王国編 /1
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海馬のプライベートコンピュータールームのメインモニターが、デュエリスト・キングダムの開催地である ペガサスのプライベートアイランドを映し出していた。
『解析完了。デュエリスト・キングダム 開催地を特定しました。』
「現在稼働中のデュエルリングは?」
海馬はコンピュータのコミュニケーションプログラムと会話しながら必要な情報を聞きながら、手元のキーボードを打つ手が止まる事はなかった。
…殆ど解析されたデータの中から、1つだけパスワードが掛けられたデータに行き着き、苦闘していたのだ。
『数は12。島の全域に点在。』
海馬は一度手を止めてモニターを見上げた。
「よし、この中から武藤遊戯がデュエルしているフィールドを特定しろ。」
『特定にはインダストリアル・イリュージョン社が振り分けた各デュエリストのランダムシリアルコードが必要です。このメモリーカードから現在解析された中に、そのデータはありません。』
「クソ!」
海馬はデスクを叩く。
「(ここまでか…?! …いや、このパスワードが掛けられたデータ…。もしかしたらこの中に。)」
「ランダムシリアルでは、例えインダストリアル・イリュージョン社のメインコンピュータをハッキングしてもリストは出て来ないだろう…。このパスワード付きのデータを解析する! 暗号解読ソフトをスタンバイ!」
画面にブラックマジシャンが守る扉が映し出される。
「セキュリティコードをバーチャルパージしろ!コード解析開始!」
***
名前と海馬の亡霊のフィールドには、緊迫した雰囲気が張り詰めていた。
「このターンは攻撃しない。その前にお前のモンスターの逃げ場をなくす準備をしておく。」
海馬の亡霊はカードを一枚伏せると、ターンを終了した。
「(魔法か、トラップか…。)」
名前はカードをドローする。
「ジュノンを守備表示にする。…そして.王立魔法図書館を守備表示で召喚。」
王立魔法図書館
攻撃力 0/守備力 2000
「そう来ると思った…。」
海馬の亡霊は薄く笑うと、伏せカードを返した。
「俺の無念を思い知れ。
トラップカード、守備封印!」
「な!!!」
「マズイ、王立魔法図書館は守備特化型モンスター!攻撃力は0だ!」
「名前…!」
遊戯とモクバが攻撃表示となった王立図書館に視線を注ぐ。
名前は手札に手を掛けた。
「…カードを一枚伏せるわ。ターンエンド…。」
「フフフ、クイーンが何の手も打てないとは。」
「…!」
ギッと睨むが、海馬の亡霊はもう勝利を意識し笑うだけである。
「俺のターン!行け!青眼の白龍!
滅びのバースト・ストリーーーム!!!」
「名前!!!」
遊戯が声を上げた瞬間、名前は伏せカードを返した。
「速攻魔法!トーラの魔導書!!!
