王国編 /1
名前変換
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「さあ、城之内君のターンだよ」
休み時間のチャイムが響き、サッと賑やかになる校内。くすんだ赤い色の、背中程ある髪を揺らしながら、賑やかな廊下を歩く少女がいた。
いつもの学校生活。
友達とお喋りして、勉強は好きではないけれど、とりあえず並み程度には頭に入れて、またお友達と話して。
狭い狭い世界。回りから見たらとても退屈な世界。だけど、学校という社会しか経験した事の無い私たちにとって、ここは全ての世界だった。
「よーし、じゃあ俺はこのカードで勝負だ!」
隣のクラスの前を通りかかったとき、そんな声が聞こえた。開けっ放しの扉から中をのぞくと、窓際の席に小さな人だかりが出来ている。
「僕のターンだね。じゃあ僕は、このカードで攻撃!」
おおおっと驚きの声。どうやら相手の金髪の男子は負けたらしい。何やら悔しそうな声が廊下まで響いていた。
「城之内弱すぎー!」
回りからはやし立てられている。
ふと、その人だかりの手前の席の、茶髪の男子がこちらを見た。
目が合う。
「……」
「……(青い目、……)」
少し見つめ合う。なんだか目を反らすタイミングを逃したようだ。少し恥ずかしくなり、一瞬視線を落とした。もう一度ちらりと彼を見ると、顔は手に持った本に向けていたが、視線だけはその人だかりに向けているらしい。
「(あの人……どこかで会ったような)」
脳裏に青い服の男が霞む。
学校以外の世界を知らない私の胸に、覚えてもいない記憶の破片が刺さった。
***
ベッドの上で思い返すのは今日のこと。
カード勝負…… おそらくデュエルモンスターズで遊んでいたのだろう。
「……やっぱりみんなやってる物なのね」
名前はおもむろにベッドサイドのテーブルからカードの束を手に取る。パラパラッと手の中で広げると、青い服に青い肌、杖を持って腕を組み、こちらに微笑みかける姿の愛おしい魔術師のカードを見つめる。
「ね。ブラック・マジシャン。」
ブラック・マジシャンのカードを抜いて手に取ると、そのままキスを落とす。
ほんのかすかな金属音がした。反応して視線を向ける。ベッドサイドのテーブルの上、金色に輝く天秤が、何も乗っていないにもかかわらずほんのわずかに傾く。
天秤の中央のヴジャド眼が、目を光らせるようにベッドの上の名前を見ていた。手の中のブラック・マジシャンのカードをその少し浮いた側の秤杯に乗せると、一気にブラック・マジシャンの方へ傾きバランスを崩して千年秤はテーブルから落ちる。
名前は一緒に落ちたブラック・マジシャンのカードを拾い上げると、彼に少し微笑んでデッキの中に戻した。
***
ゲームの歴史───
それははるか五千年の昔、古代エジプトにまで遡ると云う。
古代に置けるゲームは、人間や王の未来を予言し、運命を決める 魔術的な儀式であった。───それらは、闇のゲームと呼ばれた。
今、千年パズルを解き 闇のゲームを受け継いだ少年がいた。
光と闇
ふたつの心を持つ少年。───人は彼を、
遊戯王と呼ぶ。
休み時間のチャイムが響き、サッと賑やかになる校内。くすんだ赤い色の、背中程ある髪を揺らしながら、賑やかな廊下を歩く少女がいた。
いつもの学校生活。
友達とお喋りして、勉強は好きではないけれど、とりあえず並み程度には頭に入れて、またお友達と話して。
狭い狭い世界。回りから見たらとても退屈な世界。だけど、学校という社会しか経験した事の無い私たちにとって、ここは全ての世界だった。
「よーし、じゃあ俺はこのカードで勝負だ!」
隣のクラスの前を通りかかったとき、そんな声が聞こえた。開けっ放しの扉から中をのぞくと、窓際の席に小さな人だかりが出来ている。
「僕のターンだね。じゃあ僕は、このカードで攻撃!」
おおおっと驚きの声。どうやら相手の金髪の男子は負けたらしい。何やら悔しそうな声が廊下まで響いていた。
「城之内弱すぎー!」
回りからはやし立てられている。
ふと、その人だかりの手前の席の、茶髪の男子がこちらを見た。
目が合う。
「……」
「……(青い目、……)」
少し見つめ合う。なんだか目を反らすタイミングを逃したようだ。少し恥ずかしくなり、一瞬視線を落とした。もう一度ちらりと彼を見ると、顔は手に持った本に向けていたが、視線だけはその人だかりに向けているらしい。
「(あの人……どこかで会ったような)」
脳裏に青い服の男が霞む。
学校以外の世界を知らない私の胸に、覚えてもいない記憶の破片が刺さった。
***
ベッドの上で思い返すのは今日のこと。
カード勝負…… おそらくデュエルモンスターズで遊んでいたのだろう。
「……やっぱりみんなやってる物なのね」
名前はおもむろにベッドサイドのテーブルからカードの束を手に取る。パラパラッと手の中で広げると、青い服に青い肌、杖を持って腕を組み、こちらに微笑みかける姿の愛おしい魔術師のカードを見つめる。
「ね。ブラック・マジシャン。」
ブラック・マジシャンのカードを抜いて手に取ると、そのままキスを落とす。
ほんのかすかな金属音がした。反応して視線を向ける。ベッドサイドのテーブルの上、金色に輝く天秤が、何も乗っていないにもかかわらずほんのわずかに傾く。
天秤の中央のヴジャド眼が、目を光らせるようにベッドの上の名前を見ていた。手の中のブラック・マジシャンのカードをその少し浮いた側の秤杯に乗せると、一気にブラック・マジシャンの方へ傾きバランスを崩して千年秤はテーブルから落ちる。
名前は一緒に落ちたブラック・マジシャンのカードを拾い上げると、彼に少し微笑んでデッキの中に戻した。
***
ゲームの歴史───
それははるか五千年の昔、古代エジプトにまで遡ると云う。
古代に置けるゲームは、人間や王の未来を予言し、運命を決める 魔術的な儀式であった。───それらは、闇のゲームと呼ばれた。
今、千年パズルを解き 闇のゲームを受け継いだ少年がいた。
光と闇
ふたつの心を持つ少年。───人は彼を、
遊戯王と呼ぶ。