王国編 /1
名前変換
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「お〜い!」
城之内と杏子が振り返ると、右肩に獏良を、左腕でモクバを担いだ本田が息を荒げて立っていた。予想外の登場の仕方に驚いた城之内が駆け寄ろうとするが、それよりも先に本田も最後の一息で2人の側へ駆ける。
「本田!…その2人!」
城之内の問いに応えられず、本田はハーハーと肩で呼吸を整える。モクバと獏良を下ろして策にもたれ掛けさせたところで、本田がやっと喉を鳴らした。
「モクバを牢屋から助け出そうとして……途中まで名前も一緒だったんだ!あいつは銃で撃たれて怪我してよォ、それでもひとりで海馬を探しに行っちまったぜ」
そこでやっと遊戯のいるデュエルリングの方を見た本田が立ち上がった。
「こっちもかよ!」
「こっちも?」
テラスから見下ろした、デュエルリングがあった場所…… 遊戯とペガサスの闘っていた場所は、本田と名前を襲ったのと同じ色をした“闇”が広がって、まるで黒い卵のようにフィールドを覆い隠している。その点と点が本田の中で線で繋がったとき、一体なにが起きているのか───この王国の裏でなにが起きていたのか───それに思い当たるものがやっと脳からメルトダウンして本田の手の中に落ちた。
「実はオレも…… 信じられねえんだがな」
そう前置きしたところで、真剣な城之内の目がぶつかる。
「何があったってんだよ?教えろよ!」
「…闇のゲームだよ」
***
名前は暑さでじっとりとした廊下を進んでいた。実際の室温は涼しいくらいのはずだが、名前は顔に集中する熱と汗に苦闘していた。…原因は明らかだ。忌々しそうに汗をまた手の甲で拭うと、視界の端に白い布が奥の角を横切った気がした。
「!」
身体中に響く痛みを堪えて走った。見覚えのある───脳裏には幼い頃の記憶、その姿が赤紫の瞳に映っている。突き当たりのT字路を曲がると、やはり奥の角を白い布が曲がって去って行く。名前は弾む息も忘れて追いかければ、どこか上の階へと続く階段に行き当たった。
「……」
小さく息を飲んで、階段の1段目に足を掛ける。わずかに震える千年秤に気付いてはいても、その先へ進む足を止めることはできなかった。登るにつれて天井が近くなって行く。最上段の向こうに見える部屋の内装が次第に階段の覆いから解放されていくと、赤いベルベッドのカーテンや豪華なテーブルなどの全貌が現れた。
名前は部屋に立つと、一度ぐるりと部屋を見渡す。首を後ろに向けたところで、その白い麻布に身を包んだ男が膝をついていた。
「───! あなた……!」
***
「ここからじゃ何も見えないわ……!」
「下に行ってみるか」
杏子と城之内が闇に包まれたフィールドを覗き込む。
「悪いがコイツらには、ここで待っててもらうしかねえな。」
「あぁ。」
さすがにくたびれた様子の本田に城之内も頷き、3人は廊下を突き進んで階下へと続く階段へ駆けて行った。
***
「フフフフフ……」
ミレニアム・アイのウジャド眼が光り、怪しく喉の奥で笑うペガサス。対峙した“2人の遊戯”のうち、肉体側にいた表の人格の遊戯の額には、嫌な汗が流れる。
「ここからは常人の心では耐えることのできない闘い。遊戯ボーイ…もう1人のマインドの強さが問われることになりマ〜ス。」
実際、表の遊戯はすでに息を苦しげに荒げ始めていた。どんどん重くのし掛かる空気に、遊戯の心は尋常じゃないほどの重圧を受けていたのだ。
「(もう一人のオレに、闇のゲームは無理だ!)」
闇人格側の遊戯が咄嗟に入れ替わり、その心の奥へ表の遊戯を逃す。
「もう一人のオレ!今からオレがカードを引く!」
遊戯 LP:900
「(でも2人で闘わなくちゃ、ペガサスのミレニアム・アイで戦術は見透かされてしまう。僕は大丈夫……!一緒に闘わせて!)」
「……!わかった……」
ペガサスはそれを今まで見せてこなかった顔をして、鼻で笑った。
ペガサス LP:600
「私のターン、“ダークアイズ・イリュージョニスト”を攻撃表示!」
“ダークアイズ・イリュージョニスト”(攻/0 守/0)
「コイツは……」
「闇のゲームでは科学の粋を集めた海馬コーポレーション製デュエルリングも、何の役にもたたない……プレイヤー自身の精神力がモンスターを実体化させるのデ〜ス。すなわち精神力が尽きたとき、プレイヤーの命の保証はありまセ〜ン。」
闇のゲーム自体、闇の人格である遊戯自身もよくわかっていた。だからこそもう1人の自分───表の人格の遊戯をむやみに矢面に立たせるわけにはいかない。一刻も早くペガサスを倒すことに集中し、遊戯はフィールドに出されたモンスターへ目を向けた。
「(ダークアイズ・イリュージョニスト…攻撃力、守備力がゼロの幻想モンスター。ここは迂闊には攻撃できない…。なにか特別な能力を持っているに違いないぜ!)」
遊戯は手札を見渡してから、カードを引く。
「オレは“カース・オブ・ドラゴン”を場に出し、ターン終了だ!」