このターン、選択したモンスターはトラップの効果を受けない!」
「だが雑魚は片付けられる!」
王立図書館が守備表示となるが破壊され、その威力で名前の髪が後ろに翻(ひるがえ)る。
そして名前のライフカウンターも1000に下がり、海馬の亡霊が笑っていた。
「王立図書館を粉砕。」
「くっ」
***
『パスコードの先頭の2文字がB、Lであると判明。それ以上のパスコードもです。』
「フゥン。それだけ判れば充分だ。ブラック・マジシャンが守る扉に、パスコードの頭文字がB…。名前もめでたい奴だ。こんな分かりやすいコードなら、解析など不要だったか。」
海馬がキーボードで“BlackMagician”と入力するが、弾かれてしまった。
「!…なんだと!」
『エラー、エラー。フリーズしました。リブートします。』
同じ画面に戻ると、海馬は頭を抱えた。
「…頭文字がBで始まる…。クソ。名前…。そこまで重要なデータか…?」
海馬は名前の事を、まだよく知らない。パスコードは統計的に言うと最もプライベートな単語が多い。
『解析が完了しました。』
「!」
モニターにパスコードが自動入力され、文字列を目にする。
「!!!」
“BlueEyesWhiteDragon”
「な!!!」
バーチャルセキュリティの扉が開かれると、モニターがデュエリスト達全員のシリアルコードと 稼働中のデュエルリングのデータが自動更新された。
「…クソ、名前は俺にこのメモリーカードを渡す事を見越していたのか…?…まあいい。これで遊戯のデュエルを探すことができる。」
海馬は動揺したが、すぐに作業へ戻った。
名前がパスコードを、最愛であるブラックマジシャンから、海馬のブルーアイズへと変更していたのは何故なのか、それは彼女にしかわからない。…いや、彼女自身、無意識の内に変えていたのかもしれないが、その心の傾きは まだ2人を繋げる決定打ではなかった。
『武藤遊戯のシリアルコードは、現在デュエルをしていません。』
「そうか…。…遅かったのか?だが脱落はしていないようだ。このコードにロックして常時監視しろ。」
『了解』
***
名前のフィールドからはモンスターが一体破壊され、もう一体のジュノンも攻撃表示から動かす事ができない。
「(このままでは勝ち目が無い…) くっ…」
名前の詰みが見えてきているフィールドを前に、猿渡が笑みを隠せない。
「ハハハハハ! 苗字 名前、クイーンの座もこれまでだ! 貴様の敗北を海馬もあの世で喜んでいるぞ!」
「兄さまは死んでなんかいない!死んでなんかねぇよ!! 遊戯!お前は言ってくれたじゃねえか!兄さまは戻ってよぉ…! 名前も、兄さまを信じてるって言ってくれたじゃねえかよ! 俺は、俺はそれを信じて、ずっと兄さまを待ってるんだぞ!」
「モクバ…」
「モクバ君…。うん。私もまだ信じている。海馬はまだ生きている!」
名前はモクバから敵の海馬の亡霊に向き直ると、カードをドローした。
「!、マジックカード、終焉の焔を発動!さらに、増殖を発動。黒焔トークン2体を、増殖の効果で3体、特殊召喚する!」
黒焔トークン×3
攻撃0 / 守備0
「ハ!おかしくなったのか?守備封印がある限りそれはただの良いマトだ」
「何やってんだよ名前!」
城之内や本田でも分かるプレイングミスに、2人は顔を覆う。
「さらに魔導法士ジュノンの特殊効果発動!墓地に置かれた魔導書の魔法カードをゲームから除外する事で、フィールド上のカードを一枚破壊する!」
「!!、な、なに?!」
「私は前のターンで使った、トーラの魔導書を墓地から除外する。そして、その 守備封印を破壊!」
「クソ!」
海馬の亡霊の顔が明らかに歪み、猿渡も舌打ちをする。
「このターン、特殊効果を使ったジュノンは守備表示へ変更することはできない。でも、ジュノンを攻撃するには、この3体の守備黒焔トークン3体を破壊しないと届かないわ!」
「なるほど。城之内くんの、スケープゴードと同じ役割か!」
遊戯の言葉で城之内と本田もやっと理解したのか、安堵のため息をついた。
