王国編 /1
名前変換
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「おい!!!名前大丈夫か?!名前!」
本田はモクバを背負ったまま名前に駆け寄った。冷たい金属音とともに千年秤も落とされ、名前は荒い息をしながら膝をついて壁に体をドッと凭れさせた。
「チッ、…フン。まぁ丁度いい。オメーと闘う手間も省けたってもんだぜ。」
冷たく笑って名前に歩み寄ろうとするバクラに、本田は名前を匿うように立ちふさがる。
「思い出したぜ…獏良。あれは夢なんかじゃなかった!おまえは獏良じゃない!獏良の心に取り付いた、もう1人の獏良だ!」
「チッ、そんなことは思い出さなきゃ良かったのに。さぁその女の千年秤を渡せ!」
「せ、千年…秤…?」
本田が名前をちらりと見る。その膝元の千年秤の、黄金のウジャド眼がちらりと光った。だがその上に、ポタポタと名前の血が滴る。一瞬悩んだ本田に事情を話す余裕もない名前は、力を振り絞って千年秤を拾い立ち上がると、壁で体を支えながら隠していた銃を抜いてバクラに向けた。
「…ッ名前!」
「千年秤は、渡さない…ッ 絶対にッ…」
「ハッ、利き手じゃねえ方でそんなモン向けたって、なんの脅しにもならねぇぜ」
荒げた息に合わせて、左手で握る拳銃が震える。
「ふっ…ふふ、甘くみないほうがいいわッ…利き手じゃないってことは、急所を…わざと外して、あげられないって…ことよ…」
傷口が灼けるように熱い。掠ったと言っても肉を抉っている、つまり…穴が空いたか、引き裂かれているかの違いでしかない。名前は冷静に銃創部を指で探る。場所的に大きな血管も無いし、腹膜より表層部の肉と皮膚だけ持っていかれていると判断し、自分自身に「大丈夫」と言い聞かせた。それでも心臓の鼓動に合わせて血が溢れる。落ち着けと言い聞かせるほど、鼓動は高鳴り焦りが増す。服は裾にかけて冷たくなり、脂汗が足を伝っている感覚を覚えても、実際に流れているものは全て真紅の色をしていた。
「そんなモンに頼るっつー事はよぉ、オメエ…やっぱり闇の力を制御できてねぇな?」
バクラがニヤリと笑う。ただでさえバクバクと煩い心臓が、さらに一度大きく胸を叩いた。
「ヒャハハ、やっぱりそうだ…見ていて大体予想は付いてたぜ? お前の力は、その千年秤とは別のものだってな…さぁ大人しく千年秤を渡せ!」
「お前なんかに渡せるか!」
本田がバクラの前に立ち塞がり名前を背中に隠すと、バクラは小さく舌打ちをした。
「フン…まぁいいぜ?オマエも闇の力の犠牲になりたいらしいな。」
「闇の力…?」
本田には予想もつかないハイパワーの存在が、その場を支配しようとしている。階段の下では、実際その闇の力の犠牲となった黒服の割れたサングラスがひとつ、転がっていた。
名前の震える荒い息を包むように、バクラの悪意に満ちた笑い声が、その石の壁を響き渡っていく。
***
「ワ──ンダホ───ゥ…」
長く吐息交じりの感嘆の声は、深く闇の色を含んでデュエルリングの底面を撫で上げる。
「さすが、千年アイテムの所有者だけのことはありマ〜ス…私もおアソビが過ぎたようです。…最大限の敬意と戦術をもって、このデュエルに挑む必要があるようデ〜ス。」
そのウジャド眼それぞれの奥に潜ませていた闇の力を、この時…この城に集まった4つの千年アイテムから湧き出でようとしている。
まずペガサスのミレニアム・アイ、銀色の髪のベールに隠された真実の目…既に闇の力が漏れ出ていた。その闇は、遊戯の足元から迫り来る。
「遊戯ボーイ…ここからは我々千年アイテムに選ばれた者同士の闘い。闇のゲームで決着をつけまショウ!!!」
「(闇のゲーム!!!)」
表の人格の遊戯と、その陰に立つ闇の人格の遊戯。ここより先が本当の勝負なのだと2人は察知している。
フィールドを挟んで立ち向かうペガサスの背後から、その空間の一切を包むように立ち上る闇の色。そして強大なる力…人のまばたきも知らないミレニアム・アイが、ジッと2人の遊戯を見つめていた。