“カース・オブ・ドラゴン”(攻/2000 守/1500)
城之内と杏子が振り返ると、右肩に獏良を、左腕でモクバを担いだ本田が息を荒げて立っていた。予想外の登場の仕方に驚いた城之内が駆け寄ろうとするが、それよりも先に本田も最後の一息で2人の側へ駆ける。
「本田!…その2人!」
城之内の問いに応えられず、本田はハーハーと肩で呼吸を整える。モクバと獏良を下ろして策にもたれ掛けさせたところで、本田がやっと喉を鳴らした。
「モクバを牢屋から助け出そうとして……途中まで名前も一緒だったんだ!あいつは銃で撃たれて怪我してよォ、それでもひとりで海馬を探しに行っちまったぜ」
そこでやっと遊戯のいるデュエルリングの方を見た本田が立ち上がった。
「こっちもかよ!」
「こっちも?」
テラスから見下ろした、デュエルリングがあった場所…… 遊戯とペガサスの闘っていた場所は、本田と名前を襲ったのと同じ色をした“闇”が広がって、まるで黒い卵のようにフィールドを覆い隠している。その点と点が本田の中で線で繋がったとき、一体なにが起きているのか───この王国の裏でなにが起きていたのか───それに思い当たるものがやっと脳からメルトダウンして本田の手の中に落ちた。
「実はオレも…… 信じられねえんだがな」
そう前置きしたところで、真剣な城之内の目がぶつかる。
「何があったってんだよ?教えろよ!」
「…闇のゲームだよ」
***
名前は暑さでじっとりとした廊下を進んでいた。実際の室温は涼しいくらいのはずだが、名前は顔に集中する熱と汗に苦闘していた。…原因は明らかだ。忌々しそうに汗をまた手の甲で拭うと、視界の端に白い布が奥の角を横切った気がした。
「!」
身体中に響く痛みを堪えて走った。見覚えのある───脳裏には幼い頃の記憶、その姿が赤紫の瞳に映っている。突き当たりのT字路を曲がると、やはり奥の角を白い布が曲がって去って行く。名前は弾む息も忘れて追いかければ、どこか上の階へと続く階段に行き当たった。
「……」
小さく息を飲んで、階段の1段目に足を掛ける。わずかに震える千年秤に気付いてはいても、その先へ進む足を止めることはできなかった。登るにつれて天井が近くなって行く。最上段の向こうに見える部屋の内装が次第に階段の覆いから解放されていくと、赤いベルベッドのカーテンや豪華なテーブルなどの全貌が現れた。
名前は部屋に立つと、一度ぐるりと部屋を見渡す。首を後ろに向けたところで、その白い麻布に身を包んだ男が膝をついていた。
「───! あなた……!」
***
「ここからじゃ何も見えないわ……!」
「下に行ってみるか」
杏子と城之内が闇に包まれたフィールドを覗き込む。
「悪いがコイツらには、ここで待っててもらうしかねえな。」
「あぁ。」
さすがにくたびれた様子の本田に城之内も頷き、3人は廊下を突き進んで階下へと続く階段へ駆けて行った。
***
「フフフフフ……」
ミレニアム・アイのウジャド眼が光り、怪しく喉の奥で笑うペガサス。対峙した“2人の遊戯”のうち、肉体側にいた表の人格の遊戯の額には、嫌な汗が流れる。
「ここからは常人の心では耐えることのできない闘い。遊戯ボーイ…もう1人のマインドの強さが問われることになりマ〜ス。」
実際、表の遊戯はすでに息を苦しげに荒げ始めていた。どんどん重くのし掛かる空気に、遊戯の心は尋常じゃないほどの重圧を受けていたのだ。
「(もう一人のオレに、闇のゲームは無理だ!)」
闇人格側の遊戯が咄嗟に入れ替わり、その心の奥へ表の遊戯を逃す。
「もう一人のオレ!今からオレがカードを引く!」
遊戯 LP:900
「(でも2人で闘わなくちゃ、ペガサスのミレニアム・アイで戦術は見透かされてしまう。僕は大丈夫……!一緒に闘わせて!)」
「……!わかった……」
ペガサスはそれを今まで見せてこなかった顔をして、鼻で笑った。
ペガサス LP:600
「私のターン、“ダークアイズ・イリュージョニスト”を攻撃表示!」
“ダークアイズ・イリュージョニスト”(攻/0 守/0)
「コイツは……」
「闇のゲームでは科学の粋を集めた海馬コーポレーション製デュエルリングも、何の役にもたたない……プレイヤー自身の精神力がモンスターを実体化させるのデ〜ス。すなわち精神力が尽きたとき、プレイヤーの命の保証はありまセ〜ン。」
闇のゲーム自体、闇の人格である遊戯自身もよくわかっていた。だからこそもう1人の自分───表の人格の遊戯をむやみに矢面に立たせるわけにはいかない。一刻も早くペガサスを倒すことに集中し、遊戯はフィールドに出されたモンスターへ目を向けた。
「(ダークアイズ・イリュージョニスト…攻撃力、守備力がゼロの幻想モンスター。ここは迂闊には攻撃できない…。なにか特別な能力を持っているに違いないぜ!)」
遊戯は手札を見渡してから、カードを引く。
「オレは“カース・オブ・ドラゴン”を場に出し、ターン終了だ!」
“カース・オブ・ドラゴン”(攻/2000 守/1500)