王国編 /1
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「獏良にはああ言って見栄はったものの、あてもなく探すにはこの城は広すぎるぜ…」
本田は地下の廊下を歩いていた。その足はただ廊下の続く限り進めてはいるが、明らかに迷っている。
「あ!」
その先に見えるT字路に人影が迫った。
黒服の男はツカツカと進んでいく。男が横切った装飾に置かれた鉄鎧の中で、本田は冷や汗とため息を洩らした。
「交代の時間だ。小僧の様子はどうだ?」
その声に本田は目を向けた。曲がり角の向こうで男達の声は続く。
「相変わらずだ。逃げる心配はないが…気を抜くな。あの女、まだ城を出ていないらしい。」
「もちろんだ。大事な鍵のありかを知っているのは小僧だけだからな。」
「モクバ…名前…」
鎧の仮面の中で本田の目が光る。交代で去って行った男が見えなくなると、本田は鎧のまま動いて声のしていた曲がり角へ向かう。
「あ…?あれ?行き止まりじゃねぇか、おかしいな…」
ドラゴンの像だけが置かれたその空間を進むと、重い鎧に足がもつれ転びそうになった本田が、咄嗟にその像の首に手をつく。
すると重々しい音とともに、横の石壁が動いて地下への階段が現れた。
「これは…!」
***
「いくぜ!オレのターン!」
遊戯はカードを一枚伏せてモンスターを裏守備表示に出す。ペガサスのミレニアム・アイをチラリと見て、遊戯は警戒を崩さない。
「(伏せるカードも見通してると言うのか?)」
「フフ…私のターンデ〜ス。」
思わせぶりな態度のペガサスに、遊戯は「くっ!」と息を吐く。
ペガサスはドローしたカードを見たあと、カードを一枚伏せて“弓を引くマーメイド”を守備表示で召喚した。
“弓を引くマーメイド”(攻/1400 守/1500)
「ターン終了デ〜ス。」
「(弓を引くマーメイド…水属性の通常モンスター。表で出して攻撃を誘っているのか?)」
「(フフフ…遊戯ボーイ、私にはわかってマ〜ス。)」
遊戯は、ペガサスが伏せたカードとモンスターを読んでいる上で、わざと水属性モンスターを出しただろうと分かっていた。しかしあえて誘いに乗り、ペガサスの手を一つでも明かす方を選んだ。
「(誘いに乗ってやる…!)伏せていた“ルイーズ”を攻撃表示!さらに伏せカード、“一角獣のホーン”のコンボで、攻撃力700アップ!マーメイドに攻撃!」
「ユーはミスを犯しました。罠カード発動デ〜ス。」
「やはり来たか!」
遊戯の顔が険しくなる。
「“人魚の涙”!相手の伏せカードが表になった瞬間発動する罠カード。いかなる敵の攻撃も封じ込めマ〜ス。ルイーズは自らの電撃を全身に受け、攻撃力が元の数値までダウンしマ〜ス。」
「なに…!?」
「私のターン!マーメイドを攻撃表示にしマ〜ス!アロー・ショット!」
遊戯 LP:1800
「ルイーズ撃破!」
***
「今の…まるで遊戯が出すカードを事前に知ってたみたい…!」
「これがペガサスのマインド・スキャンかよ」
ペガサスの見せる能力の片鱗に杏子と城之内が慄く中、城之内が違和感を覚える。
「ん?…本田のやつ何やってんだ?まだ来ねえのかよ。」
「そういえば遅いわね。」
あんずもチラチラとあたりを見回すが、本田が上がってくる気配はない。
「そう言えば名前ちゃんは、もうこの城から出てっちゃったのかな?」
獏良がそう呟くと、杏子の表情が一瞬硬くなった。
「たしかに名前は遊戯に負けちまったが、海馬の野郎とモクバがまだペガサスに取られてんだ。アイツなら置いていくようなマネしねぇと思うんだがよ…」
城之内も考え込むように唸るが、遊戯のデュエルも気になるのか考えが散佚してすぐにその思考を止めてしまう。
「ったく〜…アイツらこんな時に何やってんだ???」
***
「(くっ…やはりペガサスのミレニアム・アイによってオレの手の内は読まれているのか…?)」