「フン、馬鹿な真似を。ただの時間稼ぎじゃないか。」
しかし海馬は鼻で一笑すると、また余裕のある顔を名前に向ける。
「フン、ならば望みどおり 一体ずつ吹き飛ばしてやる。 バースト・ストリーム!!」
黒焔トークンが一体破壊されるが、ライフもジュノンも無傷である。
「…」
「よし!凌いだぜ!」
城之内が嬉しそうにはしゃぐが、名前は内心穏やかではなかった。
「(カードを2枚使い、手札のアドバンテージが少ない…。それに、守備封印の破壊のためとはいえ、トーラの魔導書の除外は痛手…。この状況を打破するカードを、あと残り3ターンで引かなければ…!)」
「私のターン、ドロー。…!…ガードを一枚伏せてターンエンドよ。」
「(なにか良いカードを引いたのか?)」
「フン、防戦一方では勝てんぞ。俺のターン、その邪魔な壁をまた1つ粉砕してくれる!バーストストリーム!」
「トラップカードオープン!」
「な!!!」
六芒星の呪縛が現れ、青眼を縛るとその攻撃力を下げた。
「ブルーアイズは確かに無敵。でも、攻撃力を下げる事はできるのよ! 」
青眼の白龍
攻撃力 2300 / 守備力 2500
「なんだと…!」
「ジュノンの攻撃!」
青眼の白龍をジュノンが撃破し、状況が一変する。
「ブルーアイズ、撃破!」
海馬瀬人
LP 500
「やったぜ名前!」
しかし鋭い光線が一撃、黒焔トークンを貫いた。
「!!!」
海馬の亡霊のフィールドには、もう一体のブルーアイズが立ちはだかったのだ。
「俺のデッキには青眼の白龍が3枚入っている!まさか忘れたわけじゃないだろうな?」
「(まさか本当に海馬のデッキ…!どうやって手に入れたと言うの…?まさか海馬は本当に…)」
海馬の顔は険しく歪む一方であった。
名前は威圧に負けて、踵を少し後ろに擦り下げる。
「お前は俺を恐れている。亡霊になって蘇った この俺をな!」
だが名前は、また一歩海馬に進み 毅然と向き直った。
「…恐れてなんかないわ。海馬。もしあなたが本物の海馬なら、…今のターン、私に安々とブルーアイズを破壊させなかった!」
「!!! なんだと!」
***
『瀬人様、苗字名前のデュエル信号をキャッチしました。』
「! なんだと…相手は?」
海馬は手を止めてモニターを注視する。
『セト カイバの名前でエントリーされています。正体は不明。』
海馬はデータでブルーアイズが一体はフィールドに、もう一体は墓地に居ることを見る。
「俺のデッキを使ったばかりか、俺の名前を騙ったニセモノに、よりにもよって名前とデュエルさせていると言うのか!…ペガサスめ!!!」
海馬はフィールド履歴を遡って、デュエルの進行状況を確認した。
「(攻撃力2500が限界の魔法使い族のデッキで、ブルーアイズを一体既に倒したと言うのか。…流石だと言いたいが、もう後が無いようだな。)」
「これからインダストリアル・イリュージョン社のメインコンピュータを経由して、この2体目のブルーアイズにウイルスを注入し攻撃力を下げる!」
海馬はデータの入力を開始し、コンピュータプログラムを作動させた。
『了解。ウイルスのレベル設定を入力して下さい。』
海馬の手がボード操作で忙しなく動く。
「マキシマム!攻撃開始だ!」
***
「フフフ、そろそろ観念するんだな。トークンは残り1体。…たった1ターンでどう巻き返すつもりだ?」
「…まだ諦めないわ。」
名前の腰の千年秤がさらに傾いた。
それに応じて フと後ろを振り返る。
「(…海馬……?)」
「?名前…?」
遊戯やモクバが名前を見る。
「今、確かに海馬の気配が…。」
「おいおいどうした?もう俺のターンでいいんだな?! いくぞ!青眼の白龍の攻撃!」
海馬の亡霊が手を広げて名前に向かう。
すると青眼の白龍は、身体の至る所から光が溢れて動きを止める。
「なんだと?! どうしたブルーアイズ!!」
急な出来事に海馬の亡霊も、そして猿渡も困惑を隠せない。
***
「これは一体…」
