?」
「そう! だってアタシ、全米チャンピオンだも〜ん!」
自信たっぷりに言い放つレベッカに、城之内や本田は半笑いでそれを見た。
「あのなぁ…… もっとマシな冗談言えねぇのかよ!」
しかし遊戯は、レベッカの顔をジッと見てすぐに思い出した。
「……あ! 間違いないよ! 雑誌で見た覚えがある。わずか12歳でアメリカチャンピオンシップを制して、センセーショナルな話題を呼んだ、天才デュエリスト…」
まだ信じられないといった様子で、城之内が遊戯に耳打ちをする。
「おいおい、このクソ生意気なガキが全米チャンピオンだって? 冗談じゃ……」
「なによ! 全米チャンピオンをバカにする気?!」
しっかりと聞こえていたレベッカが、また強気な眉を釣り上げて城之内に食って掛かる。それでも城之内は踏ん反り返ってレベッカを見下ろした。
「うっせえな! オレだってデュエリスト・キングダムの準優勝だぜ。」
「あぁ。ついこの前まで町内8位だったけどな。」
ちゃちゃをいれる本田に、城之内がムスっとして「オマエはどっちの味方だ!」と言い返す。
「そんなこと知ってるもん。デュエリスト・キングダムの1位はユウギ・ムトウ。て、あとの1位以下はビリも同然だけどね。」
「ンだとてめ〜!」
「落着けよ!」
ヤケになって腕を振り上げる城之内を、本田や杏子が押し留めた。レベッカはスッと真剣な目になると、今度は遊戯を見つめた。
「だからこそ信じられない。クイーンが負けただなんて。」
「えっ」
「名前は優勝者以外になるようなデュエリストじゃないわ。ブルーアイズを盗んだ双六の孫なら、イカサマして勝ったんじゃない?」
「オイ! 何だよそれ!」
流石に聞き流せなかった言葉に、城之内が詰め寄る。
「待って、僕たちは正々堂々戦ったんだ! それに、じいちゃんはブルーアイズを盗んだりしていない! 誰がそんな事を言ったんだい?」
「だってだって、バンデット・キースがそう言ってたもん。ブルーアイズは盗まれたんだって!」
城之内は頭を抱え、遊戯や本田達も呆れた顔であの意地汚い男の顔を思い出す。
「あのバカ! なんてこと言いやがる……!」
「とにかく、ブルーアイズは全米チャンプであるアタシのものなの! はやく返してよ。それに名前はどこ?! アンタとのデュエルの真偽を聞くまでアタシは信じないからね!」
「……あ、えっと、…名前はダメだ。今は…会えない。」
***
点滴の落ちる音だけが響いているような、静かで真っ白な部屋に、名前の赤い髪が白いシーツの上に流れ落ちていた。点滴を繋がれていない方の腕は、掛け布団の中でしっかりと千年秤を握って手放さない。これについては、医者や看護師がどうしようと名前が手を離す事は無かった。
海馬は1人掛けのソファに座り、足を組んでそれを見つめていた。
個室の病室と言うには少し豪華な部屋に、花束ひとつ無いテーブルやソファが並ぶ。部屋の外では海馬の側近である磯野と…もう1人、名前の家からの遣いだと名乗る男が立っている。海馬は名前の千年秤に挟まっていた3枚のカードを取り出して眺めた。
絵柄とカードの名前は消えている。記憶が正しいならば、これはペガサスが“魂の封印カード”だと言っていたもの。海馬は少なくとも囚われたモクバの絵柄が入ったカードを見ている。
名前は時々夢を見ているようで、時折小さく息を漏らしたような声を出したり、首を動かしたりはしていた。その度に外の人間に聞こえないくらいの声で呼び掛けるが、名前の瞼が開くことはない。
オカルト的なものや非科学的なものは信じない主義だ。だからこそ名前が目覚めない理由を…海馬はその根拠を求めていた。
***
「レベッカ、あのね、名前は……」
「なによ!」
遊戯は戸惑いながらも、レベッカに何からどう説明すべきか頭を振り回転させていた。それでもアメリカ人らしい気質というべきか、思った事をすぐに口に出してまくし立てる彼女に、既に気合負けしている。
一秒でも考えこむ遊戯の姿を見れば、レベッカは十秒喋った。
「あっそう。合わせたくないってわけね。」
「ちょっと待って! そういうわけじゃないんだけども、……なんて言うか、…えーと───」
「だったら勝負よ!」
「…えぇ…?!」
思わず片足を引き下げて驚く遊戯に、レベッカはオーバーサイズのピンクの袖から小さな白い指を出して遊戯を指す。
「デュエルよ、デュエル! クイーンに勝つほどの実力があるなら、全米チャンプであるアタシに勝って証明しなさい! ついでにブルーアイズのカードを賭けるのも条件よ。アタシが勝ったらブルーアイズを返しなさい! いいわね?!」
「あのなァ、オマエいいかげんに……」
「いいわね?! すぐにデュエルリングを手配して! Hurry up!」
城之内の抵抗にも耳を貸さないレベッカに、遊戯はただただ困った顔をするしかできなかった。
***
名前の病室にノックが響く。海馬が振り返るのとほぼ同時に扉をあけたのは磯野だった。
「社長、モクバ様よりお電話が…… そちらの内線にお繋ぎしてあります。」
「そうか。」
磯野はそのまま海馬に顔を寄せて、外を気にしながら耳打ちをする。
「……それと、例の件ですが───」
「……フン。粗方想像通りだ。この件はもういい、行け。」
「…はい」
磯野が一礼してから出て行ったのを横目に立ち上がると、海馬は名前のベッドに腰掛けて内線電話を取った。
「オレだ。…どうした。」