「(フフフ…その通りデ〜ス、遊戯ボーイ。)」
銀色のベールに包まれたミレニアム・アイがチラチラと光り、遊戯の余裕はどんどん削がれていく。
「(カードの創造主にして無敗の王者…ペガサス! ヤツのミレニアム・アイにどう立ち向かえば…!)」
遊戯の思考をことごとく見抜いているペガサスにとって、彼を掌の上で転がすことなど欠伸をしながらでもできるだろう。「フフ…」と喉の奥で笑いをこらえながら、ペガサスは遊戯へその能力の片鱗をさらに見せびらかしていく。
「ムダにターンを費やしてしまいましたね、遊戯ボーイ!このゲームはターンごとの手札の選択、攻めのタイミング…それら一つひとつのミスの蓄積がプレイヤーを敗北へと導くのです。…あのクイーンのようにね。しかし、ひとつ言っておきます。私はミスを犯さない…。」
「(ペガサスから漲るゲームへの絶対的な自信…!この威圧感をぬぐい去らなければ、オレは勝てない!)」
遊戯の背中に冷や汗が流れる。武者震いかゾクリとしたものを必死に嚙み殺し、遊戯はペガサスに立ち向かう。
***
黒服の男がたったひとつのランプに照らされた椅子に腰掛け、拳銃を磨いている。
「クロケッツ様も気を回しすぎだぜ…見張りなんか居なくても、ガキは逃げたりしないぜ。」
「あら、誰かが逃すかもしれないわよ?」
「うわ!!!」
突然降ってかかった声に飛び上がる男に、名前は千年秤を突きつける。
甲冑を纏ったままの本田は、曲がり角の向こうで金色の光が放たれるのと同時に男の叫び声を聞いた。
「(な、なんだ?!)」
そして人が倒れるような鈍い音が響く前に本田は駆け出す。ガシャガシャと金属音を立ててその角を曲がると、男から奪った銃を名前に突きつけられる。
「!…本田?」
名前はハッとして銃を下ろすと、本田も流石に冷やっとしたのか両手を上げて降参のポーズをとったまま固まっていた。
「名前、おめぇなんでこんなところに…」
「本田…?よね?どうしたの、その格好…」
「あぁいや、ちょっとな…」と照れたように甲冑の目元の覆いを上げて名前と目を合わせると、その向こうに男が倒れているのが見えた。
「おい…アイツ、お前がやったのか?」
恐る恐る本田が聞くと、名前は千年秤と、ちゃっかり銃も腰のベルトに差して男の方を見る。その頬や額には汗が流れ、息も少し上がっているのを本田は見逃さなかった。
「安心して、気を失っているだけよ。」
名前はそれよりもツカツカとその奥へ進みながら銃を抜く。本田もそれに付いていくと、牢屋の中でうずくまる木馬の姿があった。
「モクバ!」
「下がって。」
安全装置を外すと、名前は躊躇いもなくオートロックキーを撃ち抜いた。
「ん?」
モニター室の黒服が、モクバの牢屋に異常が発生した事を画面で確認した。
***
凄まじい銃声と硝煙の舞う中、名前はパチパチと火花が散る施錠システム付きの出入り口を蹴り開けた。本田が驚愕を隠せない中、名前はモクバの肩を揺さぶって呼びかける。
「やっぱりダメか…」
「お、おい、お前なんで銃なんか扱えんだよ」
戦々恐々とする本田を見ると、名前は奪った銃をそのまま腰のベルトに差す。
「そんなことより、はやくその変な鎧を脱いで。逃げるわよ。」
***
「私だ」
『こちら中央制御室です。B-1エリアの地下牢施錠システムが何者かに破壊されました。おそらくロックも解除されているものと思われます。侵入者の処理についてペガサス様のご指示を。』
クロケッツは内線携帯を耳に当て、デュエルリングをから少し顔をそらしていた。
「ペガサス様はデュエル中だ。…わかった。私が許可する。お前たちで対処しろ。」
それを千年リング越しに、獏良は盗み聞き取っていた。
遊戯がモンスターを裏守備表示で出した頃、モクバを背負う本田とその後をついて走る名前に、警戒を知らせるブザーが鳴りわたった。
「マズイ…気付かれちまったか」
「急ぎましょう。」
「私のターンデ〜ス。」