それをモニタリングしていたクロケッツも、驚きを隠せないでいた。しかしペガサスは冷静で、少し笑うとクロケッツにため息まじりに指示を出す。
「本社の中枢制御室に連絡を。…海馬瀬人は 生きていマ~ス。」
***
『ウイルス注入100%到達。現在攻撃力2300。さらに低下していきます。』
海馬は安堵の息を吐きつつ次の指示のため、またボードへ向かった。
「よし、3体目に対する攻撃体制に入れ。」
ーーー
しかし、画面がフリーズを起こし、その指示に対して別の声が応えた。
『ハロー、カイバくん』…
『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』
「…!!! ペガサス!!!」
『解析完了。デュエリスト・キングダム 開催地を特定しました。』
「現在稼働中のデュエルリングは?」
海馬はコンピュータのコミュニケーションプログラムと会話しながら必要な情報を聞きながら、手元のキーボードを打つ手が止まる事はなかった。
…殆ど解析されたデータの中から、1つだけパスワードが掛けられたデータに行き着き、苦闘していたのだ。
『数は12。島の全域に点在。』
海馬は一度手を止めてモニターを見上げた。
「よし、この中から武藤遊戯がデュエルしているフィールドを特定しろ。」
『特定にはインダストリアル・イリュージョン社が振り分けた各デュエリストのランダムシリアルコードが必要です。このメモリーカードから現在解析された中に、そのデータはありません。』
「クソ!」
海馬はデスクを叩く。
「(ここまでか…?! …いや、このパスワードが掛けられたデータ…。もしかしたらこの中に。)」
「ランダムシリアルでは、例えインダストリアル・イリュージョン社のメインコンピュータをハッキングしてもリストは出て来ないだろう…。このパスワード付きのデータを解析する! 暗号解読ソフトをスタンバイ!」
画面にブラックマジシャンが守る扉が映し出される。
「セキュリティコードをバーチャルパージしろ!コード解析開始!」
***
名前と海馬の亡霊のフィールドには、緊迫した雰囲気が張り詰めていた。
「このターンは攻撃しない。その前にお前のモンスターの逃げ場をなくす準備をしておく。」
海馬の亡霊はカードを一枚伏せると、ターンを終了した。
「(魔法か、トラップか…。)」
名前はカードをドローする。
「ジュノンを守備表示にする。…そして.王立魔法図書館を守備表示で召喚。」
王立魔法図書館
攻撃力 0/守備力 2000
「そう来ると思った…。」
海馬の亡霊は薄く笑うと、伏せカードを返した。
「俺の無念を思い知れ。
トラップカード、守備封印!」
「な!!!」
「マズイ、王立魔法図書館は守備特化型モンスター!攻撃力は0だ!」
「名前…!」
遊戯とモクバが攻撃表示となった王立図書館に視線を注ぐ。
名前は手札に手を掛けた。
「…カードを一枚伏せるわ。ターンエンド…。」
「フフフ、クイーンが何の手も打てないとは。」
「…!」
ギッと睨むが、海馬の亡霊はもう勝利を意識し笑うだけである。
「俺のターン!行け!青眼の白龍!
滅びのバースト・ストリーーーム!!!」
「名前!!!」
遊戯が声を上げた瞬間、名前は伏せカードを返した。
「速攻魔法!トーラの魔導書!!!
このターン、選択したモンスターはトラップの効果を受けない!」
「だが雑魚は片付けられる!」
王立図書館が守備表示となるが破壊され、その威力で名前の髪が後ろに翻(ひるがえ)る。
そして名前のライフカウンターも1000に下がり、海馬の亡霊が笑っていた。
「王立図書館を粉砕。」
「くっ」
***
『パスコードの先頭の2文字がB、Lであると判明。それ以上のパスコードもです。』
「フゥン。それだけ判れば充分だ。ブラック・マジシャンが守る扉に、パスコードの頭文字がB…。名前もめでたい奴だ。こんな分かりやすいコードなら、解析など不要だったか。」
海馬がキーボードで“BlackMagician”と入力するが、弾かれてしまった。