本田はモクバを背負ったまま名前に駆け寄った。冷たい金属音とともに千年秤も落とされ、名前は荒い息をしながら膝をついて壁に体をドッと凭れさせた。
「チッ、…フン。まぁ丁度いい。オメーと闘う手間も省けたってもんだぜ。」
冷たく笑って名前に歩み寄ろうとするバクラに、本田は名前を匿うように立ちふさがる。
「思い出したぜ…獏良。あれは夢なんかじゃなかった!おまえは獏良じゃない!獏良の心に取り付いた、もう1人の獏良だ!」
「チッ、そんなことは思い出さなきゃ良かったのに。さぁその女の千年秤を渡せ!」
「せ、千年…秤…?」
本田が名前をちらりと見る。その膝元の千年秤の、黄金のウジャド眼がちらりと光った。だがその上に、ポタポタと名前の血が滴る。一瞬悩んだ本田に事情を話す余裕もない名前は、力を振り絞って千年秤を拾い立ち上がると、壁で体を支えながら隠していた銃を抜いてバクラに向けた。
「…ッ名前!」
「千年秤は、渡さない…ッ 絶対にッ…」
「ハッ、利き手じゃねえ方でそんなモン向けたって、なんの脅しにもならねぇぜ」
荒げた息に合わせて、左手で握る拳銃が震える。
「ふっ…ふふ、甘くみないほうがいいわッ…利き手じゃないってことは、急所を…わざと外して、あげられないって…ことよ…」
傷口が灼けるように熱い。掠ったと言っても肉を抉っている、つまり…穴が空いたか、引き裂かれているかの違いでしかない。名前は冷静に銃創部を指で探る。場所的に大きな血管も無いし、腹膜より表層部の肉と皮膚だけ持っていかれていると判断し、自分自身に「大丈夫」と言い聞かせた。それでも心臓の鼓動に合わせて血が溢れる。落ち着けと言い聞かせるほど、鼓動は高鳴り焦りが増す。服は裾にかけて冷たくなり、脂汗が足を伝っている感覚を覚えても、実際に流れているものは全て真紅の色をしていた。
「そんなモンに頼るっつー事はよぉ、オメエ…やっぱり闇の力を制御できてねぇな?」
バクラがニヤリと笑う。ただでさえバクバクと煩い心臓が、さらに一度大きく胸を叩いた。
「ヒャハハ、やっぱりそうだ…見ていて大体予想は付いてたぜ? お前の力は、その千年秤とは別のものだってな…さぁ大人しく千年秤を渡せ!」
「お前なんかに渡せるか!」
本田がバクラの前に立ち塞がり名前を背中に隠すと、バクラは小さく舌打ちをした。
「フン…まぁいいぜ?オマエも闇の力の犠牲になりたいらしいな。」
「闇の力…?」
本田には予想もつかないハイパワーの存在が、その場を支配しようとしている。階段の下では、実際その闇の力の犠牲となった黒服の割れたサングラスがひとつ、転がっていた。
名前の震える荒い息を包むように、バクラの悪意に満ちた笑い声が、その石の壁を響き渡っていく。
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「ワ──ンダホ───ゥ…」
長く吐息交じりの感嘆の声は、深く闇の色を含んでデュエルリングの底面を撫で上げる。
「さすが、千年アイテムの所有者だけのことはありマ〜ス…私もおアソビが過ぎたようです。…最大限の敬意と戦術をもって、このデュエルに挑む必要があるようデ〜ス。」
そのウジャド眼それぞれの奥に潜ませていた闇の力を、この時…この城に集まった4つの千年アイテムから湧き出でようとしている。
まずペガサスのミレニアム・アイ、銀色の髪のベールに隠された真実の目…既に闇の力が漏れ出ていた。その闇は、遊戯の足元から迫り来る。
「遊戯ボーイ…ここからは我々千年アイテムに選ばれた者同士の闘い。闇のゲームで決着をつけまショウ!!!」
「(闇のゲーム!!!)」
表の人格の遊戯と、その陰に立つ闇の人格の遊戯。ここより先が本当の勝負なのだと2人は察知している。
フィールドを挟んで立ち向かうペガサスの背後から、その空間の一切を包むように立ち上る闇の色。そして強大なる力…人のまばたきも知らないミレニアム・アイが、ジッと2人の遊戯を見つめていた。