その警報ブザーは遊戯に対しても鳴っているかのように、ペガサスのターン宣言をする低い声がリングに響いた。
本田は地下の廊下を歩いていた。その足はただ廊下の続く限り進めてはいるが、明らかに迷っている。
「あ!」
その先に見えるT字路に人影が迫った。
黒服の男はツカツカと進んでいく。男が横切った装飾に置かれた鉄鎧の中で、本田は冷や汗とため息を洩らした。
「交代の時間だ。小僧の様子はどうだ?」
その声に本田は目を向けた。曲がり角の向こうで男達の声は続く。
「相変わらずだ。逃げる心配はないが…気を抜くな。あの女、まだ城を出ていないらしい。」
「もちろんだ。大事な鍵のありかを知っているのは小僧だけだからな。」
「モクバ…名前…」
鎧の仮面の中で本田の目が光る。交代で去って行った男が見えなくなると、本田は鎧のまま動いて声のしていた曲がり角へ向かう。
「あ…?あれ?行き止まりじゃねぇか、おかしいな…」
ドラゴンの像だけが置かれたその空間を進むと、重い鎧に足がもつれ転びそうになった本田が、咄嗟にその像の首に手をつく。
すると重々しい音とともに、横の石壁が動いて地下への階段が現れた。
「これは…!」
***
「いくぜ!オレのターン!」
遊戯はカードを一枚伏せてモンスターを裏守備表示に出す。ペガサスのミレニアム・アイをチラリと見て、遊戯は警戒を崩さない。
「(伏せるカードも見通してると言うのか?)」
「フフ…私のターンデ〜ス。」
思わせぶりな態度のペガサスに、遊戯は「くっ!」と息を吐く。
ペガサスはドローしたカードを見たあと、カードを一枚伏せて“弓を引くマーメイド”を守備表示で召喚した。
“弓を引くマーメイド”(攻/1400 守/1500)
「ターン終了デ〜ス。」
「(弓を引くマーメイド…水属性の通常モンスター。表で出して攻撃を誘っているのか?)」
「(フフフ…遊戯ボーイ、私にはわかってマ〜ス。)」
遊戯は、ペガサスが伏せたカードとモンスターを読んでいる上で、わざと水属性モンスターを出しただろうと分かっていた。しかしあえて誘いに乗り、ペガサスの手を一つでも明かす方を選んだ。
「(誘いに乗ってやる…!)伏せていた“ルイーズ”を攻撃表示!さらに伏せカード、“一角獣のホーン”のコンボで、攻撃力700アップ!マーメイドに攻撃!」
「ユーはミスを犯しました。罠カード発動デ〜ス。」
「やはり来たか!」
遊戯の顔が険しくなる。
「“人魚の涙”!相手の伏せカードが表になった瞬間発動する罠カード。いかなる敵の攻撃も封じ込めマ〜ス。ルイーズは自らの電撃を全身に受け、攻撃力が元の数値までダウンしマ〜ス。」
「なに…!?」
「私のターン!マーメイドを攻撃表示にしマ〜ス!アロー・ショット!」
遊戯 LP:1800
「ルイーズ撃破!」
***
「今の…まるで遊戯が出すカードを事前に知ってたみたい…!」
「これがペガサスのマインド・スキャンかよ」
ペガサスの見せる能力の片鱗に杏子と城之内が慄く中、城之内が違和感を覚える。
「ん?…本田のやつ何やってんだ?まだ来ねえのかよ。」
「そういえば遅いわね。」
あんずもチラチラとあたりを見回すが、本田が上がってくる気配はない。
「そう言えば名前ちゃんは、もうこの城から出てっちゃったのかな?」
獏良がそう呟くと、杏子の表情が一瞬硬くなった。
「たしかに名前は遊戯に負けちまったが、海馬の野郎とモクバがまだペガサスに取られてんだ。アイツなら置いていくようなマネしねぇと思うんだがよ…」
城之内も考え込むように唸るが、遊戯のデュエルも気になるのか考えが散佚してすぐにその思考を止めてしまう。
「ったく〜…アイツらこんな時に何やってんだ???」
***
「(くっ…やはりペガサスのミレニアム・アイによってオレの手の内は読まれているのか…?)」
「(フフフ…その通りデ〜ス、遊戯ボーイ。)」
銀色のベールに包まれたミレニアム・アイがチラチラと光り、遊戯の余裕はどんどん削がれていく。