「!…なんだと!」
『エラー、エラー。フリーズしました。リブートします。』
同じ画面に戻ると、海馬は頭を抱えた。
「…頭文字がBで始まる…。クソ。名前…。そこまで重要なデータか…?」
海馬は名前の事を、まだよく知らない。パスコードは統計的に言うと最もプライベートな単語が多い。
『解析が完了しました。』
「!」
モニターにパスコードが自動入力され、文字列を目にする。
「!!!」
“BlueEyesWhiteDragon”
「な!!!」
バーチャルセキュリティの扉が開かれると、モニターがデュエリスト達全員のシリアルコードと 稼働中のデュエルリングのデータが自動更新された。
「…クソ、名前は俺にこのメモリーカードを渡す事を見越していたのか…?…まあいい。これで遊戯のデュエルを探すことができる。」
海馬は動揺したが、すぐに作業へ戻った。
名前がパスコードを、最愛であるブラックマジシャンから、海馬のブルーアイズへと変更していたのは何故なのか、それは彼女にしかわからない。…いや、彼女自身、無意識の内に変えていたのかもしれないが、その心の傾きは まだ2人を繋げる決定打ではなかった。
『武藤遊戯のシリアルコードは、現在デュエルをしていません。』
「そうか…。…遅かったのか?だが脱落はしていないようだ。このコードにロックして常時監視しろ。」
『了解』
***
名前のフィールドからはモンスターが一体破壊され、もう一体のジュノンも攻撃表示から動かす事ができない。
「(このままでは勝ち目が無い…) くっ…」
名前の詰みが見えてきているフィールドを前に、猿渡が笑みを隠せない。
「ハハハハハ! 苗字 名前、クイーンの座もこれまでだ! 貴様の敗北を海馬もあの世で喜んでいるぞ!」
「兄さまは死んでなんかいない!死んでなんかねぇよ!! 遊戯!お前は言ってくれたじゃねえか!兄さまは戻ってよぉ…! 名前も、兄さまを信じてるって言ってくれたじゃねえかよ! 俺は、俺はそれを信じて、ずっと兄さまを待ってるんだぞ!」
「モクバ…」
「モクバ君…。うん。私もまだ信じている。海馬はまだ生きている!」
名前はモクバから敵の海馬の亡霊に向き直ると、カードをドローした。
「!、マジックカード、終焉の焔を発動!さらに、増殖を発動。黒焔トークン2体を、増殖の効果で3体、特殊召喚する!」
黒焔トークン×3
攻撃0 / 守備0
「ハ!おかしくなったのか?守備封印がある限りそれはただの良いマトだ」
「何やってんだよ名前!」
城之内や本田でも分かるプレイングミスに、2人は顔を覆う。
「さらに魔導法士ジュノンの特殊効果発動!墓地に置かれた魔導書の魔法カードをゲームから除外する事で、フィールド上のカードを一枚破壊する!」
「!!、な、なに?!」
「私は前のターンで使った、トーラの魔導書を墓地から除外する。そして、その 守備封印を破壊!」
「クソ!」
海馬の亡霊の顔が明らかに歪み、猿渡も舌打ちをする。
「このターン、特殊効果を使ったジュノンは守備表示へ変更することはできない。でも、ジュノンを攻撃するには、この3体の守備黒焔トークン3体を破壊しないと届かないわ!」
「なるほど。城之内くんの、スケープゴードと同じ役割か!」
遊戯の言葉で城之内と本田もやっと理解したのか、安堵のため息をついた。
「フン、馬鹿な真似を。ただの時間稼ぎじゃないか。」
しかし海馬は鼻で一笑すると、また余裕のある顔を名前に向ける。
「フン、ならば望みどおり 一体ずつ吹き飛ばしてやる。 バースト・ストリーム!!」
黒焔トークンが一体破壊されるが、ライフもジュノンも無傷である。
「…」
「よし!凌いだぜ!」
城之内が嬉しそうにはしゃぐが、名前は内心穏やかではなかった。
「(カードを2枚使い、手札のアドバンテージが少ない…。それに、守備封印の破壊のためとはいえ、トーラの魔導書の除外は痛手…。この状況を打破するカードを、あと残り3ターンで引かなければ…!)」
「私のターン、ドロー。…!…ガードを一枚伏せてターンエンドよ。」