「(カードの創造主にして無敗の王者…ペガサス! ヤツのミレニアム・アイにどう立ち向かえば…!)」
遊戯の思考をことごとく見抜いているペガサスにとって、彼を掌の上で転がすことなど欠伸をしながらでもできるだろう。「フフ…」と喉の奥で笑いをこらえながら、ペガサスは遊戯へその能力の片鱗をさらに見せびらかしていく。
「ムダにターンを費やしてしまいましたね、遊戯ボーイ!このゲームはターンごとの手札の選択、攻めのタイミング…それら一つひとつのミスの蓄積がプレイヤーを敗北へと導くのです。…あのクイーンのようにね。しかし、ひとつ言っておきます。私はミスを犯さない…。」
「(ペガサスから漲るゲームへの絶対的な自信…!この威圧感をぬぐい去らなければ、オレは勝てない!)」
遊戯の背中に冷や汗が流れる。武者震いかゾクリとしたものを必死に嚙み殺し、遊戯はペガサスに立ち向かう。
***
黒服の男がたったひとつのランプに照らされた椅子に腰掛け、拳銃を磨いている。
「クロケッツ様も気を回しすぎだぜ…見張りなんか居なくても、ガキは逃げたりしないぜ。」
「あら、誰かが逃すかもしれないわよ?」
「うわ!!!」
突然降ってかかった声に飛び上がる男に、名前は千年秤を突きつける。
甲冑を纏ったままの本田は、曲がり角の向こうで金色の光が放たれるのと同時に男の叫び声を聞いた。
「(な、なんだ?!)」
そして人が倒れるような鈍い音が響く前に本田は駆け出す。ガシャガシャと金属音を立ててその角を曲がると、男から奪った銃を名前に突きつけられる。
「!…本田?」
名前はハッとして銃を下ろすと、本田も流石に冷やっとしたのか両手を上げて降参のポーズをとったまま固まっていた。
「名前、おめぇなんでこんなところに…」
「本田…?よね?どうしたの、その格好…」
「あぁいや、ちょっとな…」と照れたように甲冑の目元の覆いを上げて名前と目を合わせると、その向こうに男が倒れているのが見えた。
「おい…アイツ、お前がやったのか?」
恐る恐る本田が聞くと、名前は千年秤と、ちゃっかり銃も腰のベルトに差して男の方を見る。その頬や額には汗が流れ、息も少し上がっているのを本田は見逃さなかった。
「安心して、気を失っているだけよ。」
名前はそれよりもツカツカとその奥へ進みながら銃を抜く。本田もそれに付いていくと、牢屋の中でうずくまる木馬の姿があった。
「モクバ!」
「下がって。」
安全装置を外すと、名前は躊躇いもなくオートロックキーを撃ち抜いた。
「ん?」
モニター室の黒服が、モクバの牢屋に異常が発生した事を画面で確認した。
***
凄まじい銃声と硝煙の舞う中、名前はパチパチと火花が散る施錠システム付きの出入り口を蹴り開けた。本田が驚愕を隠せない中、名前はモクバの肩を揺さぶって呼びかける。
「やっぱりダメか…」
「お、おい、お前なんで銃なんか扱えんだよ」
戦々恐々とする本田を見ると、名前は奪った銃をそのまま腰のベルトに差す。
「そんなことより、はやくその変な鎧を脱いで。逃げるわよ。」
***
「私だ」
『こちら中央制御室です。B-1エリアの地下牢施錠システムが何者かに破壊されました。おそらくロックも解除されているものと思われます。侵入者の処理についてペガサス様のご指示を。』
クロケッツは内線携帯を耳に当て、デュエルリングをから少し顔をそらしていた。
「ペガサス様はデュエル中だ。…わかった。私が許可する。お前たちで対処しろ。」
それを千年リング越しに、獏良は盗み聞き取っていた。
遊戯がモンスターを裏守備表示で出した頃、モクバを背負う本田とその後をついて走る名前に、警戒を知らせるブザーが鳴りわたった。
「マズイ…気付かれちまったか」
「急ぎましょう。」
「私のターンデ〜ス。」
その警報ブザーは遊戯に対しても鳴っているかのように、ペガサスのターン宣言をする低い声がリングに響いた。