「(なにか良いカードを引いたのか?)」
「フン、防戦一方では勝てんぞ。俺のターン、その邪魔な壁をまた1つ粉砕してくれる!バーストストリーム!」
「トラップカードオープン!」
「な!!!」
六芒星の呪縛が現れ、青眼を縛るとその攻撃力を下げた。
「ブルーアイズは確かに無敵。でも、攻撃力を下げる事はできるのよ! 」
青眼の白龍
攻撃力 2300 / 守備力 2500
「なんだと…!」
「ジュノンの攻撃!」
青眼の白龍をジュノンが撃破し、状況が一変する。
「ブルーアイズ、撃破!」
海馬瀬人
LP 500
「やったぜ名前!」
しかし鋭い光線が一撃、黒焔トークンを貫いた。
「!!!」
海馬の亡霊のフィールドには、もう一体のブルーアイズが立ちはだかったのだ。
「俺のデッキには青眼の白龍が3枚入っている!まさか忘れたわけじゃないだろうな?」
「(まさか本当に海馬のデッキ…!どうやって手に入れたと言うの…?まさか海馬は本当に…)」
海馬の顔は険しく歪む一方であった。
名前は威圧に負けて、踵を少し後ろに擦り下げる。
「お前は俺を恐れている。亡霊になって蘇った この俺をな!」
だが名前は、また一歩海馬に進み 毅然と向き直った。
「…恐れてなんかないわ。海馬。もしあなたが本物の海馬なら、…今のターン、私に安々とブルーアイズを破壊させなかった!」
「!!! なんだと!」
***
『瀬人様、苗字名前のデュエル信号をキャッチしました。』
「! なんだと…相手は?」
海馬は手を止めてモニターを注視する。
『セト カイバの名前でエントリーされています。正体は不明。』
海馬はデータでブルーアイズが一体はフィールドに、もう一体は墓地に居ることを見る。
「俺のデッキを使ったばかりか、俺の名前を騙ったニセモノに、よりにもよって名前とデュエルさせていると言うのか!…ペガサスめ!!!」
海馬はフィールド履歴を遡って、デュエルの進行状況を確認した。
「(攻撃力2500が限界の魔法使い族のデッキで、ブルーアイズを一体既に倒したと言うのか。…流石だと言いたいが、もう後が無いようだな。)」
「これからインダストリアル・イリュージョン社のメインコンピュータを経由して、この2体目のブルーアイズにウイルスを注入し攻撃力を下げる!」
海馬はデータの入力を開始し、コンピュータプログラムを作動させた。
『了解。ウイルスのレベル設定を入力して下さい。』
海馬の手がボード操作で忙しなく動く。
「マキシマム!攻撃開始だ!」
***
「フフフ、そろそろ観念するんだな。トークンは残り1体。…たった1ターンでどう巻き返すつもりだ?」
「…まだ諦めないわ。」
名前の腰の千年秤がさらに傾いた。
それに応じて フと後ろを振り返る。
「(…海馬……?)」
「?名前…?」
遊戯やモクバが名前を見る。
「今、確かに海馬の気配が…。」
「おいおいどうした?もう俺のターンでいいんだな?! いくぞ!青眼の白龍の攻撃!」
海馬の亡霊が手を広げて名前に向かう。
すると青眼の白龍は、身体の至る所から光が溢れて動きを止める。
「なんだと?! どうしたブルーアイズ!!」
急な出来事に海馬の亡霊も、そして猿渡も困惑を隠せない。
***
「これは一体…」
それをモニタリングしていたクロケッツも、驚きを隠せないでいた。しかしペガサスは冷静で、少し笑うとクロケッツにため息まじりに指示を出す。
「本社の中枢制御室に連絡を。…海馬瀬人は 生きていマ~ス。」
***
『ウイルス注入100%到達。現在攻撃力2300。さらに低下していきます。』
海馬は安堵の息を吐きつつ次の指示のため、またボードへ向かった。
「よし、3体目に対する攻撃体制に入れ。」
ーーー
しかし、画面がフリーズを起こし、その指示に対して別の声が応えた。
『ハロー、カイバくん』…
『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』『ハロー、カイバくん』
「…!!! ペガサス!